寝オチしたらギレンになっていたが 何か?   作:コトナガレ ガク

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第41 勝利への扉

 最善の策はある。

 勝利への扉を開くことは出来る。

 後は実行するかしないかだけ。

 最善策、それは何もしないだ。

 ジオンは地上から手を引き地上は地上人同士で勝手に戦わせる。

 いや少しは手を出す。

 死の商人の如く不利な陣営に兵器を売りつけ軍事バランスを調整する。

 いずれ経済は破綻し文明の後退があるラインを下回ったとき、膨大な人口を支えることは出来なくなりダムが決壊するかの如く地上世界は一気に崩壊する。

 戦うこと無くスペースコロニーの勝利が転がり込んでくる。

 普通ならこんなうまくはいかない。

 敵も馬鹿じゃ無い此方の真意に気付き手打ちを模索する。

 だが今回に限り敵にジャミトフが居る。

 ジャミトフは此方の真意に気付いてなお此方の策に乗ってくる。

 なぜなら「戦争を起こし地球の経済を破綻させ地球上の人類を滅亡させる」ことこそジャミトフの真意だから。

 勝利への扉は開かれる。

 だがそれは何十億というアースノイドを殺すのと同義。

 ギレンならばこんな重い十字架だろうが背負えるだろう。

 だが頭脳はギレンでも心は平凡日本のサラリーマンの俺では背負えない。

 こんな十字架を背負って南国コロニーで楽しく引退人生を過ごせる訳が無い。

 ならば下策と分かってはいるがやるしか無い。

 失敗すれば世界を征服しようとした愚かな王と歴史書に名を刻まれる。

 だがそれがどうした。

 何十億には子供だって居る。

 ならばやるしかない。

 俺は決意を固め会議に挑む。

 

「基本方針として正統連邦との連携は維持する」

「それがよろしいでしょうな。それで他の勢力への対応はどうします?」

「エゥーゴは様子見とする。向こう側から同盟の要請があれば前向きに検討する」

 ブレックスはコロニー派だとして、この人は最終的に何をしたかったのか今一分からないんだよな。いや地球環境を改善したいんだろうけど、具体的な手段については何も語らずに退場してしまったし、ジャミトフみたいにシロッコが語るということもないので本気で分からない。

 その手段によっては手が結べない場合もある。

 独裁反対ザビは全員ギロチンだ、とか言われても困るわけで。

「アフリカ連合に関しては正統連邦との兼ね合いを見つつ、資源と引き替えに軍事援助もプランの一つとして検討する」

 地球を連邦で統一したい正統連邦にとっては、連邦の派閥争いに近いティターンズやエゥーゴは許容出来ても連邦からの完全独立を目指すアフリカ連合は認められないだろう。

 だが彼等が所有する鉱山資源はジオンとしても見逃せない。チャンスがあるのなら唾を付けておくべきだ。

 まあゴップと狸の化かし合いをするしかないか。

「ティターンズの支配地域及びユーラシアに関しては向こうから仕掛けてこない限りジオンからも攻撃はしない。

 地上での戦闘は基本正統連邦軍に任せ、地上に降ろした兵士達を宇宙に帰還させる」

「なんと地上から手を引くのですか!!」

 不満そうな声が幹部から上がるが無視。

「そして宇宙艦隊を再編成する。その兵力を持って宇宙に上がったティターンズどもをまずは一掃する」

 ジオンの兵士の三分の二近くがジャブロー攻略戦のために地上に降りていて、宇宙には防衛する為の最低限の兵員しか無い。まさにジャブロー戦は原作のような嫌がらせ程度の攻撃では無い、ジオンの力を結集した総攻撃だったのだ。

 つまり宇宙で攻勢に出るには地上に降ろした兵士をまず宇宙に戻す必要がある。 

 本当にジオンには兵が無い。

「おおっ」

 会議室が騒然とし俄然活気が満ちてくる。つくづくジオン国民は血の気が多い。

「まずは制宙圏の完全掌握、その上で再度地上侵攻を・・・」

「閣下」

 本来ならこの会議に出席する資格の無いセイラさんがノックもせずに会議室に飛び込んできた。

 このパターン、凄く嫌な予感がする。

「どうした?」

 俺は落ち着いてセイラさんに尋ねる。

「サイド2に駐留していたティターンズ艦隊がソロモンに向けて進軍を開始しました」

「えっ」

 どうやら俺は一手遅かったようである。


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