デュエ魔法少女マジカル☆ベル   作:モノクロらいおん

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 久更新。あまりにも久々すぎるということもあり、ここから数話かけて、状況整理みたいな話になると思います。実際、作中でも色々二転三転してごっちゃりしてるので、あまり積極的にやりたい話ではないものの、まあ必要だろう、と。
 前回はー、霜が眠りネズミと一緒に不思議の国に乗り込んだら、死星団の面遭遇遭遇。危機に陥るも、その場は公爵夫人の介入で戦線を離脱した……みたいな状況だったはず。
 久し振りの更新なのに、ここからしばらく主人公の小鈴じゃなくて、霜がメインで動くことになるのは笑っちゃうな。


49話「隠れ家だよ Ⅰ」

 公爵夫人がミネルヴァと激戦を繰り広げている頃。

 一方で、霜はユニコーンを抱えたまま、ゴロゴロと斜面を転げ落ちていくヤマネを追いかける。

 しばらく走ると、ほとんど麓まで至った大樹の根元で、彼はひっくり返っていた。

 ひとまずユニコーンを降ろして、霜はヤマネに手を差し出して引っ張り上げる。

 

「ぐおぉ……! いてぇ……つーか公爵夫人ンンンッ! 舐めたマネしやがってクソ野郎! ファックファックファックッ!」

「ヤマネ! 大丈夫か?」

「プライド以外は無問題(もうまんたい)、僕のハートはそう憤慨! クッソあのババア! 相も変わらずムカつくぜ! ぶっ飛ばしてやる!」

「いやいや! 待てって! 頼むから待ってくれ!」

 

 完全に頭に血が上っている。立ち上がり、即断で山を駆け上がろうとする彼を、霜は引き留める。

 

「言葉は辛辣だったけど、彼女は身を挺してボクらを逃がしてくれたんだ。あのままだと、恐らく全滅してたよ」

「あぁ? んなこと……」

「ヤマネ」

「……まあ、確かにあいつぁヤバかったな。ゴリラ女も白髪野郎も、そんな空気はビリビリ感じたわ」

 

 なんでもないただの一般人である霜でさえ、そう直感できたのだ。

 人ならざる化生であり、感覚の鋭い彼が、連中の異常性に気付かないはずがない。

 

「けどよ、だからってこのまま尻尾巻いて逃げるってか?」

「そうだ」

「逃げてどうすんだよ! 公爵夫人に限って負けるなんてねーだろうけど、今だって他の連中が襲われてるかもしれないだろ!」

「……そうだ。でも、逃げるんだよ」

「んなことできっかよ!」

「じゃあ君は、この子も巻き込みながら突っ込む気なのか?」

 

 霜は、隣で震えているユニコーンに視線を向けた。

 するとヤマネは、ハッとしたように目を見開き、バツの悪そうな顔で目を逸らす。

 

「っ、ユニ子……けどよぉ」

「君が悔しいのもわかる。憤るのも理解できる。でも今は耐えてくれ。ボクらは今、なにもわからない。情報が無いし、後手後手だ。圧倒的に不利な状況なんだ。そんな状態で闇雲に突っ込んでも、被害が大きくなるだけなんだ」

「だからってなぁ……!」

「ボクは、君だって大事なんだ。この子にとっても、そうなんじゃないのか?」

「……ネズミの、おにーさん……」

「ぐ……」

 

 ユニコーンは、ふるふると潤んだ瞳で、不安そうにヤマネを見つめている。

 弱々しい少女が一人。数少ない生存者。唯一助けられた仲間。

 それを蔑ろにしてでも、自分の衝動を、怒りを優先するのか。

 狡猾で、卑怯なことだと分かっていても、霜はその悪性を飲み込んで、ヤマネに詰問する。

 今この場で、奇跡的に助けられた一握りの仲間を、見捨てるべきではないと。

 

「ちっ……わーったよ! ここは僕が折れてやる!」

「……すまない。」

「謝んなよ、お前が間違ってるわけじゃねーだろ。つっても、逃げるってどこに逃げんだ? お前んち?」

「流石に女児を連れ込んだら、今度こそ家族会議ものだな……」

 

 ヤマネを拾ってきた段階でも、かなり怪しまれたのだ。元々、霜は水早家では難しい立場にいる。その状態をいたずらに崩すようなことは、霜自身も望むところではない。

 それに、このような厄介事を、家に持ち込むようなこともしたくない。事態は霜が想像していた以上に深刻で、悪化していた。家族まで巻き込むわけにはいかない。

 だからユニコーンを家に連れ帰ることは難しい、が。

 

「アテはあるんだ」

「マジ?」

「あぁ」

 

 霜は公爵夫人との別れ際に、投げ渡されたものを掲げる。

 それは、パスケースのようだった。中には免許証や定期券、会社の通行証、身分証、キャッシュカードやクレジットカードなんかも入っていた。

 

「個人情報の塊だな、これ。君たちに、人間としての個人情報がどこまで重要なのかはわからないけども」

 

 しかし少なくとも、人間一人の資産の多くが詰まっていることは確かだ。

 パスケースを漁っていると、さらに別のカードが見つかった。

 

「これは……カードキーか?」

 

 部屋番号らしき数字が印字され、磁性体の黒いラインがあるカードだ。

 どこのカードキーだろうか。

 

「裏に書いてあるな。これは、ホテル……いや、マンションか?」

 

 『クレストプライムタワー Duchess』と、ご丁寧に名前がしっかり書いてあったので、それをネットで検索してみると、すぐに出て来た。

 それはこの町にある超高級マンションのカードキーのようだ。駅近くだが、ここからだとそれなりに歩く必要がある。

 

「わざわざこれを渡してきたってことは、行け、ってことなのか」

 

 公爵夫人はなにも言わなかったが、敵と相対している最中に、逃げ場所を暴露するわけにもいくまい。

 無言でこれを投げ渡したということは、つまり、そういうことなのだろう。

 

「……行こう、ヤマネ。きっとここに、なにかがあるはずだ」

「ん、りょーかい。お前が言うならそうするぜ。ユニ子もそれでいいよな?」

「は、はい。ユニはだいじょうぶ、です……」

「よし。じゃあ走ろう。いつ奴らが追いかけてくるかもわからないし、距離もある。あまりもたもたはしていられない」

 

 そうして、霜とヤマネ、そしてユニコーンの3人は、駆けだしていった。

 その先に、迫り来る絶望から逃れられるような、希望があると願いながら。




 さて、皆さんお久しぶりです。前回の更新が昨年の9月なので、半年と3ヶ月振りですね。
 忙しかった用事が片付いたとか、執筆ストックが溜まったとか、別にそういう理由で更新再開したわけではなく、純粋に「書こうかな」という気持ちになったから書いただけです。6月は別に予定がガッツリ入ってるので、正直この気持ちが単発性になる可能性は否めませんが、筆を折る気は今のところさらさらないので、できる限りゆったりちまちま頑張ります。
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