デュエ魔法少女マジカル☆ベル   作:モノクロらいおん

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 公爵夫人vsミネルヴァ。本当は描写するつもりはなかったけど、筆が乗ったので書きました。


48話「国盗りです Ⅵ」

 そこは荘厳で神聖な神殿であった。

 眩い白き光に包まれ、清廉さに満ちた潔白な世界。

 そこで行われる公爵夫人とミネルヴァの対戦は、静かだが、熾烈であった。

 互いに互いの動きを牽制しつつ、相手の隙を窺う、一触即発の空気。

 公爵夫人は《音奏 プーンギ》を、ミネルヴァは《奇石 ミクセル》をそれぞれ立て、間合を測り続けている。

 如何にして相手の懐に入り、斬り殺せるか、轢き殺せるか。

 息の詰まるような睨み合いだ。

 

「……暗天の(ソラ)に、星が輝けり」

 

 ミネルヴァは1枚のカードを翳す。

 輝ける宙に、暗き世界に、それを掲げる。

 

「此なるは我らを導く道標。月の海に描け、星なる海図を。宇宙の航路を示せ、黒く輝ける星図よ」

 

 それは一筋の光となり、軌跡を描き、星となりて戦場の空に点描される。

 

「ギャラクシールド起動――astrolabe(星を描け)

 

 シールドに、新たなカードが刻まれた。

 白く、紅く、昏く、輝ける星の光。

 

「我が正義は燃ゆる。《「純愛の紅(ピュアラブ・クリムゾン)」》。その能力で、《プーンギ》をタップ。フリーズだ、アンタップ不可とする」

「ふん、小賢しいことを。儂のターン。こちらも《ミクセル》を召喚する」

 

 攻撃を封じた返しに、公爵夫人も《ミクセル》を召喚。

 ギャラクシールドは時間差で大型クリーチャーを早期に呼び出す能力。その性質上、マナコストを参照する踏み倒しメタには滅法弱い。

 メタを張り、メタを張られ、さらにカウンターでメタを張り返す。

 互いに場を制し合う、ひりついた空気で満ちていた。

 

 

 

ターン3

 

 

ミネルヴァ

場:《ミクセル》

盾:6(《「純愛の紅」》)

マナ:3

手札:2

墓地:0

山札:28

 

公爵夫人

場:《プーンギ》《ミクセル》

盾:5

マナ:3

手札:2

墓地:0

山札:22

禁断:6

 

 

 

「私のターン。ギャラクシールド起動、《「純愛の紅」》をシールドより召喚する。そして再び能力起動、《ミクセル》をタップする」

「だが其奴には消えて貰う。《ミクセル》の能力で山札送りだ」

 

 早出しされた《「純愛の紅」》はコスト6。3マナしかないミネルヴァでは、場に残すことはできない。

 公爵夫人の攻勢を一時のみ止めるという最低限の役割だけこなし、退場した。

 しかしミネルヴァはまるで意に介さない。粛々と、公爵夫人の手を、足を、止め続ける。

 

「暗夜の宙に、海図を抱き、船を漕ぎ出せ。ギャラクシールド起動! astrolabe(星を描け)――《「流水の大楯(イージス・オブ・ストリーム)」》!」

 

 宙にて流氷渦巻き星となる。戦場の宙に、盾としてそれは刻まれた。

 そして、その凍える冷気が、クリーチャーの動きさえも鈍らせる。

 

「《「流水の大楯」》能力起動。《プーンギ》を拘束する」

 

 ――鬱陶しい。

 公爵夫人は粘り着くような感触に嫌悪感を露わにする。

 守るデッキとは得てしてそういうものではあるが、こちらの行動がいちいち邪魔される。

 メタを張ってもそれをすり抜け、ひたすらに思い通りにいかない。動けない。

 いつまでも纏わり付いてくる、気持ち悪さと煩わしさ。

 長引けばどちらが不利かは一目瞭然。

 故に公爵夫人は、強引であろうとも、この拮抗を崩すべく轟音を掻き立てる。

 

「儂のターン! 《GOOOSOKU・ザボンバ》を召喚!」

 

 それは怨敵を殺す牙。エンジン音は咆哮、震動は憤怒の武者震い、回る車輪は轢き潰すために。

 彼の女王を亡き者とするためならば、邪悪に身を堕とし、光すらも飲み込まん。

 混沌とした破裂音が、暗天の宙に轟く。

 

「禁断の封印を解放。そして《ザボンバ》で攻撃! その時、マジボンバーを発動!」

 

 《ザボンバ》のマジボンバーは3。山札を捲り、コスト3以下であればそのまま場に。山札が外れても、手札から踏み倒せる。

 大型侵略が狙えないのならば、小型を並べて攻めていく。相手に黙々と準備などさせない。

 相手のメタをすり抜け、公爵夫人は別の道筋を辿り、殺しに掛かる。

 

「捲れたのは……《U・S・A・BRELLA》か、悪くない。そのままバトルゾーンへ。そして、侵略発動!」

 

 《ザボンバ》は音速を超え、光速に至る。

 その中で、姿を変えていく。

 

「《超音速 レッドゾーンNeo》! 封印をひとつ剥がし、《「流水の大楯」》のシールドをブレイク!」

 

 本来の《レッドゾーン》では《ミクセル》に消されてしまう。

 しかし小型改良化した《レッドゾーンNeo》であれば、その影響を受けずに攻め込むことができる。

 馬力は足りないが、高速機動を以て、ミネルヴァの盾を打ち砕く。

 

「《レッドゾーンNeo》は攻撃後にアンタップする。さらにシールドをブレイクだ! ターンエンド」

 

 

 

ターン4

 

 

ミネルヴァ

場:《ミクセル》

盾:4

マナ:4

手札:4

墓地:0

山札:27

 

公爵夫人

場:《プーンギ》《ミクセル》《レッドゾーンNeo》《BRELLA》

盾:5

マナ:4

手札:1

墓地:2

山札:19

禁断:4

 

 

 

「私のターン……4マナで呪文《ケンザン・チャージャー》。山札の一番上を捲り、《ジャミング・チャフ》を手札に。そして2マナ、ギャラクシールド起動。宙の海に浮かび、astrolabe(星を描け)――《「流水の大楯」》! 再び出航せよ! 能力で《レッドゾーンNeo》を拘束する!」

 

 ミネルヴァの動きが、鈍りはじめた。

 クリーチャーを捌くための手が足りていないのか。一瞬、纏わり付く不快感が薄らぐ。

 

「そして、《ミクセル》で《ミクセル》を攻撃する」

「む……!」

 

 しかし不快感が薄れても、手は緩めない。

 両者の《ミクセル》が、同時に爆散した。

 

(相打ち……儂の手札が少ないと見て、捨てたか)

 

 確かに手札が1枚のこの状況では侵略は見込みづらい。今引きされても侵略元の《レッドゾーンNeo》は拘束状態。手札に新しい《ミクセル》も補充している。

 ならばここで頭数を減らしておくのは、合理的なのかもしれない。

 

「小賢しい真似だけは一級品だな。だが、儂がいつまでも燻っていると思うなよ」

 

 手札が少なく、動きづらいのは事実。

 しかしだからこそ、そのための備えはしている。

 

「マナチャージ。そして5マナで《U・S・A BRELLA》を進化! 《超音速 ターボ3》!」

 

 メタカードとして役割の薄い《U・S・A BRELLA》を捨て、侵略せず、そのまま進化。

 侵略を用いずとも、ソニック・コマンドの緩い進化条件で発揮するには、十分すぎるカードパワーだ。

 

「封印をひとつ解放し攻撃! Wブレイク!」

 

 《「流水の大楯」》ごとシールドを叩き割る公爵夫人。ミネルヴァにトリガーはない。

 そして《ターボ3》が攻撃したということは、

 

「攻撃後、手札をすべて捨て、3枚ドロー! 当然、儂に手札はない。そのまま3枚補充する」

 

 瞬時に失った手札が戻ってくる。

 次のターンから6マナに到達し、《ミクセル》の妨害も受けづらくなる。

 ジリジリと、公爵夫人がミネルヴァの防戦を打ち破りつつあった。

 

「《プーンギ》もシールドをブレイク! ターンエンドだ」

 

 

 

ターン5

 

 

ミネルヴァ

場:なし

盾:2

マナ:6

手札:6

墓地:1

山札:25

 

公爵夫人

場:《プーンギ》《レッドゾーンNeo》《ターボ3》

盾:5

マナ:5

手札:3

墓地:4

山札:15

禁断:3

 

 

 

 シールドの数も減り、ミネルヴァも段々と後がなくなってくる。

 しかし彼は冷徹な面持ちを崩さない。

 焦りも怯みもなく。

 使命感、正義感、そして狂信に駆られた眼で、公爵夫人を射殺すように見遣る。

 

「母の祖、偉大なりし父よ。貴方の楽団をお借りします――《音奏 ハイオリーダ》を召喚!」

 

 白痴を慰める楽劇の音色が、暗澹の宙に撹拌する。

 冒涜的な調べが脳を揺さぶり、吐き気を催す。

 しかしてミネルヴァは毅然と立つ。楽団を従え、剣を振るい、指揮をする。

 

「《ハイオリーダ》の能力起動。登場時シールドを追加。そしてシールドが追加されるたびにGR召喚する!」

 

 邪悪な旋律は反響し、宇宙に満ちていく。

 混沌が爆ぜ、新たな命が産み落とされる。

 

「《破邪の意志 ティツィ》! さらに2マナ、ギャラクシールド起動、astrolabe(星を描け)――《「流水の大楯」》!」

「懲りんな。三度も同じ芸か」

「これは姫、そして彼女より私に与えられた力。侮ることは断じて許されない。それに、三度が同じと思うな」

 

 戦場の宙に、盾として渦巻く星が点描される。

 

「《「流水の大楯」》の能力により、《ターボ3》を拘束! そしてシールドが追加されたことで、《ハイオリーダ》の能力も起動!」

 

 その輝きに呼応し、楽団はより強く音楽を掻き鳴らす。

 また、混沌が爆ぜ、命が放り捨てられた。

 

「《防羅の意志 ベンリーニ》をGR召喚! そして《ベンリーニ》のマナドライブ起動! 自身を破壊し、1枚ドロー。そして手札を1枚シールドへ! シールドが追加されたことで《ハイオリーダ》の能力も起動! GR召喚だ、《超衛の意志 エイキャ》!」

「是が非であろうと、無限に足掻き、儂の手足を封じ続けようというのか」

 

 公爵夫人の爆走に詰め寄られたミネルヴァだが、瞬時に切り返し、押し返す。

 シールドは5枚まで回復。ブロッカーにシールド・セイバー、そして手札を供給する《ターボ3》も止めた。

 盤面も多い。手札も、マナも、リソースはある。

 しかし、

 

「笑止。貴様はここで殺す」

 

 公爵夫人の身体が、黒く膨れ上がる。

 憤怒が、憎悪が、怨恨が、敵意が、溢れ出す。

 女王を殺さんとする殺戮の牙が、狂ったように屹立する。

 

「《GOOOSOKU・ザボンバ》を召喚! 封印をひとつ解放!」

 

 禁断の封印は、残り2つ。

 たった、2つだ。

 

「纏めて薙ぎ払ってくれる。《ザボンバ》で攻撃! マジボンバーを発動し、山札より《反反-ロッカー》をバトルゾーンへ! そして、侵略発動!」

 

 《ターボ3》で引き込んだ手札。

 それらをすべて、放出する。

 全開(フルスロットル)で、殺意を曝け出す。

 

「《熱き侵略 レッドゾーンZ》! そして――《轟く侵略 レッドゾーン》!」

 

 二重侵略。《ザボンバ》は《レッドゾーンZ》へ、そして《レッドゾーンZ》は回帰し、《レッドゾーン》へ。

 叛逆のため、侵略する。

 

「貴様はこのまま轢き潰す! 2体のコマンドが現れたことで、封印を2つ解放! これで《禁断》の封印はすべて解かれた!」

 

 巨石から封印が2つ、剥がれ落ちる。

 禁断に課せられた鎖はすべて失われた。

 

 

 

「禁 断 解 放 !」

 

 

 

 覆われた岩石が崩壊し、邪槍が抜け、その裏側。真なる姿を現す――

 

 

 

 

 

「《伝説の禁断 ドキンダムX》!」




 恐らく3話ほどで書き終わる。逆に言えばこの対戦は3話ほどかかる。
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