彼女達が笑うために   作:怠さの塊

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めっちゃ遅くなりました。
そして、低レベル感が否めないです。
それと、10000UA突破しました。
ありがとうございます。


2話

入学式という行事は子供とその親がとても嬉しそうにしていた。

かくいう自分はみんなのようなランドセルではなく6年間もつような丈夫なバックパックで身体には全く合わない大人用のサイズの衣服を身に纏いこの空間で浮いた存在だった。

心なしか周りの保護者の目が自分に集まっているような気もする。

こちらに引っ越して来た翌日には父親はアメリカへと戻り、義母に当たる美波さんと剛の3人で暮らすようになってからはやくも1週間が経つが、美波さんの俺と剛との扱いの差も既に雲泥の差を通り越したものだった。

当然今も美波さんが保護者としているわけでも無くひとりぼっちの入学式にあたる訳で、衆目に晒されている今もただ不快でしかない。

吐き気を催すような時間に耐えて、どうにか各クラスに移動する事になってからも気分が晴れる事は無く。

周りの同世代の子供たちは幼稚園などの場所に一緒に通っていて面子なのか既にグループ的なモノが出来ており、当然部外者の自分には入り込む余地すらないほどだった。

担任の自己紹介と個人個人の自己紹介が済んだ後は、教科書の配布や父母に渡すプリントなどを配布されやっと入学式を終えた。

周りがランドセルに教科書類を詰め込むのを横目に手早くバックパックに詰め込むと、隣の机からプリント用紙が落ちた。

無言で拾い隣の少女にそれを手渡すと彼女はとても眩しい笑顔を浮かべた。

 

「ありがとう拾ってくれて。私は山吹沙綾って言うんだ。君は・・・日高君だったよね。明日から宜しくね」

 

笑顔で差し出された手を握らずプリントだけ手渡す。

戸惑いながらも差し出した手を引っ込める彼女を横目に教室を出ると、廊下では親子で写真撮影をする家族ばかりだった。

どの家族も幸せそうな顔をしており、正直に言って吐き気を催した。

校門を出ると、背後から勢いよく抱きつかれもうすこしで倒れそうになった。

 

「こらヒナ危ないでしょ」

 

「えーでもタクミ君がいたからさー」

 

「タクミまで怪我をしたら大変でしょ。その事まで考えなさい」

 

「はーい」

 

タックル気味に抱きついたことを怒られる妹から離れ帰宅をしようとするが今度は手を掴まれる。

手を離せとばかりに睨むが彼女にはそれすらも意味を成さなかった。

 

「タクミ一緒に帰ろうよ」

 

「なんでですか?」

 

「家一緒の方向でしょ。それにタクミはこっちに来たばかりなんだからこの場所のこと教えるよ」

 

「別に教えて貰わなくて結構です。俺に構わないで下さいよ」

 

そう吐き捨て、抱きついてきた妹の方をつき放し歩き始める。

何が目的なのか知らないが理由もない優しさなんて信用出来る筈もなく。

今までの人生を振り返ってみても誰かといると碌な事が起こらない。

一人が気楽だということを短い人生で理解したなんて皮肉過ぎて笑えてしまう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「帰っちゃったね」

 

「そうね。実の母親を事故で亡くしたばかりと聞くし、今はそっとしてあげましょう」

 

「ねぇお姉ちゃんお母さんが死んじゃうってどんななんだろうね」

 

「分からないけれど、きっと本人は悲しいから今は一人でいたいのよ」

 

新しく出来た従兄弟の存在に姉妹でどうするべきか迷ってしまう。

母さんや父さんには優しくしてあげなさいと言われていたがまさかこうも突っ撥ねられるとは思ってもいなかった。

それに見た限りでは入学式におばさんの姿は無くきっと一人で入学式に参加していたのだろう。

 

「ねぇ日菜あなたはどう思う?」

 

「タクミはるんっ♪てするからもっと仲良くなりたいかな」

 

「そうね。なんと言うか彼ほっとけないし、仲良くなれるよう頑張りましょう」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

意味がわからない何故ああも自分に付きまとうのか。

何故自分に関わろうとするのか。

人に優しくされたことの無い自分に優しくする彼女たちの心境が読めない。

家に着くと、渡された鍵を使い家に入るが中には誰もおらず、リビングのテーブルには置手紙が置かれており、掃除をしておくこととテーブルに置いてあるお金で昼と夕方食べるように書いてあった。

置手紙を破り捨てテーブルに置かれている100円玉を見つめる。

二食で100円というありえない事態に戸惑いを隠せないが言う通りに掃除しておかないと追い出されるかもしれないという恐怖がその戸惑いすらも打ち消していく。

慌てて掃除に取り掛かるが掃除機や皿洗いは身体の小さな自分には難しく家全体の掃除を終える頃には2時間を越えていた。

 

「お腹空いたけど、100円か。限られてくるよな食べられるの」

 

手のひらに収まる硬貨の価値は知っている。

これ一枚で買えるのはコンビニではせいぜい塩おにぎりが関の山だという事を。

しかし、もしも今回のように食事代として渡されるお金がこれだけの額だとしたならきっとあとあとのために使わないで貯めるという選択肢も必要になってくるのかもしれない。

頭の中で思考回路がこれでもかというほどフル稼働するが身体は正直なのか腹の音が鳴り響く。

考えてみれば朝から何も食べていないのだから当然だろう。

とりあえず、外に出てそれから考えるしかない。

もしかしたら、100円以下でも腹を満たせる手段があるかもしれない。

そんな思いを胸に再度鍵を持って外に出ることにした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

来たばかりでどこに何があるかも知らないなか歩き続けると、テレビで見るような商店街と呼ばれる場所に着いた。

辺りには沢山の店があり、あてもなく歩いているとどこからか良い匂いがしてくる。

 

「ここだよな。匂いのする場所って」

 

一体何の匂いかは分からないが、それでも入るだけ入ることにした。

もし、お金が足りなかったら今日はもう食べないでいいかとも考えながら店の扉を開けると、中には沢山のパンを並んでいた。

 

「いらっしゃい。お使いかな?」

 

そう言って、出迎えてくれた女性にお辞儀をして店内に入ると中には豊富な種類のパンが並んでおり見ているだけで空腹感が募っていくほどだった。

 

「母さん 父さんがパン焼けたから並べるの手伝って欲しいって」

 

「えぇ分かったわ。沙綾は店番お願いね」

 

「うん」

 

聞き覚えのある少女の声に振り返ると、隣の席の彼女だった。

彼女は自分に気付いたようで笑顔を浮かべるが、なんと言っていいのか分からずパンを選び始めた。

パンを見ていくなか明らか視線を感じて振り返ると彼女と目が合ってしまう。

どうしたらいいか分からずとりあえず目の前のパンを指差した。

 

「ねぇ、山吹さんだったよね。これって何?」

 

「それはサンドイッチだよ。えっと、パンの名前書いてないかな?」

 

パンの名前と思わしき文字が書かれているが読めるわけなく何というパンなのか分からなかった。

 

「ごめんね。俺文字読めないんだ」

 

「えっと・・・幼稚園とかで習わなかったの?」

 

「幼稚園には通ってなかったからさ。平仮名?とかカタカナってのは読めないんだ」

 

テレビは見ていたから幼稚園というものの存在は知っている。

数字は母親によく行かされていた買い物で覚えていたが文字は読めなかった。

いつも母親が買う物の絵柄や同じようなものを買っていたせいで文字をおぼる必要が無かったからだ。

その結果この歳で文字読めないんだろう。

あからさまに驚いた顔をしていた山吹さんを横目に値札を確認するがサンドイッチは120円自分のポケットには100円しかないため足りないことが分かり別のパンを探し始めた。

そして、今度は50円と書かれた値札にあるパンを見つけそれを指差した。

 

「ねぇこれは?」

 

「それはラスクって言ってパンを2回焼いて砂糖をまぶしたものだよ」

 

「じゃあこれにする」

 

そう言って袋に入ったラスクというパンを片手にレジに向かうと店の奥の方から山吹さんのお母さんともう1人父親と思わしき男性が出てきた。

 

「沙綾 お友達かい?」

 

「うん。一緒のクラスになったタクミ君」

 

「そうかぁウチの子も遂に男の子を連れてくる歳になったのか」

 

「あら彩綾にも春が来たのね」

 

そう言って笑う2人と店の意味が伝わらず首を傾げる山吹さんを横目にレジにラスクを置いて支払いを頼んだ。

 

「50円のお返しになります。それと、これはポイントカードね。パンを買うごとにスタンプを押して全部埋まったらパンのサービスがあるから」

 

そう言ってラスクとは別にもう一つパンが入れられた袋を手渡される。

 

「あの100円しかないのでこのパンは買えません」

 

「違うわ。そのパンはサービスよ。ウチの彩綾と仲良くしてあげてねって意味だから気にしないで」

 

「えっと…ありがとうございます」

 

お辞儀をしてパン屋さんを出た。

山吹さんの両親はきっと優しい人なんだろう。

だから、山吹さんも優しいんだと納得した。

こんな周りに比べて浮いた自分に話し掛けてくれるほどに。

商店街を出てどこかパンを食べられるとこを探すことにした。

家で食べてパン屑が落ちてると、きっと怒られると考えたからだ。

 

「公園って確かここの道だったよな」

 

父親の車に乗りながら来た道に確か公園があったのを思い出して、そこに向かうためにまた歩き出した。

袋の中からラスクとは別のもう一つのパンの匂いを楽しみながら歩いていると、ここに引っ越す時に見た公園に無事着くことが出来た。

 

「いたっ」

 

ベンチを探して歩いていると、公園の入り口で女の子が転んでしまっていた。

 

「ねぇ大丈夫?」

 

「だ、大丈夫です。擦りむいただけなので」

 

そう言って立ち上がろうとする彼女の顔を痛みで顔をしかめていた。

これを無視出来るほど人間性を棄てた覚えは無かったためやることは決まった。

 

「肩に捕まってよ。あっちの水道で傷口洗わないといけないから」

 

「でも」

 

「でもじゃないよ。足痛いんでしょ?それにばい菌入ったら悪化しちゃうし」

 

渋る彼女の肩を抱き水道まで歩き始めると彼女も諦めたのか身体を預けて歩き始めた。

水道に着いて傷口を水で洗い、ハンカチで傷口を強く圧迫するように結んだ。

 

「これで良いと思うけど・・・家に帰ったらちゃんと消毒して貰ってね」

 

「ありがとう」

 

とりあえず、応急処置は済んだのでパンを食べようと袋に手を伸ばそうとした瞬間背中に衝撃が走り前のめりに倒れ込んだ。

 

「つぐみちゃんを怪我させて許せない」

 

「え?怪我させてな」

 

振り向いて怪我させてないと言い終えない内に今度は馬乗りにのしかかられて顔を殴られた。

 

「つぐみちゃんを虐める奴はアタシが許さないんだからな」

 

そう言って赤い髪の女の子が顔を殴り続ける。

あまりの痛みに顔をガードするが体格差がありすぐに腕を掴まれまた殴られた。

 

「やめろよ」

 

どうにか上に乗る彼女を突き飛ばして体制を整えるがすぐさま赤い髪の子が詰めて来たので慌てて公園から逃げることにした。

 

「おい、待て」

 

「待って巴ちゃん!その子が私を怪我させたんじゃなくて私が自分で転んじゃったの」

 

「えっ!じゃあ、アイツは」

 

「私が怪我してた時に助けてくれたんだよ。巴ちゃんと蘭ちゃんの勘違いなの!」

 

巴ちゃんに呼び止める。

自分を助けてくれた子は公園を走り抜けて逃げて行った。

 

「じゃあ、私はつぐみちゃんを助けてくれた人を殴ってたのか?」

 

「そういうことになるね〜。あ、みんなも食べる〜?」

 

「え、モカちゃんいつパン買ってたの?」

 

「そこのベンチに置かれてた〜。あ、ひまりちゃんも食べる〜?」

 

「良いの?ありがとう」

 

「え、モカちゃんそれさっきの子の持ってたパンだよ!」

 

「え〜でも〜置いてったから誰かが食べてあげないとパンが可哀想だよ〜」

 

「じゃあ、なんだ?アタシ達はつぐみちゃんを助けてくれた子を殴ってさらにパンまで食べちゃったのか?」

 

「殴ったのは巴ちゃんだけでしょ!」

 

「蘭ちゃんが先にあの子突き飛ばしたからアタシはあいつがつぐみちゃんに怪我させたと思って殴ったんだぞ!」

 

「2人共喧嘩はやめなよー」

 

今にも喧嘩し始めようとする2人をひまりちゃんといっしに止める。

 

「そうだよ。まずあの子にちゃんと謝らないとそれにパンのことも」

 

「謝るって言っても名前も知らない子だぞ。どうやって探すんだよ」

 

「いや〜同い年くらいの子だったから小学校探したら見つかるわじゃないかな〜?」

 

「じゃあ、明日小学校探してみるか?アタシと蘭ちゃんはアイツに酷いことしたし」

 

「じゃあ、みんな頑張ってね〜」

 

「私もモカちゃんもパン食べちゃったから一緒に謝りに行くの!」

 

「は〜い」

 

名前も知らない男の子。

身に纏っていた服は明らかに身体に合っていなかった。

そんな不思議な男の子を探してもう一度お礼をきちんと言いたかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

公園で同い年くらいの女の子を助けたら別の子に勘違いで突き飛ばされ馬乗りにされ殴られたせいで身体中が痛い。

唇の端が切れて口の中で血の味が広がる。

この痛みには昔に慣れてしまいどうでもよかった。

母親と連れの男はよく暴力を振るう人だったからだ。

水飲み場の近くで倒されたせいかズボンの裾やシャツの袖口は汚れてしまい今日の大切な食料であるパンを慌てて逃げたせいで置いて来てしまった。

腹の音が鳴り、空腹感が募るがどうすることも出来なかった。

住まわせて貰っている家に着く頃には5時半の鐘が鳴り、辺りに時刻を伝える。

汚れたズボンの鍵を弄り家の鍵を取ろうとするがポケットの中に鍵は無かった。

慌ててもう片方や後ろに付いたポケットに手を突っ込むがあるのは布の感触だけだった。

 

「どうしよう。失くしちゃった。探しに戻らないと」

 

けれど、先程突き飛ばされ殴られた記憶が探しに戻ろうとする足を引っ張る。

戻ればまた殴られるかもしれないという思いが心を掴み身体を引き留める。

けど、家の鍵を失くしことがバレると何をされるかわかったものじゃないためその恐怖が身体を動かした。

 

 

 

慌てて戻るも、公園には人影すらなく辺りは街灯の灯りだけで照らされていた。

自分が突き飛ばされ殴られたところを探してみるも街灯の灯りだけでは暗くどこに何が落ちているのかはよく分からなかった。

草むらを掻き分け、ベンチの下を覗きこみ探すがそれでも見つからなかった。

諦めて正直に言って謝ることにしたがその帰路の足取りは異常に重く感じていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

バチンっ

帰ってきて真波さんに話すと勢いよく顔を叩かれた。

 

「それで鍵を落としてその上泥だらけで帰って来たという訳ね」

 

「はい。すいませんでした」

 

「はぁ、一体誰がその汚れたズボンとシャツを洗濯すると思ってるの?それに鍵まで失くして・・・住まわせて貰ってる分際でどうしてこんなに迷惑ばかりかけれるのかしら?なぜ、あの人がアンタなんかを引き取ったのかホントに理解出来ないわ。こんな足手まといのガキなんて孤児院にでも引き取ってもらえば良いのに」

 

真波さんの言葉には優しさどころか遠慮のカケラもない。

言葉の端々にわざと傷つける発言を投げつけられる。

 

「とりあえず、風呂でその服を自分で洗いなさい。それと・・・明日までに家の鍵が見つからなかった場合にはアンタは孤児院行きだから」

 

冷たく言い放つ真波さんの後ろ姿を見送り風呂場に入る。

泥だらけの服を洗剤で洗い始める。

口の中に鉄の味が広がる。

先程のビンタで口の中が切れたのだろう。

口の中をゆすぎ吐き出した。

赤黒く濁った水が排水溝を流れていく。

それと同時に頰を涙が伝っていく。

なんで自分ばっかりこんな目に遭っているのだろうと思う。

暴力を振るう実母とその連れそして、今度は真波さんにまで殴られて同い年くらいの子達にも殴られた。なんで自分ばかりなのか。

なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで

いくら考えても理由が分からない。

身体も心も痛い。

自分の人生に意味はないと理解した。

生きてるだけで悲しくて辛い思いを沢山した。

もういいと思う。

自分自身の人生に諦めてしまっても。

溜息だけが溢れ鏡に映る表情は酷く暗く目から光は無くなっていった。

 

 




感想 高評価お待ちしております。
てか、アドバイスあったら教えて下さい。
プレゼントキャンペーンも当たり嬉しみに溢れております。
頑張って文章力上げれるよう頑張ります。
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