寝オチしたらギレンになっていたが 何か?   作:コトナガレ ガク

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第23話 第一次ルナツー会戦

 意図してなかったであろうがコロニーに向かって核を放った。例えそれがギレンを狙ってものであろうともコロニーに与えた衝撃は大きかった。

 事実、ザーン会戦後ザーンは表明こそしないが随分とジオンに好意的になった。今までのように脅されて仕方なくでなく、ジオン艦隊に対する補給や整備を積極的に行ってくれるようになった。更には今まで拒否していたジオン兵のコロニーへの上陸すら許可してくれた。おかげで兵士は長い艦内生活でたまった色々なものを解消出来、十分に休む事が出来た。

 流れは来ている。

 このいい流れに乗って調略に力を注げば、軍事同盟すら夢じゃ無い。その意味でも時間を稼ぐ意義は大きい。

 というわけでのちに再建したジオン艦隊で行う予定のルナツー攻略戦の予行戦、第一次ルナツー会戦勃発です。

 ジオン側はザーン会戦で損耗少なく補給や整備を十分したとはいえ半個艦隊以下。

 対してルナツーはもう後がないとばかりに残存兵力二個半艦隊のうち半個艦隊を予備兵力としルナツーに残し、二個艦隊を差し向けてきた。

 兵力差四倍。

 しかも今回此方には切り札と言えるニュータイプ部隊は無い。

 ザクはいるが、向こうにもザムがいる。

 対MS戦も研究されているだろう。

 ルウムほどの圧倒的アドバンテージはもう望めないだろう。

 しかも連邦は奇策無しの王道の横陣で攻めてくる。

 正面からぶつかれば正直ジオン艦隊に勝ち目は薄い。

 正直言えば、180°反転して撤退するべきだろう。だが今回の作戦に撤退の二文字は許されない。何があろうと計画通りやるしかない。なぜならエースはもう射出され、後戻りが許される事無くルナツーに向かっているからだ。エースとはいえ、たかが五人と半個艦隊を天秤に掛けるなど愚かと断ぜられるだろう。

 だがそれは浅はかである。エース五人が見事玉砕してくれれば、まだいい。だが万が一にも見捨てられたと思い連邦に投降したらどうなる?

 決死の覚悟で挑んだ勇士をギレンは見捨てたと世界中に広まる事になる。

 そんなことになったら折角のギレン正義の帝王イメージ戦略が台無し。いい流れも一気に逆流となってしまう。

 そうなれば史実の通りジオンは孤立。孤立から追い詰められ、核攻撃毒ガスコロニー落としと悪逆の三連コンボを放って、頭パーンである。

 ここまで来てそんな未来はご免被る。

 シャアに後を託して悠々自適の楽隠居を夢見て今日を歯を食い縛って頑張る。

 

 迫り来る連邦艦隊に対してジオンも横陣で迎える。

 そして刻々と縮まる両軍の距離。

 胃がきりきりするほどのプレッシャー。

 強行偵察型ザクⅡ改から次々とデータが送られてくる。

 交戦距離は目前、込み上がってきた胃液を飲み込んで立ち上がってばっと手を振る。

「全艦180°反転。離脱する」

 

「ティアンム提督。ジオン艦隊180°反転して逃げていきます。

 どうしますか?」

「ここにきてまだ奇策を弄するか。

 だが別働隊が無い事は入念な偵察から判明している。小賢しい策に惑わされる、惑わされればギレンの術中に嵌まる。

 全艦このまま加速ジオン艦隊を猛追する」

 

「ギレン総帥。連邦艦隊スピードを上げて追撃してきます」

「ミサイルで牽制しろ」

 正直ジオンの艦船は前に攻撃力を全フリで後ろに回られると如何ともし難いものがるが、ミサイルなら後ろを向いたままでもコースを設定しておけば後ろに向かってくれるので連邦艦隊に攻撃が出来る。

「この距離では撃墜されるだけですが」

「かまわん。後の事は考えるな撃ち尽くせ」

「全弾ですが!! ですが総帥、まだ序盤で撃ち尽くすのは・・・」

「重ねて命じる。全弾撃て」

 進言にあったようにここでミサイルを撃ち尽くすのは、後の艦隊戦を考えれば愚策。だがそれはこの作戦の真の意味を知らないが故のこと。

 そもそも此方にはまともに艦隊戦をする気はない。

 潜入工作がしやすいように、ギレンという餌で此方にルナツーの目を集めておければいいだけのこと。つまり適当に逃げていてもいいのだ。

 寡兵で挑む必要など全くない。

 さ~て鬼ごっこの始まりだ。

 

「ミサイル多数来ます」

「慌てるな。この距離だ。余裕で撃墜出来る」

「ミサイル全弾、撃墜成功」

「よし、全艦再び全速前進」

「提督、前方に閃光」

「なにっ」

 

「ギレン総帥。ハイパーメガ粒子方命中。サラミス一隻中破、駆逐艦撃沈」

「ほう」

 ハラスメント攻撃で撃ったのに当たったのか。ラッキーだな。

「よし、これで敵の足は鈍る。速度は維持したまま後進」

 本当に撤退ならここで全速力だが、振り切っても駄目。適当な距離を維持する事こそ大事。

 変わらず後進し続けるジオン艦隊。

 本来ならヤマトはハイパーメガ粒子砲を撃ったばかり、暫くは動けず置いていかれる嵌めになる。別に「ここは俺に構わず逃げてくれっ」とカッコを付けたわけじゃ無い。

 ヤマトも艦隊と共に後進している。

 どうやって?

 いつの間にパワーアップしてハイパーメガ粒子砲を連射出来るようになったわけじゃ無い。ヤマトは動けない、だが僚艦がいる。現在ヤマトはムサイ3隻に曳航されている状態なのである。これなら逃げる事を気にせず撃てる。幾らでも嫌がらせ攻撃が出来るというものよ。

 

 付かず離れずティアンムをからかっていると、一機極秘裏にルナツーの監視に向けていた強行偵察型ザクⅡ改から待望の連絡があった。

「強行偵察型ザクⅡ改から連絡。ルナツーに閃光を確認とのことです」

「やったかっ」

 流石ジオンのエース達。見事ルナツーに潜入して爆弾を仕掛けてくれたか。

 くっく、何処を爆破した? 宇宙港か? ザム工場も破壊していてくれるともっと嬉しいが。

 兎に角作戦は成功。これでジオン艦隊再建までの時間が稼げる。後はルナツー付近に先行させておいた駆逐艦シマカゼが派遣したエース五人を回収すればミッションコンプリートだ。

 ちなみにシマカゼはチベより前の前時代の艦でMS搭載能力は無い。ただ足は速いので回収用に適任として派遣した。

「総帥。強行偵察型ザクⅡ改から映像来ました」

「うむ」

 セイラさんが手際よく映像をメインモニタに映してくれる。大分秘書らしくなったな。

 送られてきた映像からルナツーに巨大な火柱が上がっているのが分かる。そしてそれが消える寸前、先程の火柱がマッチの火に見えるほどの強烈な閃光が輝きルナツーの一部が砕け散ったのだった。

 はれ? 


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