猫と犬は相容れない   作:あずき屋

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「あーやっぱ飯はカレーに尽きるな。
こればっかりはインド人に感謝だわ」

「なんだ?
お前が毎回食ってるその茶色い物体がそんなにうめぇのか?」

「文にすると俺がやべぇモン食ってるように思われんだろバカ。
最初にカレーって発言しなかったら確実に異常者扱いされんだろ。
そういう路線じゃねぇんだよ。
なに、違う意味でこの作品18禁ものにしたいのお前?」

「いや?
ただ毎回食ってっからうめぇのかなぁって」

「あ?あぁ、コイツは万能そのものだよ。
人間に必要な野菜や肉、その他諸々の栄養素が全部入ってる。
中でも辛味が食欲を刺激してな、もう手が止まらねぇのなんの。
手も胃袋も大忙しだよ。
もうこれ食っときゃ人生過ごせんじゃねぇのってレベルだ」

「マジか......そんなうめぇモンなのか?」

「おぉマジもマジ大マジよ。
人類の宝だねコレ。
カレーって概念作ったインド人にはノーベル賞レベルのなんかあげたい気分。
ホレ、食って見ろよ。
ハマるとやべぇから」

「あー............やっぱやめとく」

「んだよ遠慮しねぇで食ってみろって。
ここでカレー信者獲得してカルデアの食堂に一波乱起こすんだからよ」

「いや、そのなんつーか、オレはオレで用意したくてよ......」

「え、なに......大食漢のお前が遠慮?
なんだ、腹でも下したのか?
それとも熱でもあんの?」

「やめろ触んな!!」

「あーひょっとして辛いの苦手な質か?
大丈夫大丈夫、今日のはあんま辛くしてねぇから誰でも食えるよ。
ホラ、お前の好物の肉も一緒に掬ってやっから」

「だからいいっつーの!!」

「食えや!!
好き嫌いなんてお母さん許しませんよ!!」

「そういう問題じゃねぇ!!」

「すれ違いって、時に残酷ですよね先輩」

「うーん青春......なのかな?」

「アレだな、なんかツマミでも食いながら見るような光景だよな」

「オラ食え!!
食って俺と一緒に信者になれぇ!
カレー教の創設じゃあァァァ!!」

「だから!
そのスプーンをオレに向けるなっつーの!!!」


第6話 動物の絡みって見てて心配になる

 

 

客観的に見るのと、実際に体験するのとでは全く違う。

知識としては理解してはいたものの、いざそれを目の当たりすれば、己の認識がいかに浅はかであったかを痛感することになるだろう。

自分がこれまで対峙してきた者たちとは違う、全く別の毛色の相手だ。

振りかざされる太刀筋が妙な軌跡を描いて迫り来る。

無論剣だけではない。

無遠慮に織り重なってくる掌打や蹴りがいちいち鼻につく。

加えて思い通りに攻めきれない。

風のように雲のように実態がないと錯覚するほどに、自分の剣戟が全く有効打に入らないのだ。

出鱈目に振るわれる太刀筋は一見巫山戯ているように見えて、着実にこちらを追い詰めてくる。

 

「............っ!!」

 

攻め方がまるで掴めない。

次の太刀筋が予想できない。

攻撃のパターンが見出せない。

蛇のように自在に太刀筋をくねらせてくるこの不快感、ジワジワと首元にまで這いずってくるような錯覚を引き起こさせる。

とても不快だ。

突出した技術もそうだが、見るべき点はそこだけではない。

これは最早人の技の範疇を超えつつある人外の動きだ。

人であることを捨て、煉獄の道に身を投じた修羅の類の怪物。

早々に認識を改めなければ、足元を掬われるどころか首を持っていかれ兼ねない。

 

戦闘だけにおいた話であれば、私も固執したりはしない。

だが、何故だか彼の在り方を見ていると、とても他人事のようには思えない。

そうだ、似たような理想を思い描き、全てを投げ出してただそれだけを追い求めた愚かな男の姿をよく知っているからこそ、他人事と片付けられない。

ライダーを倒した際に垣間見せたあの眼差し、仕方のないことだと割り切り、それでも後悔の念を捨てきれない哀れなその姿。

もう手の施しようがないのは分かっている。

詰めすぎてしまったあの状態では、もうあとに引くことなど出来はしないだろう。

だが、それでも止めなければならない。

同じ道を辿ってしまった私だからこそ、その終着点だけは変えなければならない。

 

「.........くっ!」

 

まずは認めるべきだ。

認めよう、彼は人であって人ではない。

そうだ、彼は人であることを捨てたのだ。

割り切れ、彼はかつての私の鏡ではない。

だが、これもまた性分なのだろう。

認めなければならないのに、何故だか酷く怒りが募り、しきりに認識を阻害してくる。

思い通り戦えないからということだけではない。

自分でも理解できない光景が、さっきからちらついて仕方ないのだから。

 

「っ!!

はぁぁぁぁっ!!」

 

だが、見れば見るほどいつかの自分と重なってしまう。

その眼差し、人が手にしていいものではないその力、全てを悟ってしまったかのようなその顔。

どうしようもなく、かつての私の姿に重ねてしまう。

ある意味での秩序の完成体。

私はただそれだけを求めて走り続けた。

決して振り返らず、脇目も振らず、ただ前だけを見て愚直に進んでしまった。

自分の求めたものではない結末と知りながらも。

後に退くことはできない。

退くことなどあってはならない。

それを否定してしまえば、私は自分を失くしてしまう。

否定してしまえば、私は今まで奪って来た命に対してなんと償えばいい。

退路はなく、あるのはいくつもの墓標が連なる荒れ果てた大地。

その果てにあるものは、結局のところ否定以外に他ならない。

私はそれを認めたくないが故に、ただ進んだ。

気づいてしまえば、己で掲げた正義に蝕まれそうだったからだ。

 

「......っ、せぇあ!!」

 

ならばこそ、この男が求めているものはなんだ。

私と同じ目をしていながら、そこまで食い下がれるに足りるその思いはなんだ。

その目には一体、何が映っている。

 

「はぁはぁ......」

 

「どうした兄ちゃん。

身も心も乱れまくってんじゃねぇか」

 

「......はぁはぁ、キミは本当に、理解、しているのかね?」

 

「なんの話だ」

 

「キミの求める先に、救いなどないということだよ」

 

「............そうか、アンタには見えたんだな」

 

自分でも不思議に思っている。

何故全く知らない赤の他人の風景を感じ取れてしまっているのかを。

剣を交わせば交わすほど、嫌というほど見せつけられるのだ。

彼が行き着くその先を。

救いもなく、希望もなく、思い描いた理想もなく、無念に朽ちていく必然の結末が見えきっていて仕方がない。

その領域には、決して踏み入れていいものではない。

目指した矛先は違えど、彼の求める道はかつての私が目指した道と同じ。

行き着く先が違うだけで、その道程はどうしようもないほどに同じものだ。

 

「その果てに行き着いてしまった先駆者としてキミに言わなくてはならないことがある。

これは忠告ではない、警告だ。

すぐにでも引き返せ。

確かに、もう引き返すなどという線はとっくに越えてしまっているのかもしれない。

だが最後までその道を選ぶ必要はない。

今からでも道を正せば、最悪の結末だけは免れるはずだ」

 

「最悪の結末だ?」

 

「心のどこかではとっくに分かっているのだろう。

キミの理想は、決して手を伸ばしていいものではない。

その先にあるのは、避けようのない絶望だけだ。

志半ばで死んでいく姿が目に見えている。

これ以上バカな真似は止すことだ」

 

「アンタも同じ道を辿ったってのか?」

 

「そうだ、キミに似たバカな男がいたという話はしたな。

奴もまた人の身に余る愚かな理想を思い描き、その果てに多くの痛みを残す凄惨な末路を辿った。

万人を救うなどと宣い、現実から目を逸らして決して叶うことのない理想を追い求めた。

その結果が私だ。

人の身に余る理想は、決して誰とも分かち合えず、ただ孤独にその心を摩耗させる。

最早呪いと言ってもいい代物さ。

私はこれこの通り、後にも先にも行けなくなってしまった身だが、キミはまだ人なんだろう。

その選択を、変えようとは思わないのか。

この愚かな末路を辿った男の話を聞いて尚」

 

「............人の身に余る理想、ねぇ。

確かに、傍から見りゃ俺の在り方は破綻してるかもな」

 

そう、彼の在り方は破綻している。

目指す理想が何なのかは分からない。

だが、決して進んではいけない場所へ赴こうとしているのは確かだ。

そうでなければ、そこまで高めた力の説明がつかない。

単騎で私に挑むなどといった思考に辿り着く説明がつくはずもない。

それは一種の破滅願望だ。

目的のためなら、例えその先に自身の死が待っていようと厭わない在り方。

人として真っ当な形じゃない。

立場を弁え、己の限界を見定め、それでいて確実な手段を選ぶべきなのだ。

 

「それでも、それでもだ。

俺は、考えを変えるつもりなんてこれっぽっちもねぇ」

 

 

「バカな......分かっているはずだろう!

その道を選ぶということは、人としての幸せは望めない!

そもそも、そんな考え自体まともな人間の思考ではない!

私を見ろ!

かつて多くの人々を救うと豪語し、得られたものは多くの痛みだけ!

望んだものとは全くの真逆の結果しか得られなかった!

キミはまだ人だ!

人であるからこそ、人間本来の幸せを探し、享受するために生きなければならない!

それが叶うかどうかの問題ではない。

それが人間本来の在り方だからだ!」

 

「なぁ兄ちゃん、アンタなんか勘違いしてんな」

 

「......何?」

 

「人としての幸せ?身の丈以上のものを求めるな?

正直アンタの話は難し過ぎて大半何言ってっか全然わかんねぇ。

まぁ、俺が行っちゃあならねぇ所に行こうとしているのを止めたい気持ちはわかった。

だがな、ンなことはもう散々言われたし聞き飽きた。

俺は我儘なんでね、どうしてもやらずにはいらねぇわけよ。

それに、昔からよく言うだろ?」

 

木刀の切っ先がこちらを向く。

それは明確な敵意と戦意の表れ。

不敵に笑い、折れない意思が説得を明確に拒否している。

自分とどこか似通っていると思った先ほどまでの自分を殴ってやりたい。

あの瞳は、紛れもなく自分とは遥かに違う野望を孕んだものだ。

そうだ、一体何を勘違いしていたのだろうか。

アレはとうの昔に、人間の皮を被った得体のしれないものなのだから。

 

「やっちゃダメって言われるほど、やってみたくなるだろ?」

 

「......そうか、なら女々しい説得はここまでにしよう。

せめて楽にとも言わん。

下らん理想を抱いたまま無様に溺死させてやる」

 

「有難迷惑な慰めなんざ最初から求めてねぇ。

俺の道は俺が決める。

忘れられねぇ武勇伝を枕に、いい夢見続けな」

 

そして戦局は再び喧騒の中に身を投じる。

互いに譲れぬ意志を鍔迫り合い、己が定めたものを貫き通す。

男とはかくも愚かな生き方を選択するもの。

意固地になればなるほど自身を泥沼へと沈め、求めていたものから遠ざける。

それは決して自身の求めたものを手に入れることは出来ないというジレンマ。

いつか、ある男が誓った誰かのためになるという思いが、その生涯を費やしても手に入れられなかった結末のように。

最早言葉は通らない。

ならば、残る策は実力行使以外ない。

いつの世も行き着く答えは同じだ。

自分の主張が通らなければ、力でもって無理矢理押し通そうとする。

私には、止められないのかもしれない。

見果てぬ荒野を目指して歩もうとするその背中を。

 

 

 

_______________________________

 

 

「なぁ、勢いで兄ちゃんおいて来ちまったけどよ。

ホントに大丈夫なのか?

あの兄ちゃんただの人間なんだろ?」

 

「あぁ、あの畜生の代名詞たる紛う事無き人間だ。

別に問題ねぇだろ。

かえって邪魔がいなくなってせいせいする程だ」

 

「オイオイ、お前さんサーヴァント何だろ?

加えて騎士のお前さんがそんなツンケンしてていいのかよ」

 

「確かにオレは騎士だ。

円卓に身を置き、民草を騎士王と共に導くために剣を取った一介の従士でもある。

真に忠誠を誓うべき騎士王の存在が絶対とはいえ、今のオレの身分は魔術師と契約を交わしたサーヴァント。

マスターの命の保証が最優先だ。

とは言ってもな、事が事だ!

オレは間違ってもアイツの下になんざ従くつもりはねぇ。

ましてや!

あんな舐め腐ったポンコツヘタレヤローなんかの心配なんざこれっぽっちもするつもりもねぇ!」

 

「おうおう......こいつぁまた特殊な関係だな。

おい坊主、こいつら一体何があったんだ?

俺が言えた義理じゃねぇんだが、こいつらどう考えても従来のサーヴァントと魔術師の関係性じゃねぇだろ」

 

「あ、えーと......なんて言ったらいいかな。

ねぇマシュ」

 

「そうですね......強いて言い表すなら、絶望的に相性が悪かったんだと思います」

 

「サーヴァントと相性が悪いっていうのは別に珍しいことじゃないけど、今回ばかりは状況が悪過ぎるわね。

聖杯戦争なら契約を切って大人しく教会の保護下にいれば、まぁ可能性はあるけど死にはしない。

でも今回に至っては致命的よ。

だって、契約を切ればそこで自分の命どころか人理消滅コースに真っ逆さまなんだから」

 

「なんだかなぁ......俺の見立てじゃあウマの合う時はとことん合うと思ったんだがな」

 

「(それもそれで間違いじゃないんですよ......)」

 

「......だが」

 

「あん?」

 

「フォウ?」

 

 

先頭を歩いていたモードレッドは歩幅を縮め、遂には立ち止まる。

先ほどまで不機嫌を体現していたかのように大股で突き進んでいた姿勢は鳴りを潜め、突如我が身を振り返った猫のようにその歩みを止める。

虚空を見つめ、その眼差しを彼方へと移し、思考という海にその身を一時的に沈める。

それは戸惑いか、はたまたただの気まぐれか。

今までの傲岸不遜な態度とは裏腹に、彼女はその年齢に相応しい振る舞いを垣間見せる。

 

「なんでだろな......不思議と思うんだ。

なんでか、ここで死ぬような奴じゃないって思えちまうんだ。

知らねぇ間にふらっと出てきて、そんでもって、またアイツみたいに軽口叩いて......」

 

「セイバーさん......」

 

「考えるだけ無駄なんだろ。

そうさ、考えるだけ無駄だ。

さっさとガングロヤローをぶっ倒して間抜け面晒して帰ってくるだけなんだからな!

オレらも手柄取られねぇようさっさとぶっ倒そうぜ」

 

『そうさ、何はあれやるべき事は至極単純なんだ。

目標を撃破して聖杯を回収するだけ。

さぁ、集中したまえ。

目標地点までそう距離はない。

その先にある大空洞にて待ち構えている親玉を倒して、早く戻っておいで』

 

狭い回廊を進み、大きな空間へと歩みを進めていく。

光源などないはずなのに、気にならないほどに満たされた光。

それは決して優しいものではなく、夥しい負の何かが齎すもの。

近づいてはならない、触れてはならない禁忌を体現したかのようなもの。

 

「......っ!!」

 

立香は思わず口を手で塞ぐ。

吐き気を催すほどの魔力が立ち込め、こちらの精神を削いでいく。

史実によれば聖遺物。

報告によれば願望器。

しかし、現実はそれとは似ても似つかない醜悪なもの。

より詳細な情報からによれば、変質したのものは冬木に発生したものだけとの事だが、冬木の監督者が失踪したためそれも定かではない。

だが、ここにはその悪意の源はない。

今あるのはそれより遥かに小さな輝きを齎すものだけ。

立香たちが不快に感じているものはそれの名残りなのだ。

その汚泥の前に鎮座しているのもこそが聖杯。

そして、その目の前に黙して佇む騎士がその聖杯の所持者となる。

 

「見な、アイツが聖杯の所持者のセイバーだ。

前はあんな奴じゃなかったんだがなぁ」

 

「......っ、深々と黒に染まっていますが、見間違えようがありません。

あのサーヴァントが持っているのは、間違いなく聖剣のうちの一振り。

その聖剣の所持者にして、最も名高く、誉れある誇り高き円卓の騎士の頂点に立つ者。騎士の中の王。

あまりにもの知名度を誇るサーヴァントの名前は」

 

「......アーサー王、アーサー・ペンドラゴンか」

 

「来たか、随分と待たされたものだ。

尻尾を巻いて何処ぞへと逃げ仰せたのかと思ったぞ、光の御子よ」

 

「再会初っ端から言うじゃねぇか騎士王さんよ。

援軍呼ぶのにちょいと手こずってなぁ、とはいえ、テメェをぶっ倒すにゃ十分な戦力を揃えたつもりだぜ。

今度こそ年貢の納め時だ、覚悟しな」

 

「弱い狗ほどよく吠えるとはよく言ったものだ。

貴公が幾ら頭数を揃えたところで、有象無象に変わりはない。

諸共我が極光に呑まれて潰えるのが関の山だ。

分かっているだろう、結果は見えている。

いい加減服従の姿勢を見せて観念したらどうだ」

 

「おうおう随分と口が悪くなってまぁ......普段なら小娘の戯言と聞き流すのが通例なんだが、生憎と俺にも流せない言葉がある。

弱ぇかどうかの判断は後にしろよ。

......おい、兄ちゃんのセイバー、さっきから黙ってっけどどうした?

アイツがお前さんが叛逆した騎士王そのものなんだろ?

ここまで来てビビったのか?」

 

「......だ?」

 

「は?」

 

「セ、セイバー?」

 

「フォ?」

 

「ど、どうしたのよ、なんかさっきから反応薄いけど」

 

「......れだ」

 

モードレッドの反応がどうもおかしい。

目の前にいるのは、かつて叛逆し相対した騎士王そのもの。

その輝きは失せ、誰もが羨望を抱く神々しい姿は最早見る影もない。

美しかった金色の髪色は薄く褪せ、肌は病人を思わせるほどに白くなっている。

穢れのない純白を誇っていた甲冑も、深き闇に囚われてしまったかのように変わり果てている。

しかし、その身はかの騎士王アーサー・ペンドラゴンそのもの。

どれほどの月日が経とうとも、モードレッドの根幹にある憎しみや負の情念が晴れることはない。

だが、モードレッドは反応をほとんど示さない。

まるで、目の前にいる相手が初見であるかのように。

 

「テメェは一体、誰だっつってんだろうがァァァァ!!」

 

「うわぁっ!!」

 

怒り、猛り狂う赤雷が突如モードレッドより放たれる。

立香たちがこれまで散々見てきた魔力放出だ。

別段珍しいことでは無い。

立香たちが目を向いたのは、紫助と大喧嘩した時に見せた以上の激情がモードレッドから痛いほど感じ取れたからだ。

豹変したのではない。

純粋に怒りのラインが振り切れる程の何かを、目の前の黒い騎士王から感じ取ったのだ。

 

「その剣、その雷、品の欠けらも感じさせない言動。

やはり貴様か叛逆者。

円卓に身を置き、最高の名誉を約束され、それでいて尚我が国に反旗を翻した愚かな騎士よ。

一度この手で屠られたにも関わらず、再び私の前で屍を晒そうというのか」

 

「......黙りやがれ。

テメェなんて騎士王じゃねぇ。

騎士王であってたまるか。

ブリテンの秩序として崇められ、民草の憧れとして輝いていた王が、こんな目も当てられねぇ変わり果てた姿になるはずがねぇ......!

オレの前で、王の姿を偽るな。

オレの前で、王を語るな。

オレの前で、その聖剣を振りかざすな!!

答えろ!

テメェは一体、誰だ?!」

 

「愚かな......。

己が定めた偶像のみにしか忠義を尽くせぬというのか。

選定の剣を抜き、ブリテンを預かり、破滅の定めまで国に殉じた王こそ私である。

私が王であるという事実は変わらぬし、貴様が駄々を捏ねたところで何が変わる訳でもない。

貴様が私に何を求め、何を思い描いていたのかなど知らぬ上に、興味もない。

敵であるならば再び、殺す。

ただそれだけの話だ」

 

「っ!!」

 

「セイバー落ち着いて!!

闇雲に攻撃したって意味が無い!

もっと冷静に立ちまわならきゃ...!」

 

「うるせぇ!!

オレに指図するな!!」

 

子どもが足掻くように、悪戯に攻撃を仕掛けるモードレッド。

気持ちは、分からないまでもない。

自分が慕ってきた人が、ある日変わり果てた姿になっていたらと思うと共感できる部分があるからだ。

ましてや相手はかの円卓の騎士にして、ブリテン国の王アーサー・ペンドラゴン。

かつてモードレッドが忠義を尽くし、絶対の忠誠を一度は誓った相手である。

目の前にいるアーサー王を認められないのは一重に憎しみ故か、敬愛からもたらされるものか。

或いはそのどちらでもないのかもしれない。

何はともあれ、そのモードレッドの胸中を窺い知ることなど出来ないのだから。

 

 

「っ!!クソがっ!!

テメェなんて父上じゃねぇ!!

テメェなんて......あの方の筈なわけがねぇんだ!!」

 

「喧しい小娘だ。

相も変わらず動作全てが粗雑。

呼吸も合っていなければ腰の入りも悪い。

何も変わっていないな。

後にも先にも、一歩も動けていないではないか」

 

「黙れっ!!

騎士王でもない奴が、知った風な口を利くんじゃねぇ!!」

 

「無駄が多い、だからこそ隙が生まれやすい」

 

「ごふっ!!」

 

「クーフーリンさん!!

どうして援護してあげないんですか!!」

 

「無茶言うんじゃねぇよ......勝手に飛び出していった上に射線上に入られちまうんじゃ手の出しようがねぇ。

巻き込んでいいってんなら幾らだって打っ放してやるがよ」

 

「っ!!

マシュ、どうにか援護できないの?!」

 

「無理です先輩!

モードレッドさんに連携をする気がない以上、私が出張ってもかえって邪魔になります!」

 

「だからって、このままぼうっと見てろって言うの!?

あのバカがいればまだ何とかなったかもしれないのに......」

 

「もういい、遊戯に付き合う気も失せた。

久方振りにまともに剣を振るえると思っていたのだが、どうやら期待外れだったようだ。

下らん余興を寄越した礼を払ってやる」

 

聖剣から吹き出される黒き輝き。

それはかの伝説の輝きとは正反対の全てを滅ぼすもの。

万人の勝利を約束するものではなく、個人の約束を確定させる一撃。

聖剣エクスカリバーの全力解放であるならば、自分たちはおろか街ひとつを消し飛ばすことなど容易。

 

「王として、ここまで来た褒美をくれてやる。

誇るがいい、貴様らは聖剣の輝きにて潰えるのだ。

誉れをここに全てを捧げよ。

輝くは命の奔流、さして齎されるものもまた命の奔流。

極光は反転し、我に勝利を齎さん。

さらばだ、名も知らぬ異邦人たちよ」

 

「っ!!」

 

その輝きは余りにも禍々しく、導くのではなく命を攫う光。

その一撃が史実の通りであるならば、自分たちはその歴史の証人となる。

客観できていれば、その有り様を高々と語って入れただろうに。

向けられたその輝きは、代償としてその命を容易く奪う。

かの名高く伝説の聖剣の有り様を語ることは、誰にもできない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「............爆弾爆発まであと僅か!ってか。

コレ、ヤバくね?」

 

「そう呑気さを口にしている時点で、君も大概だと私は思うが」





どうも、あずき屋です。
いやー更新遅れて申し訳ないね。
仕事がうんたらかんたらという、いつもの恒例行事のやり取りを垂れ流して挨拶していくよ。

やったぜ父上だ!
覚悟!アーサー王!!

やったぜ父上だ!
黒い......?お前父上の偽モンか!!死ねや!!

どう転んでも血みどろの展開にしかならないと思うのは私だけでしょうか。
地雷が多すぎるモードレッド。
それを口笛吹きながら踏み抜いていく主人公。
うーんカオスもいいところだ。
だが、それがいい。
面白おかしく全部をバカやって乗り越えていくぜ精神で、この作品も人生も乗り越えていきます。

感想くれた方、誤字報告してくれた方もどうもありがとう。
中には触れてはいけないツッコミを待ってる人もいたけれど華麗にスルーしたよ。
折角濁しているんだから掘り返さないようにね。
まぁ奴の影響が強いことは認めます。
それだけですがね、多分。

次の投稿もまた未定となっています。
楽しみにしてくれている方は、いつも通り気長に待っていてください。
そして、私が体を壊さないように片手間で祈っていてください。

それでは、また次のページでお会いしましょう。
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