「――《テンクウオー》で攻撃。手札からジョーカーズを二枚捨ててアンタップ、Wブレイク。トリガーはありますか?」
「……ありません」
「ならもう一度、《テンクウオー》で攻撃、ジョーカーズを二枚捨ててアンタップします。残り二枚をWブレイク」
「あ……S・トリガー《デス・ゲート》ですっ。《テンクウオー》を破壊して、墓地の《カモン・ピッピー》を復活させます! 《カモン・ピッピー》の能力は《勝利のリュウセイ・カイザー》を出します!」
「……ターンエンドです」
「わたしのターン、《龍覇 グレンモルト》を召喚! 《ガイハート》を装備させます。《グレンモルト》で《ヤッタレマン》を攻撃!」
「なにもないです」
「次に《勝利のリュウセイ》で《東大センセー》を攻撃!」
「こっちもないですね……あぁ、ヤバい」
「二回攻撃が成功したので、《ガイハート》を《ガイギンガ》に龍解! 《クジルマギカ》で攻撃する時、墓地の《超次元リバイヴ・ホール》を唱えて《グレンニャー》を手札に戻して、《勝利のガイアール・カイザー》をバトルゾーンに! Wブレイクです!」
「トリガーは……《バイナラドア》、《勝利のガイアール》を選択して、一枚ドロー……」
「じゃあ、《ガイギンガ》でダイレクトアタックです!」
「……なにもありません。ありがとうございました」
☆ ☆ ☆
「勝ったよ!」
「おめでとう! 小鈴ちゃん!」
戻ると、みのりちゃんが出迎えてくれる。
一回戦が終わって、続く二回戦も無事に突破できました。
二回戦は前半戦にわたしと恋ちゃん、後半戦に霜ちゃんとユーちゃんが対戦することになってる。
見たところ、恋ちゃんは戻ってきていない。まだ対戦中かな。
「恋ちゃんの方はどうなってるのかな?」
「ユーリアさんと水早君が観戦してるはずだよ。行ってみよっか」
「うんっ」
みのりちゃんと一緒に、恋ちゃんのいるテーブルへと向かう。
わたしは二回戦も勝てた。きっと、恋ちゃんも勝てるよね。
恋ちゃんは自分のデッキを「不完全……まともじゃない……」なんて言ってたけど、わたしよりもずっと強いんだもん。そう簡単に負けるはずがない。
すぐに恋ちゃんの姿が見えた。小柄だけど、髪の色が薄いから、わりと目立つのだ。
そして対戦テーブルを見ると――
「――《バロム・クエイク》で最終攻撃。防ぐ手はあるか?」
「……通します」
「ならば我の勝ちだな。対戦、感謝する」
「……ありがとうございました」
シールドはゼロ。相手には、幾体ものクリーチャー。
……え?
これって、もしかして……
恋ちゃんが席を立つ。対戦相手の人は受付へと向かっていった。
この大会だと、勝者が勝利報告をしに行くルールになってる。って、ことは……
「ん……こすず……終わったの……?」
「う、うん」
「どうだった……?」
「勝ったよ。あの、恋ちゃんは……」
「……負けた」
短く簡潔に、なんでもないように言う恋ちゃん。
恋ちゃん、負けちゃったんだ……残念だな。
だけど恋ちゃんは、思ったほど落ち込んでいるわけでも、悔しがっているわけでもなく、あるがままの結果を受け入れているようだった。
恋ちゃんがぼそりと、言葉を零した。
「でも、
「ソル?」
「この辺じゃ、ちょっと有名な、DMP……」
「へぇ、S・O・Lが来てるんだ」
「みのりちゃんも知ってるの?」
「名前くらいはね」
S・O・L。その人が、恋ちゃんを倒した人なんだ。
わたしたちが来た時にはほとんど終わってたし、対戦場面だけ見てて、すぐに席を立っちゃったから、ちゃんとよく見てなかったけど……
「その人は、強いの?」
「んー……まあまあかな。ファンデッカーで、CSとかガチの大会にはあんまり行かないって聞いたけど」
「……今回は、デッキが悪かった……まともなデッキなら……」
「その言い訳は、ちょっと見苦しいんじゃない?」
「むぅ……」
「うん、でも、強いか弱いかで言えば、日向さんを倒し得るくらいには強いね。ガチじゃないデッキは、それはそれでカードやプレイングについて知識や経験が必要だったりするし」
「そもそもここの大会に出てるってことは、強さを基準にデュエマをしていないってことでもあるけどね。ボクが見る限りでも、なかなか面白いデッキだったよ」
「でも、残念でしたね、恋さん」
「ん……別に……」
恋ちゃんはなんでもないように言うけど、これでわたしたちの中で、みのりちゃん、恋ちゃんが敗退。
残ったのはわたしと、二回戦を控えるユーちゃんと霜ちゃんの三人。
決勝で会おう、なんて漫画とかで使い古された言葉だけど。
それが実現することは、あるのかな。
「さて、もう前半戦も終わりかな。そろそろボクらの出番だ」
「Ja! 恋さんや実子さんの分まで戦ってきますよ!」
霜ちゃんもユーちゃんもやる気は十分。
とても、力強かった。
「とか言ってるそばから、呼ばれたね。行ってくるよ」
「ユーちゃんもです。行ってきますね!」
「……なんか、このパターン……覚えが、あるような……」
「あ……」
対戦テーブルに着くユーちゃんと霜ちゃん。二人は、向かい合って座っていた。
「うん、なんかわかってたよ。そういう流れだっていうのは」
「はわわ、霜さんがお相手ですか……」
二回戦、後半。
その対戦カードは、ユーちゃんと霜ちゃんでした。
☆ ☆ ☆
「まずは次元の確認からだね。ボクの次元はこれだよ」
[霜:超次元ゾーン]
《勝利のガイアール・カイザー》×1
《アクア・アタック<BAGOOON・パンツァー>》×1
《時空の精圧ドラヴィタ》×1
《時空の雷龍チャクラ》×1
《勝利のリュウセイ・カイザー》×1
《タイタンの大地ジオ・ザ・マン》×1
《勝利のプリンプリン》×1
《時空の喧嘩屋キル》×1
「んー、ちょっと変な次元だね?」
「《パンツァー》《ドラヴィタ》《チャクラ》……光の次元ホール、積まれてる……?」
「勝利セットも一通り揃ってるから、闇の超次元呪文もありそうだけど、どんなデッキかは判断憑かないね。軽量サイキックが《キル》だけなのも気になるし」
みのりちゃんと恋ちゃんが、霜ちゃんの超次元ゾーンを見て考察してるけど、わたしにはよくわからなかった。
自分で使ってたり、みんながよく使うカードのことはわかるけど、あんまり見ないカードはまだよくわからないなぁ。超次元呪文の種類とかも、まだ全部はわからないし。
その辺も、ちゃんと覚えなきゃ。
「そっちに次元は?」
「ユーちゃんにはないですよ」
「わかった。じゃあ、じゃんけんだ」
じゃんけんの結果、霜ちゃんはチョキ、ユーちゃんがグー。
ユーちゃんの先攻で、デュエマスタートだ。
「ユーちゃんの先攻です! 《アルカクラウン》をマナチャージ! Ende!」
「《アルカクラウン》!? ユーが使うとは、意外だな……ボクのターン。《族長の無双弓》をチャージ、ターンエンドだ」
ターン1
ユー(ユー)
場:
盾:5
マナ:1
手札:4
墓地:0
山札:30
SAW(霜)
場:なし
盾:5
マナ:1
手札:5
墓地:0
山札:29
「ユーリアさんのデッキは5cアルカクラウンなのかな?」
「クラウン?」
「……最近、構築済みが出た……最大で五体のクリーチャーを、踏み倒す……クリーチャー軸の、五色コントロール……」
「まあ見てればわかると思うけどね。たぶん、爆発的なマナ加速から、大型と一緒に四、五体のクリーチャーを同時にぶん投げるようなデッキだよ」
「ご、豪快だね……」
パッと聞くだけだと、物凄く強いように聞こえる。実際、強いんだろうけど。
「ユーちゃんのターンです。《ジャック・アルカディアス》をマナに置いて、Endeです」
「《ジャック》……」
「やっぱり普通に《アルカクラウン》のデッキに見えるけど……なんだか普通すぎるね。カード二枚しか見えてないから、まだなんとも言えないけど」
「ボクのターン……《ムシャ・ホール》をチャージ。《エール・ライフ》を唱えてマナを追加、ターンエンド」
ターン2
ユー(ユー)
場:
盾:5
マナ:2
手札:4
墓地:0
山札:29
SAW(霜)
場:なし
盾:5
マナ:3
手札:4
墓地:1
山札:27
「《カーネル》をチャージです。2マナで《ジョニーウォーカー》を
「2コストの加速があるのか……ボクのターン」
霜ちゃんは小さく呟いてから、カードを引く。
「2マナのマナ加速カードがあるのは変なの?」
「変じゃないけど、元々の構築済みには2コスト加速は入ってないし、あのデッキは一度に大量のマナを稼ぐ手段があるから、ちまちまマナを増やすカードはあんまり入らないと思うんだよね」
「多色多いから、マナカーブも歪むし……テンポ合わせて刻むより、雑に一気にマナ溜めた方が、手っ取り早い……」
成程、そういう考え方もあるんだ。
確かにユーちゃんのデッキは多色カードが多いみたい。多色カードはマナゾーンにカードを置く時にタップしちゃうから、カードの使い方がちょっと違うのかな。
みのりちゃんや恋ちゃんもユーちゃんのデッキがわかってるみたいだし、霜ちゃんがわからないはずはないと思う。
霜ちゃんは、どう動くのかな。
「よし、いい引きだ。《神秘の宝箱》をチャージ! 4マナで《チキチキ・
ターン3
ユー(ユー)
場:なし
盾:5
マナ:4
手札:3
墓地:1
山札:27
SAW(霜)
場:《サーキット》
盾:5
マナ:4
手札:3
墓地:1
山札:26
霜ちゃんはD2フィールドを展開する。
見たことのないカードだけど、どんな効果なんだろう?
「あれは味方すべてをスピードアタッカーにするフィールドだね」
「全部スピードアタッカーになるの? 強いね」
「手軽にスピードアタッカーを付与できるのは画期的だよね」
「……わざわざ《サーキット》使うってことは……アタックトリガーを、活用するデッキ……?」
「侵略や革命チェンジを使うなら、そういう方向性かもねー」
そう言えば、霜ちゃんはみのりちゃんのデッキをまねっこするんだったよね。
侵略も革命チェンジも攻撃が鍵になる能力だから、スピードアタッカーを付けるのは理にかなってる。
「《電脳鎧冑アナリス》を召喚ですよ! 破壊してマナを増やします。Ende!」
「ボクのターン……うーん」
マナを伸ばしていくユーちゃん。対して霜ちゃんは、カードを引くなり考え込んでいる。
「こう来たか、迷うな……でも、もう《サーキット》は展開できたし、こっちかな……《カーネル》をチャージ。3マナで《神秘の宝箱》を唱えるよ。山札から自然以外のカードをマナに落とす。《サーキット》をマナに置いて、ターンエンドだ」
ターン4
ユー(ユー)
場:なし
盾:5
マナ:6
手札:2
墓地:2
山札:25
SAW(霜)
場:《サーキット》
盾:5
マナ:6
手札:2
墓地:2
山札:24
「そろそろ仕掛けてくると思ったけど、マナを伸ばすんだ」
「……手札が悪かっただけ……だと、思うけど……」
「そうかなぁ。まーでも、《サーキット》はフィールドで場持ちもいい方だし、そうなのかもね」
どちらにせよ、じき攻撃を仕掛けてくることは確実だろうと、みのりちゃんは言う。
そして問題は、ユーちゃんと霜ちゃん、どちらが先に仕掛けるかということだ。
「ユーちゃんのターンです! むむむ。これは、もったいないですけど《キング・アルカディアス》をチャージです。5マナで《腐敗無頼トリプルマウス》を召喚です! 1マナ増やして、手札も一枚、捨てさせちゃいますよ! これです!」
「《シャイニー・ホール》か、それなら問題ない。ボクのターン」
ユーちゃんが無作為に選んだ手札が墓地に落とされる。
霜ちゃんは手札が少ないから、結構厳しいように思えるけど、涼しい顔をしていた。
「ボクのターン……ぐっ、ここで引いてしまったか。だがまあ、仕方ない。《ジョニーウォーカー》をチャージだけして、ターンエンドだ」
ターン5
ユー(ユー)
場:《トリプルマウス》
盾:5
マナ:8
手札:1
墓地:2
山札:23
SAW(霜)
場:《サーキット》
盾:5
マナ:7
手札:1
墓地:3
山札:23
「今の反応、多色引いてマナが足りない感じだったねぇ」
「そうなの? っていうか、そんなことまでわかるの?」
「なんとなくね、経験則っていうのかな。それに、そうじゃなかったら今引きの《ジョニーウォーカー》をチャージだけして終わったりも、あんな苦い顔もしたりしないよ。だからきっと、水早君のキーカードは7マナから動くんじゃないかな?」
霜ちゃんの反応から、そこまで推測できるんだ……
ということは、霜ちゃんは想定していた動きよりも、1ターン遅くなってしまった。
それは、この対戦において大きく響くことになる。
「! いいカードです! 《プロメテウス》を召喚!」
「うっ、最悪のタイミングで来たな……!」
「2マナ増やして、マナの《アルカクラウン》を手札に! Endeです!」
ユーちゃんは《アルカクラウン》を手札に加えた。
マナは足りてる。みんなの言う通りなら、次のターン、ユーちゃんは切り札を出すことができる。
「ボクのターン……《アルカクラウン》はまずい、多少無理してでも対処したいけど……」
霜ちゃんも苦しそうな表情だ。よっぽど《アルカクラウン》ってカードは強いのかな。
「……でも、ドローは最高形なんだよな。まあ、こうなった以上、やるしかないね。先んじて仕掛けられるし」
どこか諦めがついたように息を吐く霜ちゃん。諦めたというよりは、割り切ったというべきかもしれない。
そして、手札のカードを一枚、抜き取った。
「マナチャージなしで、7マナタップ! 《龍素記号Sr スペルサイクリカ》を召喚!」
みのりちゃんの言う通り、7マナのクリーチャーが出て来た。
あれが、霜ちゃんの切り札、なのかな?
「《サイクリカ》の能力で、墓地の《シャイニー・ホール》を唱えるよ。《トリプルマウス》をタップして、《時空の雷龍チャクラ》をバトルゾーンへ! 唱えた呪文は手札に戻る」
「えっ!? 墓地の呪文を唱えておいて、手札に戻せるの!?」
「そこが《サイクリカ》の強いところだよね。一体で二回分、呪文が使えるんだもん。アドバンテージの取り方が半端ないよ」
「……けど、《シャイニー・ホール》一枚じゃ、たぶん、終わらない……」
「だね。あのフィールドの意味、そろそろわかるんじゃないかな」
霜ちゃんが展開したD2フィールドの意味。
スピードアタッカーを与える効果なわけだから、クリーチャーがいないとその力は発揮されない。逆に言えば、クリーチャーが出た今こそが、効果を発揮するタイミングとも言える。
それを証明するかのように、霜ちゃんはさっき召喚したばかりのクリーチャーに手をかけた。
「《サーキット》の効果だ。このフィールドがある限り、ボクのクリーチャーはすべてスピードアタッカーを得る。よって《サイクリカ》で攻撃――する時に!」
タップして攻撃を宣言した《サイクリカ》を、手札に戻す。
これは……
「革命チェンジ! 《時の法皇 ミラダンテ
やっぱり、革命チェンジだ。
出て来たのは、光と水の大型ドラゴン。同じ革命チェンジでも、みのりちゃんとはまったく違うカードだ。
「光か水のコスト5以上のドラゴンの攻撃によって、《ミラダンテⅩⅡ》に革命チェンジだよ。そして《ミラダンテⅩⅡ》のファイナル革命! 次の君のターンの終わりまで、君はコスト7以下のクリーチャーを召喚できない!」
召喚を封じちゃうの!? 1ターンだけとは言っても、コスト7以下と言ったら、ほとんどのクリーチャーがその対象内だ。わたしのデッキだったら、まったくクリーチャーが召喚できなくなっちゃって、なにもできなくなっちゃう。
それに、召喚を封じるってことは、S・トリガーで出るクリーチャーも封じられるってことだよね。そう考えると、すごく強いクリーチャーに思える。そして実際に強いと、みのりちゃんが教えてくれた。
でも、まだ終わらない。
「次に《ミラダンテⅩⅡ》の登場時能力で、手札からコスト5以下の光の呪文を唱えるよ。唱えるのはさっき回収した《シャイニー・ホール》だ! 《プロメテウス》をタップして、《時空の精圧ドラヴィタ》をバトルゾーンへ!」
「おー、《サイクリカ》一体から、召喚を封じたうえで一気に三体展開かぁ、やるねー」
「……《サイクリカ》で超次元呪文を回収……《ミラダンテⅩⅡ》で射出……絶え間ない、連続詠唱……そういう、コンボ……?」
「かもね。水早君の手札には《サイクリカ》が戻ってるし、次のターン、《ミラダンテⅩⅡ》で唱えた呪文がまた使えるわけだし、こうやって何度も呪文を使い回すようなデッキなのかな? 呪文の範囲が狭いけど」
《サイクリカ》で墓地から唱えて、同時に回収した呪文を《ミラダンテⅩⅡ》で撃って、それをまた《サイクリカ》で唱える。
何度も何度も繰り返しカードを使い続けるコンボ。
みのりちゃんが得意な革命チェンジを使ってるけど、その根幹はすごく、霜ちゃんらしいな。
「さぁ、Tブレイクだ!」
「うにゅぅ、S・トリガーは召喚だから、出せないんですよね……なにもないです」
「じゃあ、次に《ドラヴィタ》で攻撃だ。こいつも《サーキット》でスピードアタッカーになってるからね。《トリプルマウス》を攻撃!」
「《トリプルマウス》のパワーは2000……パワー5500の《ドラヴィタ》には勝てないです」
「《ドラヴィタ》の能力で、バトルに勝ったのでアンタップだ。次に《プロメテウス》を攻撃! 再びアンタップ!」
「こっちも破壊されちゃいますね……」
「《ドラヴィタ》をアンタップする……が、これ以上盾を殴る意味もないかな。ターンエンド」
ターン5
ユー(ユー)
場:なし
盾:2
マナ:9
手札:5
墓地:2
山札:23
SAW(霜)
場:《サーキット》《ミラダンテⅩⅡ》《チャクラ》《ドラヴィタ》
盾:5
マナ:7
手札:1
墓地:3
山札:22
ユーちゃんのクリーチャーはいなくなって、霜ちゃんは三体もクリーチャーを展開した。そのうえ、ユーちゃんはこのターン、コスト7以下のクリーチャーを召喚できない。
圧倒的に霜ちゃんが優位な状況。なのに、霜ちゃんは険しい表情だし、ユーちゃんは現状を苦とも思っていない様子。
なぜなら、
「えっと、コスト7以下じゃなければ、出せるんですよね?」
「……そうだね」
「じゃあ、出しちゃいます! 9マナタップです!」
召喚制限を超えて、より多くのクリーチャーを展開できる算段が、ユーちゃんにはあったから。
「召喚です――《天罪堕将 アルカクラウン》!」
9コストも支払って出て来たのは、光と、闇と、自然のクリーチャーだった。
《ミラダンテⅩⅡ》で封じられるのは7コスト以下の召喚だけ。だから、コストが7を上回っていれば、問題なく出せる。
それがわかっていたから、霜ちゃんは切り札を出せても楽観できなかったし、ユーちゃんは霜ちゃんに仕掛けられても悲観していなかったんだ。
「《アルカクラウン》の能力です! 山札を五枚見て、その中から、コスト7以下の光、水、闇、火、自然のクリーチャーをそれぞれ出しますよ!」
ユーちゃんが能力を説明する。クリーチャーを一気に出すっていうのは、そういうことだったんだね。
要するに、山札を見て、各文明のクリーチャーをそれぞれ出すという能力。制限は、山札の上から五枚、そしてコスト7以下ということ。
でも召喚じゃないから、これも《ミラダンテⅩⅡ》の制限を受けない。こう見ると、物凄く強いと思ってた《ミラダンテⅩⅡ》も、意外と抜け穴が多いんだね。
なんにせよ、ユーちゃんの山札がよほど悪くなければ、これでバトルゾーンの状況はひっくり返る。
ユーちゃんは山札の上から五枚をめくって見た。
そして、
「……
満面の笑みを、わたしたちに見せつける。
「光は《腐敗聖者ベガ》! 水は《青寂の精霊龍 カーネル》! 闇は《闇鎧亜クイーン・アルカディアス》! 火は《爆砕面 ジョニーウォーカー》!」
「これはまさか、五体フルで出されるパターンか? 《キリュー》とかがないことを祈りたいね――」
と、霜ちゃんが言いかけたところで。
ユーちゃんがめくった最後の一枚が、場に出される。
「自然は――《超神星グランドクロス・アブソリュートキュア》!」
「はぁ!?」
ユーちゃんがめくったカードを見て、霜ちゃんが素っ頓狂な声を上げる。
わたしにはそんなに驚く理由がわからないけど……でも、ユーちゃんのデッキの意図は、少しだけわかった。
霜ちゃんはみのりちゃんのデッキのパターンを真似するデッキを組んできた。だから、革命チェンジをデッキの中に取り入れている。
そしてユーちゃんは、恋ちゃんのデッキのまねっこだ。恋ちゃんと言えば、シールドを増やしたり、S・トリガーをたくさん入れたりして、相手の攻撃を防ぐ戦術をよく使う。
そんな恋ちゃんの切り札のひとつが、《超神星グランドクロス・アブソリュートキュア》。攻撃するだけで、シールドを三枚も増やせるクリーチャー。
ユーちゃんはみのりちゃんと同じで、真似する相手の切り札をそのまま、デッキに入れたんだ。わたしのまねっこをした、みのりちゃんみたいに。
「えっと、《クイーン・アルカディアス》は《ベガ》から
「確かに7コストかつ多色で、即打点になるから組み合わせられるけどさぁ……だからって、まさかそんなのが……!」
霜ちゃんは驚きながらも悔しそうな表情をしている。意表を突かれた一枚が、そんなに衝撃的だったのかな。
「《ベガ》の能力です! シールド追加して、手札を捨てさせます! 《カーネル》の能力で選ぶのは《ミラダンテ》です! 《ジョニーウォーカー》の能力は使わないです」
これでバトルゾーンのクリーチャーの数は逆転した。霜ちゃんは三体だけど、ユーちゃんは一気に五体。倍近くの差がついた。
それだけじゃない。
「いっきますよー! 《グランドクロス・アブソリュートキュア》で
「それは……通そう。Wブレイクだね。トリガーはないよ」
「では、Endeです!」
「まさか《アブキュア》とは。《チャクラ》の覚醒を阻止されるばかりか、シールドが初期より増えてしまった、まずいな……《ミラダンテ》は動けないし、《クイーン》で呪文も封じられたし、かなり厳しい……!」
そう、ユーちゃんはクリーチャーの数で逆転しただけじゃなくて、シールドを1ターンに四枚も増やして、前のターンのシールドブレイクをなかったことにしている。
霜ちゃんのデッキは前のめりに攻撃していくっぽいし、これは霜ちゃんがかなり厳しそうかな。
「とりあえず今は、できることをするしかないな……《サイクリカ》を召喚。《クイーン》で呪文が封じられてるから、能力は不発だ。《サイクリカ》で《アブソリュートキュア》を攻撃する時に、革命チェンジで《オーパーツ》を出す。二枚ドローして、君のカードを二枚、山札に戻してもらうよ」
「じゃあ、《アブソリュートキュア》と、《クイーン》の進化元の《ベガ》を山札の下に置きますね」
「攻撃対象が消えて、攻撃は中断だね。ターンエンド」
ターン6
ユー(ユー)
場:《アルカクラウン》《カーネル》《ジョニーウォーカー》《闇鎧亜クイーン・アルカディアス》
盾:6
マナ:7
手札:3
墓地:7
山札:12
SAW(霜)
場:《サーキット》《ミラダンテⅩⅡ》《チャクラ》《ドラヴィタ》《オーパーツ》
盾:3
マナ:7
手札:4
墓地:3
山札:20
「ユーちゃんのターン! 《フェアリー・ミラクル》を唱えますよ! ユーちゃんのマナには五文明揃ってるので、2マナ増やします! それから、《アルカクラウン》でシールドへ攻撃です!」
「それはニンジャ・ストライク、《ハヤブサマル》でブロックだ!」
「うむむです、防がれちゃいました……Ende」
「ボクのターン」
一気にクリーチャーを展開して、数でも優位に立ったユーちゃんだけど、動きは控えめだった。
というのも、いくらクリーチャーを並べても、一体一体はそれほど強くない。一方、霜ちゃんは革命チェンジで大型クリーチャーを出せるから、一体一体の力が強い。
《クイーン・アルカディアス》も《ミラダンテⅩⅡ》や《オーパーツ》にパワー負けしてるし、なかなか攻め入りにくいんだろうな。
とはいっても、霜ちゃんもきついことには変わりはなかった。
「《キング》だと詰んでるけど、《クイーン》も相当にやりづらいな……《カーネル》を召喚。能力で君の《カーネル》を拘束、攻撃もブロックもできないよ。そして《オーパーツ》で攻撃する時、革命チェンジ! 二体目の《オーパーツ》とチェンジだ! 二枚ドロー!」
「ユーちゃんは、手札一枚と、《カーネル》を山札の下に戻します……でも、これも使いますよ! ニンジャ・ストライク!」
「っ、ここでシノビ!?」
「《怒流牙 サイゾウミスト》です!
ユーちゃんは墓地のカードを全部山札に戻して、シールドを増やす。
わたしはこのプレイングについてはなんとも思わなかったけど、霜ちゃんは訝しげな眼差しを向けていた。
「? ここで《サイゾウミスト》……? とりあえず、Wブレイクだよ」
「S・トリガー! 《ジャック・アルカディアス》です! コスト4以下のカードを破壊しますよ! 《チキチキ・JET・サーキット》を破壊です!」
「っ……!」
怪訝な表情から一変、歯噛みする霜ちゃん。
D2フィールドが破壊されて、スピードアタッカーを与える効果が消えてしまった。
あのカードが霜ちゃんのデッキのキーカードだろうことは想像に難くない。それを破壊されちゃったわけだし、霜ちゃんはまた追い詰められる。
「《サーキット》が破壊された……! まずい、《カーネル》が攻撃できなくなった。計画が狂ったな……ごめん、ちょっと考えさせてほしい」
「Ja、わかりました」
一言断ってから、頭を抱える霜ちゃん。だけど、思考は止めていない様子。
こんな時でも冷静に考え続けられる霜ちゃんって、やっぱりすごいよね。わたしなら、絶対にわたわたしちゃうもん。
「手札はこれか……ならもう、こうするしかないか……?」
しばらく悩んでから、霜ちゃんは決断したみたい。
霜ちゃんは場の《ミラダンテⅩⅡ》に手をかける。
「《ミラダンテⅩⅡ》で《アルカクラウン》を攻撃! その時、革命チェンジで《ミラダンテⅩⅡ》をバトルゾーンへ! ファイナル革命を発動! 呪文は使えないから、一枚ドローして……バトルだ!」
「どっちもパワーは12000ですね」
「あぁ、相打ちだ。これでターンエンド」
「じゃあユーちゃんは、《サイゾウミスト》を山札の下に戻します」
ターン7
ユー(ユー)
場:《ジョニーウォーカー》《ジャック・アルカディアス》《闇鎧亜クイーン・アルカディアス》
盾:5
マナ:9
手札:3
墓地:1
山札:19
SAW(霜)
場:《チャクラ》《ドラヴィタ》《オーパーツ》《カーネル》
盾:3
マナ:8
手札:7
墓地:7
山札:20
「ユーちゃんのターンですね! まずは《サイゾウミスト》の能力で、シールドを一枚、マナに置きます」
せっかく増やしたシールドを、マナに置いちゃうんだ。
ってことは、あのクリーチャーは一瞬だけ防御を固められるシノビなんだね。
……あれ? じゃあなんでユーちゃんは、あのタイミングで《サイゾウミスト》を召喚したんだろう? 攻撃を防ぐためなら、残りシールドがゼロの時に出した方が、効果的だと思うんだけど……
それ以外の理由があるとすれば、マナを増やすとか、墓地のカードを山札に戻すためとかだけど……うーん、わかんないや。
それよりも、場の状況がさらに動いた。
「では、9マナタップです!」
「なっ、嘘だろっ!?」
このタイミングで9マナのカード。
となれば、二度目のあのクリーチャーしかない。
「《アルカクラウン》を召喚です! さぁ、もう一度山札をめくりますよ!」
「くっ、ここでまた《アルカウラウン》はきつい……!」
一度に最大五体のクリーチャーを出せる《アルカクラウン》。ただ出るだけで、相当な圧力になるんだろうな。
「光は《アブソリュートキュア》、水は《プロメテウス》、闇は《キング・アルカディアス》です!」
「うぐっ、遂に《キング》まで来たか……!」
「《キング・アルカディアス》は《プロメテウス》から進化です! そして《アブソリュートキュア》で攻撃、メテオバーンでシールドを三枚増やして、Wブレイクです!」
「あえて通す……S・トリガー《カーネル》だ! 《クイーン》を拘束!」
「でも、《キング・アルカディアス》の能力で、コストを払って出ないと破壊ですよ!」
S・トリガーでなんとか耐える霜ちゃんだけど、耐えても厳しい現実が待っている。
「《キング》《クイーン》のロックが完成しちゃったかぁ。これは水早君の負けっぽいなぁ」
「ロック?」
「……アルカディアス夫妻の、単色メタロック……あの構築済みで、復活した……」
「? 夫婦? 構築済み……?」
「えっとね、あの二体の《アルカディアス》はそれぞれ強力なロック能力を持ってて、二体揃うとほぼ無敵なんだよ。《キング・アルカディアス》は多色以外のクリーチャーの召喚コストを5増やして、相手クリーチャーがコストを支払わずに出たら破壊する。《クイーン・アルカディアス》は多色以外の呪文のコストを5増やして、コストを支払わずに呪文を唱えられないようにする」
「ってことは、霜ちゃんは多色カードじゃないと、ほとんどカードが使えない……?」
「そゆことだね。《キング》《クイーン》でS・トリガーもほとんど封殺されてるし、ゴリ押されたらおしまいだよ」
相手の自由を奪うロック。そうでなくても、クリーチャーの数も増えている。《サイクリカ》の呪文再利用も、革命チェンジも封じられて、デッキの戦術は崩壊した。霜ちゃんがここを切り抜けるのは、難しいとみのりちゃんは言う。
だけど、一体一体のクリーチャーのパワーは霜ちゃんの方が上だし、まだなんとかなりそうな気がするけど……
「霜さんのブロッカーは二体ですね。《キング・アルカディアス》で攻撃したいですけど、パワーは負けちゃってますから……《ジャック・アルカディアス》で《オーパーツ》を攻撃します!」
「そう来たか。それは……《チャクラ》でブロック、する……!」
「《ジャック・アルカディアス》はスレイヤーです! そっちも破壊ですよ!」
「甘んじて受け入れよう。もう覚醒もできそうにないしね」
「これ以上は攻撃したくないです……Ende!」
多色以外のカードをまともに使わせず、コストを支払わない行動も軒並み封じた。
不自由極まりないこの状況で、霜ちゃんはどうやって戦うんだろう。
「まだ耐えられるか……? 4マナで《
「あぅ、やれれちゃいました……」
「ついでにマナ武装2も発動だ。ボクのマナに多色カードが二枚以上あるので、次のボクのターンまで、ボクのクリーチャーはブロッカーになるよ。さらに《超次元シャイニー・ホール》! 《キング・アルカディアス》をタップ!」
「はわっ!?」
「超次元ゾーンからは、《勝利のプリンプリン》を出すよ。《アルカクラウン》を拘束!」
「《キング・アルカディアス》の能力です! コストを払って出てないので、破壊します!」
「結構、君のロックも打ち破らせてもらうからね。《オーパーツ》で《キング・アルカディス》を攻撃だ!」
「《キング・アルカディアス》のパワーは9000なので、パワー11000の《オーパーツ》には勝てません……」
「じゃあ、これでターンエンドだよ」
ターン8
ユー(ユー)
場:《アルカクラウン》《アブソリュートキュア》《ジョニーウォーカー》
盾:7
マナ:10
手札:3
墓地:6
山札:11
SAW(霜)
場:《ドラヴィタ》《オーパーツ》《カーネル》
盾:1
マナ:9
手札:4
墓地:10
山札:14
す、すごい……!
ユーちゃんの切り札っぽい二体の進化クリーチャーを、1ターンでどっちも倒しちゃった……!
「うん、これは本当に凄いね。《キング》《クイーン》の夫婦ロックを、たった1ターンで完全に崩すなんて」
「……まあ、多色は封じられないし……その穴が、あったからこそ……」
「それでも、これで水早君はのびのび動けるようになったし、勝負はわからなくなったね」
まだユーちゃんはクリーチャーの数で無理やり押し通せそうな感じはあるけど、それでも、二体のロックをかけるクリーチャーを倒せたのは大きい。
「うむむ、まずいです、まずいですよ、ピンチですよ……あ、《アナリス》を召喚。破壊して、ドローです」
実際にユーちゃんも、苦しそうにしている。まさかたった1ターンで《キング・アルカディアス》と《クイーン・アルカディアス》、どちらも倒されるとは思ってなかったみたい。
「……とりあえず、出しときましょう。《サイゾウミスト》を召喚 。山札をシャッフルして、シールドを追加。Endeです」
「さて、散々引っ掻き回されたけど、なんとか立て直せたな。次はボクが封殺する番だ」
霜ちゃんのターン。
霜ちゃんはそう宣言すると、カードを引く。
「《サイクリカ》を召喚、墓地の《シャイニー・ホール》を唱えて《アブソリュートキュア》をタップし、《チャクラ》をバトルゾーンへ。《オーパーツ》で《アブソリュートキュア》を攻撃する時、革命チェンジ! 《ミラダンテⅩⅡ》!」
「あうぅ、出ちゃいました……」
「ファイナル革命でコスト7以下のクリーチャーの召喚を封じる。さらに手札から《シャイニー・ホール》だ。《サイゾウミスト》をタップして、《勝利のプリンプリン》を出す。《プリンプリン》の能力で《アルカクラウン》を拘束し、《アブソリュートキュア》とバトル」
「こっちの負けです……」
「次に《カーネル》で《サイゾウミスト》を攻撃する時、《オーパーツ》に革命チェンジ! 二枚ドロー」
「うぅ、《サイゾウミスト》と手札一枚を山札に戻します……」
「ならターンエンドだ。だいぶ場が綺麗になったね」
ターン9
ユー(ユー)
場:《アルカクラウン》《ジョニーウォーカー》
盾:8
マナ:10
手札:2
墓地:1
山札:17
SAW(霜)
場:《ドラヴィタ》《チャクラ》《プリンプリン》《ミラダンテⅩⅡ》《オーパーツ》《サイクリカ》
盾:1
マナ:10
手札:7
墓地:10
山札:9
革命チェンジで、どんどん自分に有利な状況へと場を引き寄せていく霜ちゃん。ユーちゃんの場には、《プリンプリン》に拘束されて動けない《アルカクラウン》と、《ジョニーウォーカー》だけ。そして《ミラダンテⅩⅡ》のファイナル革命で、召喚に制限がかかっている。
対する霜ちゃんはどんどんクリーチャーを並べて、クリーチャーはたくさん。ユーちゃんのシールドもかなり多いけど、それを全部割り切れるだけのクリーチャーは揃ってる。
正に形勢逆転だ。ユーちゃんのロックを崩した上に、すぐにここまで持ち直すなんて、すごいや、霜ちゃん。
「ユーちゃんのターン……《サイゾウミスト》の能力でシールドをひとつマナに置いて……うぅ、なんにも出せないです……Endeです……」
結局、ユーちゃんは《ミラダンテⅩⅡ》の効果が響いて、文字通りなにもできなかった。
「だいぶ長引いてしまったし、そろそろ決めに行くよ。マナチャージ。4マナで《チキチキ・JET・サーキット》を再び展開!」
場も、手札も、マナも潤沢な霜ちゃんは、一度は消えてしまったD2フィールドを展開し直す。
これで次に出て来るクリーチャーはスピードアタッカーになるから、さらに後が続けば、ちょっとやそっとのS・トリガーじゃ止められないような布陣を作れる。
そんなわたしの考えた通り、霜ちゃんは続け様にクリーチャーを繰り出す。
「7マナで《サイクリカ》を召喚! 墓地の《シャイニー・ホール》を唱えて《ジョニーウォーカー》をタップ、《アクア・アタック<
これでさらにWブレイカーが二体増えた。
シールドを全部割ってとどめを刺すだけなら、数は十分だけど、問題はS・トリガーだ。
それについては、霜ちゃんも考えているようだけど、
「盾は七枚か……トリガーが懸念材料だけど、フルクリーチャー気味の構築で、高コストへの除去札は《デッドブラッキオ》くらいだろうし、そのまま攻めるか。《ドラヴィタ》で《ジョニーウォーカー》を殴り倒して……《ミラダンテⅩⅡ》で攻撃! 革命チェンジ! 《オーパーツ》!」
霜ちゃんは臆さず攻撃する。S・トリガーで逆転されることはないだろうと判断したんだろうね。
「《オーパーツ》の能力だ。ボクは二枚ドロー。そして君は」
「手札二枚を、山札の下に置きます……」
「じゃあ、Wブレイクだ! 変なトリガーを踏まないでくれよ……!」
祈るように二枚のシールドをブレイクする霜ちゃん。
対して、ユーちゃんは……?
「……なにも、ないです……」
「よし、それじゃあ二体目の《オーパーツ》で攻撃する時にも、革命チェンジだ! 《ミラダンテⅩⅡ》!」
何度も繰り返し現れる《ミラダンテⅩⅡ》。その能力が、また発動する。
「ファイナル革命発動! コスト7以下のクリーチャーの召喚を封じるよ。さらに手札から《族長の無双弓》を唱えて、《アルカクラウン》もマナに送ってしまおうか」
S・トリガーによる逆転の芽を摘み、場にいるクリーチャーも排除する。
そしてその直後、シールドを突き破るクリーチャーの攻撃。
「Tブレイクだ!」
「……! 出ました、S・トリガーです!」
「っ、ここでか。でも、召喚は封じてるし、呪文のトリガーじゃ《炎乱と水幻の裁》か《獅子王の遺跡》程度……この場をひっくり返すようなものは――」
と、言いかけたところで。
ユーちゃんはしたり顔で、そのカードを見せつける。
「S・トリガー――《蒼龍の大地》です!」
それは、霜ちゃんの予想を覆す、赤と緑で彩られた呪文。
霜ちゃんの表情が、一瞬で吃驚に変わる。
「なにっ!? 《蒼龍の大地》だって!?」
「ユーちゃんのマナゾーンにあるカードの枚数より小さいコストのクリーチャーを、マナから出します。ユーちゃんのマナは11マナなので、それよりコストの小さいクリーチャー――《アルカクラウン》を出します!」
「しまった、トリガーはクリーチャーばかりだと思っていたが、《蒼龍の大地》があったのか……!」
失念していた、と零す霜ちゃん。
《アルカクラウン》が出たってことは、またクリーチャーが最大で五体出て来る。運次第だけど、出て来るクリーチャーによっては、霜ちゃんの攻撃を食い止められるかもしれない。
「えっと、先に《蒼龍の大地》の効果ですね。自然のクリーチャーが出たので《アルカクラウン》と、前のターンに出た《スペルサイクリカ》をバトルさせます!」
「《サイクリカ》は墓地に行く代わりに山札の下へ行くよ」
「次に《アルカクラウン》の能力発動です! 山札を五枚、見ますね!」
山札の上から五枚をめくるユーちゃん。
S・トリガーこそ出たけど、まだ霜ちゃんの攻撃を防ぎ切るには足りていない。
だから、すべてはここでめくれるカード次第。ユーちゃんが耐えられるかどうかは、運次第なんだ。
なんだけど、
「光は《サイゾウミスト》、水は《プロメテウス》、火は《ジャック・アルカディアス》、自然は《アナリス》……この四体を出します!」
ものの見事に、必要なカードを引き当てたっぽい。
「《サイゾウミスト》で山札をシャッフル、シールドを追加です。《プロメテウス》は2マナ追加、マナのカードを手札に戻します。《ジャック・アルカディアス》で《チキチキ・JET・サーキット》を破壊して、《アナリス》は破壊しません!」
「このターンに出た《サイクリカ》と《BAGOOON・パンツァー》が止まったか。これ以上攻めても、とどめまでは届かないな……ターンエンド」
ユーちゃんのシールドが三枚に増えて、D2フィールドがなくなったからスピードアタッカーも消えてしまい、残った攻撃できるクリーチャーは《ドラヴィタ》と《プリンプリン》だけ。
倒しきれないと判断した霜ちゃんは、それ以上の追撃はせずにターンを終えた。
ターン10
ユー(ユー)
場:《アルカクラウン》《サイゾウミスト》《プロメテウス》《ジャック・アルカディアス》《アナリス》
盾:3
マナ:12
手札:6
墓地:0
山札:14
SAW(霜)
場:《ドラヴィタ》《チャクラ》《プリンプリン》《BAGOOON・パンツァー》《ミラダンテⅩⅡ》《オーパーツ》《サイクリカ》
盾:1
マナ:11
手札:8
墓地:9
山札:7
(展開されちゃったけど、《族長の無双弓》の保険がある。ボクのクリーチャーはすべてブロッカーだから、現状、ユーの攻撃は届かない。それに召喚制限もかけたから、このターンのかなり守りは固い。簡単には突破されないはず。もし突破できるとするなら……)
「9マナタップです!」
「あぁ……やっぱりか」
どこか諦めがついていたかのような、霜ちゃんの言葉。
そしてその諦念の示すように、ユーちゃんも幾度となく現れた切り札を呼び出す。
「《天罪堕将 アルカクラウン》を召喚! 能力発動です!」
またしても、山札をめくる。
そしてめくられた五枚は、
「光は《キング・アルカディアス》、水は《アナリス》、闇は《クイーン・アルカディアス》、火は《ジョニーウォーカー》、自然は《アブソリュートキュア》! 五体出します!」
「……流石にもう無理だ。詰んだな」
ここまでで最高の五枚だった。
ロックが強い《キング・アルカディアス》と《クイーン・アルカディアス》、さらには《アブソリュートキュア》でシールドも増やせる。攻撃可能なクリーチャーが一気に三体も増えて、守りも固められるし、トリガーもほとんど封じ込めた。
正に大逆転だ。
「《キング・アルカディアス》と《クイーン・アルカディアス》は、それぞれ《アナリス》と《ジョニーウォーカー》から進化です! 《アブソリュートキュア》はマナの《プロメテウス》《トリプルマウス》《ベガ》の三体を進化元にしてマナ進化GV! 《アブソリュートキュア》で攻撃! メテオバーンでシールドを三枚追加です! シールドブレイク!」
「トリガーあっても、これはもうどうしようもないよ……」
霜ちゃんのブロッカーは五体、ユーちゃんの攻撃できるクリーチャーは八体。
トリガーですべてのクリーチャーの攻撃を止めるとか、そういうのがないと、この猛攻は止められないし、止まらない。
そして最後の一撃が、放たれる。
「《アルカクラウン》で、ダイレクトアタックです!」
「……通す。ボクの負けだ」
ロックって、上手く切り返して崩せると物凄く爽快ですよね。勿論、そうそう上手くはいきませんが。
ちなみにユーちゃんのデッキは、《アブキュア》だけでなく、《ベガ》や《サイゾウミスト》のようなシールド追加カードでも、恋のデッキのような堅い守りを再現しています。
大したことはしていませんが、次回で大会編は最後です。まあ、最後くらいはそれなりのものを用意しているつもりなので、お楽しみに。
では、ご意見ご感想、誤字脱字の報告等々、なんでも遠慮なく送ってください。