デュエ魔法少女マジカル☆ベル   作:モノクロらいおん

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 7話後編です。
 ハーメルンの形式だと、投稿数に対する話数が設定されたりするので、前後編で分けるとそちらとの齟齬が生まれてしまうのが難点ですね……まあ、だからわざわざ、サブタイトルに話数をつけているのですが。
 このくらいのゴーイングマイウェイは許してください、というわけでロリコンによる誘拐事件、これにて終結です。


7話「誘拐事件だよ ~後編~」

「ぅ……ぁ……」

「小鈴! しっかりするんだ、小鈴!」

「無駄、ダ。娘の動きは完全に、束縛、シタ」

 

 無機質な声が響きます。人間のものではない、無感情の声でした。

 

「《束縛の守護者ユッパール》……!」

「…………」

 

 見るからにこの状況はおかしいです。無機質で、機械的な物体が、宙に浮いています。およそ現代的ではない、かといっておとぎ話のようでもない、奇妙な光景。

 《ユッパール》。確か、クリーチャーをタップさせて、アンタップさせなくさせるクリーチャーだったはずです。対象を、文字通り“束縛”し、寝かせてしまう能力を持つ、クリーチャー。

 その力を使って、子供たちを誘拐する時にも、抵抗できないように意識を奪ったということでしょうか。

 そして今も。

 

「危ないところだった。まさか、クリーチャーに協力する人間がいるとは思わなかった。加えて、ここまでの力を持っているとは」

「油断大敵、ダ」

「想定外だったのだ。油断はしていない」

 

 誘拐犯の、協力者。

 ロードリエスは主犯。子供たちを誘拐する実行犯。

 そしてユッパールは、そのサポートをする協力者。

 あの姿は確かにクリーチャーですけれど、この声は聞き覚えがあります。

 そう。あの部屋に出入りしていた――“男の人”です。

 

「さて、では今度は逃げられないように、厳重に縛りつけておかなくてはな。幼子に傷がつくのは好ましくないが、やむを得ん。ユッパール」

「ウム」

 

 ユッパールは近づいていきます。厳重に縛りつける。その意味は、ちゃんとはわかりませんけれど。

 けれども、そうなってしまうのは、とても、とても困るような気がします。

 なら、そろそろ頃合いです。

 私の大切な人を助けるために。

 おとぎ話の英雄のように、登場しましょう――

 

 

 

「――小鈴さんっ!」

 

 

 

                     ☆ ☆ ☆

 

 

 

「小鈴さんっ!」

 

 声が聞こえた。

 友だちの声。この舌足らずで、それでいて明朗軽快な声は……

 

「ユー……ちゃん……?」

 

 身体は相変わらず動かない。縛られているみたいに、手足がぎゅうぎゅうと痛むし、なんだか痺れているような感覚もある。

 精一杯顔を動かして見えるのは、白い肌に煌めく銀髪の女の子。ユーリアちゃん――ユーちゃんだ。

 

「なんで……来ちゃったの……」

「ユーちゃんは、小鈴さんを助けたいからです」

「……?」

「だって、あの時も小鈴さんは、ユーちゃんを助けてくれたから……その恩返しは、まだできてません」

 

 はっきりと、ユーちゃんは言った。

 あの時。それが、なにを意味しているのか。頭の中もぼんやりとしているけれど、それがわからないわけじゃなかった。

 

「……ユーちゃん、あの時のこと、覚えて……?」

 

 ユーちゃんは笑っている。笑顔を向けている。

 純真無垢で朗らかな、いつもの笑顔を。

 

「Ja! もちろんです! 忘れるわけないじゃないですか! あれが、小鈴さんとのはじめてのデュエマだったんですよ!」

 

 そういえば、ユーちゃん、わたしとデュエマしたことは、覚えていたっけ……

 じゃあ最初から、ずっとわたしのこと、知ってて……

 ……ダメだ。頭が朦朧とする。上手く、考えられない。

 ユーちゃんの声だけが、ごちゃごちゃした頭の中で反響する。

 

「トリさん!」

「僕のことかい?」

「お名前を知らないので、小鈴さんと同じように呼ぶんです。トリさん、ユーちゃんでも戦えますか?」

「ただ戦うというだけなら問題ない。ただし、戦場をセッティングするだけだ。僕からの援助は期待しないでくれ」

「じゅーぶんです!」

「忸怩たる思いだけどね。しかし小鈴が動けない今、君に託すしかない。頼まれてくれるかい?」

「もちろんですっ! 小鈴さんは、ユーちゃんを助けてくれました。今度はユーちゃんが、小鈴さんを助ける番ですっ! 」

 

 ユーちゃん……

 小さな身体で、勇ましくクリーチャーたちに立ち向かっている。

 あんなわけのわからない存在に、物怖じしないその姿は、すごく輝いていて、ちょっとだけカッコよくも見えた。

 

「次から次へと……子供は元気で素晴らしいな。その姿は輝かしいぞ」

「休んでいろ、ロードリエス。こちらで処理、スル」

「うむ。頼んだ」

 

 ユーちゃんと、ロリコンさんの協力者さん。二人が向き合った。

 そして、私に代わってユーちゃんが、協力者さんと、デュエマを始める――

 

 

 

                     ☆ ☆ ☆

 

 

 

「《デス・ハンズ》をチャージ、ダ。ターンエンド」

「ユーちゃんのターンですね! 《月下城》をチャージです! Ende(ターン終了)!」

「《ホーリー》をチャージ。《墓守の鐘ベルリン》を召喚、スル。ターンエンド」

「《ドルゲドス》をチャージです! 2マナで《ブラッドレイン》を召喚(フォーラドゥング)です!」

 

 ユーちゃんと、協力者さんのデュエマです。

 協力者さんのマナゾーンは光と闇のカードが見えます。でも、まだよくわからないです。

 

 

 

ターン2

 

協力者

場:《ベルリン》

盾:5

マナ:2

手札:3

墓地:0

山札:29

 

 

ユー

場:《ブラッドレイン》

盾:5

マナ:2

手札:4

墓地:0

山札:28

 

 

 

「《クロック》をチャージ。3マナ《コアクアンのおつかい》を詠唱、スル」

「水のカードですね! 三つの文明のデッキ……?」

「山札の上から三枚公開。《オール・イエス》《クルスタ》《ファンク》を手札ニ。ターンエンド」

 

 これはたぶん、前に詠さんが話していた、白青黒(ドロマー)というデッキです。しかも、あのクリーチャーでも呪文でもないカード、ユーちゃんの記憶にあります。

 《至宝 オール・イエス》。これも詠さんからちょっとだけ聞いたことあります。あれが、あのデッキのメインだと思います。

 だったらその邪魔をしたいのですけども……

 

(うーん、《ベルリン》がいるから《ジェニー》が使えないです……)

 

 《墓守の鐘ベルリン》は、手札破壊を防ぐクリーチャーです。

 正確には、手札を捨てさせると、墓地のカードを二枚、手札に戻しちゃうクリーチャーですが、手札を落としても戻されちゃうなら、意味ないです。

 ブロッカーでもあるので、攻めづらいですが……それならそれで、取れる手段はありますよ!

 

「《月下城》をチャージ! 《ボンバク・タイガ》を召喚! マナ武装3で《ベルリン》のパワーを3000下げて破壊します!」

「やられた、カ」

「《ブラッドレイン》でシールドブレイクです! Ende!」

 

 邪魔なクリーチャーを破壊するのは、ユーちゃんの、闇文明の得意技です。

 このまま一気に攻めちゃいますよ!

 

 

 

 

ターン3

 

協力者

場:なし

盾:4

マナ:3

手札:6

墓地:2

山札:25

 

 

ユー

場:《ブラッドレイン》《ボンバク・タイガ》

盾:5

マナ:3

手札:3

墓地:0

山札:27

 

 

 

「《リリィ》をチャージ。《クルスタ》を召喚。さらに《至宝 オール・イエス》をジェネレート、ダ。ターンエンド」

Gelegenheit(チャンス)です! 《解体人形ジェニー》を召喚です! 手札を見せてください!」

 

 協力者さんの手札には《希望の親衛隊ファンク》《セブ・コアクマン》《束縛の守護者ユッパール》《停滞の影タイム・トリッパー》の四枚。

 どれもいやらしいカードですけど、ここで捨てさせるなら……

 

「《コアクマン》です! 墓地(フリートホーフ)へ!」

 

 手札補充のカードを捨てさせちゃいます! 手札を増やされるのは、手札を破壊するユーちゃんにとっては嫌ですからね。

 そして、どんどん攻めますよ!

 

「《ボンバク・タイガ》でブレイクです!」

「S・トリガー……《クロック》を召喚、ダ」

「あぅ、S・トリガーですか……」

「ターンを強制終了、スル」

 

 

 

ターン3

 

協力者

場:《クルスタ》《クロック》《オール・イエス》

盾:3

マナ:4

手札:3

墓地:3

山札:24

 

 

ユー

場:《ブラッドレイン》《ボンバク・タイガ》《ジェニー》

盾:5

マナ:4

手札:2

墓地:0

山札:26

 

 

 

 《クロック》は、とっても強いS・トリガーです……出てきたら、ターンが強制的に終わっちゃいます。

 それがブレイクの途中でも、です。絶対に攻撃を止めてしまうS・トリガーです。

 

「《ファンク》をチャージ。3マナで、コイツを召喚、ダ。《束縛の守護者ユッパール》、召喚」

 

 協力者さんは、協力者さん自身――《ユッパール》を召喚しました。

 

『《ユッパール》の能力発動、ダ。《ブラッドレイン》をフリーズ、スル』

 

 バチバチッ!

 激しい音が鳴り響くと、ユーちゃんの《ブラッドレイン》が倒れてます。身体が動かせないように見えます。

 

『さらに、《クルスタ》に《オール・イエス》をクロス。《クルスタ》で《ボンバク・タイガ》を攻撃、ダ』

 

 クリーチャーを寝かせた後、すかさず攻撃。

 しかも、ただの殴り返しではないです。

 

『この時、《オール・イエス》の能力が発動、スル。相手の手札を一枚墓地、ヘ』

「手札が……」

 

 これが、《オール・イエス》の強いところです。

 クロスすれば、どんなクリーチャーでも攻撃するだけで手札破壊ができるようになっちゃいます。パワーも大きく上がりますし、これは厄介です。

 

『さらに《クロック》で《ブラッドレイン》を攻撃。破壊、ダ。ターンエンド時、《クルスタ》をアンタップ』

「むむむ、苦しいです。けど、あきらめませんよっ! ユーちゃんのターン! 3マナで《ボーンおどり・チャージャー》です! 山札の上から二枚を墓地へ! チャージャーはマナにおいて、Ende!」

 

 墓地に落ちたカードは、《ゴワルスキー》と《ブラッドレイン》ですか。

 《クルスタ》は《オール・イエス》でブロッカーになっているので、《ジェニー》では勝てません。攻撃せずにターン終了します。

 

 

 

ターン4

 

協力者

場:《クルスタ+オール・イエス》《クロック》《ユッパール》

盾:3

マナ:5

手札:2

墓地:3

山札:23

 

 

ユー

場:《ジェニー》

盾:5

マナ:6

手札:0

墓地:5

山札:23

 

 

 

『《トリッパー》をチャージ。《セブ・コアクマン》を召喚』

「! 手札、増やされちゃいました……」

『《ユッパール》と《カレイコ》を手札に加え、《おつかい》を墓地、ヘ。ターンエンド』

 

 協力者さんは攻撃しませんでした。S・トリガーが嫌だったのでしょうか?

 

「ユーちゃんのターン! 《ジェニー》を進化(エヴォルツィオン)! 《夢幻騎士ダースレイン》です! 山札の上から三枚を墓地へ!」

 

 でも、こっちは攻撃しますよ!

 いいところに引けた《ダースレイン》。手札も増やせます。

 能力で墓地に落ちたのは、《デスマーチ》《デス・ハンズ》《ロックダウン》です。

 

「来ましたよ! 《デスマーチ》を手札に! そのまま墓地進化(フリートホーフ・エヴォルツィオン)! 《ブラッドレイン》を《死神術士デスマーチ》召喚です!」

 

 《ダースレイン》から《デスマーチ》の連続進化!

 このまま一気にどんどん攻めちゃいます!

 

「《ダースレイン》で攻撃(アングリフ)です!」

『……《クルスタ》でブロック、ダ』

「相打ちですね! だったら《デスマーチ》でもブレイク!」

 

 これで協力者さんのシールドは残り二枚です。少しずつ、勝ちに近づいています!

 

 

 

ターン5

 

協力者

場:《クロック》《ユッパール》《コアクマン》《オール・イエス》

盾:2

マナ:6

手札:4

墓地:5

山札:19

 

 

ユー

場:《デスマーチ》

盾:5

マナ:6

手札:0

墓地:8

山札:19

 

 

 

 

 

『《禁術のカルマ カレイコ》召喚。《オール・イエス》をジェネレートし、《コアクマン》にクロス、ダ。《コアクマン》で《デスマーチ》に攻撃、スル』

「《デスマーチ》の能力でパワーを4000下げられますけど、《オール・イエス》があるから、パワー1000vs2000ですね……こっちの負けです」

『ターンエンド、ダ』

 

 またバトルゾーンからクリーチャーがいなくなっちゃいました……ちょっとピンチです。

 

「! またまた来ちゃいましたよ! 《暗黒鎧 キラード・アイ》を召喚! 山札の上から四枚を墓地に――」

『ストップ、ダ。《カレイコ》の能力発動。山札から手札以外にカードが移動する時、山札に戻させる、ゾ』

「そ、そんな! それは困ったですよ……」

 

 墓地はユーちゃんのデッキでとっても大切なものです。それが増やせないというのは、困ります。

 どうしましょう……

 

「Ende……」

 

 

ターン6

 

協力者

場:《クロック》《ユッパール》《コアクマン+オール・イエス》《カレイコ》《オール・イエス》

盾:2

マナ:7

手札:2

墓地:5

山札:18

 

 

ユー

場:《キラード・アイ》

盾:5

マナ:6

手札:0

墓地:10

山札:18

 

 

 

『《クロック》をチャージ。《純潔の信者 パーフェクト・リリィ》を召喚、ダ。《オール・イエス》を《リリィ》にクロス。ターンエンド』

「ユーちゃんのターンです……うーん……ここは……」

 

 とっても困りました。

 《キラード・アイ》はいますけど、相手のバトルゾーンにはクリーチャーが五体。

 《オール・イエス》で強化された《コアクマン》と《リリィ》。墓地を増やさせてくれない《カレイコ》。あとは《ユッパール》と《クロック》です。

 特に《リリィ》と《カレイコ》が困ります。《リリィ》は破壊できませんし、《カレイコ》がいるのでで墓地が増やせません。

 

「……こうしましょう! 《ジェニー》をチャージ。《キラード・アイ》の能力です! 墓地の《ロックダウン》を召喚です! 《キラード・アイ》から進化!」

 

 《キラード・アイ》の、墓地から闇の進化クリーチャーを召喚できる能力で、墓地から《ロックダウン》を復活です!

 パワーを下げれば《リリィ》は倒せますが、今のパワーは6500なので、《ロックダウン》の能力ではギリギリ倒せません。

 だから、狙うのはこっちです!

 

「《ロックダウン》の能力で、《カレイコ》のパワーを6000下げます! 破壊です! Ende!」

 

 これで墓地が増やせます。

 攻撃したいですけど、《リリィ》がブロッカーなので、攻撃できないです。このままターン終了です。

 

 

 

ターン7

 

協力者

場:《クロック》《ユッパール》《コアクマン+オール・イエス》《リリィ+オール・イエス》

盾:2

マナ:8

手札:1

墓地:6

山札:17

 

 

ユー

場:《ロックダウン》

盾:5

マナ:7

手札:0

墓地:9

山札:17

 

 

 

 

『《コアクマン》を召喚。《トリッパー》《ベルリン》《クルスタ》を手札に。《クルスタ》を召喚』

「また手札が増えちゃいました……」

『《コアクマン》の《オール・イエス》を、《クロック》にクロス。《リリィ》で攻撃、能力発動、ダ。《ロックダウン》をタップ』

 

 《リリィ》の能力で、《ロックダウン》がタップされてしまいました。

 しかも、《オール・イエス》を《クロック》に付け替えています。ということは……

 

『シールドをブレイク』

「トリガーなしです」

『《クロック》で《ロックダウン》を攻撃。手札を捨てさせ、こちらはパワー7000、ダ』

「《ロックダウン》はパワー6000なので、破壊されます」

 

 やっぱり、《ロックダウン》を狙ってきました。

 手札も一緒に捨てさせられて、ユーちゃん、まだまだピンチです。

 

「……でも、あとは信じるしかないです! 《キラード・アイ》を召喚! 山札の上から四枚を墓地へ!」

 

 引いてきた《キラード・アイ》を召喚。山札を墓地に送ります。

 送ったカードは、《夢幻騎士 ダースレイン》《爆弾団 ボンバク・タイガ》《死神竜凰ドルゲドス》《解体人形ジェニー》。

 ……これなら、いけるかもです……!

 

「墓地進化! 《デスマーチ》を召喚です! 《デスマーチ》でシールドをブレイクです!」

 

 ブロッカーがタップしている間に、攻められるだけ攻めちゃいます。

 これでクリーチャーさんのシールドは残り一枚です!

 

 

 

ターン8

 

協力者

場:《コアクマン》×2《ユッパール》《クロック+オール・イエス》《リリィ+オール・イエス》《クルスタ》

盾:1

マナ:9

手札:3

墓地:6

山札:13

 

 

ユー

場:《キラード・アイ》《デスマーチ》

盾:4

マナ:7

手札:0

墓地:14

山札:12

 

 

 

『《ベルリン》を召喚。《クロック》の《オール・イエス》を、《クルスタ》にクロス。3マナで《ユッパール》を召喚。《デスマーチ》をフリーズ』

 

 ! ブロッカーが……!

 これは、もしかしたら、とってもピンチなのでは?

 相手の攻撃できるクリーチャーは六体。そしてユーちゃんのシールドは四枚です。

 

『《リリィ》で攻撃、《キラード・アイ》をタップ。シールドブレイク、ダ』

「……トリガーないです」

『《クルスタ》で《キラード・アイ》を攻撃。《オール・イエス》の効果で、手札を墓地へ』

 

 これでユーちゃんのシールドは三枚。協力者さんのアタッカーは四体。

 ブロッカーもいないので、ダイレクトアタックが防げません……!

 

『このまま攻め落とす、カ。《コアクマン》でシールドブレイク』

「なにもないです」

『二体目の《コアクマン》でブレイク』

「こっちもないです……」

『《ユッパール》で最後のシールドをブレイク、ダ』

 

 まずいです、とってもピンチです! 本当にピンチです!

 ここでトリガーを引かないと、ユーちゃんは……

 

(ユーちゃんだけじゃ、ないです……!)

 

 小鈴さんも、このままじゃ……

 ユーちゃんは、ここで負けるわけにはいかないんです!

 

「! やっときましたS・トリガー! 《デス・ハンズ》! 《クロック》を破壊です!」

『凌がれた、カ……ターン終了。《クルスタ》はアンタップ、ダ』

 

 ギリギリ耐えられました。《デス・ハンズ》には感謝です。

 それに、このシールドブレイクできちゃいました。ユーちゃんの切り札!

 

「ユーちゃんのターン! このターンでユーちゃんの大逆転ですよ!」

 

 ちょっと、運が良くないとダメですけど。

 でも、絶対に決めてみせます!

 

 

 

eins(ひとつ)zwei(ふたつ)drei(みっつ)……Lass uns die Nummern arrangieren(さぁ、数字を揃えましょう)! 《暗黒貴族ウノドス・トレス》!」

 

 

 

『! そのクリーチャーは……!』

 

 協力者さん、ビックリしてます。

 そのビックリが見れただけで、ユーちゃん満足ですけど、ビックリだけでは終わりませんよ!

 ちゃんと、勝ってみせます!

 

「まずは《ウノドス・トレス》の能力で、山札の上から三枚を墓地へ!」

 

 これで落ちるカード次第では、ユーちゃん負けちゃうんですよね……だから来てください!

 一枚目――《凶殺皇 デス・ハンズ》。さっきは助けてもらいましたが、違います。

 二枚目――《悪魔龍王 キラー・ザ・キル》。ユーちゃんの切り札ですけど、今は使えないです。

 三枚目――《死神術士デスマーチ》。

 

「これです! 来ました! 次にユーちゃんの墓地から、コスト1、2、3のクリーチャーをそれぞれ復活させます! 墓地進化!」

 

 コスト1、2、3のクリーチャーをまとめて墓地から出せる《ウノドス・トレス》。ユーちゃんの新しい切り札です。

 このクリーチャーの凄いとことは、進化クリーチャーも出せることです。そして、ユーちゃんのデッキには、墓地から進化元を調達できるクリーチャーが、たくさんいます!

 さぁみなさん、出て来てください!

 まずは一体目!

 

(アインス)! 《死神術士デスマーチ》!」

 

 続いて二体目!

 

(ツヴァイ)! 《鬼面妖蟲ワーム・ゴワルスキー》!」

 

 最後に三体目!

 

(ドライ)! 《死神竜凰ドルゲドス》!」

 

 一度に、三体のクリーチャーを、復活させましたよ!

 

「この三体を、墓地進化です! 《ドルゲドス》の能力で、《クルスタ》はブロックできないですよ!」

『! マズイ!』

 

 これでユーちゃんの攻撃できるクリーチャーは四体。協力者さんのブロッカーも、一体封じて、残り一体です。

 シールドも残り一枚なので、あとは、S・トリガーとの勝負です! 《クロック》や《ホーリー》がなければ、ユーちゃんの勝ちなはずです!

 ユーちゃんもシールドがないので、このターンに決めないと後がない……でも、このターンで決めてしまいますよ!

 

「《デス・ハンズ》で攻撃です!」

『《ベルリン》でブロック!』

「《ゴワルスキー》!」

『S・トリガー《デス・ハンズ》! 《ドルゲドス》を破壊、ダ!』

 

 最後のシールドから捲られたのは、《デス・ハンズ》でした。

 《クロック》でも《ホーリー》でもない。なら、

 

「これでEnde(対戦終了)、ですね!」

 

 ユーちゃんの――勝ちです!

 

 

 

「《デスマーチ》で、ダイレクトアタックです!」

 

 

 

                     ☆ ☆ ☆

 

 

 

 こうして、ユーちゃんのお陰もあり、『少女連続誘拐事件』は解決した。

 とはいえ犯人はクリーチャーで、そのクリーチャーは鳥さんが文字通り食べちゃったから、公的には犯人は不明で、逃亡中ってことになってるけど。

 警察の人たちにはちょっと申し訳ないけど、クリーチャーの仕業なんて言っても信じてくれるわけないし、これ以上事件は起こらないから、めでたし、なのかな?

 でも、今回の一件で、クリーチャーはこわいい存在だってわかったから、わたしも気をつけないと。

 ……ちょっと変な趣味嗜好だったけどね。

 それはそれとして、わたしはユーちゃんに、聞きたいことがあった。

 

「ユーちゃん、あの時のこと、覚えてたの?」

Natuerlich(もちろんです)! じゃないとユーちゃん、小鈴さんとこんなに仲良くなれなかったですよ!」

「そ、そっか……」

 

 言われてみれば、確かにユーちゃんは学校に復帰した時、一直線にわたしのところに来た。それまで、接点はあまりなかったのに。それがその証明だったんだ。

 今まで全然そのことについて触れなかったし、クリーチャーに操られてたから、勝手に記憶がなくなってる、みたいな解釈をしてたけど、そんなわけはなかった。

 滑稽だなぁ、わたし。

 わたしの恥ずかしい秘密を知られちゃったのは、すごく恥ずかしい。

 だけど、ユーちゃんはいい子だし、今まで触れなかったってことは、わたしがそれを秘密にしてるってこともわかってるってことだと思う。

 だからむしろ、大事な友達に知ってもらって、よかったのかもしれない。

 

「小鈴さん!」

「な、なに? ユーちゃん」

「ユーちゃんはなにがあっても、小鈴さんとお友達、ですよ!」

 

 ニッコリと笑うユーちゃん。

 そこに、陰鬱だった頃の面影はなくて、闇を照らす光のように、陰りも暗さも感じさせない、明るく朗らかな彼女だけがいた。

 その笑顔を見ていると、わたしの考えていた悩みとか、心配とか、全部どうでもよくなってくる。

 

「……うん。ありがとう、ユーちゃん」

 

 わたしの隠し事は、また一人の人にばれちゃったけど。

 それでもなにかを失ったという気はしなくて。

 むしろ、別の大切なものを得たような気がした。

 

「友達、か……」

 

 ふと、思う。

 わたしは本当に、友達を大事にできてるのかな、って。

 ずっと隠し事してて、大事なことは秘めたまま。

 今回は成り行きと、ユーちゃんには元々ばれてたっていうこともあったけど。

 わたしは、友達をちゃんと友達としているのだろうか。

 “あの子”のことを思うと、少しだけ胸が痛かった。




 ピクシブで投稿した段階でも古いデッキだという自覚はありましたが、そこからさらに一年二年と経っているので、もはやセイントリエスとか、オールイエスとか、化石みたいなデッキなのでは、という気がします。個人的には好きなのですが。
 改稿しているとはいえピクシブからの移転なので、そのあたりはご了承くださいまし……
 誤字脱字、ご意見ご感想などございましたら、お気軽にどうぞ。
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