今回はタイトル通り、カードショップのお話です。初心者くささが抜け切っていない小鈴たちをどうぞご覧下さい。
「《エヴォル・メラッチ》を召喚! 山札の上から四枚を見て……《エヴォル・ドギラゴン》を手札に加えるよ!」
「来ましたね、小鈴さんの
「え……なに、そのカード? 見たことない……」
「このクリーチャーはバトルゾーンに出たとき、相手の手札を見て、その中から一枚を捨てさせるのです!」
「え……それって」
「ではでは手札を見ちゃいますよ! 捨てるのはとーぜん! 《エヴォル・ドギラゴン》です!」
「そ、そんな、せっかく手札に加えたのに……」
「《ボンバク・タイガ》と《キラー・アイ》でシールドブレイク!」
「え、えーっと、じゃあ私は、《トップギア》と《エヴォル・メラッチ》を召喚! 山札を見て……《マッハギア》を手札に」
「《ジェニー》を進化! 《ロックダウン》です! 《トップギア》を破壊です!」
「あ、まずい……」
「《ロックダウン》でWブレイク! 《ボンバク・タイガ》でもブレイクです!」
「……S・トリガーは、ないよ」
「だったら《キラー・アイ》でとどめです!」
☆ ☆ ☆
「やりました! 今日はユーちゃんの勝利です!」
「うーん、負けちゃった……」
こんにちは、伊勢小鈴です。
わたしは今、烏ヶ森学園中等部にある空き教室でユーちゃん――本名、ユーリア・ルナチャスキーさんとデュエマをしていました。
ユーちゃんとは、クリーチャー騒ぎの一件以来、仲良くなった。というより、ユーちゃん自身がすごく人懐っこいから、不登校だったけどすぐにクラスに馴染んだし、外国人なんてことを意識させることもなくてとっつきやすかった。
その中でもわたしは、他の人よりもちょっとだけ縁があって、こうして時々、一緒にデュエマをやってる。
空き教室でやってるのは……その、わたしのワガママというか。クラスのみんなに見られるのがちょっと恥ずかしかったから、人のいないところにしてもらってたり。
「それにしてもユーちゃん、今日は今までに見たことのないカードがあったけど、あんなカード入ってたの?」
「Ja! あれはですねー、昨日、デッキをVerbesserungしたんです!」
「? ……?」
「あ、えーっと、日本語だと……カイゾー、でしたっけ?」
「カイゾー?」
カイゾー、かいぞー……改造?
「って、どういうこと?」
「自分の持ってるカードと、デッキの中身を入れ替えるんです! ひょっとして小鈴さん、フェア……えっと、カイゾーしたことないですか?」
「う、うん。デュエマ始めたのも最近だし、カードって言ったら、剣崎先輩からもらったこのデッキだけしかない……」
「だったら小鈴さんもデッキをカイゾーしましょう! とっても楽しいですよ!」
「そ、そうなんだ……」
ハキハキとした声で身を乗り出すユーちゃん。とても元気だ。
クリーチャーに憑りつかれて、萎縮してた頃とは大違いだよ。わたしも慣れるまで、ちょっと時間がかかったもん。
「でも、改造ってどうやるの?」
「カードをデッキのカードと入れ替えるだけですよ」
「でもわたし、このデッキしかなくて……」
「なら、カードを買えばいいんです!」
「カードって、どこで買うの……?」
「え……」
ユーちゃんがポカンと、呆けたように口を開けている。
わたし、なにかまずいこと言っちゃったかな?
「……小鈴さん」
「な、なに? ユーちゃん……」
バッ、と。ユーちゃんがわたしの両肩を掴む。
そして、ガバッと顔を上げて、言い放った。
「明日、ユーちゃんとカードショップにいきましょう!」
☆ ☆ ☆
ナントカにいくとユーちゃんに誘われた翌日、土曜日。
ユーちゃんに案内されたのは、カードショップ『Wonder Land』というお店。
カードショップというからには、カードを売っているお店みたいだけど、入ってみると、わたしの想像とは違っていた。
ファンシーな内装。軽快でポップなBGMに、不思議の国のアリスを思わせる小物の数々。看板とか、壁や床も、ファンシーに飾られている。
「なんかイメージと違う……雑貨屋さんみたい……」
「そうですよね! 女の子向けのお店なんですって! ユーちゃんこのお店、とっても
「そ、そうなんだ……」
自分でやっててこんなこというのもなんだけど、デュエマって男の子がやってるイメージがあったから、女の子向けって言う響は、なんだか不思議で、魅力的に聞こえた。
そういうお店があるってことは、女の子でュエマをやってる人も増えてたりするのかな?
実はクラスの子も、他にも誰かやってたりして。
「でも、本当にお客さんも、わたしたちと同い年くらいの女の子が多いね」
「店員さんも、女の人が多いんですよ。だから女の子に人気なんです!」
「確かにこれなら、わたしでも入りやすいかも……」
「ですよねですよねっ! 学校からも近いですし!」
「う、うん。雰囲気もいいし、いいお店だね」
「そう言ってもらえると、嬉しいがね」
「はひゃっ!?」
突然、後ろから声をかけられて、思わず変な声が出てしまった。
振り返ると、そこには男の人が立っていた。
「あ、テンチョーさん!
「いらっしゃい、ユーちゃん。隣の子は、友達?」
「Ja! ユーちゃんのお友達です!」
「そうか。俺はまあ、言われた通り、この店の店長だ。よろしく」
「あ、はい。伊勢、小鈴です。よろしくおねがいします……」
「そう畏まらなくていい。長い付き合いになるのだろうからな」
「は、はぁ……」
なんだか、不思議な人だ。
一見するだけじゃ年齢がよくわからない。若いように見えるけど、そうじゃないようにも見える。
口調も、淡々としているようで、気さくな感じもするし。
距離感が上手く掴めない人、だった。
「今日はなにか探し物? それともフリー?」
「
「君の? それとも、この子の?」
「小鈴さんのです! でも、ユーちゃんもカード欲しいです」
「なら代金を支払ってカードを買うしかないな」
「あ、あの。それなんですけど……その、わたし、カードとか買ったことなくて、改造しようにも、このデッキしかないので……」
わたしがそう言うと、店長さんは納得したように頷いた。
「成程、
「ヨミさん、今日いるんですか!?」
「あぁ。受験生だというのに熱心なことにな。今、呼んでくる」
そう言って店長さんは、辺りを見回すと、一人の女の子を見つけて手招きする。
それに気づいた女の子は、店長さんに駆け寄った。
「店長? どうしました?」
「詠、ユーちゃんが友人を連れてきた。レクチャーを頼む」
「え? ユーちゃんが? 珍しいですね。とりあえずわかりました」
「あそこだ。頼んだぞ」
「了解です」
店長さんに呼ばれて、女の子がパタパタとこっちにやってくる。
女の子と言っても、わたしたちよりもずっと年上に見える。高校生くらい、かな? 『Wonder Land』と書かれたエプロンをかけているから、店員さんっぽい。
「ユーちゃん。いらっしゃい、こんにちは」
「グーテンターク、ヨミさん! この前はデッキのアドバイスしてくれて助かりました! Danke!」
「いいよー、あれくらい。そんなに大したことは言ってないし」
「でも、ヨミさんのアドバイスのおかげで、この前はお友達に勝てました! あ、この人が、そのお友達です!」
「わっ、ゆ、ユーちゃん……!」
「ユーちゃんのお友達? いらっしゃい。ここでバイトしてる
「あ、えっと、わたしは、伊勢小鈴、です……」
「小鈴ちゃんだね。よろしくね」
店員さん……詠さんは、にっこりとほほ笑んでくれる。
さっきの店長さんと比べて、にこやかで気さくで、優しそうな人だった。
「今日のお客さんはユーちゃんというより、あなたみたいだね。それで、どんなご用事かな?」
「小鈴さんのデッキをカイゾーしたいんです!」
「改造? どんな風に?」
「えーっと……その、わたし、まだカードとかぜんぜん持ってなくて……」
「あー、そういうことか。うん、わかったよ。じゃあ、まずはカードを買わなきゃだね」
「あの、デッキの改造って、どうすれば……」
「具体的に言うのはちょっと難しいかな。一口に改造って言っても、色々あるし……デッキはあるんだよね?」
「あ、はい。これです」
わたしは、剣埼先輩からもらって、ずっと使ってるデッキを詠さんに渡した。
詠さんは手慣れた手つきでわたしのデッキにサッと目を通す。
「構築済みまんまだね……まあ、この段階なら、パックで手に入れたカードをちょっとずつ入れ替えればいいと思うよ。自分が気に入ったカードとか、強そうだと思ったカードとかを、使いにくいと思ったカードと入れ替える。ちょっとずつね」
「それでいいんですか?」
「デッキのコンセプトを決めて改造するっていうのもあるけど、それは改造っていうより、デッキ構築になるかな。他にカード持ってないなら、あんまり大々的に改造はできないし、カード資産を増やしていくっていう点も含めて、ちょっとずつだね」
「な、なるほど……」
「まあ、兎にも角にもカード買わないことには始まらないし、こっち来て」
詠さんに導かれて、レジの前までやってくる。
「まだわからないと思うけど、希望のパックとかある?」
「はいはい! ユーちゃん、前に買ったやつをもう一回買います! 今度は5パンです!」
「ユーちゃん、日本語は覚えきれてないのに、そういう言葉は覚えちゃうよね……はい、810円ね。カードは持って来てる?」
「持ってます! どうぞ!」
「スタンプ一個ね。あと二個で商品券だね。がんばって」
「はいです! 小鈴さんはどうしますか?」
「あ、えーっと……」
「この中から選んでね」
詠さんに見せられたボードには、色んなパック? の絵が並んでる。
この中から選べってことみたいだけど、いきなり言われても、よくわからない……なにを選べばいいんだろう?
「パックは一つにカード五枚入り、税抜150円だよ。ちなみに、さっきユーちゃんが買ったのはこれね」
「じゃあ……その隣の、これを……」
「いくつ?」
「えっと、じゃあ、わたしも、五つで……」
「はい。810円だよ。無料でカード作れるけど、作る?」
「作ると、なにかあるんですか?」
「500円の買い物するごとにスタンプを一個押してあげるよ。たくさん集めると色んな特典がつく。無料だし、作って損はないよ」
「なら、おねがいします……」
「わかった。ちょっと待っててね……どうぞ。名前は書いといた方がいいよ」
「はい、ありがとうございます」
というわけで、わたしは生まれて初めて、パック、というものを買った。
この中にカードが入ってるんだ……なにが入ってるんだろう。わたしが見たこともないようなカードなんだろうな……
「ここで開けていいんですか?」
「いいよ」
詠さんの許可ももらって、わたしはパックを開ける。
ん……ちょっと、開けづらい……えい。
「わわっ」
「大丈夫?」
「ちょっと、力、入れ過ぎちゃいました……カード、無事かな?」
「パック開ける時は気をつけてね。変に剥くとカードが傷ついちゃうから」
「は、はい……あ、このカード……」
「なにかいいの当たった?」
「はい。なんか、キラキラしてます」
「このカードは……あー、うん。まあ、ベリーレアだね」
「ベリー?」
「レアリティって言って、カードの当たりやすさとか、価値の基準かな。まあ、どっちかっていうといい方だよ」
「そうですか……」
「そのカード、使いたい?」
「はい……でも、どうすればいいんでしょう?」
「そうだなぁ。そのカードはデザイナーズコンボが既に作られてるから……とりあえず、他のパックも開けてみようか」
「は、はいっ」
☆ ☆ ☆
パックの開封を終わらせると、詠さんが軽く店の中を案内してくれた。
ちなみにユーちゃんは、知らない間にどこかに行っちゃった。お店の中にいるはずだが、ちょっと探せばすぐに見つかるはずだけど。
詠さんはショーケースの前で止まった。ショーケースには、大事そうにカードがたくさん並んでいる。
「こういうカードショップだとね、シングルっていう、カード一枚だけでも売ってるんだよ」
「す、すごい、みんなキラキラしてます……でも、すっごく高いです……」
「パックはランダムだし、たくさん買っても目当てのカードが当たらないことは多いからね。どうしても欲しいカードがあるなら、一枚ピンで買うのも賢い買い物だよ」
「なるほど……」
「で、こっちはストレージ。コモンとかアンコモンとか……言っちゃうと、あんまり使われないカードがたくさん入ってるよ。こっちも欲しいカードがある時は探してみるといいよ。大体、一枚何円で値段がつけられてるから、お得だしね。たまに掘り出し物もあるし」
ちょっと大きめの入れ物の中に、たくさんのカードが雑多に入っていた。その下には、『ストレージ 1枚20円』と手書きの紙が貼られている。
詠さんはストレージの中のカードに目を通して、何枚かカードを抜き取った。
その後、ショーケースに戻って、一枚のカードを指さす。
「とりあえず、枚数確保するならこれだけど、本当に買う?」
「か、買います……」
「正直に言っちゃうと、このカード、別にそんなに強いわけじゃないよ? ガンガンマンモスっていう、実はもっと簡単なコンボがあるし」
「でも、せっかく二枚も当てたカードなので、使ってみたいです……!」
「そっか。だったらもう止めないよ。合わせて220円ね」
「あ、さっきちょっと見つけたんですけど……これと、あと、このパックを二つ、一緒におねがいしていいですか?」
「いいよ。だったら合わせて554円だね。カードにスタンプ押しとくよ。まいどあり」
「ありがとうございます……それで、その……」
「わかってる。改造、だよね。最後まで付き合ってあげるよ」
「! あ、ありがとうございます!」
☆ ☆ ☆
「で、できました……!」
「なんか、追加で課金させちゃったみたいでごめんね。コンボデッキみたいな動きをするから、どうしても潤滑油にドロソ、あとは有用なトリガーがあった方がいいかと思って……」
「いえ、ぜんぜん構いませんよ。むしろ、色んなカードが手に入って、楽しいです!」
デッキを改造する中、わたしは後からいくつかカードを買い足した。
一つのデッキを改造するだけでも、お金がかかるけど、でも、色んなカードが見れて、それを自分が使えると思うと、嬉しくもあった。だから、後悔はしてない。
「元の形はあんまり崩してないけど、さっきのコンボが肝になるから、それを狙ってプレイするといいよ。例の二体を並べて、場に維持することを心がけて」
「はい! アドバイス、ありがとうございます!」
「いやいや、これくらいお安い御用だよ」
詠さんの協力もあって、わたしのデッキの改造は完了した。
……でも、これからどうすればいいんだろう?
「デッキが完成したら、普通は調整って言って、本当にこれで完成なのか。このカードはこの枚数でちょうどいいのか、このカードは本当に役に立つのか、もっとこんなカードを入れた方が動きやすいんじゃないか、っていうのをテストするものなんだよ」
「そ、そうなんですか? じゃあ、誰かとデュエマしないと――」
「小鈴さんっ!」
「わっ、ユーちゃん……どこに行ってたの?」
「ユーちゃんもデッキをカイゾーしたんですよ! さっそく、デュエマしましょう!」
なんか、またユーちゃんが元気になってる……いや、いつものことなんだけど。
でも、今はちょうどいいタイミングだよ。
「いいよ。わたしも、デッキの改造、できたんだ」
「小鈴さんもですか。それは、とっても楽しみです!」
というわけで。
わたしとユーちゃん、お互いに改造したデッキで、デュエマが始まった。
☆ ☆ ☆
わたしとユーちゃんの対戦。
まだお互いにシールドは五枚。わたしの場には《一撃奪取 トップギア》。ユーちゃんの場にも、それに合わせるように《一撃奪取 ブラッドレイン》が出ている。
「わたしのターンだね。《トップギア》でコストを減らして、3マナで《ジェット・ポルカ》を召喚!」
いつもなら《マッハギア》に進化して攻撃するところだけど、今回は違う。
詠さんのアドバイスをもらって作ったこのデッキで、このクリーチャーには大きな役目がある。次のターンには決めに行くよ。
「《ジェット・ポルカ》です……? もしかして……ユーちゃんのターンです」
ユーちゃんは訝しむような目を向けると、カードを引く。
そして、パァと表情が明るくなった。
「
「そのカードは……」
手札を見て、好きなカードを捨てさせるクリーチャーだ。
わたしは渋々、ユーちゃんに手札を見せる。
「やっぱりありました、《ゴウ・ブレイクドラゴン》! そのカードを
「うぅ、次のターン出そうと思ってたのに……」
「これでユーちゃんは
ターン3
小鈴
場:《トップギア》《ジェット・ポルカ》
盾:5
マナ:3
手札:1
墓地:1
山札:28
ユー
場:《ブラッドレイン》《ジェニー》
盾:5
マナ:3
手札:3
墓地:0
山札:27
手札から捨てられたのは、《ゴウ・ブレイクドラゴン》。
攻撃する時に自分のクリーチャーをタップすれば、アンタップできるクリーチャー。このクリーチャーと、進化クリーチャーが攻撃したらアンタップする《ジェット・ポルカ》を組み合わせれば、ずっと攻撃し続けられるコンボになるんだけど、防がれちゃった……
というかユーちゃん、このコンボ知ってるみたいだっけど、有名なのかな?
「とりあえず《エヴォル・メラッチ》を召喚するよ」
これで《ゴウ・ブレイクドラゴン》が引けたらいいんだけど……
「……あ、やった。《ゴウ・ブレイクドラゴン》! 進化クリーチャーだから手札に加えて、ターン終了だよ」
ラッキーだよ。これなら次のターンこそ《ゴウ・ブレイクドラゴン》を出して、無限攻撃のコンボができる。
そう思っていたけど、
「そうはさせないですよ、小鈴さん! もう一回《解体人形ジェニー》です!」
「えぇ!?」
「その手札も捨ててもらいますよ!」
わたしが二枚目の《ゴウ・ブレイクドラゴン》を引いたように、ユーちゃんも二枚目も《ジェニー》を引いていたみたい。
わたしの手札から、前のターンに手に入れた《ゴウ・ブレイクドラゴン》が、一回目と同じように手札から墓地に落とされる。
ターン4
小鈴
場:《トップギア》《ジェット・ポルカ》《エヴォル・メラッチ》
盾:5
マナ:4
手札:0
墓地:2
山札:26
ユー
場:《ジェニー》×2《ブラッドレイン》
盾:5
マナ:4
手札:2
墓地:0
山札:26
「二回目も防がれるなんて……なにもできないよ。マナチャージだけして、ターン終了……」
「ユーちゃんのターンです! こっちも出しますよ、ユーちゃんの新しいカードです! 4マナで《暗黒鎧 キラード・アイ》を召喚です!」
ユーちゃんは、また見たことのないクリーチャーを出す。
なんだろう。《キラー・アイ》に名前と絵が似てるけど……
「《キラード・アイ》がバトルゾーンに出た時、山札の上から四枚を墓地へ! さらに、1マナタップ! 墓地の《死神術士デスマーチ》を
「え、な、墓地から召喚……!? っていうか、進化クリーチャーなの……!?」
「そうですよ! 進化元は墓地の《凶殺皇 デス・ハンズ》です!」
墓地からクリーチャーが出て来ることも驚きだけど、それが進化クリーチャーっていうのも驚きだ。
というか、進化元が墓地のクリーチャーって、どういうこと?
わたしが混乱していると、詠さんが声をかけてくれた。
「墓地進化っていうのはね、その名の通り、墓地のクリーチャーを進化元にして召喚する、特殊な進化方法なの」
「で、でも、だからって墓地から出せるんですか?」
「Nein! 違います、小鈴さん。そっちは《キラード・アイ》の能力です! 《キラード・アイ》の能力で、私は闇の進化クリーチャーを墓地から召喚できるんです!」
墓地から進化クリーチャーを召喚するって、それ、すごい強い能力なんじゃ……?
つまりユーちゃんは、手札に進化クリーチャーがなくても、墓地から召喚できるわけで、たとえ破壊しても、その進化クリーチャーは墓地から戻ってくる、ってことだよね?
しかも、今ユーちゃんの場にいる進化クリーチャーは、進化元を墓地から調達できる《デスマーチ》。いくら破壊しても、たった1マナ払うだけですぐに復活しちゃう。
とにかく《キラード・アイ》をどうにかしなきゃ。
ターン5
小鈴
場:《トップギア》《ジェット・ポルカ》《エヴォル・メラッチ》
盾:5
マナ:5
手札:0
墓地:2
山札:25
ユー
場:《ジェニー》×2《ブラッドレイン》《キラード・アイ》《デスマーチ》
盾:5
マナ:5
手札:1
墓地:2
山札:21
「わたしのターン……《勇愛の天秤》を唱えるよ。手札を一枚捨てて、二枚引けるけど……手札がないときは、そのまま二枚でいいんですよね?」
「うん、いいよ。手札を捨てることをコストに使う呪文じゃないからね」
「じゃあ、二枚ドロー……ターン終了だよ」
《キラード・アイ》は倒せないけど、いいカードが引けた。これならまだ勝てる。
「ユーちゃんのターン! 《ボーンおどり・チャージャー》です! 山札を二枚、墓地へ! チャージャー呪文は唱えたあと、マナに置きます。さらに《ブラッドレイン》でコストを下げて、3マナで《解体人形ジェニー》です!」
「またぁ!?」
「《ゴウ・ブレイクドラゴン》は出させません! 捨てちゃいます!」
《勇愛の天秤》で引いた《ゴウ・ブレイクドラゴン》が、また墓地に落とされる。これで三枚目……ユーちゃん、すごく鋭いよ。
ことごとくわたしのコンボが邪魔されて、できることが全然ない。
ターン6
小鈴
場:《トップギア》《ジェット・ポルカ》《エヴォル・メラッチ》
盾:5
マナ:5
手札:1
墓地:4
山札:22
ユー
場:《ジェニー》×3《ブラッドレイン》《キラード・アイ》《デスマーチ》
盾:5
マナ:6
手札:0
墓地:4
山札:18
「わたしのターン。《エヴォル・メラッチ》を進化だよ! 《ゴウ・グラップラードラゴン》!」
「そっちですか……!」
「《ゴウ・グラップラードラゴン》はタップされていないクリーチャーを攻撃できる! 《キラード・アイ》を攻撃!」
「《デスマーチ》でブロックです!」
あ、ブロッカーも持ってたんだ、そのクリーチャー……墓地から出て来ることと、墓地進化で、すっかり見落としてた。
《ゴウ・グラップラードラゴン》で倒そうと思ったけど、次のターンには墓地から戻って来るし、攻撃して倒すのは無理かな。
そう思っていると、また詠さんが声をかけてきた。
「小鈴ちゃん。《キラード・アイ》を気にするのはいいけど、《キラード・アイ》は墓地を手札みたいに使って進化クリーチャーを出すんだよ。だから、ちゃんとユーちゃんの墓地も見た方がいいよ」
「え? それってどういう……」
「ユーちゃんのターン! 決めちゃいますよ、小鈴さん!」
詠さんの言葉を遮って、ユーちゃんが勢いよくカードを引く。
「《ブラッドレイン》でコストを下げて、《キラード・アイ》で墓地から召喚します! 5マナで《解体人形ジェニー》を
そして、
「行きますよー! 《悪魔龍王 キラー・ザ・キル》!」
墓地から、ユーちゃんの切り札――《悪魔龍王 キラー・ザ・キル》が召喚された。
このクリーチャーも、墓地にいたんだ……全然、気づかなかった。というか、ユーちゃんの墓地、ちゃんと見てなかったよ。
《キラード・アイ》は登場時に墓地を増やすし、ユーちゃんは《ボーンおどり・チャージャー》も使ってた。墓地から進化クリーチャーを召喚できるっていうことは、墓地を増やすことが、手札を増やすのと同じみたいになるんだ。
「《キラー・ザ・キル》がバトルゾーンに出たので、《ゴウ・グラップラードラゴン》は破壊です! さらに《キラード・アイ》の能力で、墓地の《デスマーチ》二体も墓地進化! 《デス・ハンズ》と《ブラッドレイン》から進化です!」
「二体も……!?」
「いきますよー! 《キラー・ザ・キル》でTブレイクです!」
これは、とってもまずい。
ユーちゃんの場には、《キラー・ザ・キル》《キラード・アイ》《ブラッドレイン》が一体ずつ、《ジェニー》《デスマーチ》が二体ずつ。
クリーチャーがこれだけたくさんいるのに加えて、《キラー・ザ・キル》がTブレイカーだから、一体や二体クリーチャーを破壊したくらいじゃ、ダイレクトアタックを防げない。
えーっと、このデッキに入れたカードで、この状況をなんとかできるカードって、なにかあったかなぁ……?
「《キラード・アイ》でブレイクです! 《ブラッドレイン》でもブレイク!」
……あった。
運がよかっただけって気もするけど、まあ、結果オーライってことで。
「S・トリガー! 《破壊者 シュトルム》!」
「ふわっ!? そ、そのカードは……?」
「《シュトルム》の能力で、パワー合計が6000以下になるように、相手クリーチャーを破壊するよ! 《ブラッドレイン》も、《ジェニー》も、《デスマーチ》もパワーは1000! 五体まとめて破壊!」
《キラー・ザ・キル》は最初に攻撃するとして、《キラード・アイ》は他のクリーチャーと同じようにシールドを一枚しかブレイクできないから、こっちを残されてたら負けちゃってた。ユーちゃんの選択に助けられた感じかな。
「止められちゃいました……《キラード・アイ》は最後に攻撃したほうがよかったです……Ende」
ターン7
小鈴
場:《トップギア》《ジェット・ポルカ》《シュトルム》
盾:0
マナ:6
手札:4
墓地:6
山札:21
ユー
場:《キラー・ザ・キル》《キラード・アイ》
盾:5
マナ:7
手札:0
墓地:8
山札:17
「わたしのターン。ここで《ゴウ・ブレイクドラゴン》を引けたらいいんだけど……」
残念、引けない。
……なら、もう一回チャンスだ。
「2マナで《勇愛の天秤》を唱えるよ。手札の《トップギア》を捨てて、二枚ドロー」
またしても、引けない。
でも今度は代わりに、それとは別の切り札が来たけど……
「う、うーん……行ける、かな……?」
少し頭の中で計算する。S・トリガーが出てクリーチャーが破壊されたとしても……ギリギリかな?
まあでも、あと一回攻撃されたら負けだし、《キラード・アイ》とか、《デスマーチ》とか、別の進化クリーチャーとか出て来るだけ終わっちゃうからここは攻めるよ。
「5マナで《トップギア》を進化――」
《ゴウ・ブレイクドラゴン》は出せないけど。
わたしの切り札は変わらない。
いつだって、先輩からもらった、このクリーチャーだよ。
「――《エヴォル・ドギラゴン》!」
「こ、ここで《ドギラゴン》ですか……でも、《ドギラゴン》はTブレイカーです! それだと、まだとどめまでは……」
「ううん。たぶん、行けるよ。《ジェット・ポルカ》でシールドをブレイク!」
「うにゅ? えっと、トリガーはありませんよ?」
「じゃあ《ドギラゴン》で《キラー・ザ・キル》を攻撃! この時、《ジェット・ポルカ》の能力発動だよ!」
「あ……」
《ジェット・ポルカ》の能力は、最初にも言ったように、進化クリーチャーが攻撃する時にアンタップすること。
《ゴウ・ブレイクドラゴン》と組み合わせれば無限に攻撃ができるけど、それをメインにわたしはデッキを作ったけど、《ジェット・ポルカ》は《ゴウ・ブレイクドラゴン》以外の攻撃にも反応する。
勿論、《ドギラゴン》にだって。
「わたしの進化クリーチャー、《ドギラゴン》が攻撃したから、《ジェット・ポルカ》をアンタップするね。攻撃を続行するよ。《ドギラゴン》と《キラー・ザ・キル》でバトル! そっちのパワーは12000、こっちのパワーは14000だから、《ドギラゴン》の勝ち! そして、バトルに勝った《ドギラゴン》はアンタップ! 次は《ジェット・ポルカ》で攻撃! シールドをブレイク!」
「あ、そ、そういう……うぅ、トリガーはないです……」
「《ドギラゴン》で《キラード・アイ》を攻撃! その時、《ジェット・ポルカ》の能力で自身をアンタップして、《ドギラゴン》と《キラード・アイ》でバトル! バトルに勝ったから《ドギラゴン》をアンタップ!」
「へぇー、考えたね、小鈴ちゃん。《ゴウ・ブレイクドラゴン》みたいに無限アタッカーになれるわけじゃないけど、《エヴォル・ドギラゴン》は相手クリーチャーの数だけ攻撃できるようなものだから、その数だけ《ジェット・ポルカ》で攻撃できる。シナジーはしてるね」
《ゴウ・ブレイクドラゴン》みたいに無限攻撃、ってわけにはいかないけど、《ジェット・ポルカ》でシールドをブレイクしながら、《ドギラゴン》でユーちゃんのクリーチャーを攻撃していけば、似たようなことができる。
《ジェット・ポルカ》でちょっとずつシールドをブレイクしたから、ユーちゃんのシールドはこれで三枚。わたしの場には、まだ攻撃できる《エヴォル・ドギラゴン》《ジェット・ポルカ》《トップギア》が残ってる。
「ここで決めるよ! 《ドギラゴン》でTブレイク!」
「トリガーは……《デス・ハンズ》、一枚だけです……召喚して、能力で《ジェット・ポルカ》を破壊しますけど……」
S・トリガー一枚なら、大丈夫。
まだわたしには、クリーチャーが残ってるから。
「《シュトルム》でダイレクトアタック!」
☆ ☆ ☆
「あぅー、負けちゃいました……まさか、《ドギラゴン》で《ジェット・ポルカ》とコンボするなんて……」
「ぐ、偶然だよ。たまたま、手札に《ドギラゴン》が来たから思いついただけで……」
「でも、咄嗟の判断としてはよかったんじゃないかな。ユーちゃんも、今引きの可能性があったんだから、ハンデスに甘えないで《ジェット・ポルカ》を処理しておかなくちゃ」
「は、はい……」
確かに、《ゴウ・ブレイクドラゴン》は何度も手札から捨てさせられたけど、《ジェット・ポルカ》は破壊されなかった。それが、今回はいい方に働いたんだと思う。
「うー、小鈴さん! もう一回! もう一回、デュエマしましょう!」
「うん。いいよ。次こそは、コンボを決めて勝つからね」
「じゃあ私も、もう少し見ていようかな」
こうしてわたしたちは、長い時間、『Wonder Land』でデュエマをしていたのだった。
デッキの改造、新しいカード、まったく違う環境……わたしにとってはどれも新鮮で、すごく、楽しかった。
鳥さんとの約束があって、デュエマは、クリーチャーは怖いものでもあるけれど、少なくとも今日は違う。
この一日のデュエマというものは、とても楽しいものだった――
☆ ☆ ☆
数日後のある日。わたしが、一人で『Wonder Land』を訪れた時のこと。
「あの、詠さん」
「小鈴ちゃん。いらっしゃい、今日は一人なんだ。どうしたの?」
「さっき、パックを買って強そうなカードを当てたんですけど……」
「どれどれ? ……あー、これね。小鈴ちゃん、確かに弱くはないけど、絶妙というか微妙というか、強いとも弱いとも言い難いスペックのカードばかり引き当てるね」
「え……つ、使いにくいんですか、これ?」
「まあ、癖はあるかな。同系統のカードと比べると、使いやすい方ではあるけど……それで、これを使いたいの?」
「はい。でも、どうすればいいのかわからなくて……」
「そうだなぁ。これをコンセプトにするなら、《ゴウ・ブレイクドラゴン》みたいに、今の小鈴ちゃんのデッキにそのまま入れればいいってものでもないからね。もちろん、流用できるカードはあるけど、別にもっと色んなパーツを集めないと」
「た、大変そうですね……」
「こうなると、デッキ改造じゃなくてデッキ構築になるからね。デッキを作るのは一日にしてならず、だよ。コツコツカードを集めて頑張ろう。なにが必要かは、一緒に考えてあげるから」
「あ、ありがとうございます、詠さん!」
「いえいえー。それじゃあ早速だけど、こっちの能力発動を前提とするなら、相性のいいカードが1シーズン前の構築済みデッキに収録されててね――」
復帰勢って、現環境におけるカード資産がないといろいろ困りません? ガチ環境に足を踏み入れるにも、ファンデッキに甘んじるにも。カードにお金がかかるということがよくわかります。
それを思うとなんだかんだ、構築済みを買って、無理しない範囲でパック買って、それで当てたカードをちょいちょい入れ替えるのが、一番楽しくて健全な遊び方って気がします。