猫と犬は相容れない   作:あずき屋

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「パン!パン!パン!」

「パン!パン!パン!」

「何やってんのあの二人......」

「蚊が出てきた際にカッコよく叩く選手権だそうです」

「徐々に精神年齢退行してきてない?」

「フォウ!フォフォウ!フォフォフォフォフォフォフォ!!」

「因みにフォウさんが初代優勝者です」

「今やってるの何回目さ」




第8話 花火する時は臆せず二本持ち

 

 

「............我が一撃を防ぎきるだと?

あの娘の盾、何故だか初見とは思えん何かを感じる。

それにその奥から聞こえた男の声は一体」

 

「ハロー王様!!

ご機嫌麗しゅうですか!!

アンタらの大好きな不敬者でありますよ!!」

 

「またいきなり訳の分からないことを......」

 

「......ようやく来たか兄ちゃんって!!

なんでテメェが平然といんだアーチャー!!」

 

「また喧しくなってきたわね......」

 

「フォーウ」

 

岩場から身を乗り出し、ネイティブでもなんでもないテキトーな英語と敬語をごちゃ混ぜた挨拶をかます。

緊張感がないのは今更の話である。

 

「なん......だと?

あの所長(笑)が正気を保ってる?

基本どんなヤツに対してもビビりまくって常時ヒステリックに叫びまくるあの所長(笑)が?

ホラー映画見ようとか言っておきながら開幕数分で布団にくるまってたあの所長(笑)が?

夜トイレ行くのも人を叩き起してきたあのしょちょブホォっ!!」

 

「聞こえてるわよこのバカっ!!!

人の恥ずかしい話を赤裸々にこんなところで言うんじゃない!!

帰ったら絶対許さないんだから!!」

 

「なんて強肩してやがんだ......。

100mは離れてる兄ちゃんの顔に寸分違わず投石を命中させるとは......」

 

「クーフーリンさん注目すべき所はそこではないかと!!」

 

「だよね、注目すべき点はあの所長がやっぱりピュアな乙女だった点についグハッ!!」

 

「アンタもよ藤宮!!

ホントにマスター候補生ってのはどいつもこいつも人を舐め腐って!!

ホラー映画が怖いのがそんなに悪いの!!?」

 

「所長も注目すべき点はそこではありません!

後、先輩は藤宮ではなく藤丸です!!」

 

「何なんだ、この集団は?」

 

たった一人追加されただけで場が乱れまくる。

今に始まったことではないが、この集団あまりにも緊張感が無さすぎる。

ボスを前にお巫山戯など愚の骨頂もいいところ。

しかし、これが彼らのスタンス。

もとい紫助のスタンス。

巫山戯に巫山戯まくって場を掻き乱し、どさくさに紛れて勝利を掻っ攫う。

迷惑極まりない嵐こそがこの男。

 

「おーイチチ......悪ぃな王様。

なんか取り込み中だったりした?」

 

「鼻血を流しておきながら私に問いを投げ掛けるその気概、益々もってよく分からない。

貴様は一体何者だ?」

 

「いやなに、ただの首突っ込みたがりの観光客だよ。

手綱取り零した飼い猫を探してみりゃ、なかなかおもしれぇことしてんじゃねぇか」

 

「ほう、貴様がこの反逆者を招いた者か。

随分と酔狂な者がいたものだ。

まさか、私の寝首を搔こうとした騎士の風上にも置けない半端者を懐に置くとはな。

私には理解し難い」

 

「乳首?」

 

「待て待てそうではない!!

隙あらば危うい方向に持っていこうとするな!!

それではただの変態じゃないか!!

んんっ!彼女は名高きブリテン国の主にして、円卓の騎士の頂点に君臨した騎士の中の王。

騎士王アーサー・ペンドラゴン。

そして、キミが召喚したセイバーこそ、かつて最初にアーサー王に反旗を翻した反逆の騎士モードレッドだ」

 

「へぇー知らなかったわ」

 

「何を能天気なことを」

 

「まぁ何だっていいや。

そろそろ時間だ、派手にけしかけるとしようや」

 

「やれやれ、キミは人の話を全く聞かないな」

 

「何を世迷言を......っ!!」

 

突如何かがアーサー王に降り注ぎ、着弾とともに爆ぜた。

無論アーチャーの矢である。

単なる偶然ではない。

アーチャーが事前に仕掛けた罠が爆破されるまで、紫助が言葉で誘導していただけの話だ。

 

「(......っ、いつの間にこんなものを!

いや、全てが予定通りか。

あの男の誘導に乗ってしまったが故、反応が僅かばかり遅れた)」

 

「出鼻挫くお目覚めのプレゼントだ!

突撃隣の騎士王ってな!!」

 

チャンスとばかりに前線に躍り出る。

時間稼ぎは十分。

タイミングも十分。

なら後は一気に突き崩せ。

 

「手ぇ出すんじゃねぇ!!」

 

「なんだなんだ、さっきまで黙り決め込んでた猫ちゃんが今更一体何の用ですか!!?」

 

「うるせぇ!!

こいつはオレの獲物だ!!

手ェ出すんじゃねぇ!!」

 

いつになく余裕のないモードレッド。

相手が騎士王だからこその焦燥か。

太刀筋はどことなく歯切れが悪いもので、うまく集中できてないように伺える。

無理もない。

相手はかつて忠誠を捧げた絶対なる王。

敬愛が行き過ぎた故に拒絶された時の反動が強く、反旗を翻す程にまでなってしまった。

 

「誰も、手を......出すな......!」

 

それは、かつての仇敵を見る目ではなかった。

未だ迷いのようなものが振り切れていない。

力を込めて睨み返せない。

かといって、今更後に引くことなど出来はしない。

どっちつかずの状態に陥り、自分を見失いそうになる。

 

「(謝罪が欲しいなんて、ただの1度も思ったことはない。

ただオレは......貴方に認めて欲しかった。

オレを、見て欲しかった。

たった一言でいい。

いや、手を差し伸べてくれるだけでいい。

それだけでオレは......)」

 

「余所見とは随分と余裕だな」

 

「っ!!」

 

「ボケっとしてんじゃねぇよ!!」

 

思考が嵌れば嵌るほど抜け出せなくなっていく。

戦いの最中に余計なことを考える暇などない。

ないのだが、目の前の黒い騎士王を見ているとどうしても考えてしまう。

本当に貴方は私が忠義を尽くした王なのですか。

民の憧れであり、我らの光であった貴方なのですか。

 

「オオォォォォォラァァァァ!!!」

 

「くっ、まるで蛮族そのものだな......忌々しい。

この私を相手に力で対抗しようというのか」

 

「こっちの方が手っ取り早いだろうがよ。

めんどくせぇ会話長引かせんのも大変なんだぞゴラァ!!」

 

「何を訳の分からないことを喚いている。

人間ごときが、直ぐにでも黙らせてやろう」

 

獲物同士がぶつかり合う。

余波が広がり、周囲に対して広がり牙となる。

打ち合う度に広がる波紋は衝撃に変わり、周囲の地形を根こそぎ破壊していく。

黒いセイバーは冷静さを欠くことなく、紫助の攻撃に対処していく。

唐竹割りを剣の腹で受けて力押し。

躱されることを考慮して左から繰り出される胴薙を先読みする。

戦闘経験が豊富であるが故に冴え渡る戦闘勘。

こと白兵戦において右に出るものはいないとされるセイバーのクラス。

その最も秀でていて、尚且つ世界的に知名度を誇るアーサー・ペンドラゴンだからこそ成し得ることの出来る立ち振る舞いである。

 

「っち、なかなかやるなお前さん」

 

「それはこちらの台詞だ。

動きは確かに粗暴だが、その荒々しい太刀筋は目を見張るものがある。

無作法に見えて忠実、故に崩された型からの縦横無尽の攻め。

加えてなかなか勘がいいようだ。

今の打ち合いで1歩引くのが遅ければ間違いなく串刺しにしていた」

 

「ひゅー涼しい顔して怖ぇこと言いやがる。

確かに騎士王って名は伊達じゃねぇみてぇだな。

掴みづらくてしゃあねぇ。

はぁ......こりゃちょっとばかし無理しねぇと駄目か」

 

「どうした、このまま終わるような男ではあるまい。

それとも怖気付いたか?」

 

「別の意味だったら喜んで華麗に服脱ぎながらダイブしてた所なんだがなぁ......。

オイ生きてっかクソ猫」

 

「余計な、お世話だっつーの」

 

項垂れたモードレッドの襟首を掴んで持ち上げる紫助。

誰が見てもその姿は猫そのもの。

反論することは出来ても、その口調はどこか弱々しい。

長い髪から垣間見えた瞳には、当初の覇気が全く篭っていない。

いよいよもって、色んな意味で重症だと分かった。

 

「はぁ......なんだなんだ随分としおらしくなっちまって。

ホントに借りてきた猫かテメーは。

調子狂うからしゃきっとしやがれ。

王様は待っちゃくれねーんだおっと!」

 

「その足でまといを抱えてどこまでやれる?

今すぐ捨てなければ即座に命を落とすぞ」

 

「こんなザマで死なれちゃ寝覚めが悪いんでね。

やるからには俺の手でコテンパンにしねぇとなっ!!」

 

地を容易く抉りとる黒き衝撃をひらりと躱し、続けざまに飛来する斬撃を受け流す。

そのまま左腕でモードレッドを抱えて応戦していく。

やりづらいことこの上ないが現状ではどうしようもない。

 

「なに!ホントお前どうしたの!!?

こんな安いメリーゴーランドで満足しちゃうタチなの?!

それとももう酔ってた?!

やりづらくてしょうがねぇからとっとと動けや!!」

 

「あ、あぁ......」

 

「ああああぁぁぁぁぁ!!むず痒いぃぃぃぃ!!!

俺はどうすりゃいいんだ!

痒すぎる!!

すぐにでも背中を掻きたい!

でも両手塞がってる......あ、すみません。

ちょっと背中掻いてくれます?」

 

「いいだろう、私に任せろ。

これで痒みは収まるはずだ。

すぐに痒みと無縁の背中にしてやる」

 

「それ背中なくなりませんか!!?

クーフーリンさん、あのおバカさんはどうでもいいのでモードレッドさんだけでも回収してあげてくれませんか!」

 

「あー!!

ランサーのクラスだったら食い下がれたんだがよォ!」

 

すっ飛んでモードレッドだけを回収して戻ってくる。

本来のクーフーリンであれば喜んで乱戦に飛び込んでいくのだが、キャスタークラスでは相性が悪い。

セイバーには強力な対魔力のスキルがあるため、自分の攻撃はほとんど意味をなさないからだ。

 

「んじゃ、仕切り直しといくか王様よ」

 

「言われずともそのつもりだ。

それにしても解せん。

キャスタークラスとはいえ光の御子を下がらせるとは。

みすみす自らの戦力を割くとは愚か。

その行い、愚行であるというのが理解出来ぬのか」

 

「あ?

勘違いしてもらっちゃ困るぜ。

すぐに叩き起して前線に引っ張り込むわ。

それにな、誰がいつ戦力を割くつったよ」

 

「そうだとも、油断は大敵。

目の前のおちゃらけた男に注目していては、足元を掬われたとしても文句は言えんな」

 

「っ!!」

 

黒いセイバーに迫り来るは2対の双剣。

奇襲と追い打ちを兼ねて投げられたそれは間隔を空けられており、当たるまで対象を狙い続ける。

戦場において視覚は常に全体を把握しておくことが鉄則。

一点にばかり注目しては、意識外からの攻撃に対処できなくなるからだ。

アーチャーはそうした心理を突く戦法を得意とする。

視点を外し、四方八方からの遠距離攻撃で敵を追い詰め、決定的死角を突いて敵を打破する。

投げられた双剣は本命ではあるが、囮でもある。

彼自身もこれで仕留められるとは思ってもいない。

だからこそ、何通りもの手段を積み重ねてジワジワと追い込む。

 

「(......追随する双剣か、厄介な手を打つ。

あのアーチャー、どうやら投影魔術を主としての戦法が得意らしいな。

幾ら弾こうともこれではキリがない。

避ければ死角から切り裂かれる。

それにこの手数、また私を誘導させるつもりか?)」

 

「合図だな。

そうら火刑にしてやるぜ!」

 

「なっ!!」

 

双剣がしきりに飛来する合間にクーフーリンの炎弾が乱れ飛ぶ。

逃げ場などないと思わせるほどの弾幕を張ること。

致命傷を狙って攻撃するのではなく、身動きを封じることを第一とした策。

他の誰でもない紫助考案の戦略。

 

「題して“犬猿の縄張り争い”

奴さんほどの実力者なら死にはしないだろーがまず間違いなく鬱陶しいわな」

 

「作戦内容より何故作戦名の方に時間が掛かったんだ......?」

 

「アーチャーの野郎、何耳打ちしてきやがったのかと思えばこういう事だったのか」

 

「この波状攻撃は......確かに厄介だ」

 

そう、決定打に程遠い遠距離弾幕攻撃だが、敵の注意を逸らすにはうってつけ。

周囲を炎弾と爆破する双剣で囲ってしまえば黒セイバーの動きは封じられる。

集中力を切らしたが最後命取りとなるが、アーサー・ペンドラゴンほどの力量ならその効果が現れるのは極めて薄い。

つまるところただの時間稼ぎ。

 

「(こんな作戦は確かに考えつかなかったな。

倒すのではなく、倒す段階に引き上げるための作戦とは。

魔力が続く限り続けることはできるが、それは向こう側は望んでいないだろう)」

 

紫助が事前にアーチャーに耳打ちしていた作戦。

倒さなくていい。

ただありったけの弾幕をクーフーリンと張って時間を稼げ。

内容は最初の爆撃と後のこの作戦だけ。

後はなるようになるだろうという彼らしい能天気な言葉とともに作戦会議は打ち切られた。

本来は弾幕を張って身動きを取れなくした後に背後から強襲をかけて一網打尽にするという作戦だったが、モードレッドの不調により作戦内容を急遽変更。

自陣に加えたサーヴァントは確かに戦力足り得る者たちばかりではあるが、如何せん決定打に欠けている。

自壊覚悟ならアーチャーに策はあるとのことではあったが、それでは面白くないと紫助は提案を却下させた。

それでは意味がないのだ。

これからまた更に強大な敵が現れて、誰か一人を捨て石にする選択を取り続ける。

そんな選択はもちろん取りたくないし、何より彼らの悲しむ顔を見たくない。

ましてや立香やマシュの成長にならない。

低い可能性ではあっても、大団円で終わらせることこそが望ましい。

ならば精一杯その糸を手繰ってやろう。

彼らが強く明日を生きてくれる術を身につけてくれるのなら、喜んで危険な橋を渡ってやろう。

 

「さて、王様が完全にキレる前になんとかしねぇとな」

 

一目散に向かうは自分のサーヴァントの元へ。

力なく項垂れ、顔は地面をガン見し、人形のように動かなくなってしまっている彼女の元へ紫助は走った。

オルガマリーや立香たちが懸命に何かアプローチしてはいるが反応は一切なし。

完全に調子の出なくなったダメ猫に成り下がっていた。

全くもって見ていられない。

そんなしょぼくれた顔をした英霊を呼んだつもりはない。

自分が呼んだ英霊はいつだって生意気で、血の気が多くて、性別と言動が全然釣り合ってなくて、すぐに誰彼構わず喧嘩を吹っかけるようなとんでもない大バカだ。

だから、そんな真反対な姿を自分に見せるな。

調子が狂うったらありゃしない。

さっさと元の自分に戻れ。

 

「し、紫助さんっ!!」

 

「おう藤井聡太、何とか生きてたか」

 

「無事だったんですね!!」

 

「お前さっき俺のことどうでもいいとか言ってなかったっけ?」

 

「紫助!早くセイバーをなんとかしなさいよ!

このままじゃ私たち死んじゃうんだからね!

あのよく分かんない映画のラストみたいになっちゃうんだからね!」

 

「結局ヒステリックになってんのかよ。

つーかあの映画のラストちゃんと見てたのかよ」

 

「フォウフォフォフォーウ!!」

 

「んだよ白もじゃ、何言ってっか全然分かんねぇよ」

 

「フォフォスベシフォーウ!!」

 

「え、今なんかちょっと人語入った?」

 

やいのやいの騒ぎ立てる3人と一匹をどうにか宥め、今にも地面にめり込んでいってしまいそうな自分のサーヴァントを見やる。

ツカツカと徐に距離を縮め、しゃがみ込んで顔を覗き込む。

 

「......父上............ちぅえ.........」

 

「あぁ、ダメだこりゃ」

 

「そんな投げやりな!!

意地でも早く何とかしないと、本当に自分たち死にますよ!」

 

「んなこと言ったってよ......これ半端ねぇくらいの重症だろ。

なに、王様とこいつの間にどんなことあったの?

昔の人の家族関係ってこんなにぐちゃぐちゃしてんの?」

 

「史実によれば、モードレッドさんは主君にして父であるアーサー・ペンドラゴンに謀反を起こし、カムランの丘にて死亡したとされています。

騎士王から直接手を掛けられたかどうかは判断できませんが、恐らく私たちの想像とかけ離れた問題が二人にはあったのでしょう」

 

「まぁよく分かんねぇけど、とりあえず親父と喧嘩してバッサリいかれたってことだろ」

 

「バッサリザックリとしてますが、概ねその解釈は間違ってません。

えぇ、掠ってるぐらいの命中率ですが」

 

「歴史の勉強してる暇なんざねぇんだよ。

お前ら何してたんだよ。

せっかく青髪のにーちゃんとガングロにーちゃんが時間稼いでくれてんのに成果なしか。

ちゃんとやったのか?

揺さぶるなりブン殴るなり一発芸なりよ」

 

「まず間違いなく二つ目はやりたくないです」

 

「紫助さん、本当にどうにかなりませんか?」

 

「そうよ、このままじゃマジで私たち終わりよ?

英霊の能力は魔力あってこそ成立するもの。

あんな後先考えない攻撃続けてたらあっという間にガス欠。

逆に動けなくなるのはこっちなのよ?」

 

「分かってるっつーの。

だからあんまし時間かけてられねぇんだ。

オイクソ猫、しっかりしやがれ。

どこ見てる?何見てる?俺のことちゃんと見えてる?」

 

「......ケ?」

 

「はぁ、少しは回復したか」

 

顔を両手で掴んで覗き込んでようやくモードレッドからの認識を確認した。

相も変わらず消え入りそうな声だが、それでも紫助のことは認識できていた。

 

「お前、あの王様と過去になんかあったんだろ?」

 

「............」

 

「言いたくねぇんならそれでもいい。

誰にだって知られたくねぇ過去の一つや二つ、100個くらいあったって不思議じゃねぇ」

 

「100は言い過ぎじゃあ」

 

「お前にしか分からねぇ辛いことが山ほどあったんだろう。

誰にも理解されなくて苦しかったんだろ」

 

「............」

 

「先輩!顔が.........!!」

 

「前が見えない......」

 

「大丈夫よ、物理学の応用で反対から同じ力を加えれば元に戻るわ」

 

「フォウフォウフォー!!」

 

「うるっせぇ!!このバカども!!

死にてぇのか死にたくねぇのかどっちなんだよ!!

漫才やりたいなら他所へ行きなさい!!

お母さんもう知りませんよ!!」

 

半ば強引に3人と1匹を蹴り飛ばし、集中して彼女を呼び覚ます。

大丈夫だ、声は届いている。

自分の言葉で僅かに目を逸らした。

思い当たる節があるからこそ取れる反応。

こっちの声をしっかり聞けている。

 

「ぶっちゃけお前らのことはよく分かんねぇし、有名な話とかも俺は全然知らねぇよ。

あの王様が男なのか女なのかなんてことも全然よく分かんねぇ。

声が高いだけの美男子なのかもしれねぇ。

マスク取ったらブサイクなのかもしれねぇ。

よく見てねぇしよく知りもしねぇから全然よく分かんねぇよ。

でもよ、それでもはっきり言えることは一つあるぜ。

お前、本当にこのままでいいのか?」

 

「............この、まま?」

 

「あぁ、このまましょぼくれた猫のまんまでいいのかって話だ。

よくは分かんねぇけど、お前あの王様と喧嘩しちまったんだろ?

気まずいのはよく分かるけどよ、このまま気まずい感じでいいのか?

まぁお前の反応からして、あの王様がものすごいグレーゾーンの存在なのは分かった。

本人の皮被った偽物なのかもしんねぇよ?

でもさ、例えあの王様が本人だとしても、お前の反応は変わらないんだろ」

 

「それ、は............」

 

「相手がトラウマ刺激してくる存在ってヤベーよなマジで。

外道ここに極まれりって感じでよ。

ビビっちまう感覚も分からなくはねぇよ。

お前は、それでおしまいか?」

 

「.........」

 

「敵はいつかのお前のトラウマ。

お前が心のどっかで必ずビビっちまう相手。

昔似たような話がゴロゴロ転がってたよな。

お前の本当の敵はお前自身だって。

まぁ空想の話だからなぁって能天気に考えてたのを俺は覚えてる。

でもよ、今こういう状況にいざ自分が直面すると、何となくその考えも理解できる。

剣を握れねぇのは誰のせいだ?

足を動かせねぇのは誰のせいだ?

怖くて前が見れねぇのは、一体誰のせいなんだ?」

 

「.........オレ、オレは......」

 

「トラウマなんざ結局は間接的なモンなんだよ。

原因はいつだってテメェ自身だ。

テメェが弱いから色んなモンのせいにして自分を正当化して自己弁護してるだけだ。

ウジウジ悩んでたって時間の無駄だ。

ならいっそのこと、派手に開き直っちまえよ」

 

「............え?」

 

「自分は悪かったのかもしれない。

周りがああ言ったのは事実だったのかもしれない。

だったらどうした!!

アレやったの俺だ文句あっか!!ってな。

周りが変に囃し立てんのいつの時代だって変わらねぇ。

テメェがやっちまったことはもう取り返しがきかねぇ。

なら、悪評も汚名も全部背負いこんでまた一から始めればいいだろ。

心機一転すりゃ見える景色も変わる。

問題なのは心の持ちようよ。

どんなになってでも食らい付いていける信念を一本心に持っとけば、お前はまたやり直せるよ」

 

いつになく真っ直ぐな目をして、彼はそう言った。

正直言っていることはよく分からないし変にムカついた。

それでも、一貫して伝えたいことは伝わった。

負けるな、と。

モードレッドの瞳に光が戻り始める。

ウジウジ悩むのは後で十分できる。

今この時、この瞬間にできることはこの時しかない。

なら、精一杯泥臭く足掻いてから考えよう。

 

「まぁお父さん見てビビっちまってる女の子には無理な話だけどな」

 

「............うるせぇ!!!!」

 

唐突に、召喚された時のことを思い出した。

 

 





毎度、あずき屋です。
忘れてる人も新規の人もこんにちは。
久々に投稿果たしました。
投稿長引いてスンマソン。
話も長くなってマジスンマソン。
でもやりたかった場面なんで悔いもないし反省もしてない。
流して下さい、トイレに。

毎回後書き書くのも大変だし見てる人もほとんどいないと思うから”今回は”ほどほどにしてさよならするよ。
ぶっちゃけネタが思い浮かばなかっただけ。

ではでは、また次のページでお会いしましょう。






エレチャンキタヤッター

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