照りつける日差しの中、買い物の帰路についた翼とマリアは談笑しながら歩いていた。
「急に焼肉パーティなんてね、それも私達の部屋でなんて」
「まあたまには騒がしくなるのも良いだろう。肉も白米も野菜もたんと買ったからな」
「足りるかしら…」
「立花だろう?よく食べるからな、まあ余らせるよりかはと考えれば良いだろう」
「それもそうね」
そうして歩いていると道の真ん中にセミがひっくり返ってポツンと落ちていた。二人は少し固まったあと翼が切り出した。
「…動くと思うか?」
「まさか、ひっくり返ってるじゃない。動くなんてありえない…と思うわ」
「よし、では早足で抜けるぞ。静かに、だが迅速にだ」
「ええ、分かったわ」
二人は無言でスタスタと歩き始めセミの真横に差し掛かった瞬間、待っていたかのようにセミが鳴いて暴れ始めた。マリアはそれにいち早く気づき駆け出すが後ろから服の裾を掴まれて振り向く。そこにはへたり込んで泣きそうな表情の翼が居た。
「どうしたのよ!」
「…腰が抜けた」
「はぁ!?何やってんのよ情けないわね!早く立たないとセミが…」
セミは鳴いてバタバタと暴れながらこちらに近づいてくる、マリアは焦り翼の手を引いた。
「ほら立ちなさいっての!セミがこっち来てるわよ!」
「あ…ああ」
翼はなんとか立ち上がると二人しておぼつかない足取りで走ろうとするとセミがひっくり返り飛び始めた。二人は恐怖と驚きで大声を上げながらその場から逃げ去りなんとか部屋までたどり着いた。
「いや何なのアレ…下手な地雷より効果あるわよ」
「間違いないな…危うくセミに殺されるところだった」
「アンタが情けない真似しなければ良かったのよ」
「ああ、すまない」
「まあ良いわ、少し休みましょう」
二人が部屋で少し息を落ち着けるとマリアが話し始めた。
「さて、そろそろ下ごしらえを始めるわよ。皆来てからでは遅いしね」
「そうだな、下ごしらえなら私も手伝えるだろうか」
「ええ、まずは…」
マリアがソファから立ち上がると目の前にあったテーブルの脚に足の小指をぶつけてしまった。
「ッ!?…くっ…」
マリアがたまらずうずくまるもなんとか立ち上がろうと正面を見る。すると翼がそっぽを向いて震えていた。
「翼…?
「いや…何でもない、何でもないぞ…フフッ」
「今笑ったわね!?」
「クッ…いや…笑ってなど…いないぞ…ククク…」
「笑ってるじゃない!」
「いや…いきなりそんな光景を見せられて笑うなという方が無理だ…ハハハハハッ…お腹痛い…」
「この…ッ!」
マリアは寝転んだまま体を回転させ笑っている翼の脛に渾身の蹴りを入れた。翼はそれをモロに喰らい呻き声を上げて同じようにうずくまった。
「マリア貴様…!」
「フン、良い格好ね翼…ぐぅ…」
「その格好で言うのかマリア…人の事は言えんぞ…つつつ」
二人は数分悶えたのちヨロヨロと立ち上がった。
「準備しなくちゃ…皆が来ちゃうわ…」
「ああ、まだ痛むがそれでも成さねばならぬ事がある…!」
二人は何とか歩き始めるがふとマリアが躓いた。
「きゃっ!?」
「どうしたマリ…あぁっ!?」
結果的にマリアが翼に覆い被さる形で転んでしまった。
「いたた…全く今日は災難ね」
「間違いないな。セミに襲われる二人して痛みに悶えたと思えば次はこれか。とにかくマリア、この状態では動けんからはやくどいてくれ」
「ええ、すまないわ…っ!?」
マリアが立て膝になりふと横を見ると驚きの表情で固まった。翼は不思議そうにマリアに聞きつつ自分もそちらを向いた。
「どうしたマリア、何があっ…た」
そこには驚き、悲しみ、とにかくおよそプラスの感情はないが色々な感情の混じり合った表情の響達…響は未来に目を隠されてて翼達を認識できていないようだが、が居た。
「先輩…まさか先輩が…」
「落ち着け雪音!私が間違いを起こすと思うか!?」
「でもそのカッコ…」
「これは不可抗力であって決してやましい事はない!だから話を聞いてくれ!」
「未来!?見えないよ!離して未来!と言うか翼さん達どうしたんですか!?何かあったんですか!?」
一人騒ぐ響をよそに今度は切歌と調が話し始めた。
「マリア…」
「マリア…どうしちゃったんデスか…」
「だから貴方達も落ち着きなさい!ただ転んだだけよ!」
「本当に…?」
「本当よ!信じて!」
ワァワァと騒がしくなってる中目を塞がれている響が「みんな!」と声を上げて一度その場を鎮めた後話し始めた。
「よく分からないけど翼さんもマリアさんもきっと何もしてない、大丈夫だよ!みんな疑わないであげて!信じる事を、諦めないで!」
響がそう言うと少し沈黙が続いた後どっと笑いが起こった。そしてその後クリスが息を切らせながら話し始めた。
「ハッ…本当お前バカだな…その格好で何言ってやがるんだ本当に…まあ良いや、なんかどうでもよくなっちまった。なんかすいませんね先輩」
「ああ…分かってくれたのなら良いんだ」
「ごめんなさいデスマリア」
「ごめんなさい…」
「ええ、良いのよ」
そして皆は和気あいあいと鉄板を囲み焼肉を始めた。