猫と犬は相容れない   作:あずき屋

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「............」

「............」

「............」

「............」

「............イテッ、んだよ」

「まだ捲んな、読み終わってねぇ」

「俺の勝手だろーが」

「いいから、もっかい読み直しとけ」

「つかそろそろ腰痛くなってきた......いい加減どいてくんない?」

「............」

「どんだけ集中してんだよ......」

「一向に紫助さんの背中から離れる気がありませんね」

「ホントに猫みたいだよね」

「だから!捲んの早ぇっての!!」

「だから!俺の勝手だっつーの!」




第5話 しげるに比べたらまだまだだな

───それは、前代未聞の挑戦。

 

オラオラどうしたどうしたぁ!!

テメェの覚悟はそんなモンかよ!!

 

───迫り来る未知なる恐怖を、自らに手で退けなければならない。

 

やり過ぎだ!いくらなんでも!

止めてくれ!!本当に死んじゃうじゃないか!!

 

───対峙するのはこの世ならざる脅威。

   一度背中を向ければ命はない。

 

お前さんの選んだ道さ、死ぬ気で気張れ。

まぁアレだ、坊主にいい所見せるつもりでやってみな。

 

───立ち向かうのは一人の少女。

身の丈に合わない大きな盾を携え、大きな恐怖と対峙する。

 

理論上は出来るかもしれない。

でも、一歩間違えたらそこで全てが終わるわ。

それでも、やるのね?

 

───全ては、大切な人を守るために。

 

肩の力を抜け、そんで絶対に目を背けるな。

テメェが折れない限り、背中にいる奴は傷一つつかねぇ。

だから、胸張って受け止めてこい。

ビビってんなら、俺が何度だって背中を押してやるよ。

 

───少女は、英雄としての一歩を踏み出す。

 

先輩、みんな......絶対に私が守り切ってみせます。

だから、私を信じて下さい!

マシュ・キリエライト、出撃します!!

 

───刮目し、見届けよ。

   少女の手に委ねられた一つの運命の結末を。

 

─────Fate/Grand Order

       Adventum Palladis(盾の乙女の再来)────

  

                

君は、歴史の証人となる。

 

 

 

 

「ちょっと待てやァァァァァ!!!」

 

「あぁ!!何すんだテメェ!

広告はタダじゃねぇんだぞ!

金発生してんだから粗末に扱うんじゃねぇ!!」

 

「そういう問題じゃねぇだろ!?

なんだよコレ!!なに映画の予告みてぇに飾り立ててんだよ?!

前回とおんなじ流れじゃねぇか!

オレ完全に悪役みてぇじゃんか!

何ちょっといい感じの悪い笑顔再現してんだよ!

ちょっと全部観たい気もしなくもねぇけど......まだ何もしてねぇからな!」

 

「結構いい感じに仕上がってると思うけどなぁ......」

 

「し、紫助さん!?

これ、本当に私がヒロインでいいんですか!?」

 

「あぁ全然オッケーよ。

メガネっ娘がヒロインなら数字取れるし需要高いしな。

話の流れは安直かつ王道に、最弱からふじっこくんを守れるぐらいに成長していく感じ。

途中何度も挫折を味わうが、仲間との絆がメガネっ娘を成長させていくファクターになる。

最後は地球消滅級の災害を盾で防ぎきって、ふじっこくんと朝日をバックにキスしてエンド。

完璧だな......大ヒット間違いなしだわ。

つかコレ、どう考えてもメガネっ娘ヒロインじゃねぇな......完全に主役だよコレ」

 

「ほぅ......これが映画ってやつか。

なかなか迫力ありそうだな。

俺もなんかいい役もらえたりすんのか?」

 

「あたぼーよ、アンタは結構重要な役だぜ。

右も左も分からねぇメガネっ娘を教え導き、その後の信念を作るきっかけを与える。

途中悪役から外道レベルの不意打ちを受けるが、危機一髪でメガネっ娘を守る。

体制を立て直させるためにメガネっ娘たちを戦線離脱させて時間を稼ぎ三日三晩戦うが、チート級の一撃を前に敢え無く敗退。

だが、その最後の背中をメガネっ娘は見届けて覚醒。

誰もが爽快感を抱く逆転劇を披露し、ラストの地球滅亡級の災害を見事退ける。

ハッピーエンドに繋げる為の大役って訳よ」

 

「へぇ、気に入ったぜ!

主役じゃねぇのが残念だが、そういう役柄は新鮮で良さそうだ。

完成度次第じゃ、俺ラストで泣いちまうかもなぁ......」

 

「外道ってどういう意味ゴラァ!!

オレは騎士だぞ!?外道とはなんだ外道とは!?

それもう完全にオレいききってんじゃねぇか!!

母上なんて目じゃねぇじゃんか!」

 

「ちょっと私は?!

私の役はどんなの?!

所長に相応しいいい役なんでしょうね!」

 

「フォウフォ!

フォォォォフ!!」

 

「これ完全にヒロイン的なポジション自分じゃないか......」

 

やんややんやと騒ぎ立てる一同。

紫助が一度冗談を口にすれば乗ってくる辺り、皆一様に彼に毒されているのかもしれない。

つい先程までツンケンしていたマシュでさえこの有様。

クーフーリンも存外乗り気らしいことから、このメンツが更に混沌と化しているのが伺えるだろう。

 

「だァァァァァ!!

もう嘘予告の話はどうでもいいっつーの!!

やるのかやらねぇのかハッキリしやがれ!

いや、構えるのか構えねぇのかハッキリしろ!

オレはもうぶっ放すこと前提でいくからな!」

 

「んだよ付き合い悪ぃな。

俺とお前の仲じゃねぇか」

 

「オレとお前の仲だからこそだろうが!」

 

「ちょっと、落ち着きなさいよ。

乗っちゃった私たちも悪かったから冷静に行きましょ?

ホラ、タダでさえおっかない所なんだからあんまり騒ぐとまた襲われるわよ?」

 

『彼女の意見は最もだ。

敵地の中で悠長に談笑している暇などない』

 

「ンな堅苦しいこと言うなよ。

ちょっとふざけてみただけじゃねぇか。

アレだよ、心にゆとりを持たないとダメ的なアレだよ」

 

『少しなら大丈夫、その油断が全てを台無しにする可能性がある。

今の君たちが正しくそれに当たるだろう』

 

「ってかオイシスケ、お前誰と話してんだよ?」

 

「えっ?」

 

「ッ!!退けぇ!!

狙撃が来るぞ!!」

 

「ウソっ!?

でも一体誰が?」

 

「アーチャーの野郎に決まってんだろうが!!」

 

突如飛来した赤い物体は、地面に着弾すると共に爆ぜた。

小さなクレーターが出来るほどの威力を持ったそれは、紫助たちに向けて問答無用に襲いかかる。

 

「爆発する矢とか聞いたことねぇぞ。

オイ、どの方角から飛んできた?」

 

「あの山以外ねぇだろ。

よくよく気取ってみりゃ確かにいるわ。

全然狙ってんな。

ずっとこっちに目光らしてるぜ」

 

「アーチャーの鷹の目なら数キロ先だろうと正確に狙える。

さっきの爆発する矢が飛んでくる以上、このまま物陰に隠れてもしょうがねぇ。

いずれ炙り出されちまうぜ」

 

「チッ、オレも宝具はお預けかよ」

 

「別にお前はこれで終わりじゃねぇんだから大事なところまで取っとけよ」

 

こと遠距離攻撃においてアーチャークラスの右に出る者はいない。

遠く離れた場所にいようと的確に狙いを定め、精密な射撃を絶えず連ねていく。

基本的に接近さえさせなければ彼らの独壇場なのだ。

 

 

「流石に俺もこの距離で打ち合うのは無理だ。

もうちょい近付けれりゃまだやれるが、どうするよ兄ちゃん」

 

「手がなくもねぇ。

さっきの話じゃねぇが、やっぱり主役はメガネっ子たちかもな」

 

「え、どういうこと?」

 

「その盾はなんのためにあんだよ?

オレらの攻撃範囲に近づくためには、どっちにしろ突っ込まなきゃいけねぇ。

盾女を前衛にして一気に詰め寄る、だろ?」

 

「あぁ、やるにはそれしかねぇ。

メガネっ子にゃ悪いが、宝具解放はぶっつけ本番でやってもらうしかねぇ。

だが、そいつを決めんのは俺らじゃねぇ。

どうすんだ、坊主」

 

「お、俺?」

 

「あたりめーだろ。

デミ・サーヴァントとはいえサーヴァントはサーヴァントだ。

メガネっ子のマスターはお前だろ。

最終的な決定権はお前が持ってる。

自分のサーヴァントにどういう指示を出すのかはお前が決めろ。

テメェの可愛いサーヴァントを危険な目に遭わせられねぇっつーのならそれでもいい。

別の方法走りながら考えるからよ」

 

「そんな......急に言われても」

 

「人生何事も急なんだよ、大事な選択は特にな。

......っと、爆撃再開しやがったな。

決めろ。もうモタモタしてらんねぇぞ」

 

「お、俺は」

 

「先輩、私を信じてみてくれませんか?」

 

 

マシュは真っ直ぐと立香を見つめながらそう言った。

死ぬかもしれない特攻を、安全な場所で悠々と命令しろというのか。

とても自分には出来ない。

そんな非情な選択、取る事なんてとても出来ない。

でも、今ここで渋ればみんなをより危険に晒すことになる。

マシュは言ってくれた。

自分を信じてくれと。

怖いだろう。

必死に震えを隠しているだろう盾を握りしめている左手が、彼女の恐怖を強く表している。

特攻する恐怖、特攻を下す恐怖。

決断が、どうしようもなく怖くて仕方ない。

 

「アンサズ!!

チィ......矢をギリギリの位置で消すので精一杯だ!

オイ坊主!ここらで腹括っとけ!

このままじゃ本当に全員おっ死ぬぞ!」

 

「マ、マシュ......」

 

「大丈夫です、先輩。

私一人じゃこんなこと言えなかったでしょうけど、今は皆さんがいます。

背中を預けられる人達が、私たちの周りにいるんです。

だから、私が皆さんを信じるように、先輩も私を信じて下さい。

先輩の声さえあれば、私はどんな苦境だって乗り越えてみせます」

 

「っ!!」

 

 

周りから言われるまでもなく、自分は覚悟を固めることが出来た。

女の子にここまで言わせておいて踏み切らないなんて、そんな野暮な選択こそ取りたくない。

死ぬための選択じゃない。

生き抜くための選択なんだ。

大丈夫、自分たちは決して1人じゃない。

信頼出来るみんながいるから、自分はこうして言いきれる。

 

「マシュ!

防御姿勢のまま敵性サーヴァントに向かって突貫だ!!」

 

「はい!

マシュ・キリエライト、出撃します!」

 

「よっしゃあ!リーダーのお許しが出たぞ!!

行くぞクソ猫ォ!!」

 

「おうよ!

手加減無しの全力で行くからな!

舌噛むなよバカ犬!!」

 

「あ、オイお前ら!」

 

「えっなに、キャァ!」

 

『............何のつもりなんだ』

 

「「突撃じゃァァァァァァァァァァ!!!」」

 

まるで打ち合わせでもしていたかのような完璧な息の合い方。

何をどういう解釈をして、どういう謎の勝算を見出したのかは分からない。

2人にしか分からない何かが見えたのかもしれない。

他人には絶対に理解できない2人だけの勝算が。

即席にして、全く予想できない不意打ちに近い作戦。

名付けて“盾の乙女作戦”。

 

「何で私ごと構える必要があるんですかァァァ!!?」

 

「こうした方が一番手っ取り早いだろ!

ちまちま進んでなんてやってられねぇ!

目指すは最短で最速でアイツに突っ込む!」

 

「クーフーリン!

富士額くんと所長と......その白モフ!

担いで俺らの後ろにぴったりくっ付いて来いよ!

射線に出た時点で終わりだからなこの作戦!」

 

「キャスターに肉体労働させるか普通!?

ホントにぶっ飛んでんな兄ちゃん!!」

 

「こんな作戦聞いてないわよォォォォ!!

いやァァァァァ!!!

助けて!助けてレフゥゥゥ!!

青髪の大男が私を拉致しようとしているわ!!」

 

「だから藤丸だってば!!

せめて一つに統一してよ!」

 

「フォォォォウウ!!」

 

 

2人でマシュを背中から押すようにして全力疾走。

スピードに乗って抱えているようなものなので、減速すればそこでバランスは崩れて敵の的となる。

故に、減速すればそこで終わり。

賭けにも近い強引な策だ。

 

『そんな奇策で耐えられるほど甘くはないぞ』

 

「来るぞシスケ!盾女!」

 

「メガネっ子!

盾を前に構えたまんま絶対動かすな!

お前がすることはそれだけでいい!

後は俺たちに任しとけ!」

 

「何をどう任せろと!!?」

 

 

再び高速で飛来するアーチャーからの攻撃。

生半可な装備では簡単に消し飛んでしまうような爆撃も、マシュの盾の前ではそよ風に過ぎない。

だが、威力そのものを無効化できる訳では無い。

 

「気合い入れろクソ猫!!

俺がどうにかする!」

 

「えっ、これって......」

 

「策もなしに突っ込むとでも思ったか!?

残念だったな!策ならあるぜ!

俺にしか出来ねぇ強硬策ってやつがよ!」

 

直後、先ほどと同じ爆撃が命中。

仕留めきれるとは思っていないが、タダでは済んでいないはず。

第2射を番えつつ、敵の動向を確認し続けるアーチャー。

だが、思わぬ景色を前に絶句する。

 

「バカな?!

吹き飛ぶどころか姿勢ひとつ崩さないだと!?

ましてや......減速すらしていない!」

 

先ほどと何ら変わらない速度で接近する集団の姿がそこにはあった。

威力は完全に無力化されて勢いは以前のまま。

急ぎ矢を連射するものの効果がない。

無謀にも無鉄砲にも思える作戦が、完全にアーチャーの虚をついた。

 

「ははっ!!こんな変な作戦が押し通るとはな!

やっぱりおもしれぇな兄ちゃん!

お陰で射程圏内に入ったぜ!

銀髪の嬢ちゃん!しっかり捕まってな!」

 

「ちょっと!

淑女に対してその仕打ちどうなの!?

いや、もうこの体制の時点で言うことじゃないんだけど!」

 

「所長!絞めない程度に首あたりにでもぶら下がって下さい!

フォウくんも一緒に!」

 

「フォフォウ!!」

 

距離が近づくにつれてクーフーリンの攻撃範囲に入る。

陣地防衛において真価を発揮するクラスであるが、キャスターと言えどこの人物はクーフーリン。

ただの魔術師の枠に収まるほど小さな存在ではない。

 

「アンサズ!!

そぅら焼き尽くすぜ!!」

 

「チィ......!

面倒な手数だ、真正面からやり合うだけ無駄か」

 

詠唱ひとつで炎弾が無数に放たれる。

火力はアーチャーに劣るが、手数では勝っている。

捌ききれない上に、まともに対処して打ち払えば第2波がその間にアーチャーを襲うだろう。

 

「うし、突っ込めクソ猫!」

 

「よっしゃ!

覚悟しろやこのガングロがよぉ!」

 

「うきゅっ!!

お腹をそんなに圧迫しないで下さい......!」

 

紫助はマシュを抱えて急ブレーキをかけ、その間にモードレッドが後ろから飛び出て奇襲をかける。

赤雷を纏った一撃は地を轟かし、災害の化身となってアーチャーへ向かう。

当然まともに受ける相手ではない。

彼の手にあるのは先程まであった大きな洋弓ではなく、いつの間にか二刀を握っていた。

落雷にも等しい威力をもった唐竹割りを難なく二刀で受ける。

 

「全く、口が悪いにも程があるだろう。

キミは本当に騎士か?」

 

「いい子ちゃんで事が運べりゃなってやるよ。

そうじゃいかねぇなら、オレはオレらしく突き進む。

テメェに何かを言われる筋合いはねぇな!」

 

「それは失礼。

盛ついた獣に何を言ったところで意味はなかったな。

それに、血の気が多い相手ほどやりやすいことこの上ない」

 

「あぁ?

そりゃどういう意味だ?」

 

「セイバー!後ろ!!

なんか飛んできてるぞ!」

 

「なっ!?」

 

「気づいたか、人間の割にはいい目を持ってるようだ。

だがもう遅い」

 

まるでブーメランのようにそれは宙を舞っていた。

アーチャーの手にしている剣と同じものが左右対称に弧を描き、セイバーもとい自分に向けて迫ってくる。

“干将・莫耶”

二振り揃って真価を発揮する夫婦剣。

その昔中国にて打たれ、ある儀式を行う際に用いられたとされる。

詳しい由来は不明。

夫婦剣ということから互いに引き合う性質を持ち、二振りが揃えば低級ではあるが邪なものに対して抵抗力が上がるとのこと。

だが、何故そんな業物が何故二対存在するのか。

アーチャー以外は皆一様に疑問を覚えた。

 

「チィ............クソが!」

 

モードレッドは勘づいていた。

今の自分はほぼ詰んでいる。

挟み撃ちにされている以上、周囲どこに飛んでもどちらが自分を捉える。

どちらか一方を払えばどちらかが自分を討ち取る。

長距離に跳躍したとしても、アーチャーの狙撃で落とされる。

負傷を怖じる訳では無いが、どう考えても戦線離脱を強いられる負傷を受ける可能性が高い。

それはモードレッドが最も忌避する選択。

短時間で敵地のど真ん中で負傷して寝転ぶなど、何よりも自分のプライドが許さない。

ならば、多少マスターである紫助から魔力を絞り上げてでも強引に突破するしかない。

いや、ここで手の内を晒すのも何かと癪だ。

小さなプライドを手放せないことが、モードレッドの選択をあっという間に縮めた。

 

「ったく、猫は世話がかからねぇなんて言った奴誰だよ」

 

「......やはりキミか」

 

「シスケ!?」

 

鉄を弾くような乾いた音が響く。

迫り来る風切り音も死の恐怖も感じない。

アーチャーが大きく後退し、モードレッドは音のした方を見やる。

自分より大きな背中。

やる気のない姿勢に乱雑な髪型。

殺し合いに不釣り合いな木刀を携えて、それは自分の目の前に現れた。

見ていて腹が立って仕方がなかったその有り様は、正しく自分を現界させた我がマスター。

 

「悪ぃな兄ちゃん。

そいつは俺の獲物なんでね、勝手に首飛ばされちゃうと困んのよ」

 

「いやなに、この程度で取れるとは思っていなかったさ。

得体の知れない雰囲気を持っているとは思っていたが、まさか本当に人の身で私たちとやり合うとはな。

先程までのはほんの挨拶代わりだよ」

 

「へぇ、アンタやっぱり物好きなんだな」

 

「“やっぱり”とはどういう意味だね?」

 

「とぼけんなよ、アンタの視線には覚えがある。

もっと前から見てたろ、俺らが骨共とやりあった後ぐらいから。

野郎とはいえ熱烈な視線もらったんだ。

無視すんのもアレだろ?」

 

「......気づいていたか。

やはり、私は判断を誤ってはいなかったようだ。

キミをこのまま放っておく訳にはいかないらしい」

 

「あの後から、自分たちを見てた?」

 

紫助の話から思い返されるは最初の戦闘。

骨の大軍との戦闘の後、アーチャーは自分たちを見ていたというのだ。

彼はその視線に気づいていた。

マシュからの強烈なモーニングコールで拗ねていただけではないらしい。

 

「人の身でそこまでの領域に至れる者は珍しい。

加えて、弱体化したとはいえライダーを退けるほどの実力。

サーヴァントを倒す可能性のあるもの、もとい不穏分子はすぐに撤去するに限るからね」

 

「そうかい。

オイテメェら、先行っとけ。

この兄ちゃんは俺をご指名らしいぜ?」

 

「無茶です!

さっきまでの相手とは訳が違うんですよ!」

 

「そうよ!

サーヴァント相手に人間一人が太刀打ちできる訳ないじゃない!

バカでもそれぐらいは分かるでしょ!?」

 

「そうもいかねぇんだよ」

 

彼は二人の懸命な忠告を聞こうとはしなかった。

高まっていく戦意が、それを拒否する。

確かにこの現状で最適なのは誰か一人が戦闘を受け持って、残りは本星へ向かうべき。

だがそれを担うのは間違っても人間ではない。

それはサーヴァントの役割だからだ。

 

「適わねぇと誰が決めた?

不可能って、誰が決めたんだ?」

 

「それは......!」

 

「そういう理屈はもうコリゴリだ。

人間だからとか力がないからだとか、そういう話じゃねぇんだよ。

相手がバケモンだ?

上等だろ?

俺たちがこれからも相手すんのはそういう奴らなんだ。

俺らが、俺がするべきなのはウダウダ考えることじゃねぇ。

やるかやらねぇか。

剣を取って立ち向かうかどうか、それだけだ」

 

「でもっ!!」

 

「行くぞテメェら」

 

「セイバー!!」

 

「あぁ、時間がねぇんだ。

さっさと行こうぜ」

 

「クーフーリンまで!!」

 

「オイ、シスケ」

 

「おう」

 

「負けたら承知しねぇぞ」

 

「誰に言ってやがる。

テメェの飼い主様だぞ」

 

「へ、うっせばーか」

 

「行け。

とっととぶっ飛ばして帰んぞ」

 

「あぁ、お前こそとっとと戻ってこいよ。

オラ行くぞ!」

 

 

遠ざかっていくその背中を、自分たちは見ていることしか出来なかった。

彼は言った。

どんな強大な敵であろうと立ち向かわなければならない。

戦いを強いられた兵士のような言葉だった。

勝算が極めて薄くても、どれほど危機的状況下でも戦う姿勢を崩しては行けない。

あれが覚悟を決めた姿。

立香にはまだ理解できそうになかった。

 

 

「いいのかね?

吹っかけておいてなんだが、些か無謀じゃないかな」

 

「野暮なこと言うんじゃねぇよ。

念話までして俺に気づかせたクセに」

 

「ふっ、いやなに。

かつての自分を思い出してね。

キミを見ていると、なんだか懐かしい感覚がする。

極めて断片的な記憶だが、どうやら私はキミの姿に過去の自分を重ねてしまっているようだ。

記憶が定かではないため、自分でも詳しくは言えないがね」

 

「へぇ、アンタの時代にもそんな酔狂な奴がいたんだな」

 

「あぁ、どこかの誰かさんに似たバカがいたよ」

 

「んじゃあせいぜい思い出に耽ってな。

俺を付き合わせた代金は、その首で払ってもらうからよ」

 

「いいとも、お釣りの用意は万全だ。

受け取り忘れないよう注意したまえ」

 

吹き荒ぶ砂埃を間に、両者は対峙する。

波乱の幕開けはこれからだ。

 




どうも、毎度おなじみのあずき屋です。
ついにみんなのオカンの出番となりました。
彼の皮肉が上手く再現出来ているかどうか不安です。
そして人数が多くなればなるほど黙らさざるを得ない人が増えます。
どうしようか悩みながら書きました。
出しちゃったけどね。

ともあれ、皆様お楽しみいただけているでしょうか。
ギャグは現在絶好調ですが、もうひとつ肝心のシリアスの調子がイマイチです。
寛大な心でトイレにお流し下さい。
次回からまた戦闘に入ります。
まぁ殴り合ってなんぼの流れを想定していますので今更ですよね。
色々お楽しみください。

では、また次のページでお会いしましょう。

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