寝オチしたらギレンになっていたが 何か?   作:コトナガレ ガク

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第21話 ザーン会戦

「連邦艦隊縦陣のまま突撃してきます」

 さっきの演説の手応えはあった。流れは明らかに此方に来ている。そんなこと向こうだって分かっているだろうに引く気配はない。

 まあ分からなくもない。核を使う大義を此方に与えて、おめおめ帰っては下手すれば処刑される可能性だってある。ここで是が非でもこのギレンの首を取らなくては帰れないだろう。

 退路を断たれた敵は恐ろしい力を発揮する。

 だが見方を変えれば引くに引けない猪突猛進はおいしい獲物だ。

「艦隊、ヤマトを頂点にして逆円錐陣」

 突撃してくる敵の周りを包囲して磨り潰してやる。普通ならこんな死地に飛び込んでくるような馬鹿はいない。だが引くに引けない連邦艦隊にとっては、逃げるではなく己を囮にしてくる一発逆転という餌の誘惑には逆らえない。

「閣下」

 ドレンが覚悟を決めた顔でこちらを向いてくる。

「なんだ」

「閣下がいなくても囮の役目は果たせます。秘密裏に退艦して下さい」

 まあそれも立派な戦術。

 総大将をここで失うわけにはいかない以上、まっとうな兵法。

 そしてその忠誠心。

 分かる分かるが、今は聞くわけにはいかない。

「ここで兵を見捨てたら誰もギレンに付いてこなくなる。

 その進言は却下する」

 そんなことをすれば、後日必ず口だけ総大将と陰口を広めてくる陰険婆がいる。

 まあそれがないにしても、いざとなったら兵を置いて逃げる総大将では誰も付いてこなくなる。やるなら誰もが納得する状況がいる。今は残念ながらジオン側が押せ押せムード逃げて言い訳が出来る状況じゃない。

「しかし閣下・・・」

「くどい」

 済まんドレン。君の忠誠心、後で報いるから今は堪えてくれ。

「ならせめてノーマルスーツを着なさい。

 部下を安心させるのも上の努めよ」

 セーラさんが横から進言してくる。

 ノーマルスーツかここでもし着れば、ギレンのノーマルスーツ姿初披露じゃないか? ガノタが喜ぶレアシーンだな。

「そうだな。手伝ってくれるのか?」

「勿論です。私は秘書ですから」

 セイラさんがなぜか澄ましたドヤ顔で応える。

「後、着替えの手伝いが終わったら君は退艦するがいい」

 セイラさんは軍人ではないここで命を張る理由はない。それにまだ年端も行かない少女、逃げたところで誰も後ろ指を指さないだろう。

 寧ろジオンの血を引く姫としてこれからのスペースノイドの為にもギレンより生き残るべき人だと思う。

「断ります。私は貴方を見定める義務があります」

「そうか」

 当然の如く拒否するセイラさんに妙に納得してしまう俺だった。

 

 断崖から飛び降りるレミングスのように死地に飛び込み磨り潰されていく連邦艦隊。

 我がジオン艦隊は艦隊指揮艦ヤマトの本領を発揮し芸術のような艦隊運用を発揮して連邦艦隊の頂点への突破を阻止し続けている。

 優位に戦況は進んでいる。

 だがなぜか不安が消えない。

 この不安は何だ?

 そういえば元々この作戦を実施する動機になったのは何だっけ?

 !

「至急、ザク強行偵察型改に連絡。敵MSを探させろ」

 核の一件ですっかり失念していた。ザムだザム。連邦製ぱちもんザクは何処に行った?

 核まで使ったんだ出し惜しみしているとは思えない。

 指示を出して数分。とても長く感じる数分が過ぎて報告が入った。

「後方より接近するMS部隊を発見。

 その数20」

 やられた。

 これで立場は逆転。ヤマトは頂点、後方に護衛する艦はない。前に逃げようにも連邦艦隊が蓋をして逃げ道を塞いでいる。

 どうする?

 前門の虎後門の狼。このままでは後ろからジオン艦隊は磨り潰されていく。なら反転してMS部隊に特攻するか?

 正直、ヤマトじゃMS20機の相手にならないというか、グワジンだって無理、ドロス級でないと無理だ。なら艦隊を半分に分ける。それこそ愚策中の愚策。

 正直死にたくはない。

 だがここで一人艦隊を見捨てて脱出しては敗戦の責任取らされて頭パーンだ。

 何か何か策はないのか?

 ぐっぐっぐっぐ。

「閣下」

 あのセイラさんが慌てたように呼び掛けてきた。

「どうした?」

「後部ハッチが開いていきます」

 見ればヤマトの後部ハッチが開いていくのが見える。

「誰だっ」

 まさかヤマトに一機しかないMSをかっぱらって逃げる不届き者がいるというのか?

「ギレンさん、僕に任せて下さい」

 俺の呼び掛けに応えるタイミングで艦橋のモニターにアムロが写しだされた。

 そういえばアムロはいじいじした根暗ニートのイメージがあるが、ファーストのころから追い詰められると覚悟を決めて男らしい行動を取る少年だった。

 まさかこの危機に立ち向かおうというのか?

「アムロ君、無理だ君はまだ訓練生だ」

 今回は少しは世界の空気を体験させようとガンダムⅡ号機と共に連れてきていたのだ。だが一応まだ訓練生ということでザーンに補給艦と共に残してきたはずなのに、忍び込んでいたのか?

「さっきので分かりました。連邦は潰さないといけない」

 演説に感銘してくれたんだありがとう。でもそんな簡単にアジに乗っていたら将来碌な大人になれないよ。

「しかし、君をこんなところで失うわけにはいかない」

 君はじっくり育ててニュータイプに覚醒して貰い、改革の旗印アイドルになって貰う予定なのに。今のアムロでは、いきなり実戦いきなり20機の相手は無理だ。

「心配しないで下さいギレンさん。僕は男なんです」

「辞めるんだ、アムロ君」

 格好いいけど辞めて。

「アムロ、ガンダム行きまーす」

 俺の制止を振り切りガンダムⅡ号機は発進したのであった。

 


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