寝オチしたらギレンになっていたが 何か?   作:コトナガレ ガク

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第31話 ガンダム大特集

 ジャブローの分厚い岩盤を突破するのが困難という理由もあるが、巧妙に隠されていて何処にあるか分からないジャブローだからこそ、コロニー落としなどという広範囲殲滅兵器を使用する必要があった。

 だがそんなことあるのか? 正義のヒーロー戦隊の小規模な秘密基地なら話も分かるが、地球連邦軍の本部かつ宇宙船の建造ドックまである大規模な基地を隠すなんて可能なのだろうか。資材の搬入も凄いだろうし、戦時中なら我慢出来ても平時にあんな穴蔵に籠もりっぱなしで我慢出来るはずが無く人の出入りだって結構合ったはずだ。

 連邦はミノフスキーを越える隠蔽技術を持っているというのか?

 だがその連邦驚異の隠蔽技術も、ガノタである俺は通用しない。ガンダム百科、ガンダム大辞典、ガンダム大特集などを全巻揃え読破した俺の前にはジャブローの位置など丸裸に等しい。

 いつの時代も情報を制する者が戦いを制するというわけで、チート技でジャブローの位置を知っている俺の指示のもと神の杖がジャブローに落下。衛星軌道上から肉眼でも見えるほどのキノコ雲が伸び上がった。

 舞い上がった塵で地球が寒冷化しないかと心配にもなるが、今は進むのみ。

 ミノフスキー粒子でレーダーが塞がれ、爆音で音響探査も乱され、舞い上がった砂煙で視界すら塞がれた。

「よし、これで敵の目は完全に塞がれた。この機を逃すな、第一次降下部隊降下開始」

「第一次降下部隊一斉降下を開始して下さい」

 オペレーターのおねーさん達の管制でコムサイ部隊は地球へ降下を始めるであった。

 

 コムサイからグフと随伴機ザク二機が降下し、対空砲火に晒されること無く地表に無事着地する。

「連邦はまだ混乱から立ち直れ無いと見える。

 今のうちに探索に行くぞ」

「「はっ」」

 ラルの指示に古参の部下であるクラウン、アコースが返事する。

 第一次降下部隊の目的として、後続のために対空兵器を潰すのも重要で部隊の半数以上がその任務に当てられる。だが、ラル他の少数の部隊には別の任務が与えられていた。それはジャブロー内部への進入路の発見である。

 残念ながら、数々のガンダム特集でも基地の全容を記した正確な地図は記載されてなかったというか、某B某Kの陰謀でぼかしておいた方が話を作り安いとの狙いもあるのだろう。故に潜入してみるまで詳細は確定しないシュレーディンガーの猫のような存在の基地なのである。

 初めての地球でしかも戦いながらで広大なジャブローにおいて偽装された入口を少数の部隊で見付け出せる訳ないと思うだろう。俺も何もそんなブラック会社のブラック上司のむちゃぶり命令を出したつもりは無い。

 入口を見付けられないなら作ればいい。ラル達の任務は神の杖の落下地点に行き狙い通りジャブローの岩盤を貫いたか確認するだけ、実に簡単なお仕事。まあ空いていなければ、その時には同じ箇所に神の杖を打ち込む為にガイドビーコンを出して貰い、急いで退避して貰う危険極まりないお仕事に早変わりするが。

 本当は上空から確認出来れば楽なのだが、降下時には対空砲から守ってくれた砂煙が邪魔をして、どうしても地上から確認するしか無いのである。

 

 ラル達は妨害も無く神の杖落下ポイントに程なく到達すれば、木々を吹き飛ばし月面と錯覚しそうな無機質で巨大クレーターとその中央部に穴がぽっかり空いているのを発見した。

「ラル少佐、いきなりビンゴですね」

「慌てるな、あの穴が本当にジャブローの地下基地に続いているか降下して調べる。

 アコースは連絡員としてここに残れ」

 全機で穴に降下しては、電波はおろかレーザー通信とて不可能になり宇宙にいる部隊に発見の報を送れなくなってしまう。危険だがどうしても連絡員を残しておく必要があるのだ。

「了解しました。お気を付けて」

「うむ」

 ラルのグフが穴に飛び込む。

 暗闇のトンネルを抜けると、巨大な空洞が広がっていた。その空洞の中には道路が引かれビルが建ち並ぶ。

 そして移動中の61式戦車中隊を捕捉した。地上での迎撃を諦めて地下での迎撃態勢を取ろうとしたのだろうが、一歩遅かった。

「当たりだ。

 クラウンはアコースに連絡。

 我虎の穴発見」

「了解です」

「頼んだぞ。

 私は後続のため少し掃除をしておこう」

 偶然ではあるが戦車部隊の頭上を取った形のグフの左手の指マシンガンが唸る。

 ガンダム相手では火力不足でも戦車相手なら必要十分な火力。たちまち戦車部隊は弱点である上部からの攻撃を受けて火の手を上げていく。

 そして懐に飛び込めば、ルナチタニウムすら引き裂くヒートロッドが唸り残りの地を這う戦車を切り裂いていく。

 対MSに開発されたMSではあるが、皮肉にもその武装はMS相手より対戦車戦で活躍する。そして巨大とはいえ複雑な形状の洞窟内において忍者の如く立体運動を展開するグフに戦車やヘリは翻弄されるばかりで、効果的な対応をすることなく迎撃されていく。

 ドムの開発が間に合わなくてしくじったと思っていたが、ことジャブロー内の戦闘に置いてならグフが最適解だった。今度大平原での大規模戦闘、そうオデッサ作戦でも無い限りドムは必要ないかもな。

 

「ギレン総帥。

 我虎の穴発見とのことです」

 セイラさんが俺に待ちに待った報を知らせてくれ、直ぐさまモニターにドズルを呼び出す。

「よし、ドズル」

『おう兄貴』

「いよいよ本番だ。

 大丈夫か」

『任せておけ兄貴。兄貴ばかりに活躍させていたら軍人の名が泣くからな』

「よし、これより第二陣はジャブローへの進入路周辺に降下。ジャブローを内部から蹂躙しろ。

 ドズルこれより降下部隊の指揮を委任する」

『了解した。

 降下開始』

 とうとう地上攻略の本体HLV部隊がジャブローに降下していく。

 もはや地上はドズルに任せるしか無い。

 宇宙での戦と違い地上の要塞戦は泥臭く短期で落とせるとは思っていない。長期に渡る籠城戦になるかも知れない。どうしても長期にわたり兵士を鼓舞し率いる大将がいる。本当は俺が地上戦を指揮したいが、流石に長期にジオンの政治に空白を産めば雌狐が何をするか分からない。

 誰かに任せるしか無かったのである。

 任せられる部下、信頼出来る肉親が居て良かったとつくづく感じた。

 後は俺が出来ることをしよう。

 第二陣が降下しきるまでこの宙域を死守する。


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