デュエ魔法少女マジカル☆ベル   作:モノクロらいおん

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 タイトルはアレだけど、むしろ内容的には前回よりも健全だと思う。
 不健全な話はちゃんとR18モノとして投稿するのでご安心ください。というかそういう話はたぶんもう本作では書かん。


43話「太陽を求めて -終篇・夜伽-」

「――と、いうことなんです」

 

 すべて話してしまった。

 きっとこれは、彼女の意志に反する。無関係な人、大切な人を巻き込んでしまうことを、彼女は悲しむだろう。

 しかし彼女を救うためには、仕方なかった。

 なんの説明もなく、自分たちの隠し事も明かさないで、彼に“あんなこと”を求めることなんて、とてもできなかった。

 謡は沈痛な面持ちで、自分たちのすべて――クリーチャーや、【不思議の国の住人】に関するすべてを、剣埼一騎に話した。

 一騎は静かに、真剣に、その話を聞いていた。

 

「あの……こんな話、おかしすぎて信じて貰えないかも知れないんですけど、でも、ふざけてるとか、悪戯とかじゃなくて、その……」

「いや、信じるよ。俺も色々と合点がいったしね。恋がなにか隠してるとは思っていたけれど……そういうことだったのか」

「……ごめんなさい」

「もういいよ、怒ってないから。お前は、約束を果たそうとしただけなんだろ」

「……うん……こすずと、約束、したから……誰にも……つきにぃにも、話さない、って」

「なんで俺が名指しなのかわからないけれど、気持ちはわかる。俺も同じ立場だったらそうするし、そうしているからね」

 

 頷く一騎。謡としては、意外なほどすんなりと受け入れられてしまい、面食らうが、しかしそれはそれで好都合ではある。

 こちらの事情を説明する以上に、大きく、根深く、残酷な問題が、待ち構えているのだから。

 

「それで、件の小鈴ちゃん。今は愛さん――恋の母親だけど――の部屋に寝かせてるけれど、なにがあったの?」

「……それは」

「それにつきましては、俺の方から説明致しましょう」

 

 今まさに、謡に包帯を巻かれている青年が、声を上げる。

 

「あなたは……えっと」

「スキンブルシャンクスと申します。訳あって、今は謡の……なんでしょう? お目付役でしょうか? をさせて頂いております」

「覗きが趣味の居候です」

「事実故、否定はしないでおきましょう」

「……語り手、とかではないんだよね?」

「はて、なんのことかさっぱり分かりかねますね。どちらかと言えば、俺は物語の語り手ではなく、紡がれた物語を閲覧する読み手でございましょう」

 

 重い空気の中、スキンブルだけはいつもの調子で、語り出す。

 小鈴にかけられた、悲惨極まる呪いを。

 

「小鈴様は今、『三月ウサギ』の毒に犯されている状態なのです」

「毒……」

「厳密には毒ではないのですが。しかし人の身には過ぎた情動は、容易く牙を剥く。アレは、無理やり獣の本能を呼び覚まし、本能に干渉する邪悪そのもの。幼き身には酷な仕打ちでありましょうや」

「う、うん……? えぇっと、いまいちよくわからないのだけれど……」

「誤解を恐れず直球で言えば、凄まじい効果を持つ媚薬のようなものです。今の小鈴様は、絶大な淫欲を催していることでしょう。発情した兎にも勝る獣の如く、です」

「はぁ!?」

 

 一騎は素っ頓狂な声を上げた。

 そして一同の顔を窺い、恐る恐る、尋ねる。

 

「え、その……冗談、じゃ……?」

「…………」

「冗談だったら良かったのでしょう。しかし申し訳ない、大真面目なのです」

 

 沈痛な面持ちの謡、また泣き出してしまいそうな恋。

 スキンブルは平静を装っているものの、その内心は窺い知れない。

 彼は慇懃に、軽くも冷徹な言葉を吐き出す。

 

「一騎様。これは我々としても忌々しい選択なのです。しかしこのままでは、小鈴様は邪淫という狂気に飲まれ、狂い果ててしまうことでしょう。それはとても……哀しい。その結末は、誰も望みません」

 

 友が、後輩が、思い人が、狂ってしまう。元の彼女には戻らず、彼女という人柄が、人格が、存在が、失われてしまう。

 そんな未来は、誰も望まない。

 

「三月ウサギの淫欲は、純然たる人間の生態、性質、本能、あるいは生理現象です。それを肥大化させただけで、鎮める方法そのものは変わらない。だからこそ悪辣でもあるのですが」

 

 そして、とスキンブルは続ける。

 

「彼女の欲望を受け止めるのに、あなた様以外に適任はおりますまい。あなた様が拒むというのならば、我々は彼女を、慰みきれない狂気に放り出すことになってしまう。そうでなくとも、彼女という可憐な花を、どこぞも知らぬ馬の骨に差し出さなくてはなりません」

「ま、待ってよ! そんないきなり、そんなこと言われても……っていうかなんで俺!?」

「さて、それを語るのは我々ではございませんので。しかし安心してくださいませ、人選に狂いはございません。そこは確約致します」

「いや、いや、でもさ。だからって、突拍子がなさすぎるというか……だって、つまり、それって。俺に、小鈴ちゃんと……」

 

 その先は、言えなかった。

 口に出すのも気恥ずかしい。それに、それを言ってしまうと、彼女との夜を、本当に想像してしまいそうだった。

 小さく幼い、乱れた彼女を。

 

「……ごめんなさい、先輩」

 

 謡は、目を伏せて、震えた声で、頭を下げる。

 

「私もこんなこと言いたくないんです。あの子はまだ中学生で、先輩だって……こんな形で、こんなことさせるなんて、そんなの私だって嫌、ですけど……」

「……つきにぃ」

「恋……長良川さん……」

 

 そうだ。これは、一騎と小鈴、二人だけの問題とも言えない。

 誰かが狂ってしまう、誰かと誰かが交わってしまう。その絶大な変化は、彼ら彼女らの取り巻く環境、そこから湧き上がる物語さえをも変質させてしまう。

 それは前進や成長、変化や進化、向上や進展とは違う。

 破滅への道だ。

 あるいは、歪に歪んだ黄泉路となるかもしれない。

 それが見えているからこそ、誰も、この展開を望まず、否定したいと悔やむのだ。

 

「俺の言葉は非常に軽薄に聞こえてしまうのでしょうが、嘘偽りはございません。これは、苦渋の決断、なのです」

 

 改めて、スキンブルは一騎に向き直る。

 彼も、腹から血を流そうと、身体に風穴が開こうと、この道筋をよしとしなかった者。

 その言葉の装いの下は、他の誰にも劣らぬほどに、重い。

 

「たとえあなた様が小鈴様の情動を宥めようと、それで彼女の受けた狂気が洗い流せる保証はございません。人の欲望など、他人が測れるものではございませんからね。しかし、このまま放置すれば、発狂は免れない。ならば少しでも助かる可能性に賭ける。これは、そういうことなのです」

 

 交われば助かる、というのは楽観的思考、希望的観測だ。

 それはあくまで、可能性。

 希望はあっても、その隣には必ず絶望も座している。

 光の裏には影があり、太陽は必ず月という影を生む。

 助からない。ただ、純潔に傷を付けるだけで終わるかもしれない。誰も彼もが傷ついて、一人の少女が狂って果てる。ただそれだけかもしれない。

 その上で、誰も望まぬことを為せと、保身を捨てろと、迫るしかなかった。

 

「……三月ウサギの呪印は、月が昇るときに最高潮に達します。刻限までは、僅かとはいえ時間はございましょう」

 

 僅かに時間は残されている。

 逆に言えば、残された時間は僅かばかり。

 

「残酷なことです。しかしそれまでに、ご決断を。これは、天国か地獄(Dead or Alive)ですらないのです」

 

 よりよい選択など、そこには存在しない。良い道と、悪い道があるわけではない。

 あるのは、天国と地獄などではない。楽園など、どこにもなく。

 与えられた選択肢は、ただひとつ。

 

「小鈴様を、地獄のような邪淫の狂気に放り出すか、彼女と共に地獄の一夜を超えるか――お選びください、一騎様」

 

 

 

 ――どちらの地獄を選ぶかだ。

 

 

 

                     ☆ ☆ ☆

 

 

 

「……先輩、行っちゃったね」

「えぇ。もっとも答えは聞いていませんので、どうするかは分かりかねますが」

「…………」

「おっと失礼。言葉にするのも酷でしたね」

 

 相変わらずの軽口。彼なりの慰め……ではない。純粋に彼の癖、あるいは、この奇妙な脳天気さは【不思議の国の住人】の習性、ある種の国民性のようなものなのかもしれない。

 

「……スキンブルはさ」

「はい?」

「小鈴ちゃんのこと……好き、なんじゃなかったの?」

「あぁ……えぇ、まあ、確かに」

 

 謡とスキンブルが手を組んだ理由。その最たるものが、伊勢小鈴だった。

 彼女のために、彼女のように。

 一人の少女を中心とした動機によって、無色透明な少女と、剥離した獣は結びついた。

 謡は少しずつだが、未来を見出している。

 けれども彼は、スキンブルはどうだろうか。

 仕方のないこととは言え、彼女は思い人と夜を共にする。それは、彼女を愛するスキンブルにとって、苦痛なのではないか。

 

「君は、これでいいのかなって」

「良くはないですね。しかし……えぇっと、なんと言いましょうか」

 

 今更ではあるが、謡なりにスキンブルを気遣ったつもりだったが。

 当人は、あまりピンと来ていないというか、どこか他人事のようで、謡も面食らう。

 嫉妬とかしないのだろうかと思ったが、彼の口からは、そのようなことは微塵も語られない。

 

「俺の小鈴様に対する“好き”の感情は、きっと、恋ではなく、ましてや性愛でもないのです」

「そうなの?」

「えぇ。俺はあなたの相棒で、あなたは俺のご主人。つまりはそういうことです」

「え……?」

「推し、というものです」

「推し!?」

「俺は彼女のファンなのですよ」

「ファン!?」

 

 いきなりなんのカミングアウトだ、と思ったが。

 その意味は、すぐに納得できた。

 

「俺は、伊勢小鈴という少女を取り巻く環境が、彼女の紡ぐ物語が、なによりも好物なのです。その生き様に憧れ、喜び、人生を謳歌する。それが、とても楽しい」

 

 一人の人間を、人間としてではなく、キャラクターとして。

 その人の人生を、生き様を、生きた人間としてではなく、物語として。

 それはある意味では、惨い視点なのかもしれないが。

 他ならぬ人ならざるスキンブルシャンクスだ。人の世への進出を目論む【不思議の国の住人】の中でも異端の出生であり、そして離反した獣だ。

 そう考えれば、その奇妙な視座も、わからなくもなかった。

 それに。

 

「あなただって、彼女という物語に感化されたクチでしょう?」

「そう……だね」

 

 それは、謡も同じだから。

 彼女の姉から聞く、彼女の物語。

 それに憧憬を抱いた謡もまた、伊勢小鈴という物語の美しさに惚れていた。

 ある意味では、彼女のファンなのだ。

 つまるところ、目指すところは違えど、根っこの部分では謡もスキンブルシャンクスも、同じだ。

 伊勢小鈴が、彼女の紡ぎ出す世界が、好きなのだ。

 

「君の言葉が変だから、私ちょっと誤解してた……けど、聞いてよかったよ、安心した」

「まさか俺が寝込みを襲うとでもお思いで?」

「襲うとは思ってないけど、着替え覗いたり、下からスカート覗いてるんでしょ、どうせ」

「それは当然」

「堂々と答えるな! この変態!」

「……とても痛いです。しかしご安心ください、謡には女性としての興味はございませんので。詠ならまだしも」

「私も姉ちゃんも同じ体型だよ! 私が貧相みたいに言うな!」

「あの、腹は、腹はやめてくださいませ。銃創に響くのです……とても痛い……」

 

 余裕ぶっているものの、謡から距離を取り始めたあたりで、拳を振るうのをやめる。

 本当なら、これはもっと他の者に振るうべきなのだ。

 哀しみも、嘆きも、苦痛もある。

 しかしやはり、最も胸の内に込み上げてくるものは――

 

「謡」

「ん……なに、スキンブル」

 

 唐突に、彼が語りかけてくる。

 

「実は俺、三月ウサギが嫌いなのです」

「そっかぁ」

「今回の件で、より嫌いになりました」

 

 謡は相棒の言葉に頷く。

 

「ですので、次、彼女に会うことがありましたら」

「……うん」

 

 同感だった。

 やはり彼は相棒だ。道筋は違えど、スタートもゴールも同じなのだから。

 謡とスキンブルシャンクス。

 人と獣。

 ふたりの言葉が、重なった。

 

 

 

『――ぶん殴ってやりましょう(やろう)

 

 

 

                     ☆ ☆ ☆

 

 

 

 身体が熱い。

 まったく知らない感覚が、身体を支配する。

 絶え間なく駆け巡る疼き。身体は渇いて、なにかを求め続けている。だけど、そのなにかは、わからない。

 手を伸ばしても満ち足りない。暗い闇の中では、自分の吐息しか聞こえない。

 頭の中は真っ白で、視界はずっと明滅してて。

 どうすればいいのか、わからなかった。

 息苦しくて、呼吸一つで灰の中が焼けるようで、溺れてしまいそう。

 指先ひとつで身体が跳ね、痺れる。

 助けて欲しいと願っても、声は届かない。

 ずっと一人で、孤独のまま、身体を震わせている。

 終わらない衝動が、ずっと続く。

 そう、思っていた、けれど。

 

「……小鈴ちゃん」

「いつき、くん……」

 

 あぁ、来てくれた。

 それはわたしが求めていたものなのかもしれない。

 未知な疼きを鎮めて欲しい。そう思った時に、頭の中に浮かんだ彼。

 

「いつきくん……わたし、わたし……!」

 

 はやる気持ちが抑えられない。身体も、心も、彼を求めている。

 ずっとずっと、好きだった。

 いつもは言えないそんな言葉も、今は、なにも躊躇うことなく口に出すことができる。

 回らない頭で思考は消えてしまい、勢いに任せて気持ちが伝えられる。

 やっと言えた。無意識の中に宿る意識で、わたしはそう思っていた。

 けれど。

 

「……君は、とても弱い子だ」

 

 彼は、なぜか憐れむように、わたしを見ている。

 力強い、だけど優しい腕に抱かれながら、諫めるような言葉が響く。

 

「内気で、臆病で、泣虫で、意志薄弱で、優柔不断で、情けないほどに、儚い」

 

 ……どうして?

 どうして、そんなことを言うの?

 語られる言葉は愛ではない。

 だけど彼は、とても真剣な眼で、わたしを見据えていた。

 

「でもね、その弱さも含めて、人は人なんだ。欠点も、弱点も、汚点も、それら全部をひっくるめた上で、その人は、その人らしくあり、魅力的なんだよ。そして、その弱さを乗り越えた時、人は輝くんだ――太陽みたいにね」

 

 太陽……

 彼がなにを言っているのか、よく、わからない。難しい。頭に、残らない。ぽわぽわする。

 

「まあ、君は太陽っていうには、あまりにも弱々しすぎるけれど……でも、ひだまりみたいな、ふわふわした輝きも、俺はいいと思う」

 

 弱いのが、いい……?

 わかんない。彼の言葉の意味が。

 わたしは、強く、なりたい。

 大人に、なりたいって、思う。

 せいいっぱい背伸びをして、高いところに手を伸ばして。

 そうやって、見せかけて。

 でも、わたしの、本音は……

 

「あぁ、そうさ。君の言葉は、君が言おうとすることは、本音なんだと思う。本当の気持ちなんだと思う」

 

 そう、そう。

 そうだよ。

 わたしはずっと、今までも、これからも、あなたが、いつきくんが……

 でも、恥ずかしいから、勇気が出ないから。

 だから、いつもは言葉にできなくても、口にできそうな今なら……!

 そう思うけれど、彼は、わたしの口を閉ざす。

 

「今は、君の言葉は、聞きたくない」

 

 言葉が紡げない。

 わたしの想いは、伝えられない。

 

「弱さを狂気で誤魔化した言葉に、価値はない。それは本当の意味で輝けるものではない、嘘偽りだから」

 

 うそ、いつわり。

 今のわたしは、わたしの言葉は、本物じゃ、ない……?

 だったらこの気持ちは、どうすればいいの?

 

「今の君の言葉は、君の告白は、受け取れない」

 

 踏み出せないまま、弱いまま。

 ずっと、胸の内に、秘めていなきゃいけないの?

 

「――だけど」

 

 彼の手が、温もりが、頬に触れる。

 ……あったかい。それに、優しい。

 あの時の、わたしの手を引いてくれたいつきくんが、やわらかな眼で、わたしを見つめる。

 

「君が、君自身の弱さを乗り越えた時、俺は必ず君と向き合うよ。そうやって成長し、進化した君は、紛れもなく本物で、素晴らしい、輝ける君だから」

 

 ……そっか。

 わたしは、確かに、弱かったんだ。

 苦しくて、辛くて、切なくて。

 その寂しさに、弱味に、甘えていた。

 焦っていたのかもしれない。怖かったのかもしれない。

 だけど、そんな心配はいらなかった。

 わたしが求めていたものは、この疼きを鎮めることなんかじゃなくて。

 わたしが不安だったのは、衝動でどうにかなってしまいそうな自分じゃなくて。

 あの人がかけてくれる、素朴な言葉だったんだ。

 

「約束だ。俺は絶対に、君を受け止める。その上で、君の気持ちに応えるよ」

 

 うん……約束

 わたしも、あなたにこの気持ちを伝えられるくらい、強くなるから。

 この夢から覚めて、泡沫のように忘れてしまっても。

 絶対に、必ず、あなたに追いつくから。

 

「だから、戻ってきて――」

 

 だから、待ってて――

 

 

 

 

 

「――小鈴ちゃん」

 ――いつきくん。

 

 

 

                     ☆ ☆ ☆

 

 

 

「――で、僕を捕まえてどうしようっていうんだい?」

「まあそう焦るな。捕って食おうというわけではない」

 

 地下へと続く螺旋階段。

 鳥籠の中で、聖獣は不満げに鳴く。

 剣呑な空気に見えて、まるで緊張感がない一人と一話という構図は、酷く滑稽であった。

 

「我々は、遥かなる太古からこの世界に誕生した種だ。しかし種としてはあまりに貧弱でな、今や強き人の世に紛れ、隠遁の営みを送るばかりだ」

「なんだか聞いたことのある話だね。それで、僕にどうしろっていうんだい。まさか、奇跡の力で君たちの種を繁栄させろとでも? そんな力は残ってないし、その代償は計り知れないよ」

「それは残念。そういう意図があったことも認めるが、しかし実のところ、それよりも優先しなければならんことがあるのでな」

「優先?」

「我らが日陰に潜む理由。陽の下に出ることが叶わぬ呪縛。『ハートの女王』という、困った母親がいるのだ」

「母親だって? 意味が分からないよ。それともあれかい、小鈴から聞いたことがある。モンスターペアレントってやつかい?」

「モンスターペアレント……はっ! いいな、怪物の親(モンスターペアレント)とは! 言い得て妙だ。あぁ、正しく奴はモンスターよな」

 

 愉快そうに笑い飛ばす帽子屋。

 しかしその声は慟哭のようでもあり、酷く渇いている。

 

「そう、そうだ。我らは奴に虐げられていると言ってもいい。我らはその存在を無視することができず、奴という存在によってこの日陰に身を潜めなくてはならない。公爵夫人は奴を殺すと発奮しているが……奴を殺すことなど不可能だ。女王は、そのような次元にいる存在ではない」

 

 親に勝る子はいない。【不思議の国の住人】が束になっても、ハートの女王を殺すことなどできやしない。

 あれは完全に異次元の存在。生命としての……否、存在そのものの“格”が違う。

 少なくともこの星、あるいは銀河系を巡ったところで、アレに叶うものなどいやしない、と断じてしまうほどに。

 

「だが貴様なら、女王を殺す、とまでは言わずとも、この星から放逐する手段があると睨んでいる」

「……なんだって? なぜ僕が?」

「ふっ、なんたって貴様は奴と対峙したことがあるはずだからな。まあオレ様は、神話だのなんだのはよくわからんが、バタつきパンチョウはそう語っていたよ」

 

 神の視座を持つ蟲、バタつきパンチョウ。

 その託宣の如き言の葉は、ハートの女王の過去を語った。

 断片的で、妄言のようで、支離滅裂な法螺話にも思えたが。

 あまりにも荒唐無稽な夢物語。あれを、人は“神話”と呼んだのかもしれない。

 そして、その神話で語られる空想は、ハートの女王と、聖獣との、結びつきを物語っていた。

 

「……ちょっと待って。星から追い出す、殺せない存在……それって、まさか……」

 

 そしてそれは、彼の記憶の中でも、接合する。

 遠い遠い過去の話。しかし決して忘れることのない、憧憬と惨劇。

 聖獣と呼ばれる彼は、なぜこの星に舞い降りたのか。力を取り戻す意味とは。

 その根源を辿る“元凶”があるとすれば、それは――

 

「デッドスター、か?」

「名前なぞ知らん。あれは我らの母君であり暴君――『ハートの女王』だ。だが、星を喰らうもの、星を殺すもの、星の死、あるいは死した星そのもの(Dead Star)……その呼び名は悪くないな」

「……どうして」

 

 ――思わぬところに、行き着いた。

 太陽を求めて羽ばたいた雛鳥は、片翼となっても飛び続け、地に墜ちても、もがき続けた。

 そうして出逢ったのは、遙かな大空に浮かぶ太陽ではなく。

 

「どうして――“あいつ”がこの星にいるんだッ!」

 

 空を闇で覆い、地を黒く塗り潰す、邪神だった。

 聖獣は啼く。悲痛と、悔恨を、叫ぶ。

 

「そんなことオレ様に聞くな。母君の過去などオレ様は知らん」

「だってあいつは、十二神話が……アポロン様が、その身を捧げて追放したはずなのに……いや、まさか。追放して、その先が――この星だった……!?」

「そちらの事情は知らんが、オレ様と貴様、我らは仲良くできない種だろうが、お互いに女王が邪魔なのは確かだろう」

 

 聖獣の慟哭も、帽子屋には、届かない。

 螺旋の闇の中で、雛鳥の嘆きが虚しく響き渡る

 

「……無理だ。あれは、十二の神話が集い、自らの存在と引き換えにして、ようやく外の宇宙に放り出すことしかできなかった存在だ。語り手でしかない……しかも、片翼である僕だけじゃ、どうにもならないよ」

「ふむ、まあその言葉だけで十分だ。逆に言えば、その神話とやらだか、語り手とやらだかが集えば、どうにかなるのか」

「そんな簡単な話じゃない。あの星は遠すぎる。僕は運が悪すぎた。彼らが集うこともなければ、集ったところで太刀打ちできるとも限らないんだ」

「いいさ、希望があるということが重要なのだ。先が暗闇の世界で、人は生きられんからな」

 

 絶望に悲観する聖獣、希望に楽観する帽子屋。

 並行的なままに交わらぬまま、二人はカツ、カツ、と下へ下へと、暗い森の、闇の底へと降りていく。

 

「ひとまず女王陛下と謁見だ。貴様も思うところはあるだろうからな」

「できれば、あんな奴とは二度と会いたくはないけど……」

 

 いつもの狂った調子のまま、帽子屋は、意気消沈する鳥籠を揺らし、女王の玉座へと参じる。

 深い森の奥のような部屋。誰も立ち入らず、立ち入れない、禁忌の領域。

 ……の、はずだったのだが。

 

「む?」

 

 漆黒の闇の中、ぼぅっと浮かび上がるひとつの影。

 この暗黒の森の中では、あまりに矮小で、儚い、弱い存在。

 

「代用ウミガメ。そこでなにをしている」

 

 彼女は、応えない。

 帽子屋に背中を向けたまま、部屋の奥に鎮座する黒き森の巨木――『ハートの女王』と、向き合っている。

 

「……お母さん。アタシ……お母さんに、聞きたいことが、あるんです」

 

 本来ならば、ハートの女王はまともに向き合うだけで正気を削がれる存在。

 内気で、臆病で、泣虫で、意志薄弱で、優柔不断で、情けないほどに儚い。そんな代用ウミガメが、まともに立ち向かえるはずがない。

 しかし彼女は今、臆することなく女王と面会している。

 

「……お母さんに、聞きたいことが、あるんです」

「おい、代用ウミガメ。女王を見るな。貴様では、正気が……」

 

 否。

 正気を失われるのではない。正気を失われないのでもない。

 女王の狂気に当てられ、狂ってしまう、などということでは、なかった。

 

「お母さん……アタシ、とても、辛いんです」

 

 代用ウミガメは、告白する。

 

「アタシ、どうすればいいんですか……」

 

 そして、女王に問いかけた。

 

「すごく辛くて……友達、だって……大切な人、だって、思って……でも、アタシは、いない方が、よくって……大切な人も、友達も、傷つけて、失って……」

 

 それに、それに、とむせび泣く。

 すすり泣く声が、黒い森に木霊する。

 それでも、女王は応えない。

 

「アタシは……人、じゃない……わかってます、わかってた……でも、でも! 人を喰らう、怪物で、だから……いちゃ、いけなくて、みんな、傷つけて……なにも、食べられなくて……あの人みたいに、おいしくなくって……あの人が、おいしそうに、なっちゃい、そうで……!」

 

 支離滅裂で、滅茶苦茶な言葉の羅列。

 心の内を吐露しただけの、形にならない言葉の泥水。

 ぐちゃぐちゃで、むちゃくちゃな、有象無象。

 代用ウミガメは、母に問う。懺悔し、告白し、希う。

 しかし女王は、応えない。

 

「なんでアタシ……産まれて、きちゃったんですか……なんで、生きて、生き残って……こんなになってまで、生きなきゃ、いけないんですか……こんなに、辛くて、苦しいなら、生きていたくなかった……産まれたく、なかった、のに……」

 

 苦悩するくらいなら、悩みなど持ちたくない。

 苦痛を味わうくらいなら、痛みを受ける生などいらない。

 未来への絶望は、無へと回帰する願望となり、精神を蝕む。

 慟哭は森の中で儚く消える。

 そして、女王は、応えない。

 

「お母さん……応えてください、なにか、言ってください……お母さん!」

「おい、代用ウミガメ」

 

 帽子屋の問いかけにも、彼女は応えない。

 ずっと、狂ったように、女王に語りかける。

 それは女王の狂気に犯されたから――ではない。

 

「……寝てるんですか。だから、応えてくれないんですか……なら」

 

 彼女は既に、正気を捨てた。

 理性も、知性も。

 心まで、砕けていた。

 代用ウミガメは、一歩、進み出る。

 恐怖と、淫蕩と、狂気に支配された、大樹に手を伸ばす。

 キラリと煌めく二つの針。女王に刺さる時針に、指先が触れた。

 

「待て、代用ウミガメ!」

 

 帽子屋は声を荒げ、手を伸ばす。

 しかし、それはあまりにも遅く、遠い。

 のろまな亀の手は、狂った帽子屋よりも早く、女王を縛る時計針(くさり)を掴んだ。

 

「ねぇ、答えて……答えて、くださいよ――」

「それは、それはやめろ――」

 

 針を、引き抜く。

 そして。

 

 

 

「――お母さんッ!」

 

 

 

 呪縛が、解き放たれた。

 

 

 

「――え?」

 

 

 

 刹那。

 闇が溢れ出す。

 真っ黒な影が、縦横無尽に蠢く。

 天を覆い尽くし、地を塗り潰す、絶対なる闇。

 大いなる者が脈動し、鳴動し、鼓動する。

 この空間に満ちる“狂気”が、あらゆる恐怖と忌避を、生物の本能へと植え付ける。

 

「こ、これは、なんだ? なにが起こってるんだ?」

「非常に不味いことになった。女王が……動き出した」

 

 ずっと、ずっと、ずっと。永久とも言えるほどの長い歳月、女王を封じてきた――その時間を止めてきた帽子屋だったが。

 たった一度の狂行で、女王を眠らせる時計の針は抜け落ちてしまった。

 ちゃらん、ちゃりん、と、金色の時計針が音を立てる。

 代用ウミガメは、蠢動する女王の暗黒の威容に、呆然と立ち尽くしている。

 そんな彼女に、蠢く闇は、迫る。

 

「や……ぇ、な、なに、これ……っ!」

「眠りネズミではないが、Fuck、だ。おい代用ウミガメ! とっとと逃げろ薄鈍!」

 

 帽子屋の声は、彼女の届いたのか。

 そんなことはどうでもいい。届いていようが、届いていなかろうが。

 代用ウミガメは、足を止めたまま。樹枝のような蠢く闇に絡め取られ、取り込まれていく。

 喰らうように、啜るように、代用ウミガメは、女王に飲み込まれていく。

 

「や、ぁ……たすけ……ぼうし、や……さん……」

「こちらに気付いているならば応答が欲しかったところだな、同胞よ」

 

 帽子屋は足を一歩前に出すが、その先に進むことは叶わない。

 救出に向かおうにも、帽子屋の足を止めるように、槍の如き黒い枝葉が、彼の侵攻を阻む。

 

「ちぃ……!」

「大丈夫なのか!?」

「まったく大丈夫ではないな」

 

 ぐじゅぐじゅと、肉塊は泡立ち、うねる。

 ハートの女王は、捕らえた代用ウミガメを、少しずつ、少しずつ、ゆっくりと、ゆったりと、黒い(うろ)の中へと、押し込んでいく。

 

(……なぜ女王は、代用ウミガメを取り込んでいる……? 喰らっているわけではないようだが……)

 

 女王が子喰らいをしないとは言い切れないが、あのような矮小な命を食すようなことはしないはず。それは、砂糖の一粒を選別して舐めることと同義。

 ならば、なぜ。

 なぜ女王は、代用ウミガメを選び、我が身に取り込もうとするのか。

 食事ではない。それ以外に、理由があるとすれば……

 

「……依代、か?」

 

 帽子屋とて、女王のすべてを知っているわけではないが。

 これだけの大いなる邪神ならば、ただで顕現するはずもない。

 

「成程、成程、成程な! 代用ウミガメならば、成程、我が身の代替たる依代に相応しい!」

 

 思考が繋がっていく。萎んだ脳が、枯れた回路が、躍動する。

 そうして出た答え。帽子屋は、女王に問うた。

 

「そして女王陛下よ! 貴様、まだ寝ているな?」

 

 女王からの返答はない。

 しかし帽子屋は確信していた。女王は“完全ではない”と。

 

(女王がまだ寝ているのなら話は早い。依代を引き剥がし、機能不全に陥らせることができれば、まだオレ様の針で止まるやもしれん)

 

 とはいえ、代用ウミガメは遠い。手を伸ばして届くような距離ではない。

 そもそも相手は偉大なるハートの女王。仮に接近できたとしても、帽子屋では筋力(STR)で対抗はできないだろう。

 それならば、依代そのものを、無為にする他ない。

 

「殺すか。代用ウミガメ、世界のために死ね」

 

 懐から素早く銃を抜く。

 撃鉄を降ろし、照準を合わせ、引き金に指を掛ける。

 躊躇いなく、容赦なく、情もなく。

 機械のように同胞を射殺す――が。

 

キィンッ

 

 銃弾は、弾かれる。

 

(シールド)……」

 

 代用ウミガメと混ざり合おうとしているハートの女王の正面に展開された、五枚の盾。

 城壁にように並んだそれを見て、帽子屋は感嘆の息を吐く。

 

「はぁ、こうなってしまうか。女王陛下におかれましては、このような卑俗な帽子屋と決闘とは、一体どのような気の迷いだろうか。気でも狂ったとしか思えないな。あぁ、狂った頭はお互い様か」

 

 銃を仕舞い、代わりの凶器を手に取る。

 偉大な母なる神を、紙の束で倒せるとも思えないが、女王が覚醒していないのであれば、勝機はある……のかもしれない。

 実力は未知数。邪神の遊戯、そんなものはとうに人智を越えているのだから、当然だ。

 それでも帽子屋は、臆することなく立ち向かう。

 恐怖は、とうの昔に投げ捨てた。

 畏怖は、いつかどこかに廃棄した。

 信仰は、遙かな時の中で消え去った。

 最後に残ったのは、虚無という狂気と、堕落した願いだけ。

 

「狂気を振り撒く女王と、狂気で枯れたオレ様。決闘するには荷が勝ちすぎているが、光栄だな」

 

 切り札などはない。あるのは鬼札、手の内すべてが忌むべきジョーカー。

 女王との対面。

 お茶会と呼ぶにはあまりに悍ましいが。

 ここにいるのは、条理の外にいる邪神と、狂気に犯されたイカレ帽子屋(マッドハッター)

 どこもかしこも壊れて狂っている。

 さぁ、邪神を放逐する儀式の時間だ。

 紅茶のように血を啜り、遊戯の札を散らしながら。

 狂ったお茶会を、始めよう。

 

 

 

Get out of Wonderland(貴様は出禁だ)――『ハートの女王』(Ishnigarrab)

 

 

 

                     ☆ ☆ ☆

 

 

 

「《ポセイドン・ザ・ゴールド》を召喚! 能力でGR召喚だ」

 

 人ならざる人でなしたちの館の地下で、世界の存亡を賭けた決闘が始まった。

 人外の身で人の星を守る側に立つ帽子屋の場には《ヤッタレマン》《ポセイドン・ザ・ゴールド》――人の夢が詰まった化身が並ぶ。

 代用ウミガメを黒雲の如き肉塊に押し込めたハートの女王。その周囲には、世界を破滅に導く四つの岩塊が浮かぶ。

 そして、女王から滴る黒い雫がマナを生み、帽子屋の知識をそぎ落とす。

 しかし精神が擦り切れた帽子屋に、喪われる正気は元よりない。口元に不敵な笑みを浮かべたまま、帽子屋は女王を嘲弄する。

 

「母君とはいえ、貴様なぞ空想の邪神よ。我が同胞を喰らうなど片腹痛い。来い、《ゴッド・ガヨンダム》。マナドライブ発動だ」

 

 手札を投げ捨て、帽子屋は失われた知識を取り戻す。

 造られた神。空想された神。

 帽子屋は自らの創造神さえもを、道化のように嗤う。 

 

 

 

ターン3

 

 

ハートの女王

場:《ジェニー》

盾:5

マナ:4

手札:2

墓地:1

山札:23

 

《FORBIDDEN STER》

左上:封印

左下:封印

右上:封印

右下:封印

 

 

帽子屋

場:《ヤッタレマン》《ゴールド》《ガヨンダム》

盾:5

マナ:3

手札:3

墓地:2

山札:25

 

 

 

「う、ぁ……《龍罠 エスカルデン》……!」

 

 ずるずると、女王の中に引きずり込まれる代用ウミガメ。

 嗚咽を漏らしながら現れる、化石となった龍。それが新たな豊穣を約束する。

 

「《ガヨウ神》を召喚だ。二枚ドローし、ディスカード。さらに二枚ドローだ。ターンエンド」

 

 

 

ターン4

 

 

ハートの女王

場:《ジェニー》《エスカルデン》

盾:5

マナ:6

手札:2

墓地:1

山札:20

 

《FORBIDDEN STER》

左上:封印

左下:封印

右上:封印

右下:封印

 

 

帽子屋

場:《ヤッタレマン》《ゴールド》《ガヨウ神》《ガヨンダム》

盾:5

マナ:4

手札:5

墓地:3

山札:20

 

 

 

 豊穣のマナを伸ばしていくハートの女王に対し、弱者たる帽子屋は手札を増やし智慧を振り絞る。

 しかし強大で圧倒的な邪神の前には、叡智も取るに足らないささやかなものとして、毟り取られる。

 

「《悪魔龍 ダークマスターズ》……!」

「おっと?」

 

 増やした手札も闇へと消え去った。

 智は狂気に飲まれ、正気と共に葬られる。

 

「パーツが抜き取られたか。これは痛い。流石は女王、惰眠を貪っていようと強かだな」

 

 しかし帽子屋は正気を失わない。いやさ、既に正気を失ったことで張り付けた狂気の貌で、ただただ嗤うだけだ。

 

「オレ様のターンだ。2マナで《オケ狭間 寛兵衛》を召喚。能力で《バツトラの父》をGR召喚する。さらに追加だ、マナゾーンから《バングリッドX7(クロスセブン)》を召喚!」

 

 《バングリッドX7》。マナゾーン、あるいはバトルゾーンに合計六体以上のジョーカーズが存在すれば、マナから召喚できるジョーカーズ。

 攻撃時にマナを増やし、マナゾーンを手札のように扱える、小型ながらも強力な能力が詰め込まれたクリーチャー。

 手札を奪われようと、知識を削ぎ落とされようと、帽子屋は止まらない。

 それならば、(マナ)を削ってでも、力を捻り出すまでだ。

 

「ま、とはいえこれでターンエンドだ。殴るのはリスキーだからな」

 

 

 

ターン5

 

 

ハートの女王

場:《ジェニー》《エスカルデン》《ダークマスターズ》

盾:5

マナ:7

手札:1

墓地:2

山札:19

 

《FORBIDDEN STER》

左上:封印

左下:解放

右上:封印

右下:封印

 

 

帽子屋

場:《ヤッタレマン》《ゴールド》《ガヨウ神》《寛兵衛》《バングリッド》《ガヨンダム》《バツトラの父》

盾:5

マナ:4

手札:1

墓地:6

山札:19

 

 

 

 

「は、《ハンゾウ》……! 《ヤッタレマン》を、パワー、マイナス……封印解除で、《バツトラの父》を、破壊……!」

「ふむ。《バングリッド》ではなくそちらか。《バングリッド》は回数制限がある上に、マナも減るからな。あるいは、女王。貴様の思索も長い眠りで腐ったか?」

 

 などと軽口を叩きつつも、依然として帽子屋が厳しい立場であることに変わりはない。

 手札はほとんどない。マナも乏しい。クリーチャーは多いが、小型ジョーカーズばかりを並べて、女王の前で見栄を張っても虚しいだけ。

 女王に喰われたリソースを、どうにか取り戻さなくては、勝機は見出せない。

 その方法は、あるにはある、が。

 

「……まあ、仕方あるまいか」

 

 と、帽子屋は緩く決断を下した。

 リスキーな選択ではあるが、どのみち前に進まなくてはならないのだ。

 たとえ母君たるハートの女王が相手であろうとも。

 

「《バングリッド》の能力発動。マナゾーンから《スゴ腕プロジューサー》を召喚、《全能ゼンノー》をGR召喚」

 

 身を削り、クリーチャーを並べていく帽子屋。

 そして、嘶きが響き渡る。

 

「《ポセイドン・ザ・ゴールド》で攻撃、Jトルネードを発動!」

 

 飛沫を散らして駆ける海馬。その雫は螺旋し、渦巻き、帽子屋のクリーチャーを巻き込んでいく。

 

「《ガヨウ神》を手札に戻し、パワーをプラス2000、ついでにいらんがWブレイカーとなる」

 

 《ガヨウ神》を戻した大渦は、《ゴールド》の推進力となり、より速く、強く、蹄を鳴らして駆けていく。

 味方を手札に戻すことで力を得るJトルネード。しかし帽子屋としては、攻撃は余分に過ぎない。

 本当の目的は、クリーチャーを手札に戻すこと。登場時の能力を使い回し、失われたリソースを取り戻すことである。

 

「Wブレイク!」

 

 故に攻撃は余計であり、むしろ相手に手札を与えるような行動は控えたかった。

 そしてその懸念は、現実となってしまう。

 

「……S・トリガー!」

「あぁ……まあ、そうなるだろうな」

「《Dの牢閣 メメント守神宮》! 《月の死神ベル・ヘル・デ・スカル》!」

 

 予想していた、予感していたことではあった。

 とはいえ二枚ともがS・トリガーというのはついていない、と帽子屋は自嘲する。

 

「封印解除……《ベル・ヘル・デ・スカル》の能力で、《ガード・ホール》を、回収……!」

「そうか。ターンエンドだ」

 

 

 

ターン6

 

 

ハートの女王

場:《ジェニー》《エスカルデン》《ダークマスターズ》《ハンゾウ》《スカル》《メメント》

盾:3

マナ:7

手札:2

墓地:3

山札:18

 

《FORBIDDEN STER》

左上:解放

左下:解放

右上:解放

右下:封印

 

 

帽子屋

場:《ゴールド》《寛兵衛》《バングリッド》《プロジューサー》《ガヨンダム》《ゼンノー》

盾:5

マナ:4

手札:2

墓地:7

山札:18

 

 

 

「呪文《超次元ガード・ホール》! 《ベル・ヘル・デ・スカル》をシールドに戻して……《時空の支配者ディアボロスΖ(ゼータ)》!」

 

 旧き世界の支配者――《ディアボロスΖ》。これはこれで、厄介なクリーチャーが出て来てしまった。

 だがそれ以上に問題なのは、女王を囲む城壁。

 帽子屋のクリーチャーを処理するよりも、自分のクリーチャーをシールドに送り、守りを増強したハートの女王。それも、シールドに埋められたのは《ベル・ヘル・デ・スカル》だ。

 最大の罠を仕込まれてしまった。あれを踏み抜けば、その瞬間、《FORBIDDEN STER》が禁断爆発し、帽子屋のクリーチャーはすべて封印される。

 リソースを取り戻すついでに殴りにいこうと思えば《メメント》で止められ、どうにか掻い潜る術を見出す前に、攻撃を牽制されてしまった。

 

「《ダークマスターズ》で、《ゴールド》を、攻撃……!」

「さてどうするか。守るか殺すか、《スゴ腕プロジューサー》でブロック。《スゴ腕プロジューサー》が場を離れたことでGR召喚だ、《ゴッド・ガヨンダム》」

「《ハンゾウ》も、攻撃……!」

「《寛兵衛》でブロック……か?」

 

 《ゴールド》を守ることにどれだけの意味があるのか、帽子屋自身にも疑問ではあったが、ブロッカーを残す意味も薄い。

 女王がその気になって攻めてくれば、ブロッカーなど有象無象の塵芥と同じ。能動的に攻撃できるアタッカーの方がまだ仕事する。

 とはいえ、岩塊がほとんど剥がれ墜ちた禁断が浮かんでいる限り、アタッカーも迂闊には動けない。

 

「はてさて、殴れば禁断爆発確定、手をこまねいていても爆発必至、か。どうしたものか」

 

 攻めに移れば禁断爆発、守りに入っても禁断爆発。

 帽子屋の動きは、ハートの女王に縛られてしまった。

 邪神の呪縛が、仔山羊たちを、雁字搦めに締め付ける。

 

「《ガヨウ神》を召喚。二枚ドロー、一枚ディスカード、二枚ドロー」

 

 手札を増やしていく帽子屋。しかし遅きに失している。

 いくら手札を増やそうと、禁断爆発は止められない。

 

「《ゴールド》で《ハンゾウ》を攻撃だ。Jトルネード、《ガヨウ神》を手札に戻す。これでこのターン、こいつはブロックされない。そのまま《ハンゾウ》を破壊する」

 

 《ポセイドン・ザ・ゴールド》が逆巻く水流と共に、《ハンゾウ》を踏み砕く。

 攻めれば終了、守れば終焉。

 逃げ場のない八方塞がりの状況では、帽子屋と言えどもほんの僅かに延命する可能性に縋るしかなかった。

 

「ターンエンド」

 

 

 

ターン7

 

 

ハートの女王

場:《ジェニー》《エスカルデン》《ダークマスターズ》《メメント》《ディアボロスΖ》

盾:4

マナ:8

手札:1

墓地:5

山札:17

 

《FORBIDDEN STER》

左上:解放

左下:解放

右上:解放

右下:封印

 

 

帽子屋

場:《ガヨンダム》×2《ゴールド》《バングリッド》《ゼンノー》

盾:5

マナ:5

手札:6

墓地:11

山札:11

 

 

 

「ターン、開始時に、《ディアボロスΖ》を……覚醒……!」

 

 バトルゾーンのカードか、あるいはマナを取り込み、《ディアボロスΖ》は覚醒する。

 しかし《ディアボロスΖ》が取り込まんとしているのは、《FORBIDDEN STER》。

 世界を終わらせる最終禁断は、如何に《ディアボロスΖ》と言えども、吸収することは叶わない。

 だが、《FORBIDDEN STER》から溢れ出る力は、確かに貪っていた。

 最終禁断の力を喰らい、旧世界の支配者は、覚醒する。

 

 

 

「《最凶の覚醒者デビル・ディアボロスΖ》……!」

 

 

 

 《ディアボロスΖ》が覚醒する……しかし、それだけでは、終わらない。

 覚醒した《デビル・ディアボロスΖ》が、炎に包まれる。

 

 

 

「超無限進化――《超時空ストーム(ゲンジ)XX(ダブルクロス)》!」

 

 

 

 それは、二振りの大剣を手にした、灼熱の龍。

 刀身を繋ぐ鎖は呪縛のようにうねり。

 交わる十字は二重に重なり、裏切りを示すかの如く燃える。

 

「さらに、Dスイッチ……! クリーチャーを、すべて、タップ……!」

「ここで使うのか。となれば、殲滅か」

 

 帽子屋が呟いた直後、熱戦が降り注ぐ。

 

「《超次元ガード・ホール》! 《全能ゼンノー》をシールド送りに……《時空の凶兵ブラック・ガンヴィート》を、バトルゾーンに! 《バングリッドX7》を破壊……!」

「ぬぅ……っ」

「《ストームG》で《ポセイドン・ザ・ゴールド》を、《ダークマスターズ》で《ゴッド・ガヨンダム》を、攻撃……! 破壊!」

 

 次々とクリーチャーが惨殺されていく。

 虫のように潰され、鼠のように縊られ、貝のように貪られ、怪物のように惨めに死ぬ。

 残ったのは、《ゴッド・ガヨンダム》一体。

 人造の薄弱な神。空想の産物でしかないそれは、もはや力もないただの紙切れ同然。

 邪悪な神の前では、それ一枚ではとても太刀打ちなど、できるはずもない。

 

「これはもう、無理だな」

 

 深く帽子を被り直す。

 そして、手札を見ているのかいないのか、それを放るように場に投げ込んだ。

 

「《ヤッタレマン》を召喚、続けて《ヤッタレマン》。コストを下げて《バングリッド》、追加で《寛兵衛》。GRから《ヤッタレロボ》だ」

 

 無造作に、乱雑に、ゴミのように並べられるクリーチャーたち。

 なんの価値もない捨て石。諦観した男がばら撒いた夢は、千の仔を孕む邪神にとっては、ただの塵でしかなかった。

 

 

 

ターン7

 

 

ハートの女王

場:《ジェニー》《エスカルデン》《ダークマスターズ》《メメント》《ストームG》《ガンヴィート》

盾:4

マナ:8

手札:1

墓地:6

山札:16

 

《FORBIDDEN STER》

左上:解放

左下:解放

右上:解放

右下:封印

 

 

帽子屋

場:《ヤッタレマン》×2《バングリッド》《寛兵衛》《ガヨンダム》《ヤッタレロボ》

盾:5

マナ:6

手札:2

墓地:13

山札:10

 

 

 

「メテオバーン覚醒――《超覚醒ラスト・ストームXX》!」

 

 

 

 一度目の爆発。

 星が生まれるかの如き超新星の炎が爆ぜ、《ストームG》は、《ラスト・ストームXX》へと覚醒する。

 

「《ダークマスターズ》……召喚!」

 

 続けて、二度目の爆発。

 星が死ぬほどの大爆発。最後の封印が剥がれ墜ち、世界に滅亡と終焉をもたらす黒き炎が爆ぜる。

 

 

 

「禁断爆発――《終焉の禁断 ドルマゲドンX》!」

 

 

 

 《FORBIDDEN STER》は世界最後の日を迎える。

 灼熱の炉心を燃え上がらせ、その身を覆う楔を解き放ち、宇宙の果てまで届く邪悪を飲み込み、恐怖と狂気の具現として、顕現する。

 

「クリーチャーを、すべて……封印!」

 

 星が降り注ぐ。爆熱の隕石のような、悪意と害意の流星が。

 それらは帽子屋の投げ捨てた有象無象のクリーチャーをすべて飲み込み、二度と還らぬ岩塊へと、魂を封じてしまう。

 そして封印は、純粋な戦力の減衰だけに留まらない。

 

「ふぅ……山札がだいぶ薄くなってしまったな」

 

 帽子屋自身(プレイヤー)の魂までも、擦り切れていく。

 残り山札は四枚。

 帽子屋とて、クリーチャーが並べば、こうなる未来はわかっていたはず。

 けれどもそれは、遅かれ早かれだ。

 6時を指し示したまま止まった時計を抱く、イカレ帽子屋(マッドハッター)には、どうでもいいことだった。

 

「さてオレ様は、擦り切れて死ぬのか、それともひと思いに殺されるのか。どっちだ? なぁ、ハートの女王。貴様は我が子をどのように殺すのだ?」

 

 答えなんて期待していない。

 怪物の遙か先に在るような邪神に、慈悲も容赦もあるはずがないのだから。

 

「ぼ……し、や、さん……」

「む?」

 

 けれど微かな少女の声が木霊する。

 苦悶と悲愴を嘆きくように、絞り出した声が小さく響く。

 

「たす……け……」

「あぁ、代用ウミガメか。なんだまだ生きていたのか。とっくに女王に意識を剥奪されたと思っていたぞ。女王は微睡みでも深く寝入っているのか? いや、それとも、貴様の強い生への執着故か?」

 

 まあどちらでもいいがな、と帽子屋は淡々と答える。

 自我が残っていようがいまいが、最も死に近いのは帽子屋だ。

 この不条理は、覆らない。

 

「あ、あぁ、や……ら……《ラスト・ストーム》で……攻撃!」

「ほぅ、しっかり殺してくれるようだ。これはありがたい。感謝と感激は嵐の如く、母君の慈愛には涙が出る」

 

 揺れる意識の中で、《ラスト・ストーム》が昏い嵐を巻き起こす。

 時空が歪み、捻れ、裂け、新たな命が、仔が、クリーチャーが、溢れ出す。

 《ディアボロス》が再び君臨し、《シンカイヤヌス》は《ヤヌスグレンオー》裏返り《ギャラクシー》が加速する。勝利の名を冠する三体は重なり、繋がり、《ガイアール・オレドラゴン》と成った。

 その、直後。

 

 

 

「ワールド――ブレイク!」

 

 

 

 世界を滅ぼす一撃。

 下等な命を容易く焼き払う熾烈な大火は、一瞬で帽子屋を守るシールドを打ち砕いてみせた。

 灰すら残らず、破片は総て溶け落ちる。

 数多の悪魔、あるいは精霊、巨竜。

 邪神を奉ずる狂信の眷属は、一様に帽子屋への殺意と害意で満ちていた。

 

「……あぁ、成程な」

 

 だが、しかし。

 

「生きろ、とは残酷なことだ。死ね、と殺される方がまだ気持ちがいい。希望を餌に絶望の門を開くとは、なんと意地の悪い。まあ、オレ様はカードの結果に殉ずるのみだがな!」

 

 その手の内に、光が、収束した。

 

「S・トリガー発動!」

 

 その数は三枚。

 狂った三柱の光が、暗く黒い森の闇の中、立ち上る。

 

「一枚目、《バイナラドア》。《ダークマスターズ》には消えて貰おう!」

 

 虚空へと続く門扉が、悪魔龍を消し飛ばす。

 

「二枚目、《松苔ラックス》。《エスカルデン》を拘束する!」

 

 滴る雫が、繁茂する緑藻が、古の外殻を纏う蟲を縛り付ける。

 

「三枚目、《りんご娘はさんにんっ娘》。《スゴ腕プロジューサー》を出し、GR召喚だ!」

 

 新たな道化が戦場に生まれ、それがさらなる人造の命を吐き出す。

 

「そら、出たぞ。《全能ゼンノー》! これで貴様の《ギャラクシー》と《オレドラゴン》は攻撃できんな」

 

 現れたのは、《全能ゼンノー》。

 クリーチャーはバトルゾーンに出たターンに攻撃できない。そんな当たり前の規律を記しただけの、正しく道化のようなクリーチャー。

 しかし、歪んだ理を正すことで、ハートの女王の眷属は、少しずつ、勢いが衰えていく。

 

「あ、ぁぁ……が……ぁ、《ガンヴィート》!」

「《スゴ腕プロジューサー》でブロック。場を離れたからGR召喚だな」

 

 生き汚く耐え凌ぐ帽子屋だが、まだ足りない。

 女王の場にはまだ、《ジェニー》と《ドルマゲドン》が残っている。

 帽子屋にはシールドがなく、ブロッカーは《松苔ラックス》のみ。

 故に、ここで捲る天運がすべてだ。

 

「……はっ!」

 

 しかし、帽子屋は不敵に笑う。

 愉快そうに、皮肉のように嘲笑する。

 

「やはり貴様は死ね、ハートの女王」

 

 そう宣言し、一閃。

 光の筋が迸る。

 

「《バツトラの父》をGR召喚!」

 

 それは、とても小さな星の戦士。

 この星を守る、希望とも言うべき存在。

 

「《ドルマゲドン》――!」

させんよ(stop)

 

 矮小で、人の手で生み出された人造の命なれども。

 小さな身で、破滅の一撃を、止めてみせる。

 これで、すべて、止まった。

 女王の下した処刑も、帽子屋はなんのその。

 のらりくらりと、槍も鉈も断頭台も。

 すべて躱し、生き延びる。

 

「ふっ、はは、はははははははははっ! 笑わせてくれるな、ハートの女王! よもや代用ウミガメすらも飲み込めぬまま、オレ様を殺そうとしたのか? 笑止千万! 公爵夫人の思想は、存外、正しかったのかもしれん。三月ウサギの快楽も多少は理解できんでもない。女王殺すべし。そして、貴様をぶち抜けるのならば、それは最高の快感なのだろうからな!」

 

 高らかに、狂ったように嗤う帽子屋。

 銃口を女王に向ける。

 処刑されるべきは貴様だと告げ、手にした弾丸を込め、放つ。

 

 

 

「マスター必殺トルネード――《ジョルネード・グランドライン》!」

 

 

 

 銃弾は嵐の如く。大水と大風が渦巻き、逆巻き、吹き荒れる。

 戦場のなにもかもを飲み込み、子も親も、纏めて竜巻の中へと押し込められた。

 

「《全能ゼンノー》を戻し、呪文詠唱! 《ドルマゲドン》を巻き込んでやろう!」

「あ、あぁ、や……やだ、やだ、いやだ……《ドルマゲドン》は、死なない……生きて、る、生き残る……!」

「知っているさ。そら、GR召喚だ! 来い、《せんすいカンちゃん》!」

 

 コアを二つと、シールドを一枚。

 我が身を、命を削り、《ドルマゲドン》は生き残る。

 我が子と同じように、生き汚く、望むままに、生き続ける。

 

「オレ様のターン! さて、死刑判決だ、女王陛下?」

 

 しかし生きる意志があろうとも。

 それ以上に、帽子屋には、女王を殺す妄執があった。

 カチャリと、再び銃口を向ける。

 

「貴様の罪状は以下略! 刑罰は銃殺刑! さぁ死ね! 『ハートの女王』!」

 

 嘶きが轟く。

 機械のような、それでいて鋼の意志。

 それは、正義と呼ぶにはあまりにも邪悪で。

 善性と呼ぶにはあまりにも堕落している。

 それでも誰かは、彼を英雄と呼ぶのかもしれない。

 永久の如き遙かな妄執であっても、それが、誰かの願いに繋がるのならば。

 滅び行く世界を、救うのならば。

 

 

 

WANTED,Dead or Alive(生死を問わず撃ち殺せ)――《ジョリー・ザ・ジョニー》!」

 

 

 

 執行人が駆けつける。

 罪と罰を背負うには、あまりにも正しすぎる銃士(ガンマン)

 それでも彼は、狂信者ならざる、狂人たちの願いを一身に背負う。

 生死は問わず、女王を殺す。滅亡の淵に立った世界を救う。

 それは彼らの使命ではないが。

 彼らが生きるためには必要な行いであり。

 そして、その事実は、彼らの手に委ねられた。

 

「《せんすいカンちゃん》で攻撃するとき、Jトルネード! 《バイナラドア》を手札に戻し、その能力を再発動! 《ドルマゲドン》を夢の方に飛ばしてやろう!」

「残る……死なない、死なない、死なない……!」

 

 女王の代弁者の如く、代用ウミガメの口から零れ落ちる言の葉。

 しかし帽子屋も、彼に従う執行人も、そんなことは意に介さず、狂気と凶器を振りかざす。

 

「さぁさ! オレ様の山札は残り一枚! 貴様の破壊神は丸裸! 後がないなぁ! オレ様も! 貴様も!」

 

 我が身が擦り切れることも厭わず、暗雲に銃弾を撃ち込んでいく帽子屋。

 枯れた身体は崩壊寸前。しかし女王を守る暗雲も晴れた。

 邪神の心臓は、無防備に曝け出されている。

 

「神仏も三度目は正直だ。邪神と言えど、貴様とて神だろう? 故にこれが三度目だ、我が子と共に眠るがいいさ。『ハートの女王』」

 

 あの世で子守歌でも歌っていろ、と母に銃を向ける。

 思うがままに、殺意に従い、引き金を引く。

 自分を産んだ母親だとか、同胞を取り込んでいるとか、そんなことは関係ない。

 ただ己の使命感――否、この世に生を受けてから持ち続けている、本能に殉じるのみ。

 

「《ジョリー・ザ・ジョニー》で攻撃」

 

 死刑執行。弁護はスルー、判決はパス。

 ただただ、死に殺す、という結果のみが求められ、弾丸は放たれた。

 

 

 

「マスター――ブレイク!」

 

 

 

 ブロッカーをすり抜け、シールドを貫き、そのまま、銃弾は飛んでいく。

 まっすぐ、まっすぐに。

 女王の胸に、囚われた姫のような同胞へと、向かっていく。

 彼女らを守るものは、もはや存在しない。

 数多のブロッカーも、砕け散ったシールドも、なにも彼女を護らない。

 理を歪める道化の奇術と、邪神に秘められた絶望と滅亡が、世界に不条理を振り撒き、死滅する。

 

 

 

「《ドルマゲドン》を、破壊――!」

 

 

 

 その一発が胸を穿つことで、世界の滅亡は防がれる。

 かくして世界の存亡を賭けたちっぽけな大戦は、誰も知らない昏い森の下で、地の底で終焉を迎えるのだろう。

 

 

 

 ――ただ一つの、誤算がなければ。

 

 

 

(いや、いや、いやだ……)

 

 帽子屋はずっと、ハートの女王を見ていた。眠りにつき、微睡みの中にいる女王を。

 しかしその表層にいるのは他でもない、代用ウミガメだった。

 既に正気が飛んでいても、彼女は完全狂ってはいない。

 少なくとも、人並みの恐怖と、自己中心的な生への渇望を持つほどには。

 

(死んじゃう、死んじゃう……アタシ、死んじゃう……)

 

 向けられた銃口。身を守る術がない。

 このままでは、彼は、この身を、女王ごと撃ち殺すだろう。

 確かに、産まれてきたことを呪った。

 生きることは苦しくて、生き残ってしまった自分に絶望して、自分を産み落とした母を恨んだ。

 だが、しかし。

 生きることへの苦しみはあっても、誕生への怨嗟はあっても。

 自分なんて、産まれてこなければ良かったと、思っていても。

 

(まだ、まだ……アタシは、アタシは……!)

 

 

 

 ――死にたいわけでは、なかった。 

 

 

 

(死にたく、ない――!)

 

 

 

 あまりにも身勝手で、傲慢で、我儘な願い。

 それほどに、彼女の精神は崩壊し、微かな苦しみにも耐えられなくなっていた。

 生きるのが苦しい、けれど、死ぬことも忌避する。

 そんな矛盾が、影を射す。

 

「――なんだと?」

 

 確かに、《ジョニー》の弾丸は放たれた。

 女王に向かって放たれ、その心臓を、代用ウミガメ諸共、撃ち抜いたはず。

 そのはず、なのに。

 

「なぜ、貴様は生きている? ハートの女王」

 

 女王は、生きていた。

 代用ウミガメも、死んでいない。

 銃創はなく、傷一つない身のまま、彼女たちはそこにいる。

 さしもの帽子屋も、呆然と立ち尽くしている。喫驚か、絶望か、あるいは不理解か。

 その答えを示すように、影が落ちた。

 邪神と対峙するこの場には、あまりにも似つかわしくないコミカルなもの。

 それは木偶だった。真中に風穴を開けた、木偶人形。

 それが、ぼとり、と墓地へと落ちる。

 

 

 

 ――《身代わり人形トレント》。

 

 

 

「……はっ」

 

 思わず、笑みが零れた。

 嘲弄するよりも、自虐するように。

 糾弾するよりも、称賛するように。

 

「そうか、死にたくないか。それが、代用か、創造か、貴様の力の産物なのか、あるいは、女王の権能か、未来予知かは知らんが……オレ様を殺してでも、世界を滅ぼしてでも、死にたくないか。代用ウミガメ」

「ち、ちが……ア、アタシ、アタ、シ、は……ごめ、ちがって、そうじゃ、なくて……ご、ごめ、ごめん、なさ……!」

「まあいいさ。死にたくないと思うのは生物の本能。貴様がその嘆願で、今こうして生きていることを、オレ様は知っている。それは咎めんさ。その一手は実に貴様らしい。代用品、我が身、我が命の代わりとして、身代わりの木偶とはな。あぁ、いい、いい。それも一興というものだ。それはそれでいいだろう」

 

 淡々と、機械的に、無情に、帽子屋は言葉を紡ぐ。

 生きる苦しみを抱いたちっぽけな少女。

 その絶望のすべてが、そこには詰まっていた。

 

 

 

「ただ、貴様の生への渇望が、我々を――世界を滅ぼすというだけだ」

 

 

 

 もうなにも、届かない。

 狂人の手も、少女の嘆願も。

 

「あ、ぁ、ア……ァ……」

 

 すべてが終わった、終焉の刻。

 正気を失っても、知性も理性もなにもかも失っても。

 人格(キャラクター)だけは保っていた、代用ウミガメ。

 しかし、それも、もはや限界だった。

 神は求める。創造主は賽を振る。

 カランコロンという音は、崩壊の旋律。

 歪んだ心は精神を犯し、魂が砕け散る。

 発狂を超え、代用ウミガメは、遂に至ってしまった――

 

 

 

「ああぁぁぁぁぁァアぁアアアアアアアアァァァァァァぁぁぁァァァァァァっ――ッ!」

 

 

 

 ――永久の狂気(ロスト)へと。

 

 

 

                     ☆ ☆ ☆

 

 

 

 ――さて、なにが起こったのか。

 一瞬、あるいはとても長い時間、意識が飛んでいた。もしかしたら死んだのかもしれないと思ったが、死とは無。なにか感じるものがあれば、きっとそれは死ではないはず。

 記憶もある。女王が動き出し、同胞を取り込み、それを止めようとした。

 しかしそれは叶わなかった。冷静に考えれば当然だ。かの女王を、単身で制止するなど、それこそ神話のような偉業だ。

 とはいえその失敗で、死んだと思ったが、どうも生きているらしい。

 女王の姿はない。あぁそうだ、彼女は、飛び去ったのだった。

 我らが同胞の一人を――『代用ウミガメ』を、依代として。

 

「――おい! 帽子屋!」

 

 声が、聞こえる。

 酷く遠くから聞こえるような気もするが、振り向けば、彼女はすぐそこにいた。

 『公爵夫人』。麗しの美貌を、怒りで醜く歪ませ、彼女はこちらに怒声を飛ばす。

 

「いつまで呆けている! この惨状はなんだ!? なにがあった!」

 

 惨状? と、ぐるりとあたりを見回す。

 そして気付く。地下は荒れ果て、黒い森は瓦礫の山へと変貌していた。天井は穴が空き、真っ暗な夜の闇が広がっている。崩落寸前で、一刻も早く避難しなければならないような、危うい状態だ。

 にも関わらず、むしろ狂った同胞達は、こぞってこの場に集っていた。なんとも偏屈で頭のおかしな連中だと、胸中で嗤う。

 

「……女王が動き出した。天井をぶち抜いて、そのままどこかへ消えたのだろうさ」

 

 半ば投げやりに応える。

 公爵夫人は、目を見開いていた。

 それもそうだろう。アレを最も危険視し、殺害に躍起だったのは、他ならぬ公爵夫人なのだから。

 

「な……女王が……!?」

「あぁ」

「なんたること……女王が目覚めようという時に、貴様はなにをしていた! 帽子屋!」

「殺そうとしたが、無理だった。寝起きどころか未だ微睡みの中にいる女王も、その依代になった代用ウミガメさえもな」

 

 激昂する公爵夫人に、淡々と、機械的に還す帽子屋。

 死体のように冷めていく帽子屋だったが、それに対し、熱が籠もる。

 そして彼の言葉に、ピクリと反応する者がいた。

 

「おい、帽子屋」

 

 『眠りネズミ』だ。

 彼は、彼にしては不気味なほどの静けさで、帽子屋に問う。

 

「カメ子、どうしたって?」

「代用ウミガメなら、女王の依代として取り込まれ、共に去った。あれはもう無理だな。助からん。よしんば引きずり出したとして、自我は死んでいるだろうさ」

「違ぇよ馬鹿野郎!」

 

 眠りネズミは怒声を上げる。

 かつてないほどに瞳孔を見開き、喰い殺さんばかりの憤怒の形相を浮かべていた。

 

「てめーは! カメ子を、どうしようとしたつってんだよ!」

「殺そうとしたが、まあ、殺せなかったな」

「ざっけんな! てめーはカメ子を助けず、見殺しにしようとしたってのか!?」

「結果的にはそうなるのか? いや、そもそもその結果は失墜に終わった故、そうではないとも言えるな」

「この……!」

 

 拳を握り締め、眠りネズミは帽子屋を睨み付ける。

 そして、我慢ならないと、彼に噛みつく。

 

「ふざけんじゃねぇ! このイカレ野郎が!」

 

 寝入る鼠は火鼠に。

 苛烈な炎の如く燃え、帽子屋を糾弾する。

 

「てめーは! 僕らをなんだと思ってる! ダチじゃねーのかよ! 仲間じゃねーのかよ! 同胞って、同志って、てめーはそう言っていただろうがよ!」

「あぁ、言ったな。無論、その事実は変わらんし、そうだと思っている」

「だったらなんで、あいつを、カメ子を助けなかった!」

「元々その気はなかった。女王の対処で精一杯だったからな。生きていれば御の字、といったところか。そもそもオレ様は、代用ウミガメごと女王を殺すつもりだったが」

「てめぇ……ジョークじゃねーなら、ぶっ飛ばすぞ」

「それは残念だな、事実だ」

「ッ!」

 

 宣言通り。

 眠りネズミは怒りに任せ、動こうともしない帽子屋に拳を振るう、が。

 パシンッ、とその腕は絡め取られる。

 

「やめなさいドブネズミ。帽子屋さんに手はあげさせないわ」

「Fucking! クソがッ! 離しやがれクソビッチ! こいつは一発殴らねーと僕の気が済まねぇ!」

 

 眠りネズミの勢いはあまりにも熾烈だが、鼠の矮躯はあまりにも小さい。

 相手が三月ウサギであろうとも、捕まってしまえば、振りほどけない。

 ただ怒りのままに、叫び散らすだけだった。

 

「僕はてめーを許さねーぞ、帽子屋! てめーはイカレてるが、そんでもあいつは、てめーに縋ってた。てめーを頼りにしてた! それを、あいつごと殺そうとしただと? ふざけんじゃねぇバーカ! てめぇは! 僕たちを! なんだと思ってやがる!」

 

 媚びずに怒り、嘆きは憤怒へ、願いも激昂し、苦しみ激憤し、後悔の前に憤怒がある。

 火鼠は、烈火そのもの。衝動のすべてを熱に、炎に注ぎ込み、叫ぶ。

 裏切りへの、心からの、怒りを。

 

 

 

「僕は、僕らは――てめーのオモチャじゃねぇんだ!」

 

 

 

 火種は大きく燃え盛った。しかし、燃え続けるだけの薪はなかった。

 眠りネズミは、ありったけの憤怒を吐き出すと、荒い呼吸を繰り返す。

 

「あぁ、畜生……眠気もぶっ飛ぶほどムカつくぜ。クソッタレ」

 

 脱力した身体で、三月ウサギの腕を振り払う。

 帽子屋への、不信と怒りの火種は燻ったまま。

 眠りネズミは、諦めにも似た、侮蔑の眼差しを、帽子屋に向ける。

 

「……僕は降りる。もうてめーにゃ付き合ってらんねぇ」

 

 そして、彼に――彼らに、背を向けた。

 

「カメ子探して来るわ。じゃあな」

 

 と、言うが早いか。

 誰も彼を止める間もなく、眠りネズミは、瞬く間に地下から、暗い森から――不思議の国から、立ち去っていった。

 ハートの女王と――代用ウミガメと、同じように。

 

「ネズ公……」

「ネズミのおにーさん」

「なによあいつ。キレ散らかすだけキレ散らかして出て行くなんて、無作法にもほどがあるんじゃない?」

 

 怒りをぶちまけ、ありったけの火の粉をぶちまけて立ち去っていった、眠りネズミ。

 ほとんどの者は呆気にとられ、とある者は無関心、とある者は不安げに、とあるものは非難がましく、彼の背中を見つめていた。

 そして、

 

「……さっすが。ネズミ君には、先を越されちゃったのよ」

 

 彼に同調する者も、いた。

 

「帽子屋さん。(アタクシ)からも、蟲の三姉弟の長女として言わなければなりません」

 

 蟲の三姉弟が長女、『バタつきパンチョウ』は、朗らかで、煌々と照るような明るい笑みも消して、かつてないほど真剣で、真摯な眼差しで、帽子屋と向き合った。

 野性味ある佇まいは可憐に正し、礼節を以て粗野は抑えて、言葉は乱さず整え、制された衝動を宣う。

 

「あなたはなにも悪くはない。あなたの擦り切れた願いも、濁り切った思想も、そうなってしまうに至った悠久の時も、私は知っている。だから、たとえあなたがウミガメちゃんを殺すとしたとしても、私はあなたを許せる」

 

 けどね、とバタつきパンチョウは続けた。

 理解はできる。彼には同情する。

 だが、それと同じくらい、哀しく、痛ましいことだって、あるのだ。

 

「私だって、友達が食い物にされるのは耐えられない……哀しい、のよ」

 

 ほんの少しだけ、彼女の眼が揺れる。

 世界の真理でもなく、遠くの宙でもなく、女王に代わり不思議の国の頂点に座していた男を見つめて。

 あらゆる世界を見渡す蟲は、悲哀を謳う。けれども、確かな決意で、告げた。

 

「だから私も、私たち蟲の三姉弟も――あなたから手を引きます」

 

 背後に侍る弟たちは、なにも言わない。

 姉の言の葉を、ただただ、静聴している。

 けれども周囲の反応は、眠りネズミ以上に、どよめいた。

 困惑が渦巻き、騒然と混乱に包まれ、森の中でざわめく。

 しかしそれらのことは一切意に介さず、バタつきパンチョウは、別れの言葉を紡ぐ。

 

「あなたとのお茶会はとても楽しかった」

 

 笑顔は見せず。

 静かな虫のさざめきのように。

 

 

 

「ありがとう、そして、さようなら。イカレた帽子屋(マッドハッター)さん」

 

 

 

 帽子屋からの返事はなく。

 そのまま、彼女は踵を返す。

 

「ちょ、ちょっと、パンチョウ……!」

「……うさちゃんも、元気でね」

 

 らしくもなく躊躇いげに手を伸ばそうとする三月ウサギだが、その手は届かない。

 しかしバタつきパンチョウは、彼女には、柔らかな微笑みを見せた。

 

「行くのよ、トンボ、ハエ」

「……御意に」

「はいはい」

 

 しかしすぐに、弟たちを引き連れ、不思議の国より退散する。

 その道中、彼女は、弟たちに背を向けながら、懺悔のように、ぽつりと零した。

 

「……ワガママなお姉ちゃんでごめんね」

「いつものことだ。私は気にしないよ」

「案ずるな。姉上の決めた答えなら、ぼくらは信じて従うさ」

「……ありがと」

 

 それが、最後に残った言葉。

 『ハートの女王』と『代用ウミガメ』『眠りネズミ』に続き、蟲の三姉弟――長女『バタつきパンチョウ』、長男『燃えぶどうトンボ』、次男『木馬バエ』の三名も、【不思議の国の住人】から除名。自ら、この地を去った。

 代用ウミガメという兵站が、眠りネズミという戦士が、蟲の三姉弟という叡智が、不思議の国から失われた。

 女王の失墜、あるいは飛翔――覚醒を皮切りに、この小さな国は衰退していく。

 あまりにも急激な変化。見えてしまう破滅のビジョン。

 『ヤングオイスターズ』の長女は、問わずにはいられなかった。

 たとえ彼が、壊れていたとしても。

 

「ど……どうすんだよ、ダンナ……!」

「どうにもならんな。もはや女王は止まらんだろう。故に我らは、ただその時を待つだけだ。これは、定められた因果なのだ」

 

 こんなものは、茶番に過ぎない。

 帽子屋の中にあるものは、虚無。

 諦観で支配された虚空だけが、彼の中に広がっている。

 それもそのはず。

 彼は知っているから。女王の力を。

 彼は信じているから。女王の邪悪さを。

 不条理でも、これが摂理であり、真理。

 屋敷は崩れ、土地は荒廃した。

 信心は失墜し、民衆は去って行く。

 そんな国の行き着く未来は、ただひとつ。

 そしてそれは、この星すべてに、伝播する。

 

 

 

「ほどなく世界は――滅亡する」

 

 

 

                     ☆ ☆ ☆

 

 

 

「――――」

 

 

 

 身体は熱く……ない。

 むしろ、冷たくて気持ちいいくらいだった。

 

「んん……っ」

 

 いや、そんなことはない。寒い、寒いよ。

 でもそこまでイヤじゃない。死にそうなほどの寒気とかではなくて、いつまでもぬくもりが欲しくなるような寒さだ。

 

「ふぇ……?」

 

 なんだか、眩しい。

 寒さの中に、微かな暖気を感じる。

 視界は真っ暗。ゆっくりと、少しずつ、その先の光に手を伸ばす。

 

「……朝?」

 

 あぁ、朝だ。

 朝かぁ。

 ……えっと、そう……そうだね。

 はい、おはようございます。

 

 

 

 

 

 

 ――伊勢小鈴です。




 書いているうちにマスター・ブレイカーの裁定がわからなくなったから、調べたらよりわからなくなりました。裁定って難しいね。結局、同時破壊なのか、順番破壊なのか……シールドが同時ブレイクだから、最初に対象を選んで、それから同時破壊だと思うんだけど。
 凄いクライマックス感あるけれど、まだ今章自体は終わりじゃないんですよね……もっとも、次章がマジカル☆ベルとしては最終章になるとは思います。
 それでは今回はこの辺で。誤字脱字や感想等ありましたら、遠慮なくどうぞ。
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