デュエ魔法少女マジカル☆ベル   作:モノクロらいおん

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 今回、殿堂レギュレーションの関係で、謡のデッキをピクシブ版から変えています。時期的な関係でしかないので、別に変える必要がないと言えばないんですけど。
 あと、どうでもいいのですが、デッキは変えても対戦相手の動き、使用カードはまるで変わらなくて、変な感動を覚えています。ピクシブ版と比較してみると面白いかも。



28話「猫探しです」

 こんにちは……いや、おはようございます、伊勢小鈴です。

 今朝は珍しく、お姉ちゃんが一緒に登校しようって誘ってくれました。いつもは生徒会のお仕事とかで、わたしよりも先に家を出るんだけど、今日はそうではないようです。

 

「小鈴ー! 早く来ないと置いて行くわよ」

「ま、待ってー! 今いくー!」

 

 玄関の方から、お姉ちゃんの声。

 急いで制服を着て、鞄を持つ。えーっと、教科書と、ノートと、筆箱と、ハンカチと、テッシュと、お財布と、お昼のパンと、おやつのパンと、デザートのパンと、予備のパンと、デッキケースも持ったよね?

 よしっ。

 

「お待たせ、お姉ちゃん」

「それじゃあ行きましょうか。母さーん! 私たち、学校行ってくるわよ」

「行ってきます、お母さん」

「うーぃ……行ってらー……」

 

 リビングから気の抜けた――というより、生気の抜けた声が聞こえる。お母さん、また徹夜だったのかな……?

 まあ、いつものことだから、大丈夫だとは思うけど。でもちゃんと寝てほしいし、寝るなら自分の部屋のベッドでしっかり休んでほしい。

 そんなお母さんのことが心配になりつつも、お姉ちゃんと二人で通学路を歩く。

 

「お姉ちゃんと一緒に登校するなんて久しぶりだね。生徒会のお仕事はいいの?」

「まあ、たまにはね。ようやく、林間学校関係の雑務が終わったところだし、ちょっとした小休止よ」

「そっか」

「にしても大変だったわ。あの台風で色んなことが一気に狂ったんだもの」

「あ、あははは……そうだね」

 

 あの台風自体はクリーチャーが引き起こしたもので、別にわたしのせいとかではないけど、なんだかちょっといたたまれない。

 ……思えば、あの日も大きな転換点だったのかもしれない。

 代海ちゃんが嵐の中に飛び出して、【不思議の国の住人】という存在とその目的が判明して、帽子屋さんとチェシャ猫レディのお姉さんが戦って。

 そして、チェシャ猫レディという存在が消えて――謡さんと、スキンブルシャンクスくんだけが残った。

 知らないことを知った。わたしには見えていなかったことが、考えが及ばなかったことが、想像もできなかったことが、全部、明確に曝け出された。

 それがあの、嵐の日だった。

 帽子屋さんたちや、代海ちゃん。彼らのことを否定することは、やっぱりできない。

 種の存続とか繁栄とか、そんなことを言われても、わたしにはピンとこないけど、仲間と手を取り合って、生きたいと、生きようとすることを否定することなんてできない。

 それはわたしたちと、人間と、同じだから。

 生物として、あたりまえのこと、だから。

 

(……そういえば、スキンブルくんは、どうして帽子屋さんたちから離れたんだろう)

 

 なにか彼の目的があるみたいだけど、詳しくは知らない。謡さんは、女の子に恋としたとかなんとか、冗談とも本気ともつかないことを言っていたけれど。

 

「小鈴? どうしたの、いきなり黙り込んで」

「あ、いや。なんでもないよ。それより、お仕事が終わったんだよね。お疲れさま、お姉ちゃん」

「ありがと。ま、これは私一人の頑張りじゃないけど。生徒会の皆には感謝しないとね」

「お休みは、そのご褒美みたいなもの?」

「褒美ってほどじゃないわよ、働きには相応の休息が必要ってだけ。それと」

「それと?」

「謡の奴にも言われたけど、ずっと仕事をぎゅうぎゅうに押し込んでじゃ士気も下がるってもの。分かっていたつもりではあったけど、指摘されてハッとさせられたわ。だから改めてスケジュールとかも見直しとかも兼ねた休憩よ」

「謡さんが?」

「えぇそうよ。あの子も、基本的には真面目だし、たまに凄いいいことを言うのよね。サボり癖が抜けないのが玉に瑕だけど」

 

 お姉ちゃんがどれくらい忙しいかは、なんとなくわかる。家ではあまりそういう素振りを見せないけど、帰りが遅かったり、部屋にこもってたりする時がままあるから、そういう時は特にお姉ちゃんの多忙さを感じる。

 謡さんは、いつでも関係なくわたしたちのところに遊びに来るけど……そっか、ずっとサボってたんだ……そのたびにお姉ちゃんがやってきて連れ戻したりしてるけど。

 

「ま、あいつがサボってるのは、自分で適度にガス抜きしてるつもりなのかもね。サボりを認めるわけじゃないけど、私もちょっと反省。引き継ぎもあるし、引退がてらスケジュールだけじゃなくて、今の生徒会の体制全体を見直そうと思ってるわ」

「そういえば、次の会長さんって誰になるの?」

「例年通りなら、晩秋頃から冬にかけて選挙があるはずだけど……今年は読めないわねぇ。なんか色々変則的だし」

「二年生の女の人が候補って、どこかで聞いた気がするけど」

「……あぁ、学援部の奴ね。ないでしょ」

「そうなの?」

「驚くほど堅物だし、お互いの因縁考えるとあり得ないと思うわ。そう考えてる人も少なからずいるし、そこで票が完全に割れるから、多くの得票は見込めない……それ以前に、立候補するかすら怪しいわ」

 

 そういえば、生徒会と学援部には確執がある、みたいなことを、謡さんが言ってたっけ。

 わたしも学援部の人――っていうか、恋ちゃんや先輩にはお世話になってるし、気になるけど、ちょっと聞きづらかった。

 だって、お姉ちゃん……学援部の人の話になった途端、ちょっと怖くなったから。

 厳しい時は厳しいお姉ちゃんだけど、今のお姉ちゃんは、厳しいと言うより、険しい。目つきが鋭くて、不機嫌そうに口を曲げている。

 そんなお姉ちゃんは、わたしの知ってるお姉ちゃんとは違っていて。

 ちょっと、見ていられなかった。

 お姉ちゃんから視線を外した時、ふと、視界になにかが入ってくる。

 

「? あれ、なんだろ……?」

 

 灰色のアスファルトの上に、なにか別の色が混じっている。

 赤い、なにか。ここからだと、ちょっと遠くてよく見えないけど。

 目を凝らして、もっとちゃんとよく見ようとすると――

 

「っ! 小鈴、こっち!」

「わっ! な、なに? お姉ちゃんっ?」

 

 腕を引っ張られた。

 お姉ちゃんはわたしを抱きすくめるように受け止める。

 

「あれ、たぶん猫よ」

「猫? でも、赤かったよ……あ」

 

 ……そっか。

 そういう、ことか。

 

「車……とかかしらね。気の毒だけど、よくあることよ」

「……そうだね」

「まったく、妹と久々の一緒に朝だっていうのに、気分悪いわね。あんまり見ないようにして、早く行きましょう」

「……うん」

 

 久しぶりにお姉ちゃんと一緒に登校する朝。

 その朝は――とても、後味の悪いものでした。

 

 

 

                     ☆ ☆ ☆

 

 

 

 朝からちょっと嫌なものを見てしまい、へこんだ気分で登校して、校門前。

 そこで、か細い、けれどやたらハッキリと聞こえる、聞き慣れた声がする。

 

「……こすず」

「あ、恋ちゃん。おはよう」

 

 恋ちゃんだ。今日はちょっと早いね。

 あれ? でも、登校時間に恋ちゃんがいるってことは……

 恋ちゃんの隣を見遣る。するとそこには――

 

「せ、せせせせせ!? 先輩!?」

「あ……お、おはよう、伊勢さん」

 

 ――剣埼先輩が、いた。

 

「……剣埼一騎」

「い……伊勢、さん……」

 

 わたしの隣で、お姉ちゃんの眼が、今まで見たことがないほどに、鋭く、険しく、そして怖いものに、変貌していた。

 刃物のように、今にも先輩の喉を引き裂いてしまいそうなほどの敵意を込めて。

 先輩を、睨んでいた。

 

「え、えっと……?」

「なに小鈴。あんた、こいつと知り合いだったの?」

「え? あ、うん、まあ……その、い、色々と……ひゃぅ……」

「あんた。私の妹になにかしたの?」

「な、なにもしてないよ。俺は、なにも……」

「俺は? 間接的になにかしたってこと?」

「そうじゃなくって……いや、そうなのか……? “アレ”は俺にもなにがなんだか」

 

 覚えている。思い出してしまう。先日の、あの時のことを。

 三月ウサギさんの“狂気”に当てられて取ってしまった、わたしの強行。

 先輩に、してしまった、言ってしまった、あの日のことを。

 

「あわわわわわわわわわ……っ!?」

「こすず……パニック……」

「あんた本当になにしたの? うちの妹に手ぇ出したら、どうなるかわかってんでしょうね?」

「なにもしないってば! 伊勢さん……いや、生徒会長の思ってるようなことは、普通はないから」

「普通は? なにその濁した言い方。特殊ケースなら手ぇ出すっていうの?」

「そうじゃなくて……」

「大体、あんたなにか隠してない? さっきからハッキリしない物言いだし、私に知られてまずいことでもあるの?」

「いや、それは……」

 

 先輩に詰め寄るお姉ちゃん。

 わたしはもう、あの日の出来事が頭の中でぐるぐる駆け巡って、恥ずかしくって、悔やんで、どうしていいかわからなくて、お姉ちゃんの態度に戸惑う暇もなかった。

 

「……恋。先に行ってて」

「ん……りょ……こすず……いこう」

「え? う、うん……」

 

 今度は、恋ちゃんに腕を引かれる。

 

「ご、ごめんお姉ちゃん。わたし、先行くね」

「わかった。私も、こいつにちょっと用があるから」

 

 お姉ちゃんは先輩に詰め寄ったまま、先輩は困り顔のまま。

 わたしと恋ちゃんは、その場を後にした。

 ……それにしても。

 

 

 

(あんなイライラしたお姉ちゃん、初めて見たかも――)

 

 

 

                     ☆ ☆ ☆

 

 

 

「待て。その足を止めよ、三月ウサギ」

「? あら、公爵夫人様。僕を呼び止めるだなんて、珍しいこともあるのね?」

「貴様に問いたい事柄がある」

「夫人様が僕に? なにかしら?」

「先日、貴様は『代用ウミガメ』らの在籍する学舎をを訪問したと聞き及んだが、真か?」

「がくしゃ……? 学校とかいうつまらない場所のことかしら? えぇ、確かに行ったわ。本当、つまらないところだったけど」

「然らば、助言を求む。彼の地に赴くのはこれが初事である故な。万全を期して臨み、最大の結果を獲得する所存である」

「夫人様らしい、意識高いお言葉でいらっしゃるわね」

「最高効率、最大収益を求め邁進するのは至極当然であろう。でなくとも、儂はこれでも多忙な身だ。自然と無駄は嫌悪の対象になり得る。三月ウサギ。貴様の自分本位な志は認めるところだが、少々下手を打ちすぎではないか?」

「ご高説は結構よ。で、なんだっけ? アドバイス? 別にそんなものはないけど……あぁ、でもそうね。格好には気を付けた方がいいかも」

「格好、とな。貴様、儂の容貌に意見するとな?」

「違うわよ。まさか、かの公爵夫人様の見てくれにケチつけるわけないじゃない。あなたは逆相によって、誰よりも美しいことを定められているのだから。僕が言っているのは、ドレスコードよ」

「服装規定か。理解した。して、どのような服飾品で着飾ればいい?」

「制服っていう、窮屈な服があるのよ。それを着ないといけないとかなんとか」

「承知した。助言、感謝する」

「それで? 公爵夫人様は一体、何の用があってあんなつまらないところに行くのかしら? あなた、前に出るようなタイプじゃなかったんじゃないの?」

「難解なことはない。目的に対する手段は適当でなければならん。帽子屋でもあるまい、目的を遂行するための手段が頓珍漢では、成るものは成らず、為すものも為せん。愉快ではあるがな」

「つまり? なにが言いたいの? 夫人様の言ってることは、難しくてよくわからないわ」

「儂は当然の道理を、当然の理屈を、現実のあるがままを説いているに過ぎんよ。即ち、儂とていつまでも座していられまいと。我が願望を叶えたくば、腰を上げる他あるまいと判断したまで」

「願望? あなたに望みなんてあったの?」

「当然だ。漠然としていようと、曖昧模糊であろうと、あの狂気の帽子屋に従属しているのだ。相応の願望を抱かねば釣り合わん。あるいはそれは、欲求と呼称されるべきなのやもしれんがな」

「ふぅーん。で? 公爵夫人様は、なにをしに学校に向かわれるのかしら?」

「猫探しだ」

「は?」

「猫探しだ。二度も言わせるな」

「ネコ? ネコって言ったかしら、今。それって……」

「あぁ。我が愚猫だ」

 

 

 

「我が下から去った笑い猫――『チェシャ猫』を回収する」

 

 

 

                     ☆ ☆ ☆

 

 

 

「どっせーい! みんなー! 元気かなー!」

「あ、謡さん……こんにちは」

 

 放課後。

 ホームルームも終わって、帰り支度をしていると、威勢の良い声が教室に飛び込んでくる。

 長良川謡さん。二年生。わたしたちよりも、一つ上の先輩。お姉ちゃんと同じ生徒会の人。

 そして、わたしが色々なことでお世話になった人……かな?

 上級生が来たからか、クラスメイトのみんなはちょっと驚いているようだった。

 そしてわたしたちはというと、その反応は様々。

 ユーちゃんは嬉しそうに笑ってるし、恋ちゃんは無関心そうにいつも通りだし、霜ちゃんはちょっと呆れてるし。

 そして、みのりちゃんは、

 

「うわ、またも来たし。せんぱーい。今日もサボリですかぁ?」

 

 露骨に嫌そうな顔をしていた。そんなに謡さんのこと嫌いなのかな……?

 けれど謡さんはそんなみのりちゃんの対応にも、笑顔で返す。

 

「イエス! ……と、言いたいところだけど、残念ながら今日は違うよん」

「言いたい? 別にそれは残念ではないのでは?」

「サボりに……楽しみを、みいだしてる……愉快犯……」

「そんな言い方やめてよー。今日は普通にお休みをもらったから、先輩としてみんなと遊ぼうかなって」

「自分が遊びたいだけじゃ……」

「そうとも言う」

「なら最初からそう言えばいいのに。相変わらず面倒くさい先輩だ」

「でもユーちゃん、謡さんと遊ぶの楽しみです!」

 

 夏休みが明けてから、先輩は時々、わたしたちの教室にやって来る。その理由のほとんどは、生徒会のお仕事をサボるためだったけど、今日は違うみたい。

 純粋に、謡さんが遊びに誘ってくれている。

 これはこれで、ちょっと珍しいかもしれない。

 

「そんなわけだから、皆でカドショでも行こうよ。先輩らしく1パックくらいおごったげるからさ」

「ごちになりまーす!」

「手のひら返し早いな実子! というか、それは女子中学生としてどうなんだ? スイーツとまでは言わないが、せめて飲み物くらいにしておくべきではないのか?」

「パック、だと……あたり、はずれ、で……戦争……」

「そういう意味で言ったんじゃない」

 

 ……まあでも、やっぱりいつもの謡さんだったよ。

 今日もいつものようにみんなでカードショップ(ワンダーランド)に行くつもりだったし、それに謡さんが加わったというだけ。

 ほんの少しの変化。だけど、その変化もまた、いいよね。

 

「……あれ?」

 

 ふと、教室の扉の方に目を向けると、そこにはひょっこりと頭を出して、教室の中を覗き込む影。

 殻にこもって、縮こまるように首だけ出しているその姿は、カメのよう。

 そしてその子は、とても見覚えのある子で……というか。

 

「代海ちゃん?」

 

 先日の傷はまだ治ってなくて、ガーゼや包帯を巻いたままの顔で、こちらを覗いている。

 隠れているつもりなのかどうかわからないけど、ばればれだよ……?

 

「そんなところでなにしてるの?」

「い、いえ、そ、その……お、お邪魔じゃ、な、ないかなって……」

「そんなこと、ない……しろみも、くれば、いい……」

「じゃ、じゃあ……お、お邪魔、します……」

 

 よそのクラスに入るのに気が引けるのはわかるけど、そんなに畏まらなくてもいいのに。もうクラスのみんなは、そそくさと逃げるように教室から出て行っちゃったし。

 

(今日は、たくさん人がいるなぁ)

 

 思えば、入学する前は一人だった。

 入学してからは、みのりちゃんと二人だった。

 みんなと友達になって、五人になった。

 今は、謡さんに、代海ちゃんもいる。

 “わたし”は、“みんな”になって。

 “みんな”の輪は、どんどん大きくなっている。

 なんだろう。その感覚が、すごく、楽しいし、嬉しい。

 

「おや?」

 

 けれど本日の来訪者は、この二人だけじゃなかった。

 さらにもう一人――いいや、もう“一匹”いた。

 

「やぁ、スキンブル。君、今日は学校まで来たんだね」

 

 窓枠から、スッと入り込んでくる、一匹の子猫。

 黒い毛並が照らされて、首にはわたしと同じ鈴。

 一見すると普通の子猫。けれどその実態は、猫でも人でもないもの。

 スキンブルシャンクス。謡さんの飼い猫だけど、それでいて『チェシャ猫』という名前も持つ存在。

 代海ちゃんと同じ【不思議の国の住人】。

 ただ彼女とも違うのは、帽子屋さんたちに与していなくて、謡さんと一緒にいるってところだけど、そのあたり、わたしも詳しくは知らないんだよね。

 わたしを守ろうとしてくれてたみたいだし、悪い子ではないけどね。

 

「あの、流石に教室に動物を連れ込むのは……」

「まーまー、堅いことは言いっこなしだよ。ほーらスキンブル、おいでー」

 

 謡さんが両手を広げて、スキンブルくんを誘う。

 スキンブルくんは、後ろ足で地面を蹴って、跳躍。胸の中にぽすんと収まった。

 

「わっ」

 

 ――わたしの、だけど。

 いきなり飛び掛かられてビックリした……なんとか抱きとめられてよかったよ。

 けれど隣で、謡さんがムスッと唇を尖らせている。

 

「……飼い主を差し置いて別の女の子に抱きつくとか。なんなの、君」

「嫌われてますねぇ、センパイ?」

「ムカつくなぁ」

「それは実子がですか? それともあの猫が?」

「どっちかっていうと後者」

「実子。君、実は先輩に相手されてないんじゃないか?」

「……むぅ」

 

 みのりちゃんが、苦虫を噛み潰したような、それでいてどこか悔しそうで、納得いかないと言わんばかりの、すごい絶妙で、なんとも言えない顔をしてる……こんな変な顔のみのりちゃんは初めて見たよ。

 

「ちゃ、ちゃんとお会いするのは、は、初めて、でしょうか……チェシャ猫さん……い、いえ、スキンブルさん、でしたっけ……? は、初めまして……」

 

 代海ちゃんが、スキンブルくんを覗き込む。スキンブルくんも、にゃぉんと、猫らしく鳴いて応答する。

 あんまり気にしてなかったけど、代海ちゃんとスキンブルくんは“同族”なんだよね。

 だからこの二人が共にあるのは自然なことのはずなのに、この光景はとても新鮮だ。

 

「シロちゃんは、スキンブルのこと知らなかったの?」

「し、シロちゃんって、アタシのこと、でしょうか……? えと、チェシャ猫さんの存在だけは、は、話には、ちょっとだけ聞いてました……ただ、詳しくは……」

「君らって本当によくわかんないね。この前の三月ウサギとかいう奴もそうだったけど、一枚岩じゃないというか。情報統制とかどうなってるの?」

「そ、それは、帽子屋さんがトップなので……そ、それに、公爵夫人様の事情は、ひ、秘匿事項っていうか、あんまり、教えてくれなかったので……」

「公爵夫人様?」

「チェシャ猫さんの、飼い主さん、です……あ、い、いえ。元、飼い主さん、でした……」

 

 そういえば林間学校でのあの時、帽子屋さんもそんなことを言っていたような……

 飼い主。わたしたちが使うその言葉と、彼らが使うその言葉が同義なのかわからない。それが、どんな意味になるのかも。

 抱きかかえたスキンブルくんに目を落とす。

 こうして見て、触れていると、スキンブルくんは普通の子猫にしか見えない。毛並の綺麗さも、あたたかさも、柔らかさも。

 

「小鈴さん! ユーちゃんも、スキンブルさんをだっこしたいです!」

「ちょ、ちょっと待ってね、ユーちゃん。なんか、あんまり離れてくれない……」

 

 今日は、いつもよりも騒がしくて、喧しくて、姦しくて、そして、賑やかだ。

 でも、たくさんある変化は、そのすべてが楽しいものとは限らない。

 また新しい変化が訪れる。けれども、それは望まざるもの。

 わたしたちの和を脅かす、災厄だ。

 

 

 

「騒々しいものだな。笑い猫の笑みは、もっと卑しいものではなかったか」

 

 

 

                     ☆ ☆ ☆

 

 

 

「姿は見えず、どこにもおらず、されども笑う顔はそこにある。笑い無き猫ならず、猫無き笑い。それは嘲笑であり、歓楽なれども、歓喜に非ず。なんとも、奇々怪々なことよな」

 

 詠うような語り口で、その人は当然のように、自然な足取りで教室へと入ってくる。

 その姿に、わたしたちは思わず、目を奪われてしまった。

 

(わ、すっごい美人さん……!)

 

 まずまっさきにわたしが思ったのは、それだった。

 ハリのある艶やかな肌。スッと通った鼻筋。パッチリした二重瞼。クールな切れ目。

 背も高くて、カッコよくて、目が覚めるような美人さんだ。

 ……なんだけど、なぜか烏ヶ森の制服を着ているのが、とてもシュールだった。しかも、すごくピチピチな。お陰で身体のラインがすごくハッキリ出てしまってて、なんだか見てるこっちが恥ずかしい……

 なんだか妙に見覚えがある光景だけど、このクールビューティーなお姉さんは、一体何者……?

 

「貴様が女好きである事実は既知だが、よもや年端もいかぬ小娘に囲まれて浮かれているとは思わなんだ。貴様の主人では不満か? あるいは、貴様の愛好は童女にのみ向けられるのか?」

「……いや……誰……?」

「無粋な小娘だ。しかし旧知との感動の再会でも、切なる願いの果ての到達でも、ましてや望んだ栄光を掴んだわけでもあるまい。浮かれていたのは、儂かもしれんな。では手早く、目的遂行に励むとしよう」

 

 高いところから見下ろされるかのような物言い。どこか傲慢で、驕り高ぶったような傲岸不遜な態度。

 どこか高貴さというか、煌びやかさを感じる振る舞いだけど、その実、とても高圧的だ。

 それでも、とても礼儀正しく思えるような所作で一礼して、美人さんは名乗りを上げる。

 

「儂は『公爵夫人』と呼ばれる者。【不思議の国の住人】の支配階級だ」

 

 公爵、夫人……?

 つい最近、聞いたことがあるような――どころではない。

 ついさっき、代海ちゃんが口にしたばかりだ。

 

「『公爵夫人』って……スキンブルの……」

「そうだ。貴様が手懐けた愚かな笑い猫。『チェシャ猫』の主である」

 

 スキンブルくんの、本来の主人……

 あまりに、唐突だった。

 突然だけれど、これはいつか訪れる時だったのだろう。

 いずれ木たるべき時。それが今だったというだけの話……なのかもしれない。

 でも問題は、その時がいつ来るのかということじゃない。

 なぜ、どうして、この人が今この時に来たのかということだ。

 

「……ねぇ。支配階級ってなに? そんな貴族じみた位置づけがあるのか?」

「え、えぇっと……帽子屋さん、みたいで、同じくらい、凄くて……【不思議の国の住人】を、まとめる人たちっていうか……いないと困る人っていうか……あ、アタシたちが、徒党を組むために、集団であるために、頑張ってくれてる人たち、です……」

「要は幹部的なものか」

「あまりに稚拙だな、代用ウミガメ。しかし、我々の内部事情を詳らかに述べる行いが既に愚行。両者を鑑みれば、貴様の拙い説明による背信行為は、ひとまず保留となろう」

 

 ……?

 な、なにを言ってるの、この人……?

 難しいことを言ってる、というよりも、表現が持って回りすぎていて、一回聞いただけじゃなにを言っているのかよくわからなかった。

 当の代海ちゃんも、首を傾げて戸惑ってるし……

 

「たぶん、代海が言葉足らずながらも奴らについて口を滑らせて、それを諌めているんだと思う」

「あぅ……ご、ごめんなさい……」

「愚かな餓鬼共と思っていたが、多少は聡明な者も存在していたか。もっとも、此度の儂は下等な餓鬼に構う(いとま)はないが」

 

 美人さんは、視線をわたしの方へ。いや、違う。

 わたしの手元――スキンブルくんへと、向ける。

 

「儂が求めるは、そこなる黒猫故な」

「……元ご主人様が、今更なんの用なのさ」

「それは借問か? 予期できる問掛は非合理かつ無意味だが、それでもなお、貴様は問うのか?」

「………」

「黙するか。なんと愚かであろうか。愚者に手向ける言葉は生憎と持ち合わせていないが……良かろう。我ながら遺憾であり、癪に障る言だが、狂言に乗ってのたまうとしよう」

 

 大仰に、そして高慢に。

 威風堂々とした佇まいで、宣言する。

 わたしが抱いた謎。

 この人が、今になってわたしたちの前に現れた理由を。

 

 

 

「我が愚かな飼猫――『チェシャ猫』の返還を求め馳せ参じた」

 

 

 

 一同に口を噤み、静寂が訪れる。けれどそれは、理解できないからじゃない。

 むしろ、誰もがそれを考えていたと思う。だからこそ、今ここで、遂に現れたいつかの可能性に、押し黙ってしまった。

 最初にその静寂を破ったのは、謡さんだ。

 

「……なにそれ? スキンブルを返せってこと?」

「そもそれは儂のものだ。道理には敵っていよう」

「捨て猫を拾ったんだ。今はうちの猫だよ」

「儂は己がものを捨てた覚えなどないがな」

 

 美人さんの高圧的な眼差し、威圧的な言葉が突き刺さるけど、謡さんは負けじとキッと睨み返す。

 ……いつかは、来るだろうと思っていた。わたしたちも、謡さん自身も。

 けれど、今わたしが胸に抱いているスキンブルくんは、どう思っているんだろう。

 

「スキンブルは、自分の意志で今ここにいるんだよ。それを踏みにじるっていうの?」

「飼猫の脱走など、茶飯事だ。今回は度が過ぎた、長期にわたり居着いたというだけのこと。煩雑だが、己が責務は自ら果たす。飼猫の不始末は自分でつけるさ」

「なんであなたが、あなたのことのようにスキンブルを語るかな。スキンブルの意志はどうなのさ」

「無知な小娘がよく咆える。問い掛けは賢者の証でも、それを意味なく繰り返すのは装置と相違ない。寛大にも貴様の愚問に応じるならば、これは己が意志、儂の意志だ。そこに他者の思惑が付け入る余地は与えん」

「……つまり、スキンブルのことはどうでもいいってことだね」

 

 二人の剣呑な言葉の応酬は、平行線だった。

 スキンブルくんを渡せと要求する美人さんに、それを躱すように問いただす謡さん。

 相容れないし、交わらない。

 わたしたちも二人の険悪さに、割り込む余裕はなかった。

 

「強引な……帽子屋さんもしつこかったけど、あなたも同じだね」

「あやつと儂を同列に語るとは、失笑を禁じ得んぞ。あのイカレ帽子屋は称えられるだけの結果があるが、あまりに道楽と狂気に過ぎる。珍奇な輩だ」

「その珍奇な輩は、最後にはすっぱり諦めてくれたんだけどね。今までなにも仕掛けて来なかったのに、なんで今になって、そんなスキンブルに執着するのかな?」

「答える義理はない。餓鬼との口論もそろそろ飽きたぞ。苦難の先送りは冗漫でしかなく、怠惰の証左だ。問答など無意味。貴様の選択肢は、肯定か、否定か、二者択一だ。しかして覚悟せよ。その選択の結果はすべて、己に還るぞ」

 

 刺し貫くような言葉を躱す謡さんだったけど、遂に、避けきれなくなった。

 イエスか、ノーか。単純で、だからこそ避けられない選択を突きつけられる。

 

「……私が首を横に振れば、力ずくで奪い取る、って言いたいの?」

「いまだ無知を気取るか小娘。その問いに意味はあるのか? 貴様はそれほども分からぬ愚者か? 選択せぬ選択は存在しない。逃避は不可能。さらには、斯様な咆哮を上げ、牙を剥き、それでいて闘争心を、己が刃を収めるとのたまうか?」

 

 美人さんは、怯まないし、臆さない。物怖じもしないし、常に毅然と、悠然と、威風堂々としている。

 前へ前へと進み、前を向き続け、言葉で持って謡さんを追いつめていく。

 

「…………」

 

 押し黙る謡さん。

 謡さんが、ひたすら美人さんの要求を、受けるでも、撥ね退けるでもなく、躱そうとしている理由は、よくわかる。

 スキンブルくんを渡したくないのは、当然。けれどそれを拒絶すれば、あの美人さんはきっと、牙を剥く。武器を取る。

 代海ちゃんは美人さんのことを、帽子屋さんと同格だと言った。

 そして帽子屋さんは、謡さんとスキンブルくんが分たれた――チェシャ猫レディが消失した、最大の原因。

 最大で最高の自分を打ち破った相手と、同格の相手。

 そんな人を相手にするのに、気圧されてしまっているんだ。

 だから、逃げ道を探っている。要求を飲まず、けれども衝突せず、逃げ延びる道を。

 傍から見ても、謡さんが戦わないことに必死な様子は窺い知れたし。

 美人さんが、その逃げ道を断とうとしていることも、わかった。

 

「……労なく果報を得られるのならば、それに越したことはないと安易に思考していたが、儂も愚かであったな。愚鈍な餓鬼に弁舌を弄するだけ無駄というもの。ならば腕をもぎ、脚を折り、胴に穴を空け、脳天を散らしてでも奪還する他あるまいて」

 

 美人さんの目つきが、変わった。

 高圧的なのも、威圧的なのも変わらないけど、見下すような態度は、蹴落とす空気に変わる。

 それが意味するものは――

 

「やるしか、ないのか……!」

 

 ――彼女の手に、握られていた。

 カードの束、デッキ。

 やっぱり、こうなってしまう。

 思い描いていたビジョンは、そのまま、現実に表れてしまう。

 

「戦だ、餓鬼。貴様が駄々をこねるならばそれも良し。骸と成り果てた後も泣き喚くがいいさ」

 

 現実を歪ませるように、空気も歪む。

 誰も望まない戦場が、ここに広がっていく――

 

 

 

                     ☆ ☆ ☆

 

 

 

 謡さんと、美人さんのデュエマが始まった。

 お互い、超次元ゾーンにカードは見えない。

 けれど相手の場には、六枚の封印を付けた《禁断》が鎮座している。

 あの人、見るからにただ者じゃない雰囲気があるけど……謡さん、大丈夫かな……

 

「私のターン! 1マナで《ジョジョジョ・ジョーカーズ》! 四枚見て、《ヤッタレマン》を手札に加えるよ! ターンエンド!」

「儂のターン。《レッドゾーンX》をマナチャージ。ターンエンドだ」

 

 

 

ターン1

 

場:なし

盾:5

マナ:1

手札:4

墓地:1

山札:29

 

 

公爵夫人

場:なし

盾:5

マナ:1

手札:5

墓地:0

山札:22

禁断:6

 

 

 

「《レッドゾーンX》か、バイクっぽいカード……《禁断》もあるし、バイクなら早く決めないと。2マナで《ヤッタレマン》召喚! ターンエンドだよ!」

「儂のターン。《一撃奪取 トップギア》を召喚し、ターンエンド」

 

 

 

ターン2

 

場:《ヤッタレマン》

盾:5

マナ:2

手札:3

墓地:1

山札:28

 

 

公爵夫人

場:《トップギア》

盾:5

マナ:2

手札:4

墓地:0

山札:21

禁断:6

 

 

 

 お互いにコスト軽減のクリーチャーを召喚。どっちもスタートダッシュは順調だ。

 

「私のターン。マナチャージして、G・ゼロ! 《ゼロの裏技ニヤリー・ゲット》!」

 

 あのカードは、謡さんがよく使ってる、マナも払わずいっぱい手札を増やす呪文……

 謡さんと対戦するようになってから、この呪文の強さを思い知らされた。2ターン目に、最大で三枚も手札が増える。派手ではないけど、それがどれだけ強いことか、分かってきた。

 クリーチャーを並べるのにも、切り札を出すのにも、その攻撃を通すのにも、すべては手札から繋がる。その手札の増強を、コストを支払わずに行えるのだから、弱いわけがない。

 山札からめくられたのは《パーリ騎士》《洗脳センノー》《超特Q ダンガンオー》の三枚。

 

「よしっ、三枚とも手札に! そして2マナで《パーリ騎士》を召喚! 《ジョジョジョ・ジョーカーズ》をマナに置いて、2マナ! 《洗脳センノー》召喚!」

 

 謡さんはいつもの動きで、《ダンガンオー》発進の準備を整える。

 場にクリーチャーは三体。《ヤッタレマン》がいて、マナは4、手札には《ダンガンオー》。

 次のターンには終わらせる。そんな布陣を構え、拳を握り込んだ。

 

「《センノー》で侵略は止めた。あなたのバイクが走るよりも早く、私の《ダンガンオー》が発車する。それでおしまいだよ」

「抜かせ。次のターンに発車だと? 思い上がるな。貴様の浅慮な思惑など、瞬きのうちに打ち砕き、雲散霧消させてくれようぞ」

 

 謡さんの必殺の動きを見てもなお、美人さんの表情から余裕は消えない。

 彼女は静かに、カードを切る。

 

「特急などと笑わせる。貴様の指定した時刻に、貴様の望みの鉄箱は来ない。遅延したまま、その錆びつき肥大化した鉄屑でも研磨しているがいい。3マナ、《停滞の影タイム・トリッパー》を召喚」

「うぐっ、鬱陶しいのが……!」

 

 

 

ターン3

 

場:《ヤッタレマン》《パーリ騎士》《洗脳センノー》

盾:5

マナ:4

手札:3

墓地:1

山札:24

 

 

公爵夫人

場:《トップギア》《トリッパー》

盾:5

マナ:3

手札:3

墓地:0

山札:20

禁断:6

 

 

 

 《タイム・トリッパー》……確か、ユーちゃんがたまに使ってたっけ。

 マナに置くカードがすべてタップされてしまうクリーチャー。地味だけど、動くのが1ターン遅れちゃうから、出されるとちょっと困ってしまう。

 

「バイク相手に1ターンの遅れはきついけど、こっちも《センノー》がいるし、侵略は抑えられてるはず……私のターン、ドロー」

 

 このターンに発進するはずだった《ダンガンオー》は、マナが足りずに出すことができない。

 この瞬間のために調整されたダイヤが、少しずつ乱れ始める。

 

「くっ、2マナで《ツタンカーネン》、一枚ドロー。さらにもう一体《ツタンカーネン》、ドロー……」

 

 謡さんはこのターン、クリーチャーを並べることしかできない。

 クリーチャーの数自体は十分。今の謡さんに必要なのは、一撃ですべてを粉砕する切り札。

 けれどその登場は、相手の妨害によって遅らされてしまっている。

 今も、そしてその先も。

 

「ターンエンド。けど、次のターンこそ……!」

「不許可だ。儂に先んじて疾走することなど許さん。それに、貴様の不細工な鉄箱は見るに耐えん。醜悪なガラクタを儂の前に晒すでない。儂のターン。2マナで――このカードだ」

 

 美人さんは、手札を一枚、抜き取る。

 それを、唱えた。

 

 

 

双極・詠唱(ツインパクト・キャスト)――《ブンブン・バースト》」

 

 

 

 え? な、なにあのカード……?

 変なカードだ。カードの真ん中あたりで、イラストが二つに分割されている。

 上の方に描かれているのは、クリーチャー? っぽいけど……でも、美人さんは、それを召喚ではなく、唱えた。

 

「呪文の効果で、パワー4000以下のクリーチャーを破壊する。破壊するのは《ヤッタレマン》だ」

「《センノー》じゃないの……? 侵略を止められてるのに……?」

「ターンエンド。貴様の手番だ」

 

 

 

 

ターン4

 

場:《ツタンカーネン》×2《パーリ騎士》《洗脳センノー》

盾:5

マナ:5

手札:3

墓地:2

山札:21

 

 

公爵夫人

場:《トップギア》《トリッパー》

盾:5

マナ:4

手札:2

墓地:1

山札:19

禁断:6

 

 

 

「私のターン……くぅ、また《ダンガンオー》が出せない……!」

 

 美人さんが破壊したのは、侵略を完全に禁止してしまう《洗脳センノー》ではなく、コスト軽減の《ヤッタレマン》。

 《洗脳センノー》がいるから、侵略はされない。けれど、《ヤッタレマン》がやられてしまったことで、《ダンガンオー》の登場もまた1ターン、遅れてしまう。

 

「でも、私には他にも、《ダンガンオー》を出す手段がある。これに賭けるよ! 5マナをタップ! 《ビックラ・ボックス》を召喚!」

 

 謡さんが繰り出したのは、プレゼントの箱……いや、ビックリ箱のような姿のクリーチャーだった。

 

「《ビックラ・ボックス》の能力で、私はトップを捲る。それがコスト6以下のジョーカーズなら、そのまま場に出せる!」

 

 コスト6というと……《ダンガンオー》が、ギリギリ範囲に収まるコストだ。

 もしここで《ダンガンオー》がめくれれば、一気にシールドを打ち砕いて、とどめが刺せるかもしれない。

 

「貴様も混沌を望むか。愚かだが、貴様の天運が、貴様の行く末を開拓せしめるのならば、儂は貴様の力を認めよう。さすれば、錆びた鉄塊を儂の眼前に晒すことも吝かではなかろう」

「うるさい! なに言ってんのかさっぱりわかんないけど、スキンブルのためにも、あなたには負けない! お願い、《ビックラ・ボックス》!」

 

 謡さんの呼び声によって、《ビックラ・ボックス》の中身から、山札の一番上のカードが飛び出てくる。 

 謡さんはそのカードを掴み取り、そして、

 

「……《ヘルコプ太》をバトルゾーンへ」

 

 バトルゾーンに出す――けれど。

 それは、《ダンガンオー》ではなかった。

 

「塵の一片程度には、期待したのだがな。貴様の天運は、貴様の力は、儂の測量を超えることはない、か」

「っ、でも、《ヘルコプ太》の能力は発動するよ! 私の場のジョーカーズの数だけドローできる。私の場にジョーカーズは六体いるから、六枚ドロー!」

 

 ろ、六枚……!?

 その凄まじいドロー枚数に、思わず目を剥く。

 これで謡さんの手札は八枚。これだけ手札があれば、なんでもできると言っても過言ではない。

 

「ターンエンド! 次のターンこそ、終わらせてやる……!」

 

 このターンも攻撃はできなかったけど、謡さんはたくさん手札を一気に増やした。マナも伸びてきたから、次のターンには、確実に《ダンガンオー》が発車できる。

 運が良ければ、次のターンで倒せるかも……そうでなくても、シールドを全部ブレイクできれば、謡さんに形勢が大きく傾くはず。

 けれど、

 

「粋がるな。停滞した貴様の行動は無意味極まりない愚者のそれであったが、儂の行いが貴様と同価値ではない。希望を捨てよ、楽観するな。儂が無意味に戦を引き延ばしているのではないと知れ、小娘」

 

 美人さんは、切っ先を突きつけられてもなお、堂々たる態度を崩さず、遥か高みから、高慢に言い放つ。

 ここまでの流れはすべて織り込み済みだと言わんばかりの様子で、気高く、強かに、突き進み、突き穿つ。

 

「権謀術数は儂の領域。ただ爆走するだけが、血塗られた鉄の疾風の本懐ではない。望む時間を逃した時点で、貴様の敗北は決定していた。それを今ここで、証明しよう」

 

 美人さんはカードを引くと、マナチャージ。

 そして、手札を一枚切り、場に繰り出して、重ねた。

 

「《トップギア》でコストを軽減。5マナで《トップギア》を進化!」

 

 謡さんのように、手札補充も、マナ加速もすることなく、けれど攻撃もせず、ただ一時凌ぎのように謡さんの邪魔ばかりしていた美人さんだったけど。

 ここで初めて、前に出る。

 

 

 

「禁忌に邪槍を穿つ。奔れ――《禁断の轟速 レッドゾーンX》!」

 

 

 

 禍々しい槍に貫かれた、黒く染まった機体。

 バイクっぽいけれど、かなり変形したロボットだ。

 それに、とてもおどろおどしい。力強さが、凶悪さに変わってしまったかのような、怖さがある。

 

「そ、そいつ、そのまま出すの!?」

「吃驚することなどなかろうよ。侵略を封じたのは貴様だ。なれば儂は、その束縛の中で、我が力を振るうのみ」

 

 《洗脳センノー》で侵略を止めているから安心、ではなかった。

 侵略できないのならば、そのまま進化する。そのために、この人は《ダンガンオー》の発進を遅らせ続けたんだ。

 自分が走り出すまでの時間を、稼ぐために。

 

「《レッドゾーンX》が出たことで、禁断の封印を一つ解放。さらに貴様の《洗脳センノー》を封印!」

 

 謡さんのクリーチャーが《レッドゾーンX》の投げた槍に貫かれ、石化。封印されてしまう。

 クリーチャーが一体減らされるけど、それだけじゃない。

 これで美人さんは、今まで止めていたコスト踏み倒しが、できるようになってしまった。

 

「道化の呪術師は消えた。今こそ奔れ。《レッドゾーンX》の攻撃時、侵略発動! 一枚目、墓地からS級侵略[轟速]、《レッドゾーンX》! さらに二枚目、手札から《超音速 ターボ3》!」

 

 《禁断》から落ちた墓地から、そして残った手札から、次々とクリーチャーが重なっていく。

 みのりちゃんも、侵略と革命チェンジを同時にやったりするけど。

 この人は、一体のクリーチャーに、どんどんクリーチャーを重ねて進化させていくんだ……!

 

「二体の火のコマンドが現れた。封印を二つ解放――」

 

 と、《禁断》を封じる封印が一つ、また一つと外れていく。

 一枚の闇のカードがそこから零れ落ち、墓地に置かれる。すると――

 

 

 

バチバチバチィッ!

 

 

 

 ――突如として、赤雷が迸った。

 

「なっ、なに!?」

「見るがいい、小娘。これが天運をも支配する我が力の顕現。貴様のような餓鬼では到底及ばぬ、支配者の証だ」

 

 赤雷は、墓地を発生源として、どんどん広がっている。

 美人さんはそれを見つめていた。謡さんだけでなく、自らに対しても迫る、(いかずち)を。

 

「我が名は『公爵夫人』。逆相を重ねた憤怒の醜女(しこめ)。我が言の葉は戒めの鎖。怒れるままに、貴様を縛り、鏖殺してくれよう」

 

 そして彼女は、墓地に落ちたカードを一枚、拾い上げる。

 

「この瞬間、墓地に落ちた《闇侯爵ハウクス》の能力を起動! 《ハウクス》が場から墓地に没した時、互いのプレイヤーは手札を全て破棄する!」

「んなっ!?」

 

 それを聞いて、謡さんが驚愕と、どこか怒りを含んだ戸惑いで、声を荒げる。

 

「い、いや、待って待って! 封印から墓地に落ちたじゃん! 破壊されてないよ!?」

 

 それは、わたしも同じことを思った。

 さっきのクリーチャーは、封印から墓地に落ちたカード。バトルゾーンで破壊されて墓地に行くことで能力を発動するクリーチャーはたくさんいるけど、封印から墓地に行ったからって、発動するはずがない。

 けれど美人さんの使うカードは、わたしの認識とは、また違うものであった。

 

「貴様は他者の言を反芻し、深く理解するという思慮が不足しているな。しかして貴様の理解を待つ時間も惜しい。今一度、儂の口から述べてやろう」

 

 どこか説教くさい物言いで、美人さんは語る。

 

「《ハウクス》の能力は“バトルゾーンから墓地に送られた時”に発動する能力。破壊時に発動する能力ではない。故に“バトルゾーンに存在する封印”から墓地に送られた時にでも、能力が発動するという仕組(カラクリ)だ」

「はぁ!? そんなのアリ!?」

「無論だ。そのように定められた(ルール)であれば、それが世界の理だ。儂はその理を利己的な解釈をもって利用するまで」

 

 そんな能力が、そんな風に扱われる能力が、あるんだ。

 そんなもの、書き方の違いでしかないと思ったけど、そうではない。違う解釈が存在する。

 それを、この眼の前に広がる光景で、思い知らされる。

 

「貴様の言葉に価値は無い。故に議論する余地もない。現実を認めよ。《ハウクス》の能力解決だ。儂には捨てる手札がないが、貴様はどうだ」

「う……っ!」

 

 墓地から放たれる赤雷は遂に、二人を飲み込むほどに大きくなる。

 雷は二人の身体は傷つけない。けれど、二人の手札に走り、燃やし尽くしてしまう。

 ただし、美人さんの手札は一枚もなくて。

 謡さんだけが、持っていた八枚もの手札がすべて、焼け落ちる。

 

「《ダンガンオー》が……!」

「処理続行。《レッドゾーンX》の能力で《ビックラ・ボックス》を封印!」

 

 手札に抱えていた二枚の《ダンガンオー》が失われ、さらにはバトルゾーンまでもが削り取られていく。

 いや、手札と、場。それだけではない。

 

「攻撃続行! 《ターボ3》でWブレイク!」

 

 音速を超える速度で走る車体が、二枚のシールドを撥ねるように打ち砕く。

 手札を落とし、場を封じ込め、そしてシールドも叩き割る。

 じわりじわりと、謡さんを追いつめる。

 

「トリガーは、ない……」

「ならば《ターボ3》の能力発動。儂の手札をすべて破棄し、三枚ドローする。もっとも、手札なぞ最初からないがな。そのままドローだ」

「人に捨てさせといて、自分だけ手札補充とかずっこい……! 運任せの癖に!」

「運任せ。そうであろうな。しかし、天運が傾くまでに如何にして道筋を辿るか。傾いた天運を如何に扱うか。儂と貴様にあるのは、その差だ。儂はこの結末を辿るべく、貴様の鉄塊を封じた。貴様はただ、思考を放棄し、愚直に奔走したに過ぎん。発生した結果に罵声を浴びせる前に、己の思慮を重ねてみせるがいい、餓鬼」

 

 無慈悲に、無情に、そして無関心にそう言い放って、美人さんはターンを終える。

 

 

 

ターン5

 

場:《ツタンカーネン》×2《パーリ騎士》《ヘルコプ太》《洗脳センノー(封印)》《ビックラ・ボックス(封印)》

盾:3

マナ:6

手札:2

墓地:10

山札:11

 

 

公爵夫人

場:《ターボ3》《トリッパー》

盾:5

マナ:5

手札:3

墓地:3

山札:15

禁断:3

 

 

 

「くぅ……! 私のターン! 6マナで《激怒!富士山ン》召喚! コスト3以下の《タイム・トリッパー》を破壊!」

 

 手札を根こそぎ削られてしまい、謡さんの計画は一気に崩れ去った。

 最速パターンで動けたのに、《ダンガンオー》はいまだ出せず。むしろ相手の切り札によって、追い詰められている。 

 

「ターンエンド。とりあえず、一旦これで、ギリギリ凌ぐしか……」

「その程度で防衛とは、舐められたものだ。あるいは、それも、無知蒙昧なる貴様の未熟さが招いた結論か?」

「なんだって……?」

「貴様は開戦直後、儂の力を分析した。あの一手ならば理解して当然であるが、その分析は概ね正しい。児戯にも等しい考証ではあるが、正しきものは、正しいのだ。だが、故に儂は問う。貴様、このデッキの本質を忘却しているのか、とな」

 

 爆走を止められてもなお、表情を一切崩すことがない。

 高貴で高慢な公爵のように、美人さんは気高く、怒れるままに、カードを操る。

 

「我が資産には、いまだ多数の力が眠っている。残存する追撃手は無数。轟音はいまだ果てず、暴走し、邁進するのみ。4マナタップ。双極・召喚(ツインパクト・サモン)――《暴走 ザバイク》を召喚!」

 

 美人さんの手札から飛び出す、新しいクリーチャー。

 スピードアタッカーしか持たないクリーチャー――だけど、その下半分は、最初に見せた呪文。

 でも今は、クリーチャーとして、バトルゾーンを走り抜ける。

 

「封印を一つ解放。続けて双極・詠唱。2マナで《ブンブン・バースト》! 《パーリ騎士》を破壊だ!」

「……っ」

 

 今度は、同じカードでも、違う効果を、呪文として放つ。

 なんなの、あのカード……クリーチャーになったり、呪文になったり。

 わけがわからないまま、美人さんの“侵略”が再始動する。

 

「《ザバイク》で攻撃! その時、侵略発動! 《熱き侵略 レッドゾーンZ》!」

「侵略先まで握ってる……! しかも《レッドゾーンZ》って……!」

「封印を更に一つ解放。《レッドゾーンZ》の能力で、貴様のシールドを一枚焼却! Wブレイクだ!」

 

 シールドを墓地に送り込みつつ、攻撃。

 トリガーのチャンスが一つ潰された上に、襲い掛かるWブレイカー。横にはもう一体、攻撃可能なクリーチャーもいる。

 なにもなければ、とどめが刺されてしまう。

 謡さん……!

 

「っぅ、まだ……終わんないよ! S・トリガー《ゲラッチョ男爵》! 《ターボ3》をタップ!」

「む、殺しきれなかったか。儂としたことがぬかったな。ターンエンド」

 

 

 

ターン6

 

場:《ツタンカーネン》×2《ヘルコプ太》《富士山ン》《ゲラッチョ》《洗脳センノー(封印)》《ビックラ・ボックス(封印)》

盾:0

マナ:7

手札:2

墓地:12

山札:10

 

 

公爵夫人

場:《ターボ3》《レッドゾーンZ》

盾:5

マナ:6

手札:0

墓地:7

山札:14

禁断:1

 

 

 

 首の皮一枚で繋がった謡さん。

 けれどシールドはゼロだし、相手はスピードアタッカーがたくさん入っているような、ものすごく攻撃的なデッキ。

 もう後がないのは、誰が見ても、火を見るよりも明らかだ。

 

「打点は五、シールドも五枚。トリガーは見えてないけど、バイクなら守りは薄そう……でも、あと一歩が足りない」

 

 守り切るには絶望的。攻め切るにも戦力が足りない。

 押すにも引くにも辛い状況。それならば、 

 

「ここで決める。でも、そのためには、引くしかない……私のターン、ドロー!」

 

 後ろに引けないなら前に出る。

 どちらの道も辛いなら、無理を通して攻めに行く。

 謡さんは、常に前を見続ける。前進する道を選んだ。

 

「1マナで《ジョジョジョ・ジョーカーズ》! 山札から四枚を見るよ!」

 

 必要なものが手元にない。それならば、引き寄せる。

 謡さんは山札を掘り進んで、目当ての一枚を探す。

 

「引けない……! とりあえず、《ビックラ・ボックス》を手札に!」

 

 欲しいカードは引けない。

 謡さんは自分の手札を見て、歯噛みし――そして決心したように、カードを一枚、抜き取った。

 

「もう、これに賭けるしかない! 5マナで《ビックラ・ボックス》召喚! トップを捲るよ!」

「またも天運に身を委ねるか。しかして、無駄だ、と宣言しよう。先の博打で貴様の力量は見切った。貴様では、如何なる結果を掴もうとも、儂にその拳を届かせることは叶わん」

「勝手なことばっかり言うな! 私は今度こそ、引いて見せる! 自分勝手でにスキンブルの意志を踏みにじるようなあなたなんかに、負けるものか!」

 

 謡さんは、山札に指を添える。

 ここで引かなければ、後はない。これが本当のラストチャンス。

 山札の上にない可能性だってある。封印として使われてしまった可能性もある。

 だけど、それでも。

 謡さんは信じている。自分の切り札(ヒーロー)を。

 それが、今――

 

 

 

「これが私の最後の一撃――《超特Q ダンガンオー》!」

 

 

 

 ――戦場を、駆け抜ける。

 

「引き当てたよ、私の切り札!」

「そうか。して貴様は、歓喜に咽び、泣き喚くか? 感涙で叫ぶか? 正しく餓鬼よな。貴様がどのような手繰り寄せようとも、天運は貴様に傾いていない。時が過ぎ、遅れに遅れた列車に、なんの価値がある? 貴様にはそれが理解できんか?」

「言ってなよ。なんにしても、これが最後。お願い、私に正義の味方を気取らせて――《ダンガンオー》!」

 

 《ダンガンオー》が、走り出す。

 仲間(ジョーカーズ)の力を推進力に変えて、超特急でその拳を突き出す。

 

 

 

「ぶち抜け! ダンガンインパクト! シールドを――オールブレイク!」

 

 

 

 その一撃で、すべてのシールドが砕け散った。

 やっと謡さんの本領発揮。たった一瞬で、最大の火力を叩き出す。僅かな瞬間の大きな見せ場。

 この一発を通すことがすべて。けれど同時に、この一発の後が、最も困難な関門でもある。

 

「ふん……これが貴様の総てか。その青さにしては苛烈だが、やはり荒々しいばかりだ。焦燥に駆られ、力を求め、死に物狂いで縋っている様ではないか」

 

 舞い散るシールドの破片を浴びながらも、顔色一つ変わることなく。

 美人さんは、高貴な振る舞いを崩さない。

 

「強大な力は瞬きの内に消え去る、儚く脆い流星の如し。振り返らず、前しか見ず、後先考えぬ浅慮さよな。貴様が愚かしくも星のように輝くのなら、その愚かしさを抱きながら、星屑のように堕ち、潰えるがいい」

 

 虚空に手を伸ばす。そこには、シールドの破片しかないけれど。

 その虚無から。いいや、寄り集まった破片から創られた、一本の槍を掴み取る。

 

 

 

「S・トリガー――《ジ・エンド・オブ・エックス》」

 

 

 

 手にした槍を、投擲する。

 その一刺しで謡さんのクリーチャーが封印されるけど、その一本だけでは足りない。

 けれど美人さんは、それだけでは終わらない。

 

「貴様のクリーチャーを封印。そして、儂の最後の封印を――解放する」

 

 槍の投擲に合わせて、そびえ立つ石柱の封印が外れる。

 六つ目の、最後の封印が、剥がれ落ちた。

 

「こ、これって……」

「刮目せよ。これが貴様に引導を渡す、破壊にして破滅、禁忌にして禁断の星だ」

 

 石柱が、その本性を隠す岩盤を削ぎ落とす。

 呪いの縛りを解いて、大きすぎる破滅の力が、放たれる。

 

 

 

「禁断解放ッ!」

 

 

 

 その号砲を引き金に、禁断の鼓動が――爆ぜた。

 

 

 

「禁を破りし邪鑓を以って、有象無象を飲み込め――《伝説の禁断 ドキンダムX》!」

 

 

 

 ガラガラと崩れ去る岩の鎧。

 そこから姿を現すのは、恐ろしく、おぞましい、巨大な魔人。 

 赤い血が脈動しているかのような、白い屈強な身体。胸は二本の邪悪な槍で貫かれ、禍々しさを全身から放っていた。

 凶悪な禁断の魔人は、宇宙にまで届くような咆哮を轟かせる。

 

「《ドキンダムX》が禁断解放した時、相手クリーチャーをすべて封印する――終わりだ」

 

 刹那、宇宙の闇が、黒天の空が瞬く。

 

「!」

 

 真っ黒な空に浮かぶ、無数の光。

 星屑のように広がり散るそれは、ひとつひとつが邪悪の槍。

 それらが流星群のように、戦場へと降り注いだ。

 

「わ、私の、クリーチャーが……!」

 

 轟音を立てて流れ落ちる数多の邪槍は、地上を、謡さんのクリーチャーを、刺して穿ち、突いて貫く。

 そして夢を持ったジョーカーズたちはすべて、石のように固まって、封じられてしまった。

 すべてが停止し、喪失してしまった。

 まるで地獄のように、虚無と死滅の世界が、そこには広がっている。

 

「色褪せた道化が封印されては、二度と戻るまい。それ以前に、貴様の資産も尽きた」

「え……あ……」

 

 目を落とす。そして、ハッと気づかされた。

 謡さんのデッキが、なくなっている。一枚も残さず、すべてが消え失せていた。

 

「デッキが……」

 

 封印は、封印をつけられるクリーチャーのプレイヤーの山札から付けられる。

 度重なるドローに大量展開ですり潰された山札が、最後の禁断解放で、終わりを告げてしまった。

 

「己が力が無限と思うな。美が儚いものであるのと同義で、財にも、生命にも、万物万象には限界があり、果てがある。驕るな、溺れるな、自惚れるな。慢心は強者の証明と知れ、惰弱な小娘」

「…………」

 

 世界が収束していく。とどめを刺されることなかったけど、山札がなくなったことで、謡さんは戦う権利を剥奪されてしまったんだ。

 ただ負けたんじゃなくて、謡さんは、戦いの土俵から追い出された。

 それは、謡さんの身が無事であることを喜ばしく思えばいいのか。

 あるいは、謡さんの“弱さ”を突きつける残酷さを嘆くものか。

 わたしには、わからなかった。

 

「疾く失せよ、出来損ないの正義の味方とやら。戦う術のない“ただの人間”は、戦場には立てんよ」

「ただの、人間……」

「然り。力も色もなく、何者にもなれんただの小娘など、この槍で貫く価値すらない。まさしく無味乾燥だ」

 

 謡さんは、蔑むように見下ろされる。

 侮蔑と、軽蔑と、嘲笑を込めた、とても残酷で残忍な声。

 ただ突くだけでは、刺すだけでは飽き足らず。

 冷淡に、冷徹に、執拗に。

 抉り出すように、言の葉の槍を穿つ。

 

「貴様の総ては、貴様が染まった色は、あまりに薄く淡く、そして儚い。単調な自己、周囲の環境があって初めて滲む色味。それは貴様という個の喪失であり、貴様が何物でもないことを意味し、貴様の弱さの根源だ。意志薄弱、色のない虚弱。そして、果て無く愚かしく、救い難き罪の惰弱」

「色のない……私の、弱さ……」

「己が身を、心を、理解することだな。夢幻を追い、(うつつ)から目を背け、虚像に縋る限り、貴様に展望はない」

 

 そして最期。

 射殺すための一句で、貫いた。

 

 

 

「色無き小娘――貴様は一生、無色透明だ」

 

 

 

                     ☆ ☆ ☆

 

 

 

「儂としたことが、少々口が過ぎたな。興が乗るのは良しとしても、度が過ぎれば我が身が腐り落ちる毒とならん。戒めねばな」

 

 もはや謡さんに目を向けることもしない。そこに存在していない、透明な存在であるかのように振る舞う。

 そして当の謡さんは、ぼぅっと虚ろな眼差しで、どこでもない遠くを見つめている。

 放心しているかのように、心ここにあらず、といった風だった。

 

「さて、悪戯に冗漫な展開と相成ってしまったが、儂まで忘却しては敵わん。遅きに失した気もなくはないが、迅速に目的を遂行する。あの愚かな黒猫を回収せねばな」

 

 と、言ったところで初めて気づいた。

 わたしの腕の中が、妙に軽いことに。

 

「あ、あれ? スキンブルくんは……?」

 

 いない。

 いつの間にか、わたしの腕の中からいなくなっていた。

 謡さんが戦っている隙に、逃げたのかな……?

 でも、美人さんの目的がスキンブルくんなら、むしろここにいない方が好都合かもしれない。

 と、思ったけれど、

 

「消えたか。そも、チェシャ猫とは己を消す笑い猫。猫のなき笑いのみが虚空を満たす。姿を眩ますことが存在理由であり意義であろう、が」

 

 ガシッ、と。

 美人さんは、虚空を掴んだ。

 本来ならばなにも掴まない、無であり空である触感。

 しかし美人さんは、確かに、その手の内に、黒い子猫を握り締めていた。

 

「半端者が。逃走ならば去れ、隠匿なら己を殺せ。逃避とも隠蔽ともつかぬ中途半端な自己消失で、儂を欺けると思うな」

 

 見つけられてしまった。

 逃げたのではなく、隠れていた。けれど、元の主人である美人さんの目から、逃れることはできなかった。

 

「さしたる邪魔もなく完遂したな。目障りな小娘が癇に障ったが、まあ、取るに足らん些事か」

 

 じたばたと暴れるスキンブルくんの首根っこを鷲掴みにして、踵を返す美人さん。

 彼女の目的はスキンブルくん。なら、それを文字通りにその手に収めたのなら、これ以上、ここに居座る理由はない。

 それまでの出来事なんてまるでなかったかのようにあっさりと立ち去ろうとする。けれど、このままじゃスキンブルくんは……

 引き留めないといけない。そう、思った。

 

「っ、ま、待って――」

 

 けれど、

 

「なんだ小娘? 儂になにか用か?」

「っ……!」

 

 もはや、彼女は謡さんに微塵の興味も示さない。路傍の石ころを見つめるような冷たい目で、ギロリと、一睨みする。

 それだけで、わたしの身体は竦んで、動けなかった。

 帽子屋さんとも、この前のウサギさんとも違う。

 圧倒的に熾烈で、単調でも苛烈で、怖いくらい凄烈な眼差し。

 狂気で笑っている帽子屋さんやウサギさんとは違う。この人の眼は、ただひたすらに、鋭く尖っている。

 もしもわたしが引き留めたなら、有無を言わさず突き刺され、貫き穿ちたれてしまうような。

 わたしはその穂先を向けられるだけで、黙らされてしまった。

 わたしだけじゃない。誰も、この人を止められない。

 

「ダメ……やめて……」

 

 けれど。

 うわ言のように呟いて、よろけるように進んで、謡さんは、スキンブルくんに手を伸ばす。

 謡さんは、まだ諦めていない。けれどその意志と、現実は、残酷なほどに乖離していた。

 

「スキンブルを、連れて行かないで……!」

「……己が足で立てず、歩けず、地を這いずる気概もない亡者が」

 

 パシンッ

 謡さんの手は簡単に弾かれて。

 トンッ、と胸を貫くように突かれ、後ろに押し倒される。

 

「謡さんっ!」

 

 避けるどころか、受け身さえも取れず。

 椅子や机を巻き込んで、謡さんは倒れ込んだ。

 

「姿なき笑い猫には、色無き愚者はよく似合う。しかし“これ”は儂のものだ。儂の財産であり、儂の力だ。我が下に還ることが道理であり必然。貴様のような惰弱な小娘に渡してやる気は毛頭ない」

 

 徹底的に、最後まで。

 完膚なきまで、情け容赦なく。

 麗しの公爵夫人は、毒の槍を突き立てる。

 

「力なき者に物申す権利はない。己が意志で立てぬ者に、我を通す道理もない。貴様の言葉は弱者の戯言――話にもならん」

 

 吐き捨てた言葉が突き刺さる。

 本当に、それが最後の言葉となって、公爵夫人と名乗る麗人は、立ち去ってしまった。

 チェシャ猫(スキンブルシャンクス)を、連れて――

 

「スキンブル……そんな……もう、お別れなんて……」

 

 崩れ落ちる。いや、崩れ落ちてしまった謡さん。

 目尻に雫を溜め、いなくなってしまった、本当に姿の消えてしまった相棒の名前を呼ぶ。

 けれど、もうスキンブルくんはいない。

 いつか元の主が現れるかもしれない。いつかお別れする時が来るかもしれない。

 そんな予想は、いつでもあった。そんな可能性は、常に付きまとっていた。

 だからこれは、突然であっても、不条理で、理不尽であっても、不幸ではない。

 わかっている。そんなことは、誰もわかっている。けれど、そんな簡単に、言えることじゃない。

 大切な誰かが、いなくなった。

 それがどれほど悲しくて、辛くて、痛ましいか。

 謡さんの悲しさも、辛さも、痛みも、全部、こっちにまで伝わってくるようだった。

 手を、膝を付いて、零れ落ちる雫も気に留めず、ただひたすらに、悲哀と悲愴が、教室を纏っていた。

 

「スキンブル――」

 

 

 

 ――にゃぉん

 

 

 

 不意に、鳴き声が聞こえた。

 人ではない。獣の、猫の、鳴き声が。

 

「! スキンブル!」

 

 バッと顔を上げる謡さん。

 わたしも、思わず周りを見回す。

 そして、

 

「も、もう……いい、でしょうか……?」

 

 代海ちゃんが、カバンを降ろす。

 カメの甲羅みたいな、大きなリュックサック。

 そのファスナーを開けると、ひょこっと顔を出す、黒い影。

 

「う、上手く、いきました……」

「代海ちゃん……? え? カバンの中にいるのって……」

「はい。チェシャ猫さん……じゃ、ないですね。スキンブルさん、です……」

 

 ……え?

 な、なんで?

 確かに顔を出しているのは、スキンブルくんだ。でも、あの子はさっき、連れていかれて……え?

 

「……どういう、こと……?」

「お、お二人が戦ってる間に、スキンブルさんの身体を、だ、代用して……ダミーを、作りました……」

「そんなことができるのか……」

「す、凄いです、代海さん……!」

「い、生き物では、初めてやったので……上手くいくか、わからなかった、です、けど……成功して、よかったです」

 

 代用品を創造する。

 代海ちゃんには、そんな特技があるけれど、それで本物のスキンブルくんを、偽物とすり替えた。

 ということは、美人さんが連れて行ったスキンブルくんは、代海ちゃんが創った偽物……?

 つまり、本物のスキンブルくんはここにいるから――

 

「よかった、スキンブル……!」

 

 ――まだ、謡さんと一緒だ。

 スキンブルくんを抱きしめる謡さん。まだ涙は零れたままだけど、悲痛な表情には、笑顔が戻っていた。

 

「ありがとう……シロちゃん」

「い、いえ、そんな。アタシは、大したことは……公爵夫人様も、焦っていたよう、なので……だから、騙せたのかも、し、しれません……」

「あれ、焦ってたの? 全然わかんなかったなぁ」

「やたら威圧的に暴言を吐いてた感じだったけど、それも余裕がなかったから、なのか?」

「ど、どうでしょう……公爵夫人様は、いつもあぁですけど……あ、ある意味では、いつも焦っているような人、なので……変わりない、のかもしれません……」

「よくわからないな」

「でもでも! スキンブルさんが無事で、よかったです! ユーちゃん、まだスキンブルさんだっこしてないです」

 

 ひとまず、災厄は過ぎ去って、それ以前のわたしたちに戻った。

 けれどすぎた災いは、なかったことにはならない。

 今日の出来事は、確実にわたしたちの心に刻まれ、変化をもたらしたんだ。

 スキンブルくんをユーちゃんに渡す時、ふっと、謡さんの表情に影が差した。

 

「……このままじゃ、終われない」

 

 そしてその口から、言葉が零れ落ちる。

 

 

 

「私も、強くならなくちゃ――!」

 

 

 

                     ☆ ☆ ☆

 

 

 

「おい、代用ウミガメ」

「っ! こ、公爵夫人、様……」

「貴様。これはどういうつもりだ?」

 

 そこには、黒い子猫の姿をした――ガラクタ。

 公爵夫人の手で握り潰された、生物を模した複製品。

 チェシャ猫の代わりとして創造された、チェシャ猫人形だ。

 ――わかっていた。あんな小手先の小細工は、その場凌ぎだと。

 彼女たちのために、自分ができる精一杯のことをしたい。そんな、思いつきのような心持ちで、自分は目の前の夫人を騙した。

 それがなにを意味するのか、わかっていながらも。

 

「問うてやろう、代用ウミガメ。これは明確な、儂への敵対行為と見做すべきか?」

「あ、ぅ……そ、それは……」

「知らぬ存ぜぬとは言わせんぞ。あの場に座していた貴様なら、儂の目的を解していよう。それを踏まえ、儂の目的遂行を妨げるような行い。さて、導き出される結論は如何なものか」

 

 切っ先でちくちくと刺されるかのような、刺々しい言葉。

 しかしその槍は、いつ本当に、この身を貫いてもおかしくない。

 言葉が出ない。敵対するつもりはないし、したくもない。公爵夫人を敵に回して、無事で済むだなんて思っていない。

 考えが浅はかだった。それに尽きるが、だからと言って、諦めてそれを素直に受け入れることなんて、できない。

 なにも言えず、ただ夫人の眼光だけが、鋭く険しく突き刺さる。

 そんな、時だった。

 

 

 

「――なにをしている? 代用ウミガメ。そして公爵夫人」

 

 

 

 それは救世主か、道化師か、死神か。

 なんとも言えず、どうとでも言える、イカレた帽子屋が現れた。

 

「ぼ、帽子屋、さん……」

「代用ウミガメに用があるのだが……しかし珍しい組み合わせだな?」

「邪魔をするな帽子屋。儂は今、反逆者への尋問中だ」

「反逆者? 代用ウミガメが、か?」

「あ、あの、帽子屋さん……アタシ……」

 

 自分の行いが、公爵夫人に対する反抗であることは理解している。

 責任は自分にある。それを、帽子屋に言うべきか、どうか。

 助けてほしい。けれど、相手は帽子屋だ。二重三重の意味で、助けを乞うてもいいのか、悩ましい。

 言葉に詰まっていると、なにを思ったか、あるいは察したのか、帽子屋が口を開く。

 

「……よくわからんが、そう殺気立つな、公爵夫人。美しい御顔が台無しだ」

「自負はある。世辞は結構だ。それとも帽子屋、貴様も儂を妨げようとのたまうか?」

「妨げる? まさか! なぜオレ様が、同胞を害さなければならない」

「同胞とはよく言ったものだが、儂は貴様らと慣れ合うつもりはない。互いに使うか使われるか。我らの関係は私利私欲と相互依存、共生に寄生。害あらば貴様から処断するぞ」

「恐ろしいことを口にするものではない。ふむ、夫人殿は随分と興奮しておられるようだ。どうだ、茶でも飲むか?」

「結構だ。貴様は一体なにがために現れた。のらりくらりと躱すばかり。参上の理由は儂を愚弄するためか?」

「理由? それは最初に言ったはずだが。代用ウミガメに用があると。そうしたら貴様もそこにいたというだけの話」

 

 気が立っている公爵夫人。そして、恐らく無自覚で、その神経を逆撫でしている帽子屋。

 二人の纏う空気――というより、公爵夫人の発する殺気は、ますます剣呑なものになっていく。

 

「理由なくば疾く失せよ。貴様に用はない。儂は、反逆の意志を摘み、責務を追求するだけだ。邪魔はさせん」

「それはそれは、そこはかとなく物騒な匂いのする響きだ。しかし公爵夫人、代用ウミガメは我らが同胞だ。なくてはならぬ、かけがえのない存在だ。それを貴様の感情で喪失するわけにはいかない。オレ様の主張はただそれだけ。オレ様にしては珍しく、至極まっとうな言論を展開しているはずだが、如何かな?」

 

 イカレているが、ふざけているが、狂っているが、わけがわからないが。

 それでも一応、帽子屋は、自分を守ろうとしてくれているらしい。

 しかし公爵夫人は、引き下がらない。

 

「儂は貴様の論に応じる義理はない。今、儂と貴様は対立した。貴様は儂にとっての害あるものとなろうとしている。それでもなお貴様は、友好などと世迷い事をほざくか?」

「貴様が敵意を露わにするのは構わんさ。しかし、オレ様とて向けられた牙には相応の対応をする。さて、ここで殺し合うことが、貴様の益か? 公爵夫人」

「む……」

 

 公爵夫人が、口を噤んだ。

 ほんの僅か。しかし僅かであっても熟考し、彼女は、答えを導き出す。

 最も合理的で、効果的な未来はなにか。その、答えを。

 

「……否、だな」

 

 言い負かされた。

 そんな屈辱が、彼女の言葉から滲み出しているかのようだった。

 ここで自分に手を掛けるということは、帽子屋と敵対するということ。反逆者への制裁と、帽子屋との闘争。どちらが重要であるか、

 その天秤を突き出され、公爵夫人は牙を収める。

 

「気位が高いのも、感情を重んじるのも、まあいいだろう。しかして大局を見失うのはらしくないぞ、公爵夫人」

「……貴様といると気が狂う。よもや、イカレ帽子屋に説教される日が来ようとはな」

 

 最初の高慢な気勢はなく、憎々しそうに毒づくだけで終える公爵夫人。

 それで、この一幕は終演した。

 

「とまあ、こんなところであろう。矛を収めたならばそれで良し。我々も、大局を見据え動く日が遠くないだろう。ゆえに公爵夫人、貴様も我らが同胞だ。期待している」

「ふん。戯言を。マッドハッターが」

 

 最後にそう吐き捨てて、公爵夫人はその場から立ち去った。

 

「あ、ありがとう、ございます……ぼ、帽子屋、さん……」

「なに構わんさ。組織内のいざこざを鎮めるのもオレ様の役目、ということにしておこう。それに、オレ様は貴様が必要だ」

「アタシが、ひ、必要……?」

「貴様に代用してもらいたいものがある。頼めるな? 代用ウミガメ」

「……は、はいっ。あ、アタシで、よければ――」




 ピクシブ版だと、《パーリ騎士》と《セイレーン・コンチェルト》で《ニヤリー・ゲット》を使い回したり、《ユニバーサル・鮫・アンド・シー》でアンブロッカブル・ダンガンインパクトしたりするデッキでしたが、《ニヤリー・ゲット》が殿堂入りしてコンセプトが崩壊したので、こっちでは《ビックラ・ボックス》型ダンガンオーに変えました。安価でまあまあ強いので、気に入っていたんですよね、ビックリ箱ダンガンオー。ただ、プロットの都合で、使用する回を作れなかったので、お蔵入りしちゃったんですよね。それを今回は引っ張ってきた感じです。同じ作品を他サイトでも投稿していると、こういうことができるからいいですよね。いや、同じ作品なんだから、違うサイトで別々のことをするなと思う人もいるかもしれませんが。
 対する公爵夫人のデッキはハウクスバイク。テキストの問題で、国語的な意味不明裁定を食らった面白カードですが、結構、この裁定を受け入れがたい人もいるようですね。個人的にはアリだと思うのですが。どうせ昔のカードしか対応してないし、環境入りするようなカードでもなさそうですし。
 このデッキ、昔ちょっと遊んでたことがありますけど、連ドラとかガチロボとかダーツデリートとかグランドダイスとか、その辺の運に頼るデッキよりも、よほどギャンブルしてます。上手く《ハウクス》が落ちれば相手の手札を根こそぎにしながら疾走できますが、下手すれば侵略しようとしたらハンドレス、トリガーで反撃したらハンドレス、と自分の首を猛烈に締めます。ハイリスクハイリターンで、しかもほぼコントロール不能。でもそこが面白いという、かなり狂ったデッキでした。
 さて、ちょっと興が乗りすぎて喋りすぎましたが、今回はここまでです。次回は特訓回。
 誤字脱字、感想、その他諸々、なにかありましたら、遠慮なく仰ってくださいな。
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