新幹線に乗ること、約3時間 最終便のため着いたのは10時過ぎだった
そこからバスに乗り換え目的地まで向かった。
ホテルに着くと、前日入りの選手は多く非常に混み合っていて、ブラウニーがチェックインをしにいくの見送りソファーに座りこんだ。
周りを見渡していると
「おーい 日高 チェックインは済んだぞ これは鍵 失くすなよ」
「ありがとうございます 上村先生 あと、ごめんなさい 俺のせいで1週間丸々潰してしまって」
ボクシング部兼天文部としてブラウニーが顧問として登録されているためこの1週間で組まれた大会にも同行しなければならずそのことに関しては迷惑をかけていると思っていた。
「どうした? 急に頭下げるなんて 別に気にしないでいいんだぞ 生徒は先生に頼るもんだからな」
「けど、上村先生は新婚なんだから家族を優先した方がいいのにさ わざわざ付き合って貰ってる身としては申し訳ないんですよ 一応 顧問なんて給料が増える訳でも無いんですから」
「馬鹿だな ガキがそんなこと気にする必要なんかないよ 妻にはきちんと部活の大会に同行するって言ってるんだからな まあ、お前が優勝したなら妻の元に堂々と帰れるけどな」
そう笑いながら言ってくれたあなたは本当に良い先生だと思うよ 人の悪い面ばかり見てきた俺には眩しいくらいに あと、こんなこと絶対に言ったら調子乗るから絶対に言わないけど
「俺は勝ちますよ 絶対に 」
そう宣言した瞬間聞こえたであろう同階級の選手たちがこっちを睨む。中には、中学の時に勝った顔も連中もいた。
舐められるのは性に合わないので周りを睨み返せば気圧されて視線を逸らした。
「周り睨んでないで さっさと行くぞ 明日は、7時50分には集合なんだからな」
「分かりました」
前を行くブラウニーに着いて行き、自室に入った。
今日はもう遅かったため風呂に入り明日に備えて寝ることにした。
計量を終えれば開会式まではフリーになり暇が出来た。
「俺は監督会議とかあるから別の場所に行くがくれぐれも問題は起こすなよ」
ブラウニーに釘を刺され仕方なく自室に戻り課題を終わらせることにした。
途中喉が乾いたため自販機に向かえば知った顔に出会った。
「藤谷先輩 舞先輩 こんにちは」
「タクミ君だ 飲み物買いに来たの?」
「そのつもりだったんですが おふたりの甘々な空気感のせいでブラックコーヒーが飲みたくなりました」
舞先輩はコーチの宮村さんの愛娘で藤谷先輩とは付き合っている仲だった。コーチは認めないらしいけど
「煩いな 早く飲み物買えよ」
「冗談ですよ」
自販機でお茶を買い、自室に戻ろうとすると
「藤谷君 俺も買うから戻るならちょっと待って」
後ろを向くと、そこには前回の優勝者がいた。
「あ、そうだ 石田 アレが今回のお前のライバルになる奴だぜ キッチリ挨拶してこいよ」
「そうだね 挨拶は大事だからね」
そう言って向かってきた人と向き合った。
「えっと どちら様ですか?」
「あ、 僕は石田 祐二 君のことは藤谷君からよく聞いて「おい 石田 お前揶揄われてるぞ そいつはお前の顔も名前も流石に知ってる」
石田さんがキョトンとしてる中笑いを堪えるのに必死だった。
この人はどうにも天然らしい 親切に名乗って挨拶を交わす程に。
「すいません 今のは冗談です 前回の優勝者ですから流石に分かります 俺は、日高 巧です お願いします」
石田さんが差し出した手を握り面と向かう。
「じゃあ、俺はこれで」
挨拶も済み足早に自室に戻ることにした。
こんな所で時間を食っていると、せっかくの課題を片付けないといけない時間を潰す訳にはいかないからだ。
開会式を欠伸を噛み殺して我慢し、偉い人の話を右から左手へ聞き流しボーっとする意識をどうにか保つ。
明日からの試合の激励とかどうでもいいから早く部屋に戻りたかった。
部屋に戻れば手渡されたトーナメント表を確認して畳み直し机に置いた。
明日からの予定を考えると面倒で仕方ないが、流石に夜更かしする訳にもいかず早く寝ることにした。
身体が不調だとしても決勝以外は余裕だろうと思うがどうなるかわからない。だが、負けたら俺はそこでおしまいだからだ。
日菜さんと紗夜さんに追いつくためにも絶対に負けられないからだ。
レフェリーが腕を掲げて交差させ、ゴングが鳴り響く。
会場内はどよめいているが今はどうでもよかった。
倒れて立ち上がりきれない相手選手を一瞥し、コーナーに戻ってから
グローブとヘッドギアを外し顔をタオルで拭く。
かれこれこの動作も6日目だ。
手慣れた動作で選手手帳を受け取り、ブラウニーの元に戻れば水を手渡してくれた。
「おつかれ ほら、水」
「どうもです」
受け取った水を飲みながら次の試合の準備を始めるリングを見れば石田さんが立っていた。
やはり、前回の王者は予選負けなんて有り得ないらしい。
同じ高校の人達と両親と思われる人が応援している。
まあ、明日には当たるから観といて損はないだろうと思い、立ち止まる。
「今日は、試合観て行くんだな」
「まあ、一応は 明日に当たると思うので」
そもそもアマチュアボクシングは3ラウンド2分の試合で、勝敗は基本的には判定になる。そんな中で、KOで勝敗が決まるのは珍しく早々あることではない。
だから、初戦からずっとKO勝利してる初出場の俺は驚かれたのだろう。
試合は、石田さんが圧倒していた。
ジャブの連打で相手の動きを封じガードが外れた瞬間に右ストレートが顔に突き刺さる。
まともに喰らった相手は、後ろのめりに倒れ込みレフェリーがカウントを数え始めた。
動画でも確認したがあれがあの人のフィニッシュブローなんだろう。ガードが外れた瞬間を狙って強烈な一撃を叩き込む。
そして、開始早々からの立ち上がりの速さとミドルレンジのストレートを武器にすることからパワーファイターなんだろう。
「どうだ? 勝てそうか」
「チェックインの時に言ったじゃないですか 絶対に勝つって 今でも負ける気はしないですよ」
「それにしても、あの右ストレートは恐ろしいな あんなの喰らったら立ち上がれる気がしないよ」
「あれにカウンター合わせれば確実にダウン取れますよ まあ、それでKO出来るかは知らないですけどね」
カウントを数え終わり、レフェリーがKO判定を下した。
ゴングの音共に一気に観客が湧いた。
なるほど、流石は王者だ。
俺の時はどよめきでこっちは歓声かよ。
明らかに人気に差がある。
明日の試合は完全アウェーの酷い結末になりそうだ。
「戻りますよ 課題終わらないと後の夏休みを遊んで過ごせないので」
「ああ、俺は試合観て行くよ 」
「分かりました」
ブラウニーを置いて部屋に戻れば、机に広げて放置した課題に手を付けた。静かな空間で勉強するのはあまり得意でもないためテレビをつけるとアイドル特集の番組が放送されていた。
参加しているアイドルの中に知った顔がいた。
「まん丸お山に彩りを Pastel*palette ふわふわピンク担当 丸山彩でーす」
相変わらず独特な挨拶だがこの挨拶のおかげでファンも覚えやすいのだろう。非常に独特だが。
メンバーの方がそれぞれ挨拶をしていくなかテーブルの上のスマホから着信音が流れた。
手にとって確認すればタイムリー過ぎるくらいの人物からの着信だった。
「日菜さんどうしたんですか?」
「なんとなくかけただけだよー タクミは今何してるの?」
「俺は課題しながらパスパレの出てる番組観てますよ」
「ふーん 負けたから暇なの?」
「失礼な 勝ったから暇なんですよ 第1が俺が負けると思えるんですか?」
「ううん 思ってないよ あ、そうだ 一昨日にね お姉ちゃんたちのバンドとか他のバンドとね 合同ライブしたんだー」
「合同ライブですか 楽しそうですね」
「うん とってもるんってしたんだー! お姉ちゃんの演奏もギュイーンって感じでとってもカッコ良かったよー」
「紗夜さんのギターか いいなー 俺も聴いてみたいな そういえば合同ってことは、RoseliaとPastel*paletteとあと何バンドかってことですか?」
「そうそう Afterglowとハロー、ハッピーワールドとPoppin'Partyとライブしたよ 」
「こころたちと巴たちとPoppin'Partyってバンドですか いいですね それは盛り上がったでしょうね 」
「そうなんだー とっても盛り上がったからさー 香澄ちゃんがまたみんなでやりませんかって言ったから夏休みの間にもう一回合同ライブやるかもだから タクミもその時には来てね」
「必ず空けときますよ その日は まあ、その前に明日の試合勝たないといけないんですけどね」
「タクミなら勝てるよ 絶対に 私とお姉ちゃんに追いつくんでしょ なら、全国で負けたら追いつくことなんて無理だよ!」
「そうですね 俺 勝たないと追いつくどころか離されますから まあ、期待しといて下さいよ 必ず優勝して戻るんで」
「じゃあ、勝ったらご褒美あげようかなー 期待してるからご褒美も期待してねー じゃあ、バイバイ」
電話が切られ、テレビの音だけが部屋に響く。
テレビに映るアイドルをみながら最近のアイドルは身体を張っているんだなぁと思った。
頭の中を占めるのが優勝の二文字ではなく、ご褒美の三文字に置き換わる、我ながら子供並みに単純だと思うが、日菜さんからのご褒美ということでいつも以上に気合が入った。
スマホにメッセージが送られる。
内容は、ブラウニーが明日に向けて奢ってやるとのことだった。
ランニングシューズを履き直し、部屋を出てブラウニーの元に向かう。
明日はご褒美という三文字がニトロ並みの爆発力を生み出してくれるだろうと思うが、それ以上にご褒美に対する期待感だけが高まってしょうがなかった。
kakito様 ☆9評価ありがとうございます。
アマチュアボクシングはプロボクシングと少しルールが違うため、次の話で解説付けたいと思います。
主人公の試合は長引くと面白くないからカットしました。
なので、次話で決勝の様子書いたらインターハイの話は終わります。
感想 評価 お待ちしてます。