とりあえず艦娘初登場です。
『人は神を超えたかもしれない』そう思うようになったのはいつからだろう。
人と人が結ばれ子を産み繁栄する。それは太古の昔から存在する自然の摂理、流れ、運命とも言え、初めて人類の宝を産み落とした瞬間はまさに世界にとって奇跡と言える出来事だったと思う。
神が始原に立ち世界を創造し何も無い荒地に生命の息吹を吹いた。緑が芽生え水が湧き光が常闇の世界を照らした。
人類は産声を上げ命は新たな命を産み続け繁栄の一途をたどった。人は人類が生きるために土台を作った存在に感謝をした。その存在は、人の様々な思想により形の無いものから形ある存在へと作られそれが神になったと言う。
けど、それは昔の話。人類は繁栄と同時に叡智を得て飛躍的に発展を遂げた。それは人類が更なる進化をする可能性であり、そして人が神を超えられる証明になっていった。
神は0から1を創れるが人は1から2へと進化しかできない。種のない所からは緑は生まれず何も無いところからは水は湧き出さず、世界を照らす光さえ人類は生み出せない。
別に、人類は神と勝負をしたかった訳では無いと思う。人類はただ貪欲に走り続け結果的にそうなってしまっただけで時代を重ねるごとに神の存在が薄れていった。
それでも人類には絶対的な存在、頼れる存在が必要だと思う人が少なからずいるはずでそれが宗教になり人の心を支えるものとなった。そう、人々は疲れきった人類に安寧を求めた…。だが、それも決して叶うことは無かった。
人は自らの手で『0から1』を創り上げてしまった。それは神だけが出来る『奇跡』を人が『必然』へと変えてしまった。神を超えてしまった瞬間。
それでは人間はいったい何を創り上げてしまったのだろうか。答えは簡単、『命』だ。人間は今まで築いてきた叡智を知恵を技術を全てをそそいだ。それは、もう神の奇跡と相反しないものと言ってもいいくらいに人類は進化した。
そして、その人間の力で生み出されたのが私達『艦娘』だった。生み出された理由は『人類をある敵から守るため』。それ以外の理由は知らない、いやあるはずがないと思う。
私達は戦った。最初は訳が分からなかった。急に人間の手によって創り出され戦場に放り出された。記憶なんてよく分からないはるか昔の戦争の記憶が頭にこびりついて離れない状況の中、海上の上で向かってくる敵と戦った。
私の頭の記憶からすれば、海の上はきっと私達にとっては故郷のはずだった。それなのに目の前で仲間が沈んでいき、私はそれをただ見ている事しかできなかった。かつては輝いていたであろう私達の故郷も、戦場と化し血に汚れていた。
それでも、私達は希望を持っていた。それはかつての海の輝きを取り戻すためそう心に決めていた。記憶の中には決して悪くは無いものばかりではない、海の上で人の笑顔があった。だから私達はそれを取り戻すため必死で戦った。それがきっと、人にも届いているはずだと信じていた。
けど、現実は厳しい。人は私達を仲間だとは思ってくれなかった。人と同じ姿をした私達が意味の分からない敵と武器を持って戦い、大怪我をしても直ぐに治るような体を持ち人なんか簡単に殺せるような怪力を持つ私達を『怪物』と呼んだ。
そこからは、ただの地獄だった。連日連戦の戦いから休む間もなく戦場に行き仲間達が沈んでいく。無事に帰投しても脅威から守った人間から軽蔑の目で見られ罵倒を浴びせられた。『提督』と言う私達の責任者は私達を守る所か、少しでも刃向かったり戦果が無いと暴力暴言を日々繰り返された。
完全に私達の心は折れていた。他の艦娘も皆暗い表情をしいつも人に怯えた。戦場に行けば地獄、帰れば地獄。もう私達には居場所がどこにも無かった。裏切られた…。そう私は思った。
そう思えたのも遅いくらいだ。もっと早く気づいていれば良かった。期待するだけ信じるだけ無駄だったのだと。
もしも、神様がいたとしたら、私はこんな腐った運命を早々に終わらせてほしいとそう願うと思う。他には何も望まないから私達に安らぎを与えて欲しかった。
でもね、これさえも叶えられない願いだと私は知っている。だってこの世界に神なんて存在しないもの。結局は神なんて言う不明確な存在は人間が後付けで足した都合のいい存在に過ぎないからだ……。
私は静かに目を開ける。生暖かい液体に全身浸かり体の1.5倍程の容器に体を丸めていた。周りの音は聞こえず液体の中だと言うのに不思議と息苦しくない。
容器の外に目を向けると、同じ容器が部屋いっぱいに並び中には私と同じように中にいる子も確認出来る。部屋自体は薄暗くみんなどんな表情をしているのか詳しくは分からないが眠っているようだった。
私は下に目を向けるとモニターに『調整中:残り時間5分』と表示されため息をつく。もう少しでここを出なくちゃいけない。またどうでもいい人間の為に命の危険を晒すのはゴメンだ。いや、いっその事死んでもいいかな…。そんな考えがよぎるがすぐに頭を振るう。
(私にはまだ沈めない理由がある。あの子の約束も皆の想いも私が成し遂げなくちゃいけない。)
人間に裏切られそれでも虚像の神にすがりつきそして希望を叩き潰された。そんな私にはもう地獄しか無い。だからこそ、もう一度覚悟を決めなくちゃいけない。そう思い来るべき日に備え私はまたゆっくりと目を閉じたが無情にもタイマーが鳴った。
ピー、ピー、ピー
(えぇ…早いって。)
4月某日。私はとある鎮守府に行くため『第1西海防衛基地』の港に来ていた。その鎮守府と言うのは、私が新たに配属される海境島鎮守府でその鎮守府の名前を1度も聞いたことがなかった。前日になって資料をもらったけど、時間が無くてほとんど流し読みをしてしまい島の基礎的な事しか頭に入ってない。
どんな鎮守府でどう言う提督が待っているのか、今から考えると心がどんどん沈んでいく。天気はまだいいけど海はいつもより荒れているし不吉ね。
「はぁ〜〜…」
そう考えていると自然と大きなため息が出てしまった。
「お姉ちゃんまたため息ついてる。そんなんじゃ幸せが逃げちゃうんだよ。」
「ん…、磯波わざわざ来てくれなくても良かったのに。」
後ろから聞き慣れた声が聞こえたので振り返る。磯波はなんだか嬉しそうにニコニコしながらこっちに近寄ってくる。その姿が小動物のようで愛らしい。(磯波って可愛いわね…)
「なんだか上機嫌ね。私に怒られ無くなるのは嬉しい?」
「え、ち違うよ。私はただ叢雲姉さんとまた会えたのが嬉しくて…。ほんと無事で良かった。」
磯波はそう言って笑顔を見せるが体が僅かに震えていた。それは寒さからなのか、それとも私が解体処分されるのを知った時の不安が抜けきれてないのか。
ともかく、磯波や他の姉妹達に心配をかけてしまったのは事実。そう思い私は磯波の事を抱き寄せ優しく声をかける。
「心配かけてごめんさい。でも私なら大丈夫。何も心配はいらないわよ。」
「ほんとに?また無茶とかしない?」
磯波が涙目でこっちを見てくる。(我が妹ながら可愛いわね…)
「しないわよ。だから安心しなさい。」
「う、うん。」
「ま、もし何か変な事をされたら私がぶん殴ってやるわ」
「お姉ちゃん……」
「冗談よ」
笑いながらそう言い磯波の頭を撫でる。磯波は嫌がる様子もなく「えへへ~///」と言いながら私に体を預ける。この笑顔に私はどれだけ救われたことか。守りたいこの笑顔…。
「そう言えば他の皆はいないみたいだけど磯波だけ?」
「うん。白雪姉さんと初雪姉さんは今遠征任務でいないんだよ。私はたまたま非番だったんだけど提督にお願いして外出許可もらったの。」
「え…あの提督が。磯波何かされなかった?もし何かされたり口止めされてたら言って。酸素魚雷撃ち込んでくるから。」
「ちょ、ちょっと待ってよ叢雲お姉ちゃん!」
私はそう言って踵を返すが磯波は慌てて私の腕を掴んでくる。
「何もされてないから大丈夫だよ。私もビックリしたんだけど、他の鎮守府の提督さんが来ててその人が助けてくれたの。階級もかなり上だったから提督も反対出来なかったみたい。」
「へぇ、かなりの変わり者だけどそう言う提督もいるんだ。」
例の事件から時間が経ち鎮守府の皆が心配だったけど話を聞く限り今の所は安心しても良さそうだ。
すると、磯波は周りをきょろきょろと顔を動かし私に耳打ちをしてくる。(その動きが可愛い。)
「お姉ちゃん、誰かに聞かれたらどうするの。今度こそ連れていかれちゃうよ。」
「…悪かったわ。ちょっとムキになってたみたい。ありがとう。」
私は磯波の頭を撫でる。たしかに今の言動は少し軽率だった。
私が以前いた鎮守府の提督は最低なヤツだった。自分の立場を利用して平気でセクハラするし暴力暴言なんて当たり前で何かあればすぐ上にチクる。金の使い方も荒いし鎮守府運営や指揮も素人同然。
だから私はいつも提督に対して反発した。除名処分や罰を受ける覚悟もしていて、本当はその場で提督を殴りたいほど憎んだ。それでも一線を越えなかったのは皆がいたからで、手を出したら守れないと分かっていた。私が守らないといけないとずっと思っていた。
そんなある日、提督は白雪姉さんに手を出した。私が長期任務から帰投してから白雪姉さんの様子がおかしかった。いつも笑顔で妹や他の子達の面倒を率先してみていたのに、無理やり笑っているようで常に気が抜けているような感じが気にかかった。
そしてそれからすぐの事で夜中に1人で泣いている白雪姉さんを見つけた。全身震えていて私はことの深刻さをすぐに理解した。泣いている説明を渋る白雪姉さんに問答無用で無理やり問いただした。
白雪姉さんから聞かされたのは、私が1番危惧していたことだった。聞く前から薄々察していたけど嘘であって欲しいと思った。それは明らかに私がいない間を見計らっての行動だ。
「ごめんさい…ごめんさい…」白雪姉さんは泣いて私に謝ってきた。そこの声は1度も聞いたことがないまでに弱々しく消えてしまいそうだった。
白雪姉さんは皆を守るために1人犠牲になったのだ。白雪姉さんがどんな思いで皆を守り戦ってきたか私には分かる。それを簡単に踏みにじられた気持ちはどれほどまで悲痛で残酷だったか。考えるだけで心がはちきれそうになる。
そしてそれを止められなかった私は自分の無力を知り何も出来なかったと後悔した。今できることはただ泣いている白雪姉さんを抱きしめることと、大事な存在に傷をつけた提督に復讐をすること。私の中にあるものがプツン…と切れたような音がした。
私は、白雪姉さんをベッドに寝かせたあとすぐに提督室へ向かった。私の頭の中には『怒りと復讐』しかなく周りの情報は一切入ってこない状態だった。
提督は私達の反感が怖く部屋に鍵をかけ憲兵まで見張りとして置いていたけどなりふり構わず進んだ。周りから見た限り大人と子供、体格差はあれど腐っても艦娘の私は多少の傷は気にしない。憲兵達ともみ合いになりながらも殴り倒し鍵を壊し無理やり部屋の中に入った。
外の様子に気がついた提督は近くにあった護身用の拳銃を持って逃げ出そうとする最中だった。部屋で一瞬提督と目が会い提督は私を見ると腰を抜かした。私に対し泣き顔で何か言っているみたいだったけど生憎と今の私には何を言っても無駄だった。
憲兵に棍棒で叩かれたり刀で切りつけられたり銃で撃たれ血だらけになっても止まらなかった。今の私を誰がどう見ても『怪物』そのものだろう。
鎮守府の外から憲兵達が集まってきてあまり時間が無い。それに、この騒ぎで他の皆も起きてくる頃だろう。私は、酸素魚雷に手を掛けて撃つ準備をする。それを見た提督は目を見開き恐怖で顔が歪んでいた。
憲兵達は酸素魚雷に手をかける私を見て取り押さえる力が一段と強くなった。それのせいなのかバランスを崩し運悪く酸素魚雷を落としてしまった。提督はそれを見て安心したのかニヤニヤとこっちに笑いかけてきたが、ここで終わるわけがない。
私は、憲兵に抑え込まれながらも手に持っていた連装砲を提督に向けた。提督は慌てて拳銃を発砲し私の腹部に命中、その痛みと衝撃で砲撃は下に外れたが後ろの壁と床が吹き飛び提督は外へと放り出された。
そこからの記憶は無い。意識が途切れる前に誰かの声がしたと思ったけど分からなかった。この事件により私は直接監獄へ送られ一番刑の重い解体処分が決まった。
私はその決定に不満はなかった。当然のことだと思ったし覚悟も決めていた。ただ私の手で提督を殺めようとしたことで鎮守府の皆が更に酷い目に会うかもしれないと凄く反省した。
「叢雲お姉ちゃんの所属先が決まってよかった。どういうところなの?」
「私も詳しくは資料を見てないから良く分からないわ。一応、絶海の孤島らしいけどあまり期待しないわ。」
「そうなんだ。でもいい所だといいね!」
「そうね。」
(いい所か……)
私は少し考え込む。解体処分間近の私を再契約するなんてどう考えても有り得ない。しかも未遂だとしても提督を殺そうとした私を入れるメリットがあるようにおもえない。
もし初期の建造に余裕が無い。すぐにでも戦力が必要な海域なら分かるけど、海境島鎮守府にはその条件が合わない。一体どんな提督なのか想像がつかないけれど…
「もしも、私からお願いして磯波達がこっちの鎮守府に来れないか機会があったら相談してみるわ。」
「え!いいの!?」
磯波はビックリした様子だったが、今回の私の再契約をする提督なら他とは違う考え方をしている可能性があるかもしれない。望みは限りなく薄いけど小さな希望は持っていた方がいい。
「そうと決めた訳では無いけどあっちの提督がどんな人なのか見てからになるわね。だから少しの間頑張るのよ。」
「うん!私頑張る!」
磯波はそう言って満面の笑顔で抱きついてきた。
(ああ…天使だ)
私は、最後に磯波を強く抱きしめてその感触を温もりを噛みしめる。磯波は指定された服しか来ていなく薄着だった為私のマフラーを渡し、磯波が手を振って見送るなか新たな鎮守府へ僅かな希望と大きな不安を胸に出発した。
時刻はヒトナナマルマル。途中、海境島の姿が見えなかったり突然不思議な霧に遭遇したりその中を抜けると目の前に海境島が現れたりと、少し驚いたり焦ったりしたけど無事に着けて良かった。港にはこの島の責任者である『会長さん』が鎮守府まで案内してくれた。
会長さんの話によると昨日から提督は鎮守府に着いているらしく、完全に出遅れた形となってしまったけど連絡ミスなら許してくれるはず。怒っていなくても、もしかしたら機嫌は悪いかもしれない。そう考えると今から気分が落ち込んでくる。
鎮守府へ向かう途中会長さんから提督について聞いた。どうやらここにいる提督は見た目は私とそこまで変わらない年齢でまだ少年の様な印象だったらしく、それを聞いた私は驚いと同時にさらにここの提督への想像がつきにくくなった。
もう1つ不思議に思ったのが会長さんの私に対する態度だ。鎮守府の人間や軍の関係者でさえ艦娘への対応が3歩も4歩も遠ざかっているのに、会長さんはそう言った印象が見受けられない。これは私にとっては嬉しいことだった。もし、姉妹達がこの島に来ても少しは安心できると思うからだ。
そうこう考えていると林を抜け鎮守府が見えてきた。海境島鎮守府の印象はなんというかここだけ時間に取り残された様な寂しい感じを持った。それにお化けでも出そうな雰囲気だ。
提督は既に中にいるらしく会長さんから必要な引き継ぎ事項を受けた後、会長さんは帰って行った。
1人残された私は鎮守府の門から建物等の周りを見ながら本館へと足を進める。もうすぐ日の入りで夕日が海の水平線に沈んでいくのが見えた。その眩しい夕日の光が鎮守府を照らしそれがとても綺麗に思えた。久しくこの素晴らしい景色を見ていなかった。まるで心を洗われているようで自然と涙が出てくる。
すると、ふと鎮守府の窓に人影が通り過ぎた。私は涙をふいてもう一度その窓を見たが人影は無かった。
(見間違え?もしかしたら提督かもしれない)
そう思って急いで本館の扉に向かった。扉の鍵はあいていてギギギィィ…と不気味な音を立てながらゆっくりと開く。中は電気がひとつも点いてなく夕日の光だけが外から入ってくる。そのせいか、元々静かな鎮守府内はいっそ不気味さを増している。
(ゴクリ…本当に出そうな雰囲気ね。まぁ全然怖くはないけどね。)
私は、ゆっくりと鎮守府の中へ入り周りを注意深く見ながら廊下を進んでいたが、突然『バタン!』と大きな音がした。
「ヒッ!!」
恐る恐る振り返ると扉が閉まっていた。今の時間は「凪」の時間帯だ。風は吹いていないはずなのにどうして…
(ま、まあ気にしててもしょうがないわね。早く提督を見つけましょう。)
そう心の中では思っているが怖いのか思うように体が動いてくれない。私は再び目線を前に戻すが身体が完全に固まった。いや、思考さえも固まっていた。
外からの夕日の光がよりいっそう強くなり長い廊下を赤く染めている。その廊下の奥にはひとつの人影があった。その人影は片手に武器のような物を持ち、もう一つの手にはぐったりとした人の姿のようなものを担いでいた。そして極めつけは片目だけが夕日の光によって光っている。
私はその場で立ち尽くした。すぐに逃げればいいのに足がガタガタ震え体は全然いうことを聞いてくれなかった。
(やばいやばいやばい!全然動けないんだけど!あれはもう本能的にだめなやつだわ!とりあえず日本語は通じるかしら!?)
突然の現象に思考回路がパニックになり意味不明なことまで考えている。するとその人影は1歩また1歩と近づきながら鋭い眼光でこちらを見てくる。
(だ、大丈夫よ!叢雲落ち着きなさい。私には酸素魚雷があるじゃない。だから全然怖く………あれ、酸素魚雷がない。)
今になって気がついたが、今回は特に危ない海域では無くただの移動だった為に無駄な装備は付けないでこの島に来たのを忘れていた。
(あぁ…私のばかぁぁ〜)
人影はさらに近づきその距離を確実に縮めてきている。しかも歩くスピードが若干早くなってる。
(くっ!こうなったら連装砲でやられる前にやるしかなわ。)
そう思い連装砲を人影に向かって構えた。人影は一瞬驚いた様子でこちらを見てた。どうやら威嚇は成功したらしい。このまま上手く逃げ出せれば問題ないわね。そう安心していると突如人影がこちらに向かって走ってきた。
(えぇぇ!ちょっと待ってなんで急に来るの!あぁもうやるしかない!って、どうして!?連装砲が動かない……)
この時私は相当怖かったのだろう。普段絶対に起こさないであろう連装砲の安全装置を外し忘れていた初歩的なミスを起こしていた。
これで、完全に私はパニックに陥ってしまい普通の思考が出来なくなった。
「い、いやぁぁぁぁ!!」
大声を上げたおかげで体の緊張が少し緩み動き出すことに成功したが、人影との距離はほとんど差がない。人影は後ろで「ま、、って、!ぉ、、、い!」そんな感じで喚きながら追ってくるが当然余裕のない私は無視だ。
しかも、艦娘ならば人並み以上の運動神経を持っているのが当たり前なのに何故かあの人影との差が全然広がらない。それどころかどんどん縮まっている。それが余計にパニックを増幅する。
私は入ってきた本館の扉から出ようとしたが扉がまるで鍵でもかけられているかのように固く開かなかった。
(何で開かないのよ!!)
ふっ、と私の体を影が覆った。心臓はバクバク音を立て今にでも口から飛び出そうだ。額からは変な汗が流れ頭がクラクラしてくる。
私の体はものすごい恐怖で震えていた。そして人影は私の肩に触れてきたのだ。「ビクッ!!!」と体が反応しそれが緊張の最高潮に達したのは間違いないだろう。体を反転させながらその人影目掛けて思いっきり渾身のグーパンを放った。
「グハッッ!!」
その人影は人の声を発しながら数メートル後ろに体を回転させながら吹き飛んだ。
(え、人の声……?)
これが彼との初めての出会いだった。
艦娘→叢雲、磯波。
島民→会長さん
主人公→提督
その他エキストラ。