キャロルによる世界の分解が始まった。
それを止める為に『特異災害対策機動部二課』、通称『特機物』の面々に正体を明かした『櫻井了子』もとい『フィーネ』はイチイバルの少女と共に空中に浮かぶ城『チフォージュ・シャトー』へと向かう。
その最中、フィーネとイチイバルの少女はガングニール装者三人とキャロルの忠実なる人形『オートスコアラー』の襲撃を受ける。
7対2
圧倒的不利な戦況に……1つの影が現れ、火を司るオートスコアラー『ミカ』を殴り飛ばした。
「ミカ!?」
「なんだ! 新手か!」
「違いますよお嬢さん。私は、味方ですよ」
「イタタ……オマエ、何者ナンダゾ?」
瓦礫から身を起こし、自分を殴り飛ばした影に向かって名を問うミカに対し……いや、周囲に対してその影は立ち込める土煙を払い、名を明かした。
「僕が何者か…いいでしょう! 自分を倒す相手の名を覚えておきなさい。僕はDr.ウェル……世界の崩壊を止める……英雄d「邪魔」ッうぐァ!?」
しかし、名乗り終える前にアームドギアの力を込めた拳によって鳩尾に強力な一撃を受け、体をくの字に曲げる事になった。
「駄目じゃないか……がはっ……名乗りを邪魔しちゃ…」
「英雄ごっこがしたいなら余所でやって。それに……私はヒーローなんて信じない」
「そうですか……でも、世界の崩壊を望む君達を止める……それは紛れもなく」
「っ!?」
「英雄に憧れ……英雄を望み!……英雄を目指す!!」
「チッ! 離せッ!!」
「この僕の! やるべき事だ!!」
「っ!? しまっ……」
「二槍!」「響!」
体をくの字に曲げながらも…血を吐きながらも決して少女の腕を離さなかった男は、左腕に装着していた巨大な機械の腕を地面に叩きつけ、大地を爆発させると共に周囲に紅い霧を漂わせた。
「フィーネ! お嬢さん! 聖遺物の相手は聖遺物にお任せしますよ!!」
「フッ。いいだろう。行くぞ、クリス」
「あぁ! アンタも簡単にくたばんじゃねぇぞ! 英雄さんよ!」
紅い霧の中で言葉を掛け合うとフィーネとイチイバルの少女ことクリスはソロモンの杖でノイズを召喚し、ガングニールの装者達の復讐心を掻き立てながら場所を瓦礫の街へと消えていった。
「待ちやがれ!」
「殺す……ノイズは全て」
「セレナとマムの仇!」
それに伴い、ガングニールの装者達も二人を確実に仕留める為に後を追った。
「簡単にはくたばりませんよ。英雄と言うのは……弱き者達の希望なんですから」
「遺言はそれでよろしいのかしら?」
「お前は派手に立回りすぎた」
紅い霧の中での独白に返事をするように風が吹き、コインが放たれ、男は回避に専念する。
「お前、ゼッタイに解体してやるゾ!」
「私達四人に勝つなんて自信、へし折ってあげる」
回避した先に迫る熱を帯びた結晶を機械の拳で砕き、襲いくる激流はそのまま腕を突き出して分散させる。
「折らせはしませんよ! 僕は! 英雄になるのだから!!」
英雄を目指す男の目は……戦士の目をしていた。
「ハァ……ハァ……」
「スタミナ切れ、これでおしまいね」
「ファラを倒した事は地味に評価しよう。だが、これで終わりだ」
「オマエ。そこそこ楽しめたゾ!」
オートスコアラー4体と戦い始め数十分
何とか風を司るオートスコアラー『ファラ』を撃破するものの彼は限界を迎えつつあった。
「フッ。まだまだ……これからです……よッ!」
男は背をむけると瓦礫の間を駆けていった。
「あーーっ! アイツ、逃げたゾ!」
「体勢を立て直されると地味に厄介だ。派手に追うぞ」
「ファラのお返しもきっちりするとしますか」
オートスコアラー達も男を追跡する為に瓦礫の間を駆ける。
「切ちゃん…」
「調ぇ…」
「アハッ♪ 鬼ごっこは終わりだゾ」
ガリィ、レイアと別れてDr.ウェルを探していたミカはその途中で見つけた遊びがいのありそうな
「さぁ、バラバラ解体ショーの始まりだゾ!」
「切ちゃん……」
「調……。誰か…誰かぁーーーっ!」
「さて、いっくz「君達! 伏せて!!」……うわぁっ!?」
二人の少女が死を覚悟し、目を瞑った時に聞こえた男の声。
何時までも来ない痛みに少女達は目を開き、理由を知った。
「大丈夫ですか。君達!」
「……はい」
「……助かった…デスか?」
ボロボロの白衣に巨大な何かをつけた左腕……そして、無事なのを確認できて嬉しそうに微笑む顔。
彼は英雄になる道の途中かもしれないが……
「もう少し待っててくださいね。絶対に助けますから」
今の少女達にとってDr.ウェルは『英雄』だった。
「イタタ……あ、見つけたゾ! もう逃げる暇なんてあげないゾ!!」
「僕も逃げませんよ。君は……ここで倒す!」
「アハハハハ! もうその左腕のオモチャも使えないゾ!」
「ハァ……ハァ……。そう言う君も、随分ボロボロじゃないか」
「アハハ! でも、これで終わりだゾ! その後は後ろのジャリンコ達をバラバラだゾ!」
「……っ!?」
「ひぃっ!?……お、終わるのはお前の方デス!」
「ハァ?」
「この人は私達のヒーローなんデス!」
「切ちゃん?」
「それがどうかしたのか?」
「ヒーローはお前みたいな悪に負ける訳ないんデス!」
「切ちゃん……そうだよね。ヒーローは負けないもんね!」
「そうデスよ調! だから……立ってください! 私達のヒーローさん!」
「信じてるから! ヒーローは負けない……必ず勝つって!」
「「だから、お願い(デス)!! 私達のヒーロー!!」」
「……」
「そんなものは夢物語。これで本当に……終わりだゾ!」
二人の少女の願いを聞き、ボロボロの身体を奮い立たせた男は自分を仕留めようと襲いかかる人形を睨むと……
「……ウォォォォォォォッ!!」
魂からの咆哮と共に生身の右拳を顔に叩きつけた。
「ど……どこにそんな力が残ってたんだゾ?」
その拳は重く、硬く、強く……人形の顔にヒビが入り広がっていく。
「英雄の武器を3つ……教えてあげますよ」
ー1つ、自分を応援してくれる人々の声ー
ー2つ、折れることのない不屈の心ー
「そして…」
男は機械の拳で人形を打ち上げると再び右手を引いて、拳を固める。
「最後にして最強の英雄の武器は! 己の肉体から放つ…拳!!」
「う……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
突き出された拳は、叫ぶ人形の顔を捉え……粉々に打ち砕いた。
「ハァ…ハァ……君達はここでおとなしく待っててくださいね。もうじき救助隊が来ますから」
「はいデス!」
「……貴方は?」
「僕にはまだ戦うべき場所が残っていますから」
「ヒーローさんならきっと大丈夫デス! 守ってくれて感謝デス!」
「うん。ありがとう……ヒーローさん」
「どういたしまして。じゃあ、後は救助隊にしたがってくださいね」
二人の頭を優しく撫でると……二人を巻き込まない為、残る二人のオートスコアラーを倒す為に走り去って行った。
「調…カッコ良かったデスね。ヒーローさん」
「うん。切ちゃん……顔真っ赤」
「そう言う調もデスよ」
「……うん」
「さて! 救助隊が来るまでおとなしく待つするデス」
「そうだね、切ちゃ……ん?」
「あ! ちょっと待つデスよ調!」
「切ちゃん。これ」
「……何デスかこれ? 赤い水晶の付いた首飾りデスか? しかも2つ」
「…さっきのヒーローさんのかも」
「私達二人で、いつか返せるといいデスね!」
「……うん」