俺の記者会見から数日イギリスやイタリアと言った他のIS大国からも同様な記者会見が行われアメリカの劣勢は明らかになった。そこで急遽6大国限定であったIS特別委員会はISを自国で開発している全ての国が参加する平等な選考をすることになった。
そして数日後都内の高層ビルの一室でIS特別委員会が行われることになった。
「大丈夫、ダイチ君?」
「ええ、何とか…」
こういう場は旦那様の付き添いで来たことは何度かあるのだが今回は自分が主役ということを意識すると緊張せずには居られなかった。
「あんなこと平気でしといて変なとこで肝が小さいんだから…まあ、気楽にいきましょう。お水いる?」
「もらってもいいですか?」
「はいどうぞ」
楯無さんから水を受け取りペットボトルに残っていた半分ほどを一気に飲み干す。
「ちょっと落ち着きました」
「そりゃそうでしょ。おねーさんとの間接キスの感想はどう?」
「そういうこと気にするのは中学生までですよ」
「おっ、いつもの調子が戻ってきたわね」
そう言って楯無さんは笑う。ほんとどんな状況でも人の気持ちに機敏で気が効く人だ。やっぱりすごい人なんだなと改めて実感する。
「私は各国のプレゼン中は別室での待機になるから今のうちに一つアドバイスを。ISの性能もそうだけど君にとって1番いい選択をしっかりしてきなさい。あと楽しんでくること!」
そう言って背中をパンと叩かれる。
「ありがとうございます。しっかりと自分で決めてきます!」
そう言って俺の運命を決めるIS臨時委員会が幕を開けたのであった。
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「_我々の説明は以上です。貴方が当国を選んでくれることを祈っておりますよ」
「ありがとうございました。検討させて頂きます」
「では、また会えることを祈って」
そう言って背広姿の男が部屋を出て行く。
「つっ、疲れた…」
何か国目かの説明を聞き終わり俺はグッタリと机に突っ伏す。元はと言えば六大国の縛りを無くした自業自得なのだが、IS開発を行なっていて今すぐ提供可能なISがある国家という括りに絞っても何らかの専用機や国家に所属した時の待遇などプレゼンをしてくるものだからその時間も膨大なものになっていた。
これまでの国で特に印象に残っているものとしてはやはりイタリアやイギリスといった六大国のもので、アメリカとの談合が無くなったからかISの性能といい待遇面といいかなり好ましいものであった。
(正直待遇はどこの国も似たり寄ったりだしISの性能で選ぶしかないかな…)
そんな風に考えていると短い休憩時間もあっと言う間に終わり次の国のプレゼンの時間になる。
コンコンとドアがノックされ、部屋に入ってきたのは若い女性であった。年は20才前後だろうか。スラリとした長身に碧眼の瞳、美しい金色の髪。モデルをしていると言われても納得してしまいそうなほど整った顔立ちである。
思わず見惚れていると女性が手を差し出してきた。
「初めまして、上代大地さん。お会いできて光栄です」
「初めまして、って日本語⁉︎」
あまりにも流暢な日本語に俺は思わず呟く。他国は大体通訳がいたのにそう言えばこの国は目の前の女性以外いないことに今更気付く。
「ええ、私もあなたと同じくIS学園で3年間過ごしていたからね」
そう言って彼女は少し砕けた口調で笑顔を浮かべる。
「なるほど、そうだったんですね」
そして彼女の視線が俺の左手で止まる。
「あっ、
彼女はまるで我が子を慈しむように言うが俺は話について行けず思わず聞き返す。
「その子?」
「ええ。その待機形態、生徒会の訓練機でしょ?」
そこでようやく俺の中で話が繋がった。
「ではあなたはもしかして…」
「名乗るのが遅くなってごめんなさい。私はナタリア・コストナー。あなたの訓練機の前の持ち主で、今はスイスのIS開発会社『ギザン社』で主任設計者をしていて今日はスイス代表として、ISや待遇面等の説明を担当させて頂きます。よろしくお願いします」
やはりそうか。この人が楯無さんから聞いていた整備課で唯一の生徒会長だった人か。
「楯無さんからお噂はかねがね。上代大地と申します。えっと…コストナーさんよろしくお願いします」
「ナタリアって気軽に呼んでもらえると嬉しいわ。気を遣わないでたっちゃん_いえ楯無さんと接するみたいにしてくれたら大丈夫よ」
「楯無さんに接するようにってこれまた中々難しい注文ですね…」
「あら?たっちゃんと上手くいってないの?」
「いえ、仲良くして頂いてるんですけど楯無さんどこか捉えどころなくないですか?」
「そう?さっきサプライズで挨拶に行ったら驚きのあまり扇子落としてたわよ。相変わらず反応可愛いくて面白くない?」
そう言って笑うナタリアさん。ひょっとして楯無さんの裏をかくとかひょっとしてこの人とんでもない人なのでは…?
「まあ、余談はここまでにして本題に入らせてもらうわね」
ナタリアさんは資料を俺に渡し説明を始める。
スイス代表候補としての待遇面の条件は日本とスイスとの往復チケットや専属整備チームの設置など基本的に他国と同様のものだった。そして何より大事なISに関してのデータの説明が始まる。
「君が代表になった時に支給されるISは第二世代最後発となる近距離戦闘用IS
そう言って俺はグラフを見る。速度はイタリア製テンペスタII型。長距離戦闘はイギリスのティアーズ型。爆発力ではアメリカ。そして総合力ではドイツのレーゲン型がそれぞれ高い水準を誇っておりガーディアンの性能はどれも悪くないものの正直器用貧乏といった印象が否めなかった。
だがただ一つの項目に置いてガーディアンは他国のISを寄せ付けない圧倒的な性能を持っていた。防御力である。
「そこそこの性能を持つ防御特化の機体ということですか?」
「ええ、ISは基本的にエネルギーシールドに防御を任せて装甲は可能な限り少なくして火力を高めたり機動性を高めたりするんだけど、このISは全く逆。今時のISには珍しいフルスキンのISよ」
「どうしてそんなISを?」
正直ナタリアさんがいうようにISの防御はシールドエネルギーに任せてやられる前にやる。そう言った攻撃型のISが主流なのだ。
「ダイチ君はスイスに関してどれくらい知っているかしら?」
「ヨーロッパの中心にある山がちな地形の永世中立国ってことくらいですかね」
「それだけ知っていてくれたら十分よ。うちの国は永世中立国。つまり有事の際にはドイツ、イタリア、フランスといったIS大国に囲まれていてそれらが敵国になる可能性があるの。そこでうちの国は防御特化のISで敵の進行を食い止めつつ、攻撃特化のISで敵の拠点を落とす。それが防衛の基本戦略になっているわ。つまりあなたに託すのはこの国の国防の根幹をなすものよ」
「どうして外国人である俺にそんな重要な役目を…?」
「この機体があなたに合っていると思ったから」
「俺に合っている?」
意外な言葉に俺は思わず聞き返す。
「ええ、失礼だけどあなたがISに乗ることになった経緯や理由を調べさせてもらったわ。『大切な人を守るため』、それがあなたがISに乗る一番の理由。その目的にはクセはあるけど最適な機体だと私は思ってるわ」
「確かにそうですが…」
「それに君は必然的にうちを選んでくれることになると信じてるしね」
「一体どういうことでしょうか?」
意図が読み取れず質問する。
「例のあの記者会見見させてもらったわ。あのインタビューをしておいてアメリカ所属になるわけにはいかないだろうし他の六大国の所属になるのも角が立つ。かと言ってロシアや中国といったアメリカと距離を置いていて何より日本の隣国である国に所属することになれば将来母国である日本と戦う可能性がある」
確かにナタリアさんのいう通りだ。日本ではない国家に所属するということは将来母国である日本とことを構える可能性があるということなのだ。
「でもその点うちの国は過去二度の大戦でも中立を貫いてきた永世中立国。日本から攻撃されない限り敵対することはないし、地理的に見ても実利的に見ても日本がスイスと敵対する可能性は他国と比べ合って限りなく低い。永世中立国であるうちに所属するのが外交的にも1番収まりがいいしそれだけでも十分うちの国を選ぶ理由になるとは思わない?」
「確かにそうですね」
国家所属を選ぶと言いつつも俺に抜けていた俯瞰的な視点からのアドバイス。俺は素直に感心する。
「それとこれは本当に申し訳ないんだけどあなたの大切な人、六角雪菜さんのことも失礼なのは承知の上で調べさせてもらったわ」
「‼︎」
まさかここで雪菜様の名前が出てくるとは思わず不意をつかれる。
「スイスでは他国と比べて植物状態に対する研究や治療が他国よりも進んでいて世界中から治療を求めて多くの人が集まってきていて順番待ちしている状態よ。汚い手を使っているのは百も承知だけどうちの代表候補になってくれた場合優先して治療することを約束するわ」
「…」
俺は想定外の提案に言葉が詰まる。俺がスイスに所属する事で雪菜様の病状が良くなってくれるならばそれに越したことはない。ただスイスの所属になるということは、ほとんど日本に戻ることも出来ないだろうし雪菜様が回復されたとしても一緒にはいられない。
だが俺に本当に大切なものは何だ?俺が1番守りたいのは雪菜様の笑顔ではないのか。それをもう一度見られるのなら悪魔にだって魂を売る覚悟は出来ている。なら迷う必要はないのではないか。
「もう少し待遇面や、ISのスペックに関して教えて教えてもらえませんか?」
悩み抜いた末の結論。俺はナタリアさんに尋ねる。
「ええもちろん!まずは専用機についてだけど…」
そう言ってナタリアさんは嬉々として話し始める。予定の時間を少しオーバーしてしまったが非常に実りのある提案で、あと10カ国のプレゼンが残っていたがその殆どが無意味であることは明らかであった。
そして運命の瞬間。所属国家を決める投票箱に自分の所属したい国家名を書き投票する。
開票結果を見た3人のIS委員会のお偉いさん方は驚きと確認を込めて俺に最後の意思確認をする。
「この記入で間違いはないんだね」
「はい。間違いありません」
俺が投票した用紙には『Swiss Confederation』の文字がしっかりと書き込ませていた。
こうして俺はスイスへの所属が決定した。
昔書いてた文、文字数多いわ句読点少ないわでかなり読みづらいなと反省しました。新たに書いて行く分に関してはその辺りうまく調整しながらやっていきたいと思います