猫と犬は相容れない   作:あずき屋

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「なぁシスケ、お前その剣どこで覚えたんだよ?」

「昔拾ってもらった爺さんから教えて貰ったんだ。
対人戦っつーか、何がなんでも生き残るための術みたいなモンだ。
本来自分より遥かにヤベぇ奴らを相手取るモンじゃねぇ」

「でもお前普通に前線飛んでくるよな。
バカなの?やっぱりバカなの?」

「ハァ......お前さ、他人がゲームしてる所見て満足しちゃう質?
ないわー映画のクライマックスにトイレに行くぐらいないわー。
つーか俺の性分的にも無理だろそりゃ」

「あぁなるほどな。
そりゃそうだよな、お前見てるだけじゃなくて自分も参加する質だもんな」

「お二人共!
今!忙しいですか?!」

「ちょっと今過去振り返ってるから」

「大量のお客さんが!
来ていますので!対処お願いします!」

「分かった分かった。
はいはいどうなさいましたお客様?
え?ウチのボスの命令でこの辺の食いもんは全てもらう?
ちょっとちょっと、困りますよお客さん。
ウチは慈善事業じゃないんですよ?
いくらアンタらのボスが偉くても、あーお客様ァ!
いけません!つまみ食いしようとしないで下さ、あーお客様ァ!お客様ァァァァァァ!!
死ねやこの疫病神共がァ!!!
何がお客様は神様じゃボケ!!
テメェらはどう考えても疫病神じゃァァァ!!
テメェらぶっ殺して“神は死んだ”って世界に向けて叫んでやるわァァァ!!!」

「紫助さん接客業にトラウマでもあるのかな」

「ンキュンキュ」




第13話 追加の客なんて聞いてねぇぞ

 

 

『こちらαⅠ、順調に目標地点に向けて接近中。

約60秒後に誘導へ移る』

 

『了解、被害なくお客様を丁重にパーティへご招待しろ』

 

『こちらβⅡ、αⅠの左舷より総員配置に着いた。

誘導開始より30秒後に遊撃に移る』

 

『了解、最高のサプライズを期待する』

 

『こちらγⅢ、αⅠβⅡ共に確認完了。

視界良好、遊撃開始より10秒後に制圧に移る』

 

『了解、我らのクライマックスを見せてやれ』

 

『こ、こちらΣⅣ、全部隊確認完了。

作戦開始より120秒後に爆雷投下後突貫します』

 

『了解、締めの花火は派手なほどいい。

手向けの花も一緒に添えてやれ』

 

『こちらθⅤ、総員配置完了。

作戦開始号令発令後、Σ4の支援に移る』

 

『了解、女の子は目の前で落ちる。

親方等の発言は禁ずる』

 

『.........』

 

『ΔⅥ、報告せよ』

 

『......お、おう、こちらΔⅥ、こちらも準備完了。

全部隊突入後にしぇ......殲滅に移行する』

 

『了解、気にするな誰でも噛むことはある。

作戦を失敗しなければいくらでも噛んで構わん。

荒猫の異名を存分に発揮してくれたまえ』

 

『べ、別に噛んでにゃ!』

 

『こちらΠⅦ、周囲の警戒滞りなく継続中じゃ。

援軍等の襲来に関する報告は随時行おう』

 

『了解、何故貴公がΠを選んだのかはこの際聞かないでおこう。

くれぐれも諸君らは、決してΠについて詮索してはならない。

やましいものではないが、Πは響き的には十分やらしい。

いいか、これは命令だ』

 

『こちらΣⅣ、Ω0作戦開始の号令を求めます』

 

『Ω0より全部隊へ通達。

全部隊配置を確認、並びに作戦実行段階への移行を確認。

目標は我が物顔でフランスを占拠する敵の掃討。

各自、警戒並びに想定外の事態に備えろ。

これまで、諸君らの怨敵はこれまでの常識が通用しない未知の存在であっただろう。

親しき者たちを始め、多くの尊い命がソレによって散らされた。

敵は強大、危険は未知数、退路は既に絶たれている。

我らは敗北という苦渋を舐めさせられる以外道はない。

 

そう、昨日まではだ。

最早諸君らは孤軍ではなく、我らカルデアの同志。

諸君らの命は1つではなく、戦いから死する時まで我々と共にある。

退路がないのなら新たに活路を拓け。

危険など軒並み踏み越えろ。

強大な敵など、これから先の困難に比べればさしたる問題にすらならない。

難しく考える必要などない!

各自明日を迎えることだけを目標に突き進め!

我らに待ち受けるものは闇ではなく、輝ける明日以外に他ならない!!

 

さぁ、精鋭たちよ。

再び武器を取って立ち上がれ!

ことフランスを今日まで守り抜いてきた諸君らと、人理を救う任を担っている我々が手を組めば、あらゆる外敵をも跳ね除けられる!!

作戦成功の吉報を心待ちにしている。

 

────総員、作戦開始』

 

『『『『了解』』』』

 

 

───────────────────

 

 

祭りとは総じてその場の勢いだけで繰り広げられている。

その昔はきちんと敬い、崇め奉る神々への貢物を納め、然るべき儀式を執り行うもの。

だが今はその有り様は変わり、ただ飲み食いして騒ぐだけのものに成り代わっている。

変わらず昔と同じように儀式を行う地方も少ないが存在はしている。

灯篭流しやねぶた等がそれらだ。

話を戻すと、その他の祭りの本質は変わり、思慮の足りないアホどもが騒ぎ立てる無法地帯となっている。

 

「そう長いこと時間をかけるつもりはねぇ。

最短で目標をぶっ潰せばいい話だ。

必要なピースと戦力を随時回収して、総力戦で締める。

ここまで来たらもう細かいこと考えんのもめんどくせぇし、無駄に考え張り巡らせんのも良くない気がする。

もうアレだ、全部ノリで行っとこう」

 

『最後のセリフさえなければまだ頷けたんですが』

 

やる事は至極単純な戦法。

それぞれの事態に対処する部隊を複数配置し、順番通りに問題を処理していくだけ。

まず先鋒ことαチームが周囲の敵を誘き寄せ、街の中央へ集めていく。

この時点で倒すことは念頭に置いてない。

敵を一網打尽にするため、なるべく1箇所に集める必要性がある。

これによりαチームへのヘイトが溜まり、ワイバーン達は彼らを必死で追い立てる。

 

次にβチームがαチームのヘイトを外すべく攻撃を仕掛ける。

それぞれの部隊はそれなりの人数を有してはいるが、部隊毎で区切れば1体1、戦力的に鑑みれば多対一の感覚に近い。

だからこそ、それを順繰りに更新していく。

敵が増えればその分神経を複数の方向へ向けなければならない。

故に一個隊に向けるヘイトが減る。

βチームに課せられた役割はヘイトを集め、敵をその場にて押しとどめる。

勿論これも時間稼ぎ。

重要なのは押しとどめたワイバーン達に対して包囲網を敷いていくことだ。

 

次なる伏兵がγチーム。

ちょうどYの字のように3方向から圧力をかけ続けていくことで、敵を制圧していく。

ここから撃破の意識へとシフトチェンジしていく。

一軍に対して多方向からの同時アプローチ。

どちらを向いても敵兵という、あっちを立てればこっちが立たず空間を成立させることが重要。

 

『はぁ......この作戦で本当にいいんでしょうか?』

 

徐々に拮抗状態から制圧状態までの移行を確認した後に、∑チームの出番となる。

爆雷を落とすとは言ったが、実際落とすのはΔチーム。

∑の役目はΔの爆雷から自兵を守ること。

 

『まぁ何だかんだ言っても紫助さんの作戦は頼りになるし』

 

θチームの役目は∑の支援。

文字通り魔術礼装による強化支援を行い、∑チーム隊長の身体能力を底上げする。

理論上単独でも問題はないが、あくまで念の為だ。

しくじる可能性も決してゼロではないのだから。

 

『あー!何か妙に緊張すんな!!

生前こういうのやった事ないから免疫ねぇんだよ!

確かにやってみたいとは言ったけどな!』

 

並行でΔチームが躍り出る。

Σチームと共に戦場中央へ落下し、周囲の敵を一気に殲滅することに特化した独立戦力。

ここがこの作戦の成功を握る鍵だ。

残存勢力を情け容赦なしに削ぎ落とし、自兵を可能な限り生存させる大切な役割を担っている。

決行する当人がガチガチになっていること以外を除けば、これ以上ない適任である。

 

『うむ、ワシの種ヶ島ならあの程度造作もない。

一気呵成に畳み掛け、思う存分蹂躙してくれるとしよう!』

 

そして更なる襲撃や増援の進軍を食い止めるのがΠの役割。

子どもを育む方の柔らかな双丘の方ではない。

そこを履き違えてしまうと途端に瓦解する。

何から何まで総てだ。

 

「敵サーヴァントとトカゲ諸共殲滅だ。

明らかにヤベぇと思う奴らは軒並みぶっ殺す。

メガネっ子、不二子も聞いとけ。

戦場で正論やら主義主張なんて何の役にも立たねぇんだ。

勝たねぇと何もかも失うのが戦場だ。

一切の情け容赦なしに倒しきれ。

俺らの命で済むんなら安いモンだが、失敗すりゃ大勢の奴らの命も歴史も綺麗さっぱり無くなる。

その辺肝に銘じとけ」

 

『わ、分かりました。

状況把握、作戦開始します』

 

『了解......って俺は藤!』

 

「んじゃ、一波乱起こしますか。

フランス精鋭隊改め信長鉄砲隊出陣」

 

『『『はっ!!!』』』

 

兵士たちが持つ物は握り慣れた剣や槍ではなく、切り出した木に鉄で補強をしたもの。

戦国において必須武具とまでされ、一度放てば容易に人体を貫く鉛玉を高速で打ち出す兵器。

言わずと知れた火縄銃、種ヶ島であった。

 

「投石もいいが、携帯できる分こっちの方が遥かにいいな。

なんせ弾数無制限だし紛うことなき神秘の代物だ。

ある意味イージーモードだぜこれ」

 

放たれる無数の弾丸は死の嵐となり、ワイバーンたち目掛けて襲いかかる。

人知を超えた存在であるサーヴァントに対しては効き目が薄いが、何の武装もしていない動物を殲滅するには十分過ぎた。

幻想種といえど所詮は低階級のワイバーン。

兵士たちは持ち前の連携を駆使して苦もなく殲滅していく。

問題はその中央に位置する敵性勢力。

人理の敵として召喚されたサーヴァントだ。

 

「うおォォォォ!!

余に向けて斯様な鉛玉を打ち込むとは何たる無礼か!!

恥を知れ愚か者共め!!」

 

「この大群を相手に囲い込みをするつもりか!?

向こうにはとんだ奇策を企てる者がいたらしい!

不味いぞ!僕らでもこれ以上はいけない!!」

 

「「「────────ッッッ!!」」」

 

「何かお偉いさんが怒鳴ってんなー。

ロマニ、何喋ってるか拾える?」

 

『そんな学校の教室で騒ぐ同級生みたいな扱いおかしくないかい!?

相手はかの有名なドラキュラ公のヴラド三世と、フランスきっての伝説の白百合の騎士シュヴァリエ・デオンだ!

とにかくめちゃくちゃ怒ってるぞ!!』

 

『そりゃ出会い頭に鉛玉のプレゼントしたら怒られるさ。

最も、それ以前に彼らはだいぶ歪められてるようだけどね。

スキャンの結果、どうやら2人とも“狂化”のスキルを後付けされてるみたいだ。

バーサーカーもどきというやつさ』

 

「ほー、なら潮時だな。

どっかの兄ちゃんも言ってたな、怒り狂った奴ほど手玉に取りやすいって。

なぁ猫?」

 

『うるせぇ!

あん時は調子がビミョーだっただけだ!

クソっ!むしゃくしゃしてきた!

帰ったらアイツにリベンジ仕掛けてやる!

お前も付き合え!』

 

「やだよめんどくせぇ。

兄貴連れてけよ、三つ巴の喧嘩の方が面白そうだし」

 

『お二人共!

今は作戦中です!

経過は今のところ想定通りですが、予断は許されません!』

 

『うむ!騒ぎを聞きつけたか分からんが、援軍も辺りから集まってきとる。

ま、想定内じゃな。

出来るだけワシが引きつける!

早々に片付けるがよい!!

鉄砲隊、放てぇぇぇ!!』

 

『マシュ!そろそろ時間だ!』

 

 

敵が密集している箇所に向けて四方八方から繰り出される攻撃は、着実に効果を与え、上手く混乱を誘えている。

冷静な対処がてきないバーサークサーヴァントたちなら、これを機に一網打尽にできる。

後はトドメの一撃を、予想外の場所から落としてやるだけだ。

 

『βⅡよりΩ0へ通達!

αⅠγⅢへの合流完了!

これより3部隊は後退へ移る!』

 

「了解、ポイントまで後退の後徹底抗戦に移行。

死ぬ気で推し止めろ。

うし、出番だ猫。

特大の雷さん撃ち落としてやれ。

へそなんてケチなことは言わねぇ、諸共全部ぶっ壊せ」

 

『おうよ!

望み通りでけぇ花火打ち落としてやるとするか!!

J·A·〇·V·I·S!開けろ!!』

 

『先に行きます!

先輩!モードレットさん!

よろしくお願いします!』

 

『任せて!

あ、親方!女の子が空に落ちます!』

 

『了解、お気をつけてMs.キリエライト、Ms.モードレット』

 

『へっ、オレを女と呼ぶなっ!』

 

上空にてワイバーンではない黒い物体が比肩する。

人工知能であるJ·A·〇·V·I·Sを搭載した軍用車両が、その両脇にプロペラを回して遥か上空で待機しているからだ。

消音装置を組み込んであるため、ドローン並みの音量で接近が可能。

改造を施したこの車両なら、空を飛ぶことなど造作もない。

ここから特大の雷を落とすのが今作戦の要。

 

「シスケ!搾り上げるぞ!!」

 

赤雷を放ちながら唸りを上げる聖剣を片手に、モードレットは敵軍目掛けて落下する。

さながら本物の落雷が落ちるかのように、自分自身を赤雷と化して威力を増大させる。

これが魔力放出を武器に戦う彼女の強み。

どんな敵も、力ずくで押し潰す破壊の権化。

 

「恨みはねぇが悪く思うんじゃねぇぞ!!」

 

「真名、偽装登録。

仮想宝具 擬似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)!!」

 

轟音を響かせ、落雷は落ちる。

周囲の地形を根こそぎ変形させてしまう破壊の余波を広げ、あらゆるものを平等に粉砕していく。

ある少女の背にいるもの達以外は、軒並み塵芥と化し、気味の悪い静寂が辺りに満ちる。

 

「ロマニ」

 

『生体反応なし。

周囲にまだちらほらワイバーンの反応があるけど、散り散りに離れていってるみたいだ。

作戦は成功みたいだよ』

 

『敵性勢力の二枠は潰せたし、上々の戦果だと思うけど?』

 

「まぁな、ただ援軍のサーヴァントは出てこなかった。

切り捨てか、単純に周辺にいなかったか。

こんだけでけぇ雷撃ち落としておきながら気づかねぇなんてことは有り得ねぇし、まぁ......前者かねぇ」

 

『紫助さん、戦闘不能のサーヴァントを発見しました。

狂化の類も付与されていないところみると、どうも敵側のサーヴァントではなさそうです。

ただ、怪我の具合から見てどうも傷だけで負傷している訳ではなさそうですが......』

 

「......チッ、ダ・ヴィンチ」

 

『その特異点に呼ばれた本来のサーヴァントかな。

マスターも確認できないところから見ると、どうやら“はぐれ”らしいね。

念の為、彼らには隠蔽魔術を掛けておこう。

一応この街にも掛けておくよ(・・・・・・・・・・・・)

無茶だけは』

 

『マスター、ワシはこやつらの護衛を請け負ってやろう。

用が済んだら疾く戻るのじゃぞ』

 

「おう、藤っ子は取り敢えずそいつの応急処置しとけ。

その後メガネっ子と兵隊さん連れて次の街に先行っとけ。

使えそうな戦力なんとかかき集めてこい。

あぁ、入る前に使者出して状況確認してこいよ?

いきなり団体さん連れ込んでパーティは無理があるからな。

ロリノブ、そいつらの殿任せた。

猫は俺ん所に集合、以上」

 

ぶっきらぼうに言いたいことだけ告げて通信は切れる。

効率良く状況を回転させるには、なるべく二手に別れて行動した方がいい。

信長と大勢の兵士もいるのならワイバーン程度に遅れは取らない。

仮に敵サーヴァントと鉢合わせたとしても撤退行動までは持って行ける。

彼らには先に戦力強化のために動いてもらい、こちらはもう1つの厄介事を片付ける必要がある。

 

「ハァ......めんどくせぇ」

 

「よっと、あ?

なんだよソレ」

 

「美味いモンじゃねぇよ、ただの暇潰しだ」

 

「ふーん。ンなの吸ってっからバカに何じゃねぇのか?」

 

「うるせぇ、元からアホのテメェに言われたかねぇな」

 

「うっせ、で......どうすんだ?」

 

「野暮なこと聞くな。

俺たちがやることなんて決まりきってんだろ。

まぁ、それ以前にあんまりウダウダやってる時間もねぇんだが」

 

煙草を咥えながら顎をしゃくった先は、荒れ果てた街から悠々と歩いてくる人影が一つ。

長髪をたなびかせ、身の丈程ある杖を携えて近所へ散歩するように、それは現れた。

まず間違いなく、味方の放つ気配ではないだろう。

 

 

「あら、楽しそうな掛け合いはもうおしまい?

折角最後の時間なんですから、もっと惜しむようにゆっくりお話したらいかが?」

 

「生憎オレたちはそんな仲じゃなくてな」

 

「拳でしか話せねぇ半端モンよ。

アンタとは、そうじゃないならいいんだけどな」

 

「気が合うわね、なら尚更混ぜて頂戴。

かく言う私も今は、無性にコレを振るいたくて仕方がないの」

 

 

荒れ果てた街の残骸に腰を下ろしたまま、紫助は目の前からにじり寄ってくる気配に向き合う。

砂埃に溶け合うように入り込んでいく紫煙。

緊張を吐き出すように、煙を吹きながら見やる。

隣に佇む彼女も、軽口を叩きつつ愛剣を握り直す。

ダ・ヴィンチに誤魔化して貰わなければ、あの二人は勘づいて応戦しようとするだろう。

信長に至っては察していたようだ。

総力戦で迎え撃つのがセオリーだが、生憎時間を費やしている場合じゃない。

例えワイバーンなんてケチな存在じゃなく、本物の竜種を従えたとてつもなくヤバい奴が相手だとしても。

 

 

「見た目は完全にお淑やかな英霊様なんだろうが、正直誰なのかさっぱり分かんねぇな」

 

「オイオイ、お前アレが淑女に見えんのか?

竜種従える野蛮な女なんて、後にも先にもコイツだけだ。

有名な聖女サマ、聖女マルタだろ」

 

「......なるほど、やっぱり昔っつーかそういう連中は規格外ばっかだな。

なんでこんな別嬪のねーちゃんがって思うもん。

なんでこう英霊って美男美女ばっかなんだ?

やっぱりそういう事なの?

そういう人達しか持て囃されない悲しい世の中なの?」

 

「あら、こんなご時世でも戦場で女を口説ける度胸を持つ男がいたのね。

余程のお馬鹿さんか、相当な自信家?

貴方、魔術師であっても人間なんでしょう。

怖くないの?」

 

「は、そいつは聞くだけ野暮だぜ。

それに見りゃ分かんだろ?

俺はマスターで人間、んでこっちの猫がサーヴァント。

そんなことよりどうだい?

暇潰しに体でも動かすか?

幸いここには4匹の獣が出揃ってるところなんだしよ」

 

「へへっ、行儀よく交代制の1体1か?」

 

「バカ言ってんじゃねぇよ。

乱戦形式の無差別乱闘に決まってんだろ。

ストックは1、アイテムなし、撃墜されちまえば永久に参戦は不可能。

何でもありの大乱闘だ。

どうよ、遊んでくか?」

 

「上等!

とことん遊び倒してやるよ!」

 

「どうだい聖女サマ、いっちょお相手してくれるか?

後ろのデカブツも参戦OKだぜ?」

 

「いいわ......その勝負乗ってあげる!」

 

────────────────

 

彼を目にした時は、はっきり言って無謀な男だという印象を受けた。

サーヴァントを連れているとはいえ一歩も引かず、自分自身でさえ戦いの頭数に入れる。

それは支援するという立場ではなく、文字通り自分もその戦場に身を置くという意味。

その目は負けを覚悟したものでもなく、かといって玉砕覚悟で突貫する者の目でもない。

最初に口にしたことは冗談もあったが、本心が大半だ。

相当な自信家か、或いは底抜けの阿呆か。

まさか、本気でサーヴァントである自分に対して渡り合えると思っているのか。

 

侮辱行為に他ならない印象だ。

霊長類において上位に位置する自分を前に、後退の意志を見せなかった。

自分が高尚な存在だからという訳では無い。

常識的に考えて、人智を超えた兵器に生身でやり合えるものなど存在しない。

仮にも魔術に精通してるものであれば知っているはずだ。

背伸びしようと、逆立ちしようと勝てる相手ではないことを。

 

それでも男は、不敵に笑う。

嘲笑うのではなく、この状況を心底楽しむかのような子どもの笑み。

無惨に殺され、敗北する姿を想像していない。

蛮勇と断言せざるを得ない有り様だ。

 

 

──でも、やっぱり人間にはどこか期待しちゃうのよね。

 

 

それでも、最後に道を切り拓くのは人間だ。

自分たち英霊が、後になって祀り上げられ高位の存在になったとしても、それまでの文明を築き維持してきたのは彼らだ。

矛盾を抱え、葛藤と苦悩を繰り返すも前へ進む。

弱々しくもあれど、同時に雑草のような粘り強さを持っている。

心のどこかで諦めることを知らず、どんな困難にも向き合える。

私はそれをどこか期待し、成就して欲しいと願っている。

立場は違えど、この思いが変わることは無い。

なればこそ、試さなければならない。

 

「全力は出せないけれど、本気で行くわ。

それ故に負け惜しみも言い訳もしない。

貴方たちがどこまで立ち向かえる勇気と力を持っているのか、私の全てを賭けて試させてもらうわ!

この、聖女マルタの名に誓って!」

 

戦いは、いつの世も避けることは出来ない。

残酷で無情な現実だとは思うけれど、そこに意味を見い出せば抱く感情も少しはマシになるだろう。

目の前の二人が、果たして時代を担うに値する兵なのかどうか。

それを確かめるための戦いなら、決して無益な血を流す結末にはならないだろう。

全力を、これから先にかける思いを、譲れない意志を示す強情さを見せて貰おう。

 

「タラスク!!

月並みだけど、こう言わざるを得ないわね。

互いの信念も主義主張も善悪も、全ては血風の中で語り合いましょう!!」

 

そうして私はまた戦いの中に身を投じる。

狂気に駆られど、本来の役割を剥奪されても私の在り方は決して変わらない。

この戦いは無駄にはならない。

無益な争いではなく、この過酷な世界へ歩む者の覚悟を知るため。

彼らが進む道が、正しい道であるならば、私はこの拳を持って叱咤激励をするまで。

願わくば、私とはまた違う救世主となることを祈って。

 

「私の拳を退屈させないでね!!」

 

 





おはようからこんばんはまでどうも毎度です。
どうですか、大規模作戦(笑)です。
それぽく見えたらまぁまぁ楽しめると思いますよ多分。
次回は血みどろの展開になるかそうでないかは
私のさじ加減になるので期待していて下さい。

あ、宣言解除おめでとうございます。
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