寝オチしたらギレンになっていたが 何か?   作:コトナガレ ガク
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第二十五話 妹 恋人 親友

 シャアが敬礼をした後此方に歩いてくる。

 それに合わせて俺も席から立ち上がり前に歩いて行く。

 シャアが僅かに緊張したのが覗える。

 敵意を示さないようにゆったりと俺はシャアの前まで行くと両手を広げ、この胸にシャア抱きしめた。

「総帥!?」

「私は感動している。

 あの幼かったキャスバル君がまさか身分を隠してジオンのために戦ってくれるなんて私は嬉しい」

「何を言っているのですか?」

 俺如き簡単に投げ飛ばせるのだろうが、ギレンの真意を掴めずシャアは戸惑っている。

「ふふっおじさんは幼かったころのキャスバル君と遊んであげたこともあるんだよ。分からないわけが無いじゃ無いか」

 俺はゆっくりとシャアの仮面を外してしまう。

 シャアも伏兵が配置されているだろうと警戒して、ここで抵抗するような真似はしない。

「知っていて私がジオンのために戦っていると」

 素顔を晒したシャアが鼻で笑って俺を睨んでくる。

 ハッキリ言って怖い、逃げ出したい。

「勿論復讐のためだとは分かっているよ」

「なら」

 シャアに殺意が漲り出す、せめてギレンだけでも殺しておこうかと。だがそんな短慮はシャアの理性が止める。ザビ家を根絶やしにするチャンスを掴むため、辛うじて堪えている。

「君のお父上は、愚鈍な大衆に殺された。

 どんなに偉大な理想を唱えても夢物語と笑った大衆に殺された。

 愚かな大衆と戦うということは連邦と戦うと同義でありジオンの為に戦うと同義だよ」

 ある意味嘘では無い。

 もし全てのスペースノイドがダイクンの理想を理解して立ち上がれば地球連邦から独立を勝ち取れたかも知れないが、その影響はサイド3のみに留まり結局はそうならなかった。

 独立宣言からの連邦による経済封鎖からくる閉塞感の末の悲劇。

 その悲劇からの醜い権力闘争から生み出されたのが、復讐鬼シャア。

 だがそんなシャアもガルマを謀殺したことから目が覚め、ララァと出会い癒やされている。キシリアを抹殺したのは、まああの土壇場であまりに醜い醜態を晒したからだろう。

 だが今はどうだ?

 ギレンは悪烈な行為には一切手を出していない。

 これなら多少復讐を躊躇うはず。

 その僅かな猶予の間にシャアを正気に戻す。

 その為には道化でも何でも演じて見せよう。

「大衆」

 多少は思うところがあるのだろうシャアの殺意が少し和らいだ。

「そう君がこのまま愚かな大衆と戦うというのなら、明日の戦勝祝賀パーティーで君の正体を明かし、お父上と同じ政治家と成って貰う。

 そしてゆくゆくは私の代わりに宇宙世紀を導いて貰う」

「本気ですか?」

「本気だとも」

 俺はシャアの目を真っ直ぐ見て語る。

 シャアほどの男なら俺の本質をニュータイプ能力で見抜くだろ。

 そう俺の本質は小市民。

 こんな百億に迫る人類を導いていくなど荷が重すぎる。

 戦争をしている間はある意味楽だよ。大衆をアジってればいいだから、だが本当に大変なのは勝ってしまった後。一人で全人類を導くなど神でも無ければ無理。

 どっかで引退してハーレムでも作って暮らしたいのが本音だ。

「嘘は言ってないようですな」

「軍事では相手にならなかったが、政治ではガルマがいいライバルになるだろう。切磋琢磨がんばってくれ」

 俺凄い、良く笑って話し掛けられている。

 今のシャア、凄く怖い。やはり一人殺らないと憑き物は落ちないか。

 だが、だからといってガルマを生け贄に出すような真似はしない。キシリアなら喜んで出すけど。

 兎に角シャアには癒やしが必要。

「ギレンおじさん」

 この言い方、この座興に乗る気になったか?

「なんだい」

「我が儘を言わせて貰えば、もう少しパイロットを続けたいのですが」

「シャアとして生きていくということか」

「はい。もう暫く宇宙世紀を見定めたいです」

 そのまま気楽なパイロットクワトロコースは、シャアにとっては幸せなのかもな。

 それなら喜んで、百式を開発してあげようじゃ無いか。まあ、ガンダム同様、中身はザクになるけど、サザビーに乗るよりかは未来は明るい。

「分かった。英雄として名を売るのもいいことだ。

 だが、その前に君に合わせたい人がいる。

 入りたまえ」

 シャアがやはり伏兵がいたかという顔になる。

 後ろのドアが開かれセイラさんが入ってくる。

 シャアの顔が本気で驚きで固まる。そして謀ったなと一瞬だけど俺を睨み付けた。

 まあ、なんだな。こんな再会をしたら妹を人質に取られたと勘違いするよな。

「兄さん」

「アルテイシア」

 色々思うところはあるだろうが、シャアは胸に飛び込んでくるセイラさんを拒絶しなかった。セイラさんは同じ兄妹でも復讐に取り憑かれたりはしなかった。きっと一緒にいればシャアの心を癒やしてくれる。

 そしてこれは第一弾に過ぎない。

 第二弾は、ララァ。

 第三弾は、アムロ。

 妹、恋人、親友のトリプルコンボでシャアの心を癒やしてみせる。

 まあ逆にその三人がシャア側に取り込まれる可能性もある諸刃の刃でもあるが、その三人ならシャアの凶行は止めてくれる。最悪でも俺から権力を奪うくらいで許してくれるだろう。

「部屋は用意させてある。今日は二人でゆっくりと過ごすがいい。

 では明日」

 そのままギレンが信じられなくて、連邦に亡命しても一向に構わないからね。

 シンプルに敵になってくれるのなら、それはそれでやりやすい。見張りは全く置いていない。その気になればシャアなら易々とジオンから逃げれるだろう。

 さて賽の目はどうなるか?








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