二つの白銀   作:天覧会の部長

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新連載です!
お楽しみください!


プロローグ

 早朝。豪奢な天蓋付きのベッドで、一人の少女が目を覚ました。背中辺りまで伸びた燦然と輝く銀の髪とサファイアを思わせる蒼い瞳。まだあどけなさを残しつつも、老若男女問わず虜にするであろう絶世と称してよい美少女。

 

「久しぶりに、早く起きれた・・・・ところで、ヴァーリは・・・・?」

 

 少女は、時間通りに起床できたことを喜びながら、部屋を見渡す。そこでご丁寧に畳まれた寝間着を見つけ、意味を察した。

 

「相変わらず、ヴァーリは朝に強い・・・・」

 

 そう呟いて寝癖を整えながら、彼女は階段を降りた。

 

 

「あぁ、起きたのか。今日は随分と、お早いお目めだな」

 

 そうして、階段を降り、リビングに入室した少女を出迎えたのは、エプロンを身につけ、朝食の支度をしている銀髪の美少年ヴァーリ。

 

「うん、今日は目覚めが良かったから」

 

 早く起床できたことに喜んでいるのか、いつもより若干声を弾ませて答える少女。

 

「そうか、それは何よりだ」

 

 少女の若干弾んだ声を聞き、ヴァーリは爽やかな笑みを浮かべた。

 

「おはよう、ティアナ」

 

「おはよう、ヴァーリ」

 

 二人は、互いに微笑みながら、朝の挨拶を交わした。

 

 

 

―●●●―

 

 

 

「・・・・美味しい」

 

 ただ一言。ティアナはヴァーリの作った朝食を食べて、そう言った。

 それを聞いたヴァーリは、誇らしげに笑う。

 

「フッ、当然だ。なにせ、いつか君の料理の腕を超えることが俺の目標だからな」

 

 シェフ顔負けの腕をもつティアナの料理を超えてみせると豪語するヴァーリ。

 

「うん、期待して待ってる」

 

 その言葉に、ティアナは箸を進めながら、心底嬉しそうに微笑んだ。

 

「あぁ、そうしててくれ」

 

 心の底から微笑むティアナに、挑戦的な笑みを浮かべるヴァーリ。

 

 そんな他愛のない二人のやり取りが、朝食が終わるまでの間続いていた。

 

 

 

―●●●―

 

 

 

「ティアナ。先日、グレモリーのところの『騎士(ナイト)』と一戦交えたそうだな?」

 

 歩き途中。周りから向けられる視線を華麗にスルーしながら、ヴァーリがティアナに質問する。

 

「うん」

 

 ティアナは、短く肯定した。

 それを確認したヴァーリは、今一番気になっていたことを問う。

 

「怪我はしなかったか?」

 

「一切してないよ・・・・ヴァーリ、心配しすぎ」

 

 ティアナはヴァーリからの心配に、頬を膨らませて抗議する。どうやら、自分の実力を信じてくれていないのかと不満に思ったようだ。

 

「それではティアナ。君のこれまでの行いを振り返ってみるといい」

 

 ヴァーリは、そんなティアナの抗議に対して、最も効くであろう言葉を口にする。

 

「う・・・・!」

 

 ティアナはその言葉に思うところがあったのか、ヴァーリから気まずそうに顔をそらした。

 

「俺が心配している理由がわかったか?」

 

 しかし、ヴァーリは顔をそむけることを許さず、ティアナの顔を両手でつかみ、自分の顔が真正面にくるよう固定した。

 

「・・・・はい」

 

 顔を固定され、視線で言い逃れは許さないといったヴァーリの様子に、ティアナは短く肯定の意を示した。

 

「まぁ、いいだろう。実際、あの『騎士(ナイト)』はまだそこまで強くはなかっただろうからな」

 

 割と無茶するティアナの怪我の有無を確認したあと、今度は、グレモリーの『騎士(ナイト)』について言葉を述べた。

 

「『まだ』ってことは・・・・?」

 

 ティアナは、ヴァーリの含みのある言い方の意味を推測した。

 

「あの悪魔の眷属の中で、一番才能に溢れているのは間違いなく彼だ。あのまま成長していけば、いずれ冥界を代表する剣士に成長するだろうな」

 

「!」

 

 ヴァーリの賞賛する言葉に驚愕するティアナ。

 一方ヴァーリは、驚愕するティアナを見て首を傾げる。

 

「そこまで驚くことか?一度手合わせした君なら気付いていると思ったが・・・・」

 

「違う。ヴァーリと同じことを考えていたことに驚いてる」

 

 ティアナはヴァーリの疑問を即座に否定し、ヴァーリは納得した表情を浮かべる。

 

「そうだったな。君が相対して気付かない筈がないか。これは少々うっかりしていたかな?」

 

「ヴァーリはうっかりさん?」

 

「かもしれないな」

 

 微笑むティアナに対し、苦笑するヴァーリ。

 その後二人は、その他のグレモリー眷属の現状に対しての考えを述べながら、学園に登校した。

 

 

 

―●●●―

 

 

 

 ホームルーム前の教室。そこには、アダルトグッズを朝から堂々と机に並べ、エロ談議を行う三人の男子生徒達がいた。

 

 繰り広げられる卑猥な話の数々。それを聞いてはいられないと、女子生徒達は三人組に野次を飛ばす。

 

「女子供は見るな!脳内で孕ますぞ!」

 

 飛んでくる野次に対して、三人組の内の一人である元浜が、聞く限り最低な言葉を口走る。

 それを聞いた女子生徒はさらに気分を悪くし、先程より激しい野次を飛ばす。そんなやり取りがしばらく続いていた。

 

 

「またやってる」

 

 もはやこのクラスの名物となった変態三人組と女子生徒達のやり取りを見て、一言呟くティアナ。

 

「彼らは懲りるという言葉を知らないのか?」

 

「知らないと思うよ」

 

「・・・・だろうな」

 

 これまでも教師陣からの指導を受け、それでも尚彼らが懲りないことを知っているため、ヴァーリも呆れながら納得した。

 

 

「そろそろ席につけー、ホームルーム始めるぞー。あと松田、元浜、兵藤は机の上に出してるもの全て没収して処分するから」

 

「「「はぁっ!?なんでだよ!!」」」

 

 激しい言い合いの中、ようやく教師がやって来てホームルーム開始の号令をかけるとともに、変態三人組に対する罰則を言い渡す。

 

 変態三人組は納得いかないといった様子だが、女子生徒達は逆に、歓喜の声をあげた。

 

「なんでって当然だろうが。俺と上が手を回してなきゃ、お前たち今頃退学だぞ」

 

 未だ納得いかない表情を浮かべる変態三人組にきっぱりと断言する教師。それを聞いた三人は、苦虫を噛み潰したように顔をしかめる。

 

「ま、こいつらの処遇はひとまず置いておくとして、学級委員、朝の挨拶頼む」

 

「あ、はい!」

 

 未だ文句を言っている変態三人組はスルーされ、このクラスの担任の教師と学級委員により朝の挨拶が行われる。

 

 これが、ティアナとヴァーリが所属する二年のクラスの日常だ。

 

 

 

―●●●―

 

 

 

 午前の授業が終わり、ティアナとヴァーリは、なんとあの変態三人組と昼食をとっていた。

 意外ではあるが、この二人。意外にもこの三人組と仲が良かったりする。

 理由は、常軌を逸した性欲を除けば、裏表がなく話しやすい好青年たちだからだ。

 

「なぜだ・・・・!」

 

「なぜ俺達の秘蔵コレクションが奪われなければならない・・・・!」

 

 そんな常軌を逸した性欲さえ除けば、十分モテるはずの三人組は、拳を硬く握りながら叫ぶ。

 

「いや、教室で堂々とアダルトグッズを並べればお咎めを受けるのは当然だろう」

 

 そんな彼らの叫びに、ヴァーリが箸を進めながら正論を叩きつける。

 

「でも!それでも俺達は!」

 

「溢れ出る性欲を!」

 

「抑える事ができない!」

 

 しかし、ヴァーリの正論に対して、三人は事前に打ち合わせでもしていたのか?と思えるほどに息のあった様子でとてつもなく下らない言い訳を叫んだ。

 

「仮にモテたいんだとしたら、多少抑えた方がいいと思うよ?」

 

「「「そっかぁ・・・・・・・・」」」

 

 叫んでいた三人は、ティアナの忠告によってほぼ同時にうなだれた。

 

「・・・・ティアナの忠告は素直に受け入れるんだな」

 

 ヴァーリはそんな三人を見て、自分の忠告に対しては反論するが、ティアナの忠告はあっさり受け入れる違いに対し、ジト目で三人を見る。

 

「当然だ!駒王学園が誇るニ大イケメン野郎より、駒王学園が誇る姫君、ティアナちゃんの方が優先されるに決まってるだろう!」

 

 何故か胸を張ってイケメンより美少女の方が優先されると宣言したのは、兵藤一誠だった。

 

「そういうものなのか?」

 

「あぁ、そういうもんだ!」

 

「・・・・そうか」

 

 何を言っても自らの主張を変えず、話を聞かない三人に呆れたのか、ついに考えることを諦めたヴァーリ。

 

「ヴァーリ、ドンマイ」

 

「あぁ、ありがとうティアナ」

 

 呆れた様子のヴァーリに、ティアナが微笑みながら労いの言葉をかける。そんなやり取りを目の前で見て、悔し気な表情を浮かべる三人組。

 

「ぐぬぬ・・・・!非常に悔しいが絵になるから何も言えねぇ・・・・!」

 

「それが更に悔しさを助長させるッ・・・・!」

 

「イケメンめェェ・・・・!」

 

 もはや殺気じみたものを放出し始めている三人に、ヴァーリとティアナは若干引き気味の表情を浮かべる。

 

 こうして、三人の殺気を受けながら、二人のほのぼのとしたお昼休みは終わった。

 

 

 

―●●●―

 

 

 

「さて、帰るか」

 

「そうだね」

 

 全ての授業が終わり、二人は帰る準備をしながらそう言った。

 

「お!ティアナちゃんとヴァーリはもう帰るのか!んじゃ!また明日!」

 

「うん、また明日・・・・ところで、その原稿用紙の山は何?」

 

 ティアナは、自分達に挨拶してきまた兵藤一誠の机を見て、困惑しながら質問する。

 

「ん?あぁ!担任から反省文書けって言われて渡されたんだよ」

 

 困惑するティアナに対し、あっさりと答える兵藤一誠。彼の周囲を見れば、松田と元浜の机にも、同じ量の原稿用紙が積まれている。

 

「もしや、それを書き終えるまで家に帰れないのか?」

 

「おうよ!」

 

「・・・・そうか。頑張れよ」

 

 気の毒に思いつつも、彼らのこれまでの行為を考慮すれば、よくこれだけの処罰で済ませたな、とクラスの担任の慈悲深さに感心するヴァーリ。

 

 ヴァーリが感心している中、兵藤一誠は何か重大なことを思い出したようで、教室を出ようとする二人に慌てて声をかけた。

 

「あ、そうだ!最近、この町のデカイ倉庫付近で行方不明者が多発しているみたいなんだよ。二人はあの倉庫から家近いだろ?だから気を付けてな!」

 

「あぁ、感謝する」

 

「うん、気を付ける」

 

 兵藤一誠の忠告を聞き、はぐれでも出たのか?と思いながら、気を付けると二人は返事を返し、教室を出た。

 

 

「ヴァーリ、さっきの一誠の話、どう思う?」

 

「間違い無く、はぐれ悪魔だろうな。しかし、この町の管理体制は一体どうなっているんだ?既に犠牲者が出てしまっているじゃないか」

 

 ヴァーリは、この町の管理者を名乗る公爵家の次期当主に対し、愚痴を漏らした。

 

「・・・・多分、大公から出る討伐依頼だけをこなしてるんじゃない、かな?」

 

「それ、余計だめじゃないか。まったく・・・・仮にも領主を名乗るんだとしたら、依頼以外のはぐれ討伐もこなしたらどうなんだ」

 

 ティアナが補足説明をするも、それを聞き、更にこの町の領主に対して評価を下げるヴァーリ。

 

「そもそも、この町に侵入させている時点で領主失格だろうに・・・・」

 

「・・・・まぁ、そうだよね」

 

 この町のいい加減な管理体制に溜息をつきながら、二人は帰路についたのだった。

 

 

 尚、倉庫に居座っていたはぐれ悪魔は、二人によって無事駆除された。

 




ありがとうございました!
また次回!
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