寝オチしたらギレンになっていたが 何か?   作:コトナガレ ガク

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第8話 俺ギレンの始まり

 気がつけば俺は宇宙を漂っていた。

 ガトリングガンの弾は尽き。

 ヒートサーベルも折れていた。

 ガンダムの装甲には無数の傷跡があり、ルナチタニウムでなかったらとっくに爆散していただろう。

 周りにいたはずのエルメス隊もなく、代わりに無数のトリアーエズに囲まれている。

 終わったか。

 それでも大決戦中に油断して実の妹に頭パーンされる最後よりは多少ましかな。

 いや素直に名乗って降伏すれば、虜囚として命だけは助かるかも知れない。

 

 駄目だ。

 それだけは駄目だ。

 成り代わってしまって始まった戦争とはいえ、ここまでで何人死んだ?

 綺麗な戦争を目指したところで死人は出ている。

 ギレンを信じて戦った兵士、ギレンを憎んで散った兵士。

 それらに報いるため、俺は最後までギレンであり続けなければならない。

 ギレンとして駆け抜けることだけが贖罪。

 覚悟と共に胸の内から熱い物が込み上げてくる。

 

 矢尽き刀折れ、それで闘志は死なず。

 せめてギレンの名を勇士として歴史に刻んでやる。

 ガンダムよ、最後まで俺に付き合ってくれ。

 ああ、こういうとき人型だと素直に感情移入できるな。

 俺の呼び掛けに、ガンダムの目が光り、ボロボロの腕が動いて、まだまだ戦えると応えてくれる。

 人型だ、武器はなくても拳があり蹴りがある。最後まで戦える。

 俺が最後の特攻をしようとしたその時、俺の前を赤い彗星が横切った。

 遅れて爆散していくトリアーエズ。

 あの三倍速くピンク色、もっもしかしてシャアなのか?

『其処のパイロット良くやった。その勇気には賞賛を送る。後は私に任せたまえ』

 格好いい声が流れてくる。

 そして俺ではあり得ない軌道を描いて三倍早く敵を蹴散らしていく。

 ガノタからマザコン・シスコン・ロリコン疑惑の三暗刻でネタにされるが、そういった偏見を捨てて見れば確かにシャアは格好いい。男でも惚れる。

 しかし、シャアはガンダムにギレンが乗っているとは知らなかったようだ。自分が復讐相手を助けたなどと知ったら、どんな顔をするのやら。

 しかし今まで一杯一杯だったので忘れていたが。ギレンをする以上、シャアの取り扱いには気をつけないとな。

 暗殺するか。

 飼い殺すか。

 兎に角絶対にキシリア配下にだけはしてはいけない。

 俺はシャアの取り扱いについて考え始めているうちに大ターンを決めたドズルの艦隊が応援に駆けつけ、その数時間後連邦は敗走していった。

 こうして戦力比1:6でもルウムでジオンは勝利したのであった。

 だがある意味ここまでは、史実をなぞっただけとも言える。

 最後の勝利を掴み取る為、ここからは史実にない未知の道を切り開く。

 ここからが俺ギレンの始まりだ。


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