IS~存在しない者の戦い~   作:shin-Ex-

56 / 102
第52話!

今回はルミナさんの前世についてのお話です!

「・・・・まさかあそこまで過酷だったとはな」

「・・・・」

・・・・な、何やら暗くなってしまった・・・・本編にいきましょう。

「・・・・ああ。本編どうぞ」


第52話

side ルミナ

 

「そういえルミナ、あなた自分は私よりも年上だって言ってたわよね?」

 

楯無先輩は思い出したようにハッとして俺に尋ねてくる。

 

「ええ」

 

「それって・・・前世での年齢が関係しているのかしら?」

 

ちょこんと首をかしげながら俺を見る楯無先輩。

 

・・・・うん。可愛らいい仕草ゲフンゲフン。

 

「はい。転生する前の俺の年齢は23歳ですので。転生する前・・・・・つまり前世の記憶は全てありますから精神年齢はそこからの引き継ぎで考えると楯無先輩よりも年上ということになりますね」

 

そう。俺が向こうの世界で死んだのは23歳の時だ。酒もタバコも嗜んでいた成人だったりする。

 

「なるほどね・・・・・あれ?ということはあなたって・・・・・精神的には今38歳?」

 

楯無先輩は少し驚いたような表情で俺を見つめてきた。

 

「いいえ。俺がこの世界に転生したのは1年前です。だから精神年齢は24歳ですね」

 

「そ、そうなの。てっきり・・・・」

 

「・・・・もしかしておじさんだと思ったんですか?」

 

「え、ええ・・・・まあ」

 

楯無先輩は少し申し訳なさそうに苦笑いをうかべて顔をそらした。

 

確かに38歳はおじさんだと思われても仕方がない年齢だが・・・・そう思われたのは流石に少し傷つくな。

 

「えっと・・・・・ごめんなさい」

 

「なんで謝るんですか?」

 

「その・・・・なんか落ち込んでるように見えなくもなかったから・・・・」

 

まあ確かに落ち込みはしたが・・・・よくわかったものだ。ポーカーフェイスには自信があったのだが。それが崩れるほどおじさん扱いに俺はショックを受けたのか?

 

「・・・・・まあ大丈夫です。お気になさらずに」

 

「ならいいけれど・・・・・ところでルミナ。気になることがあるのだけれど」

 

楯無先輩はいやに真剣な表情で尋ねてきた。

 

「なんですか?」

 

「あなたのその常人離れした戦闘技術・・・・そして知識、振る舞い、判断力、冷静さは・・・・・転生する前に身につけたものよね?」

 

・・・・やはり気になるってるのはそこか。

 

まあ自分でもその点は異常であることは自覚していたからな。楯無先輩が気になるのも無理はないか。

 

「・・・・ええ。そうですよ」

 

「転生する前・・・・あなたは一体何者だったの?まさか普通の人間だなんて言わないわよね?」

 

真っ直ぐに俺を見つめてくる楯無先輩。

 

『誤魔化さずに答えろ』。楯無先輩の目はそう訴えてきているように俺には見えた。

 

・・・・とうとうこれを話す時が来たか。

 

前世でも・・・・誰にも話したことがなかったこと。

 

俺の・・・・罪と血に染まった過去を。

 

「・・・・・ナルミ・アルティシア」

 

「え?」

 

「それが俺の前世での名前です。そして俺は・・・・・裏社会の人間でした」

 

「!?それって・・・・・」

 

「・・・・多分楯無先輩が思っているとおりですよ。金を積まれ、それが俺の納得のいく依頼ならば諜報、窃盗、恐喝、詐欺・・・・・そして暗殺、なんでもやりました。俺は前世でそういった暗部の仕事を請け負っていたんですよ。そうやって俺は・・・・・この手を罪と血に染めていました」

 

俺は自分の手を見つめた。

 

その手は・・・・・ドス黒い血に染まっているように見えた。

 

「372もの人を殺し、12の企業を倒産に追い込み、8の組織を壊滅に追い込んだ・・・・・・ナルミは間違いなく世紀の大悪党だったでしょうね」

 

今でも目を閉じれば瞼の裏には犯した罪が映る。

 

苦悩と苦痛・・・・そして死の恐怖で表情を歪め、泣きながら命乞いを連中の姿が。

 

俺はそんな連中を傷つけ、破滅に追い込み・・・・・時には殺した。

 

何度も何度も何度も・・・・・一切の慈悲を与えることもなく。

 

まるで『死神』のように。

 

「・・・・どうして?どうしてそんなことをしていたの?」

 

尋ねてきた楯無先輩の表情は青ざめていた。そして・・・・悲しそうな表情をしている。

 

俺のことを思ってくれているが故にであろう。

 

「・・・・・復讐の為です」

 

「復讐?」

 

「ええ。かつての俺の家族は・・・・・・裏社会の人間に殺されたんです」

 

「!?」

 

「俺の父親はFBIの人間でして・・・・かなり優秀な捜査官だったんです。それ故に・・・・・裏社会の人間から恨まれ憎まれ・・・・邪魔者だったから殺されたんですよ。しかも・・・・・その時たまたま一緒にいた母さんと姉さんも巻き込んでね」

 

俺は目を閉じた。そして瞼の裏に父さんと母さん、姉さんの死に顔が映る。

 

そして・・・・俺の胸に締め付けられるような重い痛みがのしかかった。

 

「俺はその時偶然用事があって一緒にはいなかった・・・・故に俺は苦しみました。なぜ自分も一緒に死ねなかったのだろうかと。苦しんで苦しんで・・・・ひたすらに苦しんでいました。俺にとって家族は・・・・何にも変えられない大切な大切な存在だったから。苦しんで・・・・日々を泣きながら抜け殻のように生きていました」

 

「・・・・・・」

 

「そうやって毎日のように絶望に苛まれて生きていた時に・・・・見つけたんです。父さんの遺書を」

 

「遺書?」

 

「・・・・父はどうやら自分の命が狙われていることに気がついていたようでした。だから・・・・自分がいつ殺されてもいいようにと生前に遺書を残していたようです。そして遺書にはこう書いてあったんです。もしも自分が不自然な形で死んだとしたらそれはおそらく自分を憎んでいるマフィアの仕業であるということが。そして・・・・自分の死にはマフィアと手を組んでいるFBIの上層部の人間が関わっていることが」

 

「そん・・・・な。それじゃああなたのお父さんは」

 

「はい・・・・父さんは同じFBIの人間に裏切られて殺されたんです」

 

俺は拳を握り締めた。手から血が滲んでいるがそんなのはどうでもいい。

 

家族を殺した連中に対する憎しみが・・・・俺の中で蘇ってきた。

 

「それを知って俺は・・・・誓ったんです。家族を殺した連中に復讐することを。そして生涯をかけてそいつらと同類の連中を潰しまくることを」

 

「ルミナ・・・・」

 

「それが自己満足だっていうこともわかっていた。それが罪だということもわかっていた。復讐したところで・・・・家族が戻ってこないことも・・・・充足感が得られないことも・・・・ただ虚しくなることもわかっていた。それでも俺は・・・復讐以外の目的を見出すことができなかったんです」

 

何度も後悔した。

 

もっとほかの生き方ができるのではないかと何度も自分に問いただした。

 

それでも俺は復讐の道を選んだ。

 

それしか俺には・・・・・選べなかった。

 

罪だとわかっていながら、茨の道だとわかっていながら。

 

俺は・・・・手を汚す道しか選ぶことができなかったから。

 

「改めて思いますよ。俺は・・・・・本当に最低だって。本当なら・・・・ここに居ることさえ許されないほどに・・・・・最低なクズで外道だって」

 

「ルミナ・・・・そうね。確かにナルミのしたことは・・・・最低ね」

 

楯無先輩は俺の目を正面から見据えて言った。

 

それはおそらく・・・・彼女だからこその言葉であったのだろう。

 

彼女は暗部用暗部『更識家』の当主『楯無』。彼女もまた暗部でこそあれ、俺のようなクズや外道ではない。決して私怨で動かず、表社会で生きる者の安寧の為に外道を狩る。

 

俺とは・・・・天と地ほどかけ離れた存在だ。

 

だからこそ彼女の言葉は・・・・重く、痛かった。

 

「でも・・・・・それはあなたじゃあないわ」

 

「・・・・え?」

 

俺じゃない?それってどういう・・・・?

 

「いい?それはあなたの前世・・・・ナルミの行ってきたことよ。そして今のあなたはナルミじゃなくて・・・・ルミナなのよ。ルミナは確かに転生して前世の記憶を全て受け継いでいる。でも・・・・それでもナルミとルミナは違う人。たとえナルミが咎人であったとしても・・・・ルミナは咎人ではないわ」

 

「楯無先輩・・・・でも・・・・」

 

「私の知っているルミナは・・・・いつも冷静で大人っぽくてちょっと意地悪で・・・・でも誰よりも他人を思いやって残酷なくらい優しい人。ナルミとは・・・・違う存在よ」

 

「・・・・・それでも・・・・俺は・・・・ナルミは俺の・・・・」

 

「・・・・ルミナ。もういいのよ。あなたは『ルミナ・オーティアス』なの。『ナルミ・アルティシア』とは違う人間よ。だから・・・・・ナルミの罪を背負う必要なんてない。ナルミに縛られる必要なんてない」

 

ナルミに縛られる必要は・・・・ない?

 

「胸を張りなさい。堂々と生きなさい。あなたは・・・・この世界に生きる『ルミナ・オーティアス』なんだから」

 

「楯無先輩・・・・はい。ありがとう・・・・ございます」

 

俺は・・・・ナルミじゃないか。

 

彼女の言っていることが・・・・正しいのかはわからない。

 

ナルミと俺が本当に違う存在なのかは・・・・俺には断言できない。

 

でも・・・・それでも確かに言えることがある。

 

俺は・・・・・彼女の言葉で救われたということだ。

 

(本当に・・・・この人には敵わないな)

 

 

 

 

 

 

 




あとがき座談会のコーナーは作者不調の為お休みします。

ただその代わりと言ってはなんですが楯無さんとフェニスさんの違いを少し載せます。


楯無さん
ナルミのしていたことを許されざる罪だと断言、ナルミのことを咎人だと判断するがそれはあくまでナルミのことであり、今のルミナはその罪に縛られる必要はないと考える。


フェニス
ナルミの犯した罪ごと・・・・すなわちナルミごとルミナを受け入れ、肯定する。


とまあこんな感じです。

私としてはどちらもルミナさんのことを思う感情として間違っていないと思っています。

ただルミナさんは楯無さんの示すものを受け入れたようですけどね。

それではこれで失礼します。

次回をまたお楽しみに!




それと設定を更新しましたのでよければ見てください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。