恥ずかしい秘密暴露しちゃったし散々いじり倒しちゃったし、ロクな思い出とかないからな。
下手なこと言われる前に口封じしようと躍起になって飛んで来たりもするさ。
アレだな、完全に俺の抹殺目論んでるよな。
飯食ってる時の視線とか厨房に入ろうとした時とかの殺気とかヤバいし。
食にトラウマを植え付けて餓死させて葬ろうって算段か。
なんで野郎からは熱烈な視線貰えんのに美人からのそういうアプローチはないのかなー。
兄貴の気持ちが少し分かるぜ。
そんな因縁誰も求めてねぇっつの。
もっとキャッキャウフフな快適ライフが欲しいに決まってんだろ。
アレか、僻みきった神様からの最高に意地の悪い嫌がらせか。
もういいよ、おなかいっぱいだよ。
癒しをくれよたまにはよ。
そろそろ疲れてきたよパトラッシュ」
「いつにも増して紫助さんは何をぶつくさ言ってるんだろ?」
「紫助さんの頭の中身は誰にも理解できませんし、興味無いです。
考えるだけ無駄ですよ先輩」
「へっ、下らねぇしどうでもいい」
「どうせ相変わらず訳の分からん御託を並べているだけだろう。
気にせず食事を続けたまえ。
健康を第一に考え、今ある備蓄の持ち味を最大限に引き出したメニューだ。
奴の食生活は後々必ず改善させてやる。
基本食がカレーだけなど話にならん。
もっと身体を労った生活を心がけて欲しいものだ」
「よくこんな思いやりのねぇ職場で身体張ろうなんて考えたな、あの兄ちゃん」
「フォフォフ、ウンマイッ!」
長年連れ添った悪ガキ共の連携が、思った以上にやりづらい。
敵対に近い思想を抱いてはいるがその実、互いの手の内を理解しており、どんな行動を取るか咄嗟に思いついてしまう。
だからこそ、悪態をつき合いながらも分かる。
子どものような言い合いが、次の行動を示唆する意思表示であると彼らは直感的に理解しているのだ。
「どきなバカマスター!
てめぇにはやっぱり荷が重いんじゃねぇの?!」
「抜かせアホサーヴァント!
まだまだ余裕のよっちゃんよ!
何なら手加減してやろうか!?」
「冗談よせよ!
負けた時の言い訳にされても困るからな!!」
「そいつは随分余裕なことで!!」
軽口を叩き合う目の前の2人は、はっきり言って理解不能。
片やマスターという荷物を抱えて剣を振るうサーヴァント。
片や常に命を天秤にかけ続ける命知らずなマスター。
普通はそれが当たり前の光景だ。
どうあってもマスターは後方支援に回る他、選択肢が存在しないのだから。だが、信じ難いほどに目の前の光景は現実だ。
口だけではない。
セイバーがタラスクの突進を受け止めている間で、彼は迷うことなく彼女の背後からその剣を振り下ろす。
タラスクが退避したということは、つまりそういうことだろう。
そのまま追い込みにかかった男は頭蓋目掛けて左右へ殴打。
あの子ならその程度なら踏ん張れないことはないが、驚異は二重でやってくる。
自分が横槍を入れようにも、赤雷を轟かせる魔剣がこれ以上ない抑制力になっているのだ。
彼は、怖じることなく本気で自分やタラスクを相手に大立ち回りを演じている。
「あ!わりぃ!
うっかり一緒に叩き切るところだったわ!
気をつけろよ!?」
「おっとわりぃな!
予備動作なしに魔力放出しちまった!
お怪我はありませんか?
「あ!?
そよ風がなんだって?!
気持ち良すぎて寝そうになったわ!」
「そいつはさぞかし夢見が良さそうだな!!
満足するまで当たっていけよ!!」
こちら一組に対して、向こうは互いに遠慮なしの乱闘。
敵味方の区別なく争う様は
それでいて全く遠慮がない。
男のマスターならいざ知らず、セイバーのサーヴァントも加減なしで男の方を全力で斬ろうとしている。
そして、両者は絶えず不敵な笑みを浮かべている。
喧嘩を楽しむように、自分の死など考えていないように剣を振るう。
戦闘になった途端この有様だ。
此方など最初から見てなどいない。
ただ目の前にいたから切り伏せる、それだけの理由なのだ。
「くっ!
虚仮にしてくれるわね!!
タラスク!薙ぎ払いなさい!!」
「──────────ッッ!!」
「「うるせぇデカブツが!!」」
巨大な尾による横薙ぎを跳躍を持って回避し、渾身の振り下ろしによる両者の強烈な
生半可な攻撃ではタラスクの堅牢な甲羅の前では無力。
だが現実はどうだ。
地にめり込まんばかりの衝撃が、今まさにあの子を襲っているではないか。衝撃を吸収しきれず、唸り声を漏らしながら怯む。
しかし、それでも怖じるような子ではない。
その堅牢な甲羅に身を隠し、高速回転で迎え撃つ。
街一つを無惨に破壊し尽くす無情な攻撃だ。
サーヴァントといえどタダでは済まないはずだ。
それでも、彼は再び飛び込んでくる。
セイバーを踏み台にして高い跳躍を可能にし、力任せに剣を突き立てる。多少回転は鈍ったが、それでも殺しきるには十分過ぎる。
無様に跳ね除けられた男目掛けて、持ち堪えたタラスクが追い込みの立場に移る。
「へっ!!
余計な差し入れしやがってよっ!!!」
「くっ!出力が上がったですって!?
どこにこんな魔力が......!」
赤雷が先程と比べ物にならないほどの出力になり、耳鳴りを引き起こす地響きとなって周囲を震わせる。
地に伝わるだけで全てを抉り、焦がす災害と同義の魔力。
やる事為すこと全てが出鱈目で、これ以上ないほどの力技だった。
認識を改める必要がある。
相手は間違いなく、こちらを殺す術を持っている。
気を抜けばあっという間に持っていかれる。
「そらよ!諸共吹き飛びやがれ!!」
3匹を容易く飲み込む光の奔流。
内1匹は事前に察知していたように、こちらに視点を外さず光に背を向けながら脅威の範囲から逃れる。
受けるのは、それを知り得なかった残りの2匹。
「タラスク!!耐えなさい!!」
「────────────ッッ!!!」
その強固な甲羅を盾にしてなんとか耐える。
いくら堅牢な甲羅を持ち、幻想種の中でトップクラスの竜種であっても、サーヴァントの攻撃に耐え続けられることは出来ない。
出鱈目に振るわれる力に真正面から受け続ければ、瓦解の道を進むことは免れない。
その巨体から飛び出し、魔力を光弾としてマスターを狙う。
弾かれることなど百も承知。
一点突破が無理なら、手数を持って追い詰めるまで。
「おおモテモテじゃねぇか!
一丁遊んでやれよ色男さんよ!」
「歓迎するぜ聖女さん!!
華麗にエスコートしてやるよ!!」
「それは、楽しみねぇ!!」
光弾を隠れ蓑に単騎で突っ込む。
張り付いた憎たらしい顔に向かって、存分に撃ち合いを挑みかける。
拮抗するのは予想外だったが、それ以上に面白い。
なるほど、言うだけのことはある。
武器を打ち合わせ、押し込めない時点で悟った。
こいつは、その気になれば何食わぬ顔でこちらの土俵にまで上がってこようとする人外の類だ。
振り下ろす杖を角度をつけて流し、身を転じて豪快な横薙ぎを一瞬で反撃にして使ってくる。
慌てることなく杖を半回転させ、棒術の応用で反撃の出を潰す。
そのまま遠心力を利用して一気に突く。
ならばと男も張り合いに乗ってくる。
木刀を盾とし、受けた箇所を滑らせるように接近。
肩を潜り込ませるようにこちらの腹部を抉りに掛かる。
小細工無しの撃ち合いなら、正面から受けて立つのが自分の流儀。
持ち上げる膝で防御ごと押し砕きにかかるが、読まれていたのかあっさりと掌で受け止められる。
強引に弾き飛ばすがごとく、力任せの振り抜き。
「強引ね!
嫌いじゃないわよ!!」
「なら盛大に押し倒させてくれや!!」
目にも止まらない連撃を全て受けにかかる。
そのどれもがこちらの裏を掻いてこようと躍起になり、終わることの無い腹の探り合いが始まった。
脳天目掛けた一撃を最小限の回避でいなし、薄皮一枚を犠牲に仕掛けられる滑り込み。
振り上げた
えずきを堪え、お返しとばかりに彼の胸倉を掴んで全力の頭突きを振るう。
視界はブレ、頭蓋に不快な振動が駆け巡る。
目の奥が明滅し、額にじんわりと鈍痛が広がっていく。
ふらつかせはさせたが、こちらも決定打になってない。
本当にどんな体をしているのだろうか。
不意にそんな場違いな興味を抱くほど、目の前の男は実に面白かった。
「あはっ!
「中でも夜の
互いに武器を投げ捨て、武装無しで目の前の相手に飛びかかる。
かくいう自分は、正直なところ素手での張り合いが性にあっている。
分かっている、どうかしていることぐらい。
客観的に見れば淑女、ましてや聖女、そもそも女が素手で戦う方が性にあっているなどと宣うこと自体間違っているのだ。
昔近所の男たちを数人まとめて相手取ったことも含めておかしいのだ。
強い相手を見ると拳が震えることもどうかしてるのだ。
どうかしているとは分かっていても、後悔したことはない。
だって、人と解り合うのに鋭利な剣なんて必要ないでしょう。
使い方は異なれど、解り合うには手を取り合う他解決策はない。
相手を理解するには真摯に向き合う必要がある。
真正面から意見を聞き入れ、気持ちを受け止めて全身全霊でぶつかっていかなければ真の理解は得られない。
だからこそ、私はこの拳を振るう。
愛の鞭だなんていい加減なことを言うつもりは無いが、私の気持ちを理解してもらうにはこれが一番手っ取り早いから。
いつだって自分の気持ちに正直な姿を、見て欲しいと願っているから。
だから、
ほんの少し怯えを感じなくもないが、まぁそれは些細なこと。
迷うことなく、私は突き進む。
生前も死後も変わりなく、この在り方を突き進む。
止められるものなら受け止めてみろ。
そんな
奴の久々の戦闘だ、早いところ切り上げて後ろから驚かせるようにバッサリいってやる。
背中を見せた自分自身を呪うがいい、へっへっへっと気味の悪い笑いを零す。下らないことから連想するように、唐突に彼の言葉を思い出す。
いつもと同じだとつまらない、たまには趣向を変えてみろ。
言葉に倣うのは些か癪ではあるが、なるほど一理あると思った。
「おーおーいつにも増して熱くなってんなぁアイツ。
へへっ、んじゃオレも楽しませてもらうとしますかね」
久々という程でもないが、邪魔の入らない絶好の機会は一体いつ以来だろうか。
全力で暴れられる機会など、人生の中でそうあるものじゃない。
逃がしてなるものか。
こんな面白そうな戦い、袖にする方が馬鹿げている。
心底楽しそうに笑顔を浮かべるモードレッドは、上半身を地に向けて伸ばし、その手に似合わない物を拾い上げる。
それは彼が投げ捨てた愛刀の木刀。
「お......?
なぁんだ、やっぱりそうだったんじゃねぇか。
いつその気になるか見物だなこりゃ」
「──────────ッッ!!!」
「心配すんな、ちゃんと相手してやるからよ!」
そうして、反逆の騎士は再び戦闘へ戻っていく。
何故か手に取ったか分からない
特にさしたる理由はない。
あえて挙げるのなら、それは猫の単なる気まぐれだろう。
いつもと変わらない戦闘に、ほんの少しだけ色を添えるように取った気まぐれな行動に過ぎない。
西洋甲冑に不釣り合いな得物ではあるが、武器の性能としては申し分ない。言い過ぎかもしれないが、それでも及第点を与えられるほどの物であることは確かだった。
以前は粗末な棒切れなどと散々な言いようをしたことを唐突に思い出した。本人に向かって言うつもりは欠片もないが、この木刀に対して前言を撤回しよう。
人間が持つには、こいつは少々いき過ぎた代物だ。
戦意が刀に伝わったのか、僅かに刀が震えたような気がした。
いい武具であるなら、それ相応の振舞いを持って示さねばならない。
二刀を用いて戦う戦法は元来、攻めではなく守りを重視したものであり、遥か極東にて考案された古い兵法。
片方を盾、もとい囮として扱い、相手の動きを抑制した後にもう片方をもって打ち込みにかかる。
攻めることのみを追求した彼女の戦法とは真逆のやり方である。
たまには悪くない。
それがモードレッドの抱いた単純な感想だ。
「どうだデカブツ!!
てめぇには特別に、普段とは違うモードレッド様を見せてやるよ!」
その在り方、まさに攻め難く守り難い。
木刀で突進を止められれば、片方の魔剣がこちらの頭蓋を砕かんと吠える。
かといって、これまで以上の力を込めて当たりに行けば二刀にて防がれ押し込めない。
体制を立て直そうと後退すれば、二刀は守りの型から攻めへと転じ、先程より多くの軌跡を描いてくる。
円卓の騎士が扱うは剣だけ。
しかし、それ以前に彼女のその根本的な在り方は騎士以前に戦士である。
責務として戦いを馳せ、義務として勝利を掲げる生粋の
あらゆる武具を操り、勝利すべき道を直感をもって辿る。
故に、どのような物を扱おうと最高の結果を残すのは道理。
誉れたる円卓に位置した彼女であれば扱えない道理はない。
「へへっ、ちょいと本気で行くぜ?
ぶっ壊れんじゃねぇぞ!!」
纏う闘気に呼応するかのように、彼女の内に秘めた赤雷が唸りを上げる。
破壊と蹂躙を象徴する魔力はその魔剣と木刀に己を伝播させ、蹂躙者としての加護を授ける。
竜種としての直感が全身を駆け巡る。
己の命を脅かさん何かがこちらと対面しているのだと。
反射的に動けたのは奇跡のうち一つだった。
主である彼女にも、その切先が向けられていると知れたのもまた奇跡だった。
だからこそ、自分は動けた。
あと少しで取り返しのつかない現実に飛び込むところだった自分を、強引な方法ではあったが諌めてくれた。
圧倒的な数という名の暴力に押し潰されるところだった自分を救ってくれた彼女を守るため、この巨体は信じられない速度で動けた。
「これこそは、我が主人を滅ぼす邪剣。
アイツの二番煎じなのは頂けねぇが、今回ばかりは無礼講ってことで見逃してやるよ!!
『
渦巻く二対の暴虐の赤雷が、自分以上の体積をもって迫り来る。
轟音から生じる耳鳴りで音が奪われ、想定外の衝撃が意識を拐う。
恐らく、暫く自分が動くことは無いだろう。
目覚める時が何時になるかは分からない。
だが、あの時の孤独感に比べればまだ明るい先行き。
いずれまた、ただの町娘だった彼女の隣に戻るその時までの我慢と思えばいい。
後悔なんてある筈がない。
返しきれない恩に少しでも報いるため、幾度なりともこの身命を彼女の盾として扱える意思が残っているから。
だから安心して休める。
自分の選択に、間違いなどなかったのだから。
「なーんてな、へへっ」
─────────────────
「まさかあの子が負ける、なんてね。
侮っていた訳じゃないけれど、それでもショックね」
「んじゃここいらでお開きか?」
「冗談!
負かすまで終わらせるつもりはないわ!!」
と意気込んだはいいものの、正直未だに決定打を決めきれていないのも事実だった。しぶとい、目の前の男はその一言に尽きる。
既に数えきれないほどの殴打を打ち込んでも決して膝を着こうとしない。それどころか、こちらの攻撃が徐々に通用しなくなってくるような錯覚さえ引き起こさせる。
火事場の馬鹿力や礼装の類で能力を底上げしていようと、到底実現させられる事柄ではない。
武器に頼りきりにならない良い腕を持っている。
得物のみに固執した戦士は三流だ。
武器が無くなって為す術なく殺されましたなんてお話にならない。
そんな甘ちゃんな考えを持つ者は戦場に出るべきではない。
ならば、得物なしで着実に追い詰めようとする目の前の男は中々どうしての強者だろう。
ご自慢の喧嘩殺法を眺められるかと思いきや、こちらの虚を衝く達人のような動作を自然に行ってくる。
迫り来る正拳突きを当たる直前に顔を引いて威力を削ぎ、流れを殺すことなく側頭部に鋭利な蹴りを打ち込んでくる。
足掻こうと躱す素振りを僅かでも見せれば、途端に距離を離せまいと詰めてくる。
なればこそ押し込みにかかれば波が引くかのように遠ざかる。
相手が嫌がり、自分が一方的に優位に立ち回る間合いを常に図っているのだ。
まるで蜃気楼の類。実態のない影を相手取っているかのようだ。
そして、徐々にこちらの攻撃が当たりにくくなっている。
この短い間で、この打ち合いに順応してきているのだ。
「悪い男ね!
女に、追いかけさせるなんて!!」
「押してダメなら引いてみろ、引かれたらとにかく押せ。
ホームレスのおっさんに教わった女の落とし方よ!!」
「私にはイマイチねっ!!
もっと情熱的な男がいいわ!!」
掛け合いに余裕が現れ始めた。
この男、思っていた以上に場馴れしている。
それどころか自分の打撃に適応している。
悠長な時間を与えたつもりは無い。
ならこの有様の説明はどうすればつくか。
簡単な結論だ、こいつは人間稀に見る大物に化ける器だ。
中身がそこに行き着くかどうかは定かではないが、身体能力や技術の可能性なら大いにある。
困難を諸共せず受け入れ、打破するために死力を尽くさんと剣を取る勇ある者に違いない。
堕ちた私に拮抗出来るからなんだと思うがそれは違う。
男は例え相手が誰であろうと怖じることはないのだろう。
こういう人間は、相手が強ければ強いほど負けまいと輝く。
困難という壁が高いほど、乗り越え甲斐があると狂喜する底抜けの阿呆。勇者の資質を持った稀有な人間だ。
「でもっ!!」
ならば尚更証明して見せろ。
この打ち合いを制して納得させてみろ。
魔力を己の中で励起させ、瞬間的に身体能力を底上げし、慣れた動きから一気に突き放す。
不意を着くのは本意ではないが、この男相手にはそうも言っていられない。今この瞬間を、最後の見極めとして瞳に収める。
この窮地を乗り越えてこそ、その先に進める者かどうかの真価が問われるからだ。
不意打ちも卑劣な罠だけじゃない。
もっと想像だにしない劣悪な運命が彼らを待っている。
それを知った上で尚、立ち向かうというのだろう。
だったらこれぐらい越えてくれなければ話にならない。
スウェーから一気に距離を詰め、その頭蓋を全霊の
防御は意味を成さず、棒立ちを強いられる。
本命がそこにはないからだ。
目にも止まらない短距離移動で男の脇腹を通り過ぎる。
背後を取る寸前に、遠くへ投げやった杖を呼び戻す。
攻撃動作と合致させるよう、既に杖を構えた体で振り下ろしを行う
その無防備な後頭部、殺らせてもらう。
「慣れねぇことすんな」
「............ひどい男ね、貴方」
殺ったと錯覚させたのは、自分ではなく男の方だった。
彼は文字通り、この聖女マルタを出し抜いたのだ。
驚愕と衝撃故に尻もちを着く自分に対して向けられるは、確かに遠くへ放ったはずの木刀。
降伏以外の有無を言わせない、此方を完全に追い詰めた男の顔が、憐れみを持った眼で見つめてくる。
「敵とはいえ、聖女......いや、女がそんな顔するモンじゃねぇよ。
女はいつでも、芯の通った揺れねぇ存在であってくれねぇとな」
「あら、揺れる方が好みなんでしょ?」
「分かっちゃいねぇな、俺ら男が揺らせねぇと意味ねぇのよ。
不安定な状態の女口説いたってテメェの力じゃねぇ。
だから、そんな信条曲げてまで殺しに来んなよ。
食いしばった不細工顔の女なんて見たくねぇしな」
そう、確かに自分はこの男の命を殺ったと確信していた。
彼が自分の
進んで人の命を絶とうと思ったことなどない。
いつだって健やかに、元気で生きて人として当然の生を全うして欲しい。いつもそう願っていた。
そんな自分が他人の命を奪おうとした。
慣れないことはするものじゃない。
不慣れが故に顔に、攻撃にごく僅かな躊躇いを見せた。
迷った者から死ぬ、それが非情な戦場の常だ。
だが、男はこの首を撥ねなかった。
あろうことか、そんなひどい顔を見せるなと豪語した。
驚きもするだろう。
ほんの少し前まで殺し殺される立場だったのに。
まるで、そんな顔をしないでくれとでも言いたげな瞳で、真っ直ぐと此方を見据えていたのだから。
「......ホンットにひどい男ね。
そんなんじゃ誰も靡かないわよ」
「うるせ、自覚はしてる。
まぁ何にせよ、コレで俺の勝ちだな聖女サマ?」
「......ははっ、はいはい完敗よ。
物の見事に、してやられたわ」
自分が杖を振り上げている最中、既に彼は攻撃を終えていた。
此方が背後を取ったと確信した時点で、横一文字の振り抜きは完了していたのだ。
腕の感覚がなくなるほどの衝撃を抱え、頼みの綱の得物を奪われ、
ここまで来れば最早ぐうの音も出まい。
自分は間違いなく、この無鉄砲な男に完敗したのだ。
傷だらけの勝者の顔は逆光でよく見えはしなかったけれど、眼と言葉を失う光景だったのは確かだった。
きっと魂だけとなったこの身であっても、忘れることの出来ないものに違いない。
光に慣れた眼が映したのは穏やかに、然れどもイタズラ好きの子どものような無邪気な笑顔がとてもよく似合っていた。
ほんの少しだけ
──────────────
「紫助さん、どうしたんだろう。
それにモードレッドと2人なんてあんまりいい予感がしないんだけど」
「あのマスターのことじゃ。
何かしら考えがあっての決断じゃろう。
彼奴は彼奴で好きにさせておけば良い。
それよりホレ、マシュマロよ!
直に目的地到着じゃ。
使者を出すなり医者を使いっ走りにするなりして状況を把握しておかんか。
忘れたか?旅の根幹たる指針は主らが率先して指示せよと」
「は、はい!
ドクターお願いします!」
『信長の言葉の後だと本当に使いっ走りみたいだぁ......』
『はいはい、文句は後で聞くから今は分析に集中。
ふーんどれどれ?
これは......どうやら取り込み中みたいだね。
ワイバーンの反応が多数とサーヴァントらしき魔力反応が一つか。
うん?このもう一つの反応はなんだろね』
『サーヴァントにしては弱いし、人間にしては強過ぎる反応だ。
行って直に確認するしかないみたいだね。
藤丸くん、どうする?』
「だから俺は藤丸じゃなくて富士山!!」
「フォフォッ!!?」
「おぉ、大きく出たのぅお主」
「先輩!
ここでは誰も名前を間違えてません!」
「は、ついアレルギーみたいに過剰反応してしまった......」
『毒されてるねー』
『笑ってる場合ではないぞレオナルド。
マスター、その辺りで小休止を挟めないか?
近くに龍脈があれば、我々を呼び出す選択も視野に入れておきたまえ。
短時間であれば、我々もそちらで活動ができる』
『お、ようやっと出番が近いか?
早いとこ頼むぜ、シュミレーターじゃてんで物足りなくてよ』
「うん......マシュ、近くに龍脈を確認出来るところはある?
街に入る前にエミヤさんとクーフーリンさんを呼んで、敵側を一気に制圧しよう。
念には念を入れて、って奴だね」
「了解ですマスター。
お二人を呼ぶのに適した力の源までご案内します。
行きましょう皆さん」
『百年戦争の休戦中なら、有名な聖女ジャンヌ・ダルクもいるかもしれない。味方に出来ればフランスでこれ以上ないくらいの戦力になる。
皆、どうか頑張ってくれ!』
さぁ、次の標へ向かおう。
ラライバイ、ラララライ?Alaaaaaaaaii?
まぁ何でもいいだろう。
とにかく次へ進もう。
街の名前とかどうでもいいし、正直どうでもいいや。
やぁ(以下省略)
マルタがヒロインみたいになってて草生えた。
可愛いから後で草枯らした。
どうでもよかったまる。
何やかんやあって戦闘ぶち込みました。
難しかったけどやっぱり面白い。
要望あれば頑張って応えますので、メッセージどぞ。
感想くれた人ありがとうです。
ささやかな言葉が身に染みて今日もカレーが美味い。
いつもながら意味深な線張って色々な謎に迫ろうと思います。
適度に期待しててね。