「藤丸だってば。
何セイバー?」
「なんだっけ、あの緑色のすっげー辛いやつ。
アレどこにあるか知らね?」
「緑色?
あぁ、もしかしてワサビのことかな?
チューブタイプの奴が確か引き出しにストックとして置いてあったと思うけど......なんでまたワサビ?」
「おぉ、最近ちょっとハマっててな、おもしれぇ反応出来るから最近好きなんだよ」
「へぇ、西洋人には苦手なタイプの味だと思ったんだけど気に入ったんだ?」
「あぁ!こう跳ね上がるような感覚?
みたいなのが最高におもしれぇんだ!」
「摂りすぎには注意してね。
あれ一応自然界では立派な毒だから」
「そうなのか、なら尚更いいな!
んじゃまたな!」
「うん、じゃあね......ってアレだけ持って行ってどうするつもりなんだろ。
まさかそのまま舐めるんじゃないだろうし」
「先輩!
モードレッドさん見ませんでしたか?!」
「やぁ、マシュ。
ついさっきあっちに走っていったけど」
「一足遅かったようです......すみません紫助さん」
「え?
なんの話?」
「それはまぁ......耳をすませてもらえれば分かるかと」
「え?
どういうこと?」
「うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!
ゴラァクソ猫ォォォォォ!!!
テメェまたやりやがったなァァァ!!!」
「アッハハハハハハハ!!!」
「最近寝ている紫助さんの鼻にワサビを入れてるそうで、もう何回目か覚えていません」
「あぁ、どうりで本数が他に比べて極端に少ない訳だ......」
「鼻が......息が......ゴホッゴホッ!!
あぁ!!誰でもいいから水ぅぅぅぅ!!!」
「で、どうするんだ?
このまま黙って彼らの話を傍聴している訳にもいかないだろう」
「あー、なんか行きずれぇな。
どしたのあいつ?
俺の時より数倍キレてね?
アレなのか?そんなにあの色白の衣装が真っ黒になったことが気に食わないのか?」
「............どう考えたらその解釈に行き着くんだ?」
「いやさ、何となく気持ちはわかんだろ?
自分の推しキャラがさ、しばらく経って新しい力に目覚めたーなんて回が出てきて、そんで人格とか格好とか様変わりしてたらなんか冷めるモンあるだろ?
それと一緒だよ。
違うんだよ、俺らが求めてたモンは最初に泥臭く必死に足掻いてきた最初の頃の主人公なんだよ。
新しい力に目覚めるのはまぁいいよ?
でもさ、人格とか変えちゃったらそれもう主人公じゃねぇじゃん。
〇遊白〇とか東〇〇種とかさ、最終的にもう別人になってんじゃん。
じゃあもうそれ違うキャラで良くね?
主人公で押し通したい気持ちは分かるけどさぁ、詰め込みすぎは良くないよ。
ちゃんと原型とか残しておいてあげないと」
「まぁ、なんとなくは理解できるな」
「だろ?
アイツがキレた理由もそこにあんじゃねぇかなって俺は思うわけよ。
気持ちが分かる。
でも加勢に行くほどか?
もうちょい待つか。
じゃあ待機してよう」
「もう少しこう、倫理観に沿った行動というものを取れないのかね?」
それっきり紫助が口を開くことは無かった。
彼の口にする理屈は理解し難いが、あながち間違ったことを口にしている訳では無い。
モードレッドの反応は至極真っ当だ。
叛逆をしたとはいえ、元々は純粋な気持ちで騎士王を慕っていた。
何の因果が相まって憎悪へと駆り立てられたのかは分からない。
だが、正統なる道を突き進んできたあのセイバーがこうも変わり果ててしまえば、何故だと声を上げてしまうだろう。
勝手な思い込み故に齎される結論ではある。
「しかし、今ので出るタイミングをまた逃してしまったぞ。
どうする?
私としては
「何その妙にゾワゾワする技」
「君たちに散々浴びせたあの爆破する矢のことさ。
こと贋作を作ることに関しては得意でね。
量産可能の特権を生かし、使い捨ての爆弾として打ち出す擬似宝具みたいなものさ」
「それ、他の英霊が聞いたらキレられそうだな」
「おっと、心は硝子だぞ?」
アーチャーの得意技は投影魔術。
元来の投影は儀式を行うために必要な物を一時的に精製するものであるが、アーチャーの投影はそれと異なる。
武器の元となる基本骨子、即ち材質を一から構成し、従来の武器を複製する。
構造そのものに意味を見い出し、理念を擬似的に持たせることで生来の武具に極めて近い存在感を作り出す。
強度や性能は原典に比べて勿論劣るが、強化魔術を重ねて使用することで強度を補強している。
また、構造上不可能でなければ独自の改良を施すことが出来る。
剣を矢に変えて放つのもそれの応用。
充填した魔力を爆散させる
「そういう君こそ、アレは一体何のデタラメなんだ?」
「やだ、唐突にデタラメ扱いされる私......信頼度低過ぎ?」
「つい先程までお互いに喉元に剣を突き合わせていたんだ。
信頼も何もないだろう。
私の見立てでは、アレは強化なんて生易しいものではなかったと思えいや......断言しよう。
そんなレベルのものではなかった」
「へぇ、んじゃ仮説をどうぞワトソン君」
「かの名探偵に程遠い君が言うとイラつき3割増だな。
まぁいい、私の見解は“限りなく固有結界に近いもの”と推測している」
「固有結界だと......!」
「......一応聞こう。
君は固有結界が何か理解しているかね?」
「いや全然」
「......突っ込んだが故に、自ら話の腰を折ったか」
固有結界とは、一言表すなら禁術中の禁術。
術者の内側にある内包された世界を具現化させ、現実を一時的に書き換えるもの。
平たく言えば、想像の世界を現実にしてしまう。
世界そのものに干渉するため、一度発動してしまえば周囲にいる者を巻き込み、己が世界に取り込んでしまう。
魔術師にとって至るべき極地のうちの一つとされているが、発動にまで到れる者は極めて稀。
生涯を賭して努力しようとも必ず辿り着けるものではなく、主に術者の先天的能力に拠るところが大きい。
「とは言っても、周囲に対して発動している風には見えなかった。
対象はあくまでも自分自身だけ。
なら、答えは限りなく固有結界に近いもの。
即ち固有時制御の領域に達しているのではないかと私は考えるわけだよ」
固有結界は、自己に内在する空間を現実として書き換えるもの。
外側へ効力を発揮するものと逆に、固有時制御は自身にのみその効力を発揮させる。
つまり、誰もが持つ自分だけの世界を体内にのみ結界として広げ、通常の魔術では測れない効力を齎す。
そうアーチャーは推測した。
「最もただの仮説に過ぎない。
だが、あながち検討外れとも言い切れない。
何故なら強化の魔術は基本的に効果が切れるまで持続し、最初に発動した魔術の質の具合によりのみ効力が左右される。
つまるところ、
魔力の無駄遣いであるし何よりメリットが薄い。
しかし、君はそれを呼吸をするようにやってのけた。
魔術の行使の兆候さえ見せず、一息で人間の肉体を我々サーヴァントと渡り合えるレベルにまでのし上げた。
そういった情報から鑑みれば、固有時制御くらいのレベルでなければ説明がつかない。
どうかな、我ながらなかなか的を射ていると思うのだが」
「あーあ、いきなり怒鳴るから初撃受けられちゃってんじゃん。
アイツはホント大事なとこでやらかすな。
いっぺんマジで締めとかねぇとおんなじこと繰り返すわ。
キャスターの兄ちゃんも構わずぶっ放しちまえばいいのに。
燃えたって誰も困りゃしねぇよ。
どうせだったら全員で袋叩きにして、どさくさに紛れてクソ猫に何発かかましてやりゃいいのになぁ。
......あぁ、悪い何の話だったっけ?」
「私の心が割れそうになっているという話さ」
紫助のそっかと告げ視線をモードレッドたちに戻したのを見届け、アーチャーはほんの少しだけ泣きそうになった。
思い返せば彼の言動は粗暴だ。
理屈は破綻しているし些細なことは気にも止めない。
人柄的にも掴みにくく、どういった人物なのか全く分からない。
会話をすればするほど謎が深まっていく。
恐らく、自分の力の詳細などどうでもいいのだろう。
ただいつも通りその力を振るい、障害を排除できるのならそれで彼は良しとするのだろう。
「(だが、人の身でそれを行使するのは明らかに度を越している。
強化の重ね掛けは不可能と言ったが、実際は不可能ではない。
ただ、強化の対象がそれに耐えきれず損壊してしまうのだ。
金属をより強固にしようと圧力をかけ、その結果罅割れ砕けてしまうように。
私の見立てでは、固有時制御で瞬間的に複数回の強化を自身の体に使っている。
体の負荷は相当なもののはずだ。
きっと君は、その代償を今も払い続けているのだろう。
ならば、その結末は私と相違ない......)」
「なぁ、つーかなんでアンタ俺と一緒に居んだっけ?」
「今更それを言うのか!?」
「ナチュラルに混ざり過ぎてて今の今まで忘れてたんだよ。
アレ、なんでだっけ。
確かアンタがなんか盛大な」
「それ以上は止めろ!
私の今までで最悪の不覚だ!
アレを公言されてしまえば、私は向こう数世紀は座から動かんぞ!」
そう、何故先ほどまで殺し合いをしていた二人がこうして岩陰から談笑をしているのか。
話は少し前に遡る。
まず間違いなく、アーチャーの汚点として確立してしまった忌まわしい出来事が。
_____________________________________________
「オラァァァァァッ!!!!」
「ぐぅぅっっ!!!」
一度足りとも防御に転ずるべきではなかったと今更ながら後悔した。
この男が一度暴れ回れば、再び拮抗状態に持っていくことが非常に困難だからだ。
まるで不規則な乱気流だ。
デタラメに振るわれる太刀筋は暴風のように横殴りを繰り返し、時に引いてこちらを惑わせては再び突風となって襲いかかってくる。
対人戦でここまでやりづらいのは初めてだ。
やはりこいつは人間の領域から逸脱している。
一撃でも受ければ、食らった箇所が必ず機能不全に陥る。
そんな気迫がまさに剣のように私に突き刺さってくる。
「テメェが今までどんな人生生きてきたかどうかなんて知ったこっちゃねぇ!
俺は俺の目的のためにだけ剣を取る。
気に入らねぇと決めたものだけを叩っ斬る。
俺が信じたモンだけを信じる。
外野がとやかく野次ってんじゃねぇぞ!!」
「それは、大変......結構だがね!
その行き着く先を、辿り着いた時に残る虚しさを考えたことがあるのか!!
君の辿り着く終着点には、誰一人として近くには居ない!
誰とも分かち合えず、一人寂しく孤独に押し潰されながら死んでいく未来を変えたいとは思わないのか!
それから生じるのは後悔だ!
過去の自分を恨み続ける一生を死んでもなお、繰り返したいと本気で思っているのか!!」
「それこそ知ったこっちゃねぇな!
明日の自分がどうなってんのかなんていちいち考えてられっか!
喜んでぶん投げてやるよ。
そん時は、そん時の俺に全部任せっからな!!」
「馬鹿な......君の言っていることは理解できない!
何から何まで支離滅裂だ!」
「頭でっかちのアンタには縁のなかった話ってか!?
だったら大人しく引っ込んでな!
お人好しもお節介も大概にしとかねぇと女に嫌われんぞ!」
結果の全ては、その時の自分に全て任せる。
彼ははっきりとそう断言した。
何もかもが自分の起こした責任であるならば、それを最後まで背負って歩いていく。
感情論とかそういった次元はとうに越えてしまっている。
これまでを感覚で生きてきた者が口にするような台詞だ。
だが、事実彼はそうやって今までを生きてきた。
今までの集大成こそが、今の青葉紫助。
私には到底理解できない。
「誰にも邪魔はさせねぇ!
俺の目的を遂げるまではな!」
「っ!
そう易々と行かせはせん!
私にも意地がある。
勝手な自己満足だと笑うがいい!
だが、開き直ってでもそれを通させてもらうぞ!」
「上等だ!
テメェが折れるのが先か、俺が折れるのが先か、一丁根比べと行こうじゃねぇか!
当然負けるつもりはねぇがな!!」
「それはこちらの台詞だ!
しつこさで負けるつもりなど毛頭ない!
先に折れるのは君だ!!」
譲れぬ意地が闘志となり、剣となって己を叱咤する。
既に剣を交えた回数は百を通り越し、自身の主張を張り続ける。
それでも尚互いに一歩も引かないのは、やはり己の意思をどこまでも貫き通したいと考えているからだろう。
延々と続いた闘争の剣戟も終わりを迎えようとしている。
これ以上続けることは、お互いに望んでいないのだから。
「はぁはぁ......なぁオイ、そろそろ終わらせようぜ」
「ぜぇ...ぜぇ......あぁ、同感だね。
これ以上は埒が明かない。
決着をつけようか」
既にお互い満身創痍。
肉体の限界が近づこうと、その手に握った
諦めの悪さに関しては似た者同士。
振り返ってみれば、彼も相当な頑固者のようだ。
無論、自分が言えた義理ではなかったが。
「どうあっても引かねぇってんなら、ここいらで白黒ハッキリつけたほうがいいな。
ま、テメェは黒で決まってっけど」
「流れるように私の肌の色を貶すのはやめたまえ。
私の方が白に決まっているだろう」
「若白髪を誇っちゃあ終わりだぜ。
それならテメェはもう完結してんだろうが」
「フン、下らん口喧嘩には乗らんぞ。
その減らず口も、すぐに利けなくなるのだからな」
「はっ、言っとけや。
どうあろうと、次でテメェをぶった斬る。
俺の限界は俺が決める。
他人にとやかく言われる筋合いはねぇ。
だから見してやるよ。
その先を切り開く力があるのかどうかを」
「いい面構えだ。
そうでなくては面白みがない。
アーチャークラスとはいえ、白兵戦で私とここまで渡り合えたことだけは褒めてやろう。
だがそれもここまでだ。
身に余る理想を持った者の末路を知るといい。
君の戦いは、ここで終わりを迎える」
剣を構え、眼前の相手を凝視する。
瞬きなど忘れ、一瞬たりとも気を抜かず神経を張り巡らせ続ける。
滴る汗が、血が肌を伝おうと気にも留めず、ただ飛び出す機会を伺う。
鼓動が、筋肉が、神経が今か今かと張り詰める。
どう転ぼうがこの一撃で、この戦いの幕は閉じる。
「ウオオオォォォォォッ!!!」
「ハアアァァァァァァァ!!!」
なんの合図もなしに同時に2人は駆け出す。
己の信じる道に向かって、立ちはだかる障害を切り伏せる。
地は爆ぜてめくれ上がり、空気は怒号に呼応し荒々しく震える。
果たしてこの一刀で、どちらの意地が欠けるのか。
「俺はぜってえ諦めねぇ!!」
「私は必ず止めてみせる!!」
「「
剣が交わることはなかった。
どちらも寸でのところで一撃に急ブレーキをかけて沈黙していた。
変わったことといえば、アーチャーがこれでもかと言わんばかりに見開かれた目をしていたことぐらい。
反面紫助は気の抜けた表情に引き戻されていた。
何かが、すれ違っている。
深く考えずともそれは分かった。
微妙に会話が噛み合っていなかった。
ただそれだけの事だった。
「「.............えっ?」」
微妙な空気が漂い始める。
そして、ついぞアーチャーはその後も頑なに口を開こうとしなかった。
紫助はそれを必死でフォローし、子どもをあやす様な対応を取らざるを得なかった。
話を整理すれば、会話の中核が噛み合っておらず戦いに発展。
決定的な違いが明確になったところで戦いは中断。
あらゆる意味で戦意喪失したのだ。
「にしても正義の味方かぁ......。
まぁ、夢は人それぞれだようん。
だからそんな落ち込むなって」
「............自害する気も失せた」
____________________
「失敗は誰にでもある、しゃーない」
「もうその話は掘り返さないでくれ......」
「だな、そろそろ奴さんも殺る気らしいしな」
「聖剣に魔力が収束していく。
間違いないな、宝具を解放するつもりだ」
こちらからでも十分視認できるほどに、禍々しい魔力が渦巻いている。
向こう側のセイバーはその一撃をもって終わらせるつもりなのだろう。
このまま打たせれば全滅は免れない。
動くなら今なのだが。
「爆弾爆発まであと僅か!ってか。
これヤバくね?」
「そう呑気さを口にしている時点で、君も大概だと私は思うのだが」
「どうすっかな、やっぱ動いた方がいい?」
「当然だろう。
連携は取れない、君のサーヴァントは冷静さを欠き、ほかの連中は茫然自失状態。
横槍を入れて即座に体勢を立て直すべきだ」
「ま、普通そう考えるわな」
「時間が無いぞ、急げ!」
アーチャーが弓を構え、矢を番えてタイミングを測る。
だが紫助は考える。
このまま自分たちが出張って上手く体勢が整えられたとしよう。
いつも通りの口八丁で何とか総力戦に持ち込めたとしよう。
それでは最初の時と何も変わらないのではないか。
紫助はこの先生き残る上で、自分が居なければ瓦解してしまうような関係性を阻止すべきと考える。
依存対象になることは絶対に避けるべきなのだ。
だからこそ賭けてみよう。
立香の采配を。
マシュの応えを。
後は、ほんの少しだけきっかけを与えてあげよう。
「動くなら今、なんだがちょっと趣向変えるわ」
「どうするつもりだ」
「何事もタイミングだよ松崎くん」
「おい!」
紫助徐ろに岩上に飛び乗り、大きく息を吸う。
黒きセイバーは魔力を束ねた聖剣を構える。
最早一刻の猶予もない。
既に敵方の体勢は整い、こちらを殲滅する手段を取ろうとしている。
だが、紫助は知っている。
たとえ撃たせたとしても、全滅を回避出来る方法があることを。
それを決断させるのは自分じゃない。
自分に出来ることは背中を押してあげることだけ。
「坊主!!メガネっ娘!!
盾の乙女のクライマックス!!」
「はぁ!?」
「............!!」
「.........い!!」
聞こえただろうか。
いや、確かに聞こえたはずだ。
キーワードは既に与えてある。
今こそ、その手に持つ守りの象徴を掲げる時。
フィクションでもなんでもない、信じ難いほどの現実でそれを成すのだ。
クーフーリンの言葉を思い出せ。
死の恐怖が目の前にまで迫った時、それは輝きを放つ。
全身全霊で守りたいものが背中にあるならば、自分が信頼する男を、その手に持つ盾を信じろ。
何時いつまでも、その思いを忘れないように。
誰かと同じ末路を辿らないように。
どんな困難もピンチも、2人なら必ず乗り越えられるように。
踏み出していけ、限界を超えるために。
「マシュ!!」
「────真名、偽装登録......行きます!
「極光は反転する。
光を飲め、弱者は塵と消えるが良い。
それは小さな光だったのかもしれない。
淡く、儚く、吹けば消えてしまうようなか細い光だったのかもしれない。
暗闇の中で微かに輝く残光程度にしか光を放てないものだったのかもしれない。
でもそれは最初のうちだけだ。
その光は次第に自身の在り方を変化させていく。
他者と出会い、様々な地を訪れ、掛け替えのない物を手に入れていく。
そして、いつかその光は、あらゆる外敵を跳ね除ける強き力へと成長する。
その光こそ、あの二人なのだ。
「なぁ、兄ちゃん。
さっきの話じゃねぇんだけどよ、アンタの目指したモンは存外間違っちゃいなかったんじゃねぇの?」
「.........なに?」
「ガキが口先だけで吹き回るのは簡単だ。
何処ぞのオオカミ少年みたいに触れ回ってりゃいいからな。
実際そいつを実行しようとすれば話は大きく変わる。
よくは分かんねぇけどよ、アンタはやり方を間違えただけなんじゃねぇのか?」
「............」
「手段は確かに間違ってた。
だが、その志そのものは決してバカにされるようなモンじゃねぇ。
先駆者がいねぇからな、そりゃしょうがねぇわ。
奪った命も多いんだろ、でも確かにアンタに救われた連中もいたはずだ。
チャラって訳には勿論いかねぇんだろうが、少しくらいはテメェの慰めになってもいいんじゃねぇのか」
つい口をついて出た戯言と切り捨てるのは簡単だ。
自分の何を知って、そんな知った風な口を効くなと。
しかし、そうして切り捨てることはどうしても出来なかった。
かつて、最も身近な誰かに似たようなことを言われた覚えが微かにあるからだ。
「ぐぅぅぅっ!!」
「俺は思うよ。
どんだけ辛くったって、どんだけ苦しくったって、隣にいてくれる誰かがいりゃ何とか乗り切れるモンだ。
アンタはそいつを作ろうとしなかった、いや作れなかったのかもな。
誰か一人でも支えになってくれる奴がいれば、アンタの人生は変わってたはずだ。
アイツらを見てみろよ」
「マシュ!負けないで!!」
「不格好だし不器用だし足並みもてんで揃ってねぇ。
戦う覚悟もまだ固まってねぇし、まだまだガキだ。
だがそれでも、不器用なりの頑張りが眩しく見える。
確かにまだまだ未熟だけどよ、ガキの未熟さなんてあっという間さ。
アイツらみたいなのは、色んな可能性を秘めた卵なんだよ」
「............そう、だな。
私にも、あんな時代があり、あんな真っ直ぐな目をしていた時があったのだろう」
「ちょっとはテメェを認めてやれよ。
少なくとも、俺はすげーと思うぜ。
マジでヒーロー目指す奴なんざ居ないからな」
「フッ............褒め言葉として受け取っておくよ」
誰かの輝きは、いつかの自分の輝きを思い出させる。
あの時の選択は、決して間違っていなかった。
歳を重ねた大人は、皆そうして心の傷を舐めるのだ。
いつか彼らも知ることになるだろう。
誰かの輝きを眺めながら、こうして思いを馳せている赤い弓兵のように。
「やった............やったよマシュ!!
凄いよ!!ぶっつけで宝具を受けきったよ!!」
「はぁはぁ......や、やりました!先輩!」
「無邪気にはしゃいじゃってまぁ......。
まぁ、ガキの成長なんざ一瞬か。
あっという間にもう別人だもんな。
目が離せないったらありゃしねぇ。
だからこそ、もう少し近くで見届けてやりてぇモンだな」
彼は、ほんの少しだけ口元を緩めて微笑む。
光の輝きの眩しさに目を細めるように、目元を傾けて笑った。
僅かに哀愁を浮かべ、それを隠すように乱雑に後頭部を掻く。
「お前らだって、やりゃ出来るんだよ」
最後にそれだけ誰にも聞こえないように呟くと共に、愛刀を握り直す。
彼らを最後の地へと導くために、紫助は再び戦場へ赴く。
どうも、あずき屋です。
こんな感じで仕上げますた。
体痛いです。
筋肉痛がマッハでストレスもマッハです。
でもまぁ運動してその日のうちに来るってことはまだまだ若い証拠なのでしょうかね。
嬉しくも忌々しくもありますが良しとします。
さて、今回のお話、如何でしたでしょうか?
見ての通りの混沌っぷりですが、何とかまとめあげられているつもりです。
ややこしい場面もあるかとは思います。
気になった点については、私の方にて質問等して下されればお答え致します。
本当はそれなしで伝わるのが1番なんですけどね。
アーチャーにはこういうオチにして、戦力に回しました。
心は硝子なものでこれ以上いじめるのはやめにしておきます。
ではでは、また次のページにてお会いしましょう。