護りたいもの   作:影風

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分割したものの2話目です。スイス編はひとまずここまでです


【第17話】ギザン社

 

「なーんてカッコつけちゃったけど2年近くろくに実戦経験ないのよねぇ…」

 

 ダイチ君を見送り私はため息をつく。IS学園卒業後スイス政府から代表操縦者としての要請はあったが、私はそれを断りギザン社に入社しISの開発に関わっていた。そのため試作機のテストパイロットなどはすることはあってもIS同士の戦闘、ましてや命懸けの戦いなどと無縁の生活をしていたのだ。

 

「でも折角うちの国を選んでくれた可愛い後輩にカッコ悪いとこ見せるわけにはいかないしやるしかないわね!」

 

 気合いを入れ直し私は彼から預かったISの各種パラメータを確認する。

 

「何このピーキーな設定⁉︎私が入れといた操縦者補助プログラムも外されてるし!一体どんなトレーニングしてるのよ」

 

 遊びの極度に少ない、少しミスすれば戦闘はおろか操縦も難しい機体。扱いやすいはずのラファールをここまでにするとか一体どんな訓練をしているのか。トレーニング相手の顔を見てみたいものだ。そう思いながら卒業時念のためプリセットとして仕込んでおいた設定を読み込み各種ステータスを調整する。

 

 これで気難しい機体から一転、私専用の愛機に早変わりだ。そして私はISを起動する。

 

「まさか再びこの子を使うことになるとはね…」

 

 各種動作系統を確認し微調整をする。OK、問題ない。そう言えば武装の確認をしていなかった。設定を呼び出し確認する。が、またしても予想外の内容に思わず声が漏れる。

 

「は?何で銃が一本だけなの?それに物理シールドもエネルギーシールドも取り外されて容量ガバガバだし私の設定しておいた初心者オススメセットどこにいったのよ!!!」

 

 ラファールの魅力はその後付装備の多さである。卒業時に遠近両用の攻守に隙のない武器セットにしておいたはずなのに、この機体にはライフル一本、ショートブレード一本というまさに最低限の装備しかしていないのであった。

 

 私はそれこそ容量いっぱいに武器を積んでいたのでこんな設定で訓練している人間を一度叩いてやらないと気が済まない。

 

「まだ十分な実戦データ取れてないけど仕方ないわね…」

 

 そう言って現在開発中の武装をインストールする。違う機体に装備する予定の武装だが大容量ゆえラファールの拡張領域いっぱいを使う。試作品でもライフル一本、ショートブレード一本で戦うよりはよっぽどマシだ。

 

 ギザン社のセキュリティシステムとリンクを繋ぎ侵入者の位置を確認し、瞬時に作戦を組み上げ指令を下す。

 

『こちら、コストナー。ポイントDにて敵機を撃退します。ポイントB守備隊は可能な限りの足止めをしつつ撤退、ポイントC守備隊は隔壁を下げ持久体制!全ての設備の使用の責任は私が取るので到着まで1分半何とか時間を何とか稼いで下さい‼︎』

 

『こちらポイントB守備隊、厳しいですが了解!可能な限り早くお願いします!』

 

『こちらポイントC守備隊、了解‼︎主任が到着まで死ぬ気で守り抜きます!』

 

『全員死なないでね!特別ボーナスもらえなくなるわよ‼︎』

 

『『イエッサー!!!』』

 

 

_____

 

「ハハハハ、チョロい!チョロすぎるぜ!」

 

 そう言って黄色と黒といったいかにも危険そうなカラーリングのIS、アラクネはギザン社のセキュリティ防壁を次々に突破していく。

 

 抵抗も散発的なもので大した足止めにはならなかった。そしてISは曲がりくねった通路を抜け大きく開けた空間に出る。

 

 そこには一機のラファールがいるだけだった。

 

「おいおい、フランス製の量産機しか警備のISがいないとは随分ザルじゃねえか」

 

「残念ながらこれは借り物だから頭の痛いことにうちの会社には警備用のISはないわ」

 

「ハハハ、なんだそりゃ⁉︎量産機に急造のパイロットとかお笑いだな。そのISももらってやるぜ!」

 

 そう言ってアラクネは一気に距離を詰める。ナタリアもライフルによる迎撃をを行うがアラクネは器用にPICを操作し速度を落とさず接近し装甲脚を胸に突き立てる。が、

 

「…消えた⁉︎」

 

「量産機なのも急造のパイロットなのも否定しない。だけど誰も専用機ではないとは言っていないし、その専属の操縦者でなかったとは言っていないわよ!」

 

 そう言ってナタリアは背後からショートブレードで薙ぎ払う。

 

「あら、中々の機動ね」

 

「何なんだよ、テメェはよ⁉︎」

 

「ナタリア・コストナー。しがないスイスの一技術者よ。覚えておいてもらう必要はないけど」

 

「ぶっ殺してやる‼︎」

 

 そう言ってアラクネは装甲脚を銃撃モードに、腕を近接戦闘モードにし襲い掛かる。

 

 ナタリアは細やかなPICの操作と片手のショートブレードで器用に凶刃をいなし、銃弾の雨を回避する。

 

「ブランクあるのにいきなりこれはキツイわね」

 

 身体に染み付いたIS操作で回避していくが何しろ彼女の得意分野は中〜遠距離戦闘。得意の間合いに持って行こうにも武装がライフル一本しかないのだからそれも厳しい。

 

 仕方ない、あれを使うしかないか。

 

 そう言ってナタリアは試作武装「ソニックソード」を展開する。

 

「そんなショートブレードでどうにかなると思ってんのか?」

 

ただのショートブレード(・・・・・・・・・・・・)ならね」

 

 そう言って不敵な笑みを浮かべる。

 

「何か分からないが死ね!!!」

 

 そう言ってアラクネは近接モードでナタリアに接近するが先ほどより余裕を持って受け取る。

 

 次の瞬間剣を振った軌跡の上にソニックブームが発生しアラクネの装甲に着弾、するとそこには強烈な竜巻が発生し装甲を削っていく。

 

「⁉︎」

 

「どうかしら?鉄すら切り裂く真空の刃の味は?」

 

「調子乗るんじゃねえ!」

 

 そう言ってアラクネはエネルギーで作られた糸をナタリアに投げつける。

 

「これは厄介そうね…でも当たらなければどうってことはない‼︎」

 

 そう言ってナタリアは衝撃波で蜘蛛の糸を裁断。同時に機動力を活かしてアラクネの背後に回り込んでいた。

 

「これで終わりよ!」

 

 そう言ってナタリアはソニックソードを振る。が、エネルギー切れであり衝撃波発生せずただの斬撃となる。

 

「くっ…」

 

「ちぃぃ‼︎」

 

 アラクネもその隙を見逃さすナタリアから距離を取る。そこにスコールから通信が入る。

 

『相手が悪いわ。撤退しなさい』

 

『いや、しかし…』

 

『いい、あなたを失うわけにはいかないの。』

 

『分かった…』

 

 そう言ってアラクネは撤退を開始する。ISの武装的にも深追いは出来ない。

 

「ソニックソード。ちょっとエネルギー効率が悪すぎるわね。もうちょっと改善の予知ありね…」

 

 ため息を吐きながらナタリアはISを解除する。

 

「何とか先輩の威厳は見せられたかしら。ダイチ君無事だといいんだけど…」

 

 別の場所で戦闘をしているであろう後輩の心配をしつつ、新武装の改善点を考えていたナタリアあった。

 

____

 

 警報や怒号が飛び交う中を少女は事前に手に入れていた見取り図をもとに歩く。ギザン社の作業服を着て鼻歌混じりに歩く姿はまるでピクニックか何かに来ているようで戦場にいるとは思えない。

 

「君!危ないから避難しなさい」

 

「うーん、どうしましょうかね」

 

「何を言ってるんだ‼︎ISが…」

 

 次の瞬間少女は男性を気絶させていた。

 

「オータムがここに来るとこの人巻き込まれちゃいますよね…ちょっと失敬」

 

 そう言って男性のポケットを物色する。

 

「おー、ありました。これでよしっと」

 

 少女は盗んだカードキーを使い近くの部屋を開けると男性をそこに寝かせた。

 

「野蛮なことはオータムに任せて私は私の仕事をしましょうか」

 

 オータムの正面からの襲撃はいわば囮。本命は隠密行動による最新ISの窃取だった。

 

「次を右、その次を左と…」

 

 入り組んだ通路を少女は間違えないように進んでいく。が、通路のはずの場所にはコンクリート製の隔壁が降りていた。

 

「これはちょっと困りましたね…」

 

 軽く拳で叩いてみたり押してみるがビクともしない。ひとまず普通の方法で突破するのが不可能なのは明らかだった。

 

 隠密任務という性質上あまり目立ちたくなかったが仕方ない。

 

 次の瞬間少女はISを展開し、目の前の壁がバラバラに砕け散る。

 

「さて、ISのお迎えに行きましょうか」

 

_____

 

 整備室のドアを開け駆け込み叫ぶ。

 

「キーファさん、大丈夫ですか⁉︎」

 

「静かにしろ。もう間も無く終わる」

 

 そう言ってこちらを一瞥もせず作業を続ける。そして数分後ISは光を発し今までは単なる武装だったものに命が宿る。

 

「時間がないから初期化(フォーマット)及び最適化(フィッティング)は実戦でやれ!」

 

「分かりました!」

 

 俺はガーディアンに乗り込む。背中を預けるように座り込むと受け止められるような感覚と共に俺の身体に合わせて装甲が閉じる。

 

 かしゅ、かしゅと空気が抜ける音がしてまるで自分の身体であるようなISとの一体感に包み込まれる。

 

(これが専用機…!)

 

 今までも訓練器(ラファール)でISを操縦していたが、フィッティングとパーソナライズは切ってあったので、どうしても自分の身体より大きなものを動かすという違和感があり、どこか乗っている(・・・・・)という感覚があったがガーディアンにはそれがない。本当に自分の感覚が鋭くなったかのような錯覚に陥る。

 

 各動作系は良好。ハイパーセンサーによる視界も問題なし。武装も問題なく展開出来る。順調である。

 

「…問題なさそうだな?」

 

「はい!ありがとうございます」

 

「癪に触るが今のワシには何も出来ん…任せたぞ」

 

 そう言ってキーファさんは非常シェルターに退避する。

 

 それと同時に部屋のドアが開く音がした。

 

「その機体を頂きに来ました」

 

 ボイスチェンジャーでも使っているのだろうか?機械音混じりの声が響く。

 

 相対しているISの情報が瞬時に頭の中に流れ込んでくる。

 

 機体名称_白銀(しろがね)。日本製の第2世代IS。

 

 打鉄と同じく武者鎧のような形態をしているが黒を基調とした打鉄とは対照的な眩しいほどの白。

 

 装備している武器は対物ライフル_氷雨。口径は…

 

「っ⁉︎」

 

 突如始まる銃撃を紙一重で回避する。そりゃゆっくり情報を仕入れさせてくれる訳がないか‼︎

 

(射撃装備は…これか)

 

 俺は二丁のパラライザーを呼び出す。ハンドガン型の武装を使うのは初めてだが仕方ない。

 

「喰らえ‼︎」

 

 俺が引き金を引くとたちまちエネルギー弾の雨が白銀に降り注ぐ。火薬武器と違い反動がなく弾速が速い。

 

「ッ‼︎」

 

 白銀は回避に転じるが間に合わず直撃する。

 

(ヴェントよりも速い‼︎よし、いけるぞ!)

 

 俺は休む事なく射撃を続ける。が、問題はすぐに起こった。

 

(弾切れ⁉︎流石に早すぎるだろ⁉︎)

 

 思わず動揺する俺に対し白銀は隙を見逃してくれるはずがなかった。

 

「こちらの番です‼︎」

 

 そう言って激しい銃撃を俺に浴びせてくる。回避を推奨するアラームは鳴り響き咄嗟に回避しようとするが間に合わない。

 

 全弾命中。ラファールなら中破はしていたであろう攻撃。だがガーディアンは未だ全く戦闘に支障がない。

 

(化け物じみてるな。でもこれならいける!)

 

 俺はショートブレード《ファントム》をコールし装甲を信じ銃撃の雨に飛び込む。相手の武器は遠距離武器。懐に潜り込めば…

 

「接近戦なら勝てる、とか思っちゃいました?」

 

「⁉︎」

 

 そう言って白銀はショートブレードに持ち替え俺の攻撃を受け止める。

 

 数度の撃ち合いの後白銀はライフルに切り替え距離を取る。ショートブレードの射程外に逃げられるがこっちの中距離武器はエネルギー切れ。つまりこちらはショートブレードの間合いでしか戦うことが出来ないのでダメージ覚悟で接近するしかないが、銃撃をしつつ常に位置を変える相手に対して近づくことが出来ず回避するので精一杯であった。

 

「思ったよりやりますね。ですがそろそろ遊びの時間は終わりにしてその機体を頂きましょうか」

 

 そう言って白銀は俺に急接近を接近し胸の辺りに4足足がついた謎の装置を取り付けようとする。

 

 取り敢えずあれを食らったらヤバいと本能がそう告げており、咄嗟に後ろに飛んでかわす。

 

「なかなかやりますね」

 

 そう言って白銀は二の矢三の矢を打ってくるが俺は何とか辛うじてかわす。俺は一度体勢を立て直すために後ろに大きく距離を取る。

 

 俺は落ち着いて現状を分析する。思えば専用機となるISをもらったことで少し舞い上がり自分の戦闘スタイルを見失っていた。そこが敗因である。

 

 こんな時こそ根本である戦闘スタイルに戻すべきだ。

 

 楯無さんとのいつもの訓練を思い出し『明鏡止水』を発動させる。相手が隙を見せるまで回避、そして見せた隙を叩く。それが俺の戦闘スタイルだ。無理に攻めて行く必要はない。

 

 それにこれはISを守るための戦い。時間さえ稼げれば十分なのだ。

 

「降参ですか?」

 

「ちげーよ。こっからが勝負開始だ」

 

「ではお手並み拝見といきましょうか」

 

 そう言って白銀は銃撃を再開する。うるさいほどのアラート音が鳴り響く。俺は気の流れを乱す銃弾の濁流から致命傷になりそうな物を優先して回避していく。時間稼ぎさえすればナタリアさんが駆けつけてくれるだろう。

 

 そうして何とか白銀の攻撃を凌いでいると突然メッセージウィンドウ表示される。

 

_フォーマットとフィッティングが終了しました。確認ボタンを押してください。

 

 「確認」を押すと膨大なデータが脳内に流れ込んできて俺のISを再形成する。

 

 再形成されたISはより俺の身体にフィットし、また機械的で角張っていた無駄な装甲が削れ、その分ただでさえ分厚かった装甲が強化されているようだ

 

_女神の祝福(ブレッシング・オブ・ガデス)発動可能です。使用しますか?

 

 何だかよく分からないが取り敢えず発動して損はないだろう。俺は使用のボタンを押す。

 

一次移行(ファーストシフト)…‼︎完了してしまいましたか!」

 

 苛立った様子で白銀は銃弾の雨を降らせてくる。

 

 つい先程まで鳴り響いていたISの警告音が一切聞こえない。

 

(これは、そういうことなのか?)

 

 俺はISを信じその場で銃撃を受け止める。先程までとは違い甲高い音と共に銃弾が装甲に弾き返される。

 

「なっ⁉︎」

 

「やはりか」

 

 そうISは警告音を鳴らなかったのではなく鳴らす必要がなかったのだ。装甲で弾き返せる脅威だと判断したのだ

 

 銃撃を受け続けること数度、白銀は遠距離からの攻撃を諦めたのかショートブレードに持ち換え接近戦を挑んでくる。

 

 早く、重い一撃。ただ相手の力を上手く受け流すのが明鏡止水の真骨頂。流水のように相手の斬撃を受け流していく。

 

 かなり重い剣撃、だが何とか耐えればどうにかなるはず。俺はそう信じて攻撃をいなし続ける。

 

「お前達何者だ⁉︎」

 

「…男性?」

 

 俺の問いかけにバイザーに隠れていて顔は見えないが、声に少し動揺の色が浮かぶ。

 

 剣を振るう手は止めない所か先ほどより苛烈さを増していたが剣技はどこか精細を欠いていた。

 

「ああ、俺は男だ。世界に2人しかいない男性操縦者の1人だ!!!」

 

 畳み掛けるように告げると不意に敵の動きが止まった。

 

「その声、そしてその動き…まさか…」

 

 その声や態度からは動揺の色が大きくなっていた。

 

 その時白銀のプライベートチャネルに通信が入る。

 

『ミスト、オータムが持ちそうにないわ。撤退よ』

 

『…分かりました』

 

 白銀は俺から距離を取り武装を収納する。

 

 何やらやり取りがあったようだがどうやら今日はここでこれ以上やり合う気はないらしい。

 

「今日は撤退します。またどこかでお会いしましょう。上代大地さん」

 

 そう言って白銀を煙幕が包み込む。

 

「待て、クッ…‼︎」

 

 追撃しようとハイパーセンサーで追うが煙幕の中全力で逃げる白銀に追いつくことは不可能であった。

 

 戦闘内容としては終始相手に攻められっぱなしだったし正直勝った気はしない。だがISを守り抜くという目標を達成出来た安堵感や疲れからかISは解除され俺は床にヘタりこんだ。

______

 

 戦闘後に俺は念のため医務室で手当を受けていた。そこにナタリアさんはお見舞いに来る。

 

「まずは戦闘お疲れ様‼︎」

 

「ありがとうございます」

 

 ナタリアさんも戦闘を行っていたはずなのに余裕綽々と言った感じで、経験値、実力の差を感じる。

 

「実際にガーディアンを使ってもらって大体分かったと思うけど改めて詳細を説明しておくわね」

 

「お願いします」

 

「まず何よりの特徴としてはその防御力。事前の説明でもしたけど第3世代を含めても圧倒的に高くて現状追随を許さないものになってるわ」

 

「それは使ってても実感しました。ところでファーストシフトが終わった後に出てきた女神の祝福(ブレッシング・オブ・ガデス)ってなんですか?」

 

「それはISの装甲で無効化出来ると判断した攻撃に対して、シールドエネルギーの供給を切ることで無駄なエネルギーの消費を防ぐものよ。エネルギー攻撃に対しては効果が薄いんだけど実弾兵器に関しては理論上は灰色の鱗殻(グレー・スケイル)クラスじゃないと装甲を貫通出来ないから安心して」

 

「めちゃくちゃですね…つまり物理面においてはほぼ無敵ってことですか?」

 

 灰色の鱗殻(グレー・スケイル)って確かパイルバンカーみたいなあれだろ?前にモンドグロッソの動画で見たことがあるが一撃必殺って感じだったぞ?

 

「簡単にいうとそういうことね。でもこれ実戦以外の時、例えばIS学園内の試合の時とかは切っておいてね」

 

「えっ、何でですか?」

 

「基本的にISの試合はシールドエネルギーが0になったら試合終了。だけどさっきも言ったように女神の祝福はシールドエネルギーの供給を切っちゃうものだから見た目上はシールドエネルギーが0になっちゃうの。つまり発動した段階で負けってことになるわ」

 

「どうしてそんな仕様を、って思いましたけどいうまでもないですよね」

 

 スイスを取り巻くIS大国の情勢。ISは競技用の道具ではない。れっきとした兵器なのだということを実感させられる。実際の戦争中にシールドエネルギーが枯渇した状況など想像したくもないが実際にあり得ることである。そのためシールドエネルギーを節約するこの仕様は納得ができる。

 

「ただ装甲もかなり厚いから女神の祝福を使わなくても絶対防御を発動させる機会が少なくなるからその分生存性は増すわ」

 

「なるほど…」

 

「次に武装なんだけどショートブレードのファントムと二丁のハンドガンのパラライザーが標準装備なんだけど…」

 

「パラライザーは威力が低過ぎますし何より弾が少な過ぎませんか?あとショートブレードも至って普通というか…」

 

「それはそうよ。本来それは対テロ部隊で採用されてる対人用の武装で対IS戦なんて想定されてないもの」

 

「は?」

 

「これはほんと開発側の事情なんだけど色々トラブルがあって専用の武装を開発できなかったから流用した感じなの…」

 

 少し申し訳なさそうにいうナタリアさんに対し俺は告げる。

 

「いや、戦い方次第でどうにかそこはカバーしていきますので気にしないでください!」

 

「そう言ってもらえると嬉しいわ。ありがとう…」

 

 そしてナタリアさんは最後の説明を始める。

 

「そしてこの機体に取り付けられた最大の特徴、それが瞬間移動(テレポート)機能よ!」

 

「ヨハンが作ったシステムが元ってさっき聞きましたが、それならデメリット無しに使える訳ないですよね?」

 

「まあそれはね。まず第一に移動距離に応じてシールドエネルギーを消費するわ」

 

「なるほど、なかなか使い所が難しいですね。でもそれなら短期決戦で瞬間移動でヒットエンドアウェイを繰り返すみたいな戦術も…」

 

 俺の言葉はナタリアさんに遮られる。

 

「そういう訳にはいかないわ。瞬間移動には体に大きな負担がかかるの。大体移動距離を全力疾走した分の負担が一瞬でかかると思っていいわ。それこそISの武装の有効射程圏外まで一気に移動するとか文字通りの自殺行為よ」

 

「なるほど…」

 

 予想以上の使い勝手の悪さに思わず閉口してしまう。そんな俺を見てナタリアさんは申し訳なさそうに言う。

 

「ごめんなさい、やっぱりなかなかピーキーな機体よね?」

 

「ええ。ですがナタリアさんはIS特別委員会の時に言ってくれたじゃないですか。『俺にあった機体だって』。その思いは俺も同じです」

 

「ダイチ君…ありがとう」

 

「いえいえ。こちらこそよろしくお願いします」

 

 そこで思い出したようにナタリアさんは俺に訓練器を返しながら文句を言い始める。

 

「そう言えばこのラファールの武装どういうこと⁉︎私は色々バランスよく装備しておいたはずなんだけど?」

 

「ああ、それは…」

 

 俺は訓練開始時の楯無さんとの特訓初めのやり取りを思い出す。

 

_____

 

「ナタリアさんの設定何か色々ゴチャゴチャしてるのよね…銃なんて一本で十分だしブレードも1本あれば戦えるでしょ!ダイチ君明鏡止水あるからシールドもいらないか!ヨシ!」

 

 そう言って次々武装をアンインストールしていく楯無さん。

 

「ラファール後付け装備の多さが強みなのにそれ捨てていいんですか?」

 

「いいのいいの。ダイチ君は色んな状況に臨機応変に対応するっていうよりはまずは基本的な射撃武器と近接武器の扱いを覚えるべきだしね」

 

「なるほど…」

 

_____

 

「大体こんな感じですね」

 

「やっぱりたっちゃんが主犯か…一発きついのお見舞いしないといけないわね」

 

「あはははは…お手柔らかに」

 

 日本にいるであろう楯無に合掌する。トラブルは色々あったものの何とか無事にISを手に入れられたし、心強い味方も出来た。

 

 ドタバタしていたがひっそりとスイス代表候補生としてデビューを果たしたのだった。

 

______

 

 高層ビル群の中の一つ、その最上階に存在するアジトにミストは帰還していた。

 

「只今戻りました」

 

「ミスト、テメーがモタモタしているせいで作戦が失敗したじゃねーか‼︎」

 

「元はと言えばあなたが時間を稼げなかったのが悪いんでしょう?作戦予定時間は1時間、あなたが稼いだ時間はせいぜい30分と言ったところです」

 

「ブッ殺す!!!」

 

 オータムはミストの首元を掴み壁に押し付ける。だがミストは顔色ひとつ変えずに答える。

 

「別に殺せるなら殺してくれていい…」

 

「あぁ?じゃあお望み通り殺してやるよ‼︎」

 

 オータムの右手に力が篭りミストを持ち上げ首が締まる。が、次の瞬間ミストは膝をオータムの鳩尾に入れる。

 

「ガハッ‼︎」

 

 ミストは拘束が緩んだ隙に距離を取る。

 

「人の話を最後まで聞かないからです。以前なら別に殺せるなら殺してくれてもよかったんですが、事情が変わったのであなたみたいな端役に殺されるわけにはいかなくなったんですよ」

 

「あぁ⁉︎」

 

 端役呼ばわりされオータムは怒りを露わにするが、そこに仲裁が入る。

 

「オータムもミストもそこまでにしておきなさい」

 

「スコール…」

 

 自分の上司であり、また恋人でもあるスコールの言葉にオータムは動きを止める。

 

「オータム、疲れたでしょう。お風呂に入ってきなさい。その間に私はミストと話があるから」

 

「あ、あぁ。分かった」

 

 スコールに促され従順な犬のようにオータムは席を外す。

 

「で、ミスト。事情が変わったと言ってたけどまさかうちを裏切る気じゃないでしょうね?」

 

「まさか。ISの整備もしてもらえて各国自由に飛び回れる。こんな環境捨てるわけないじゃないですか」

 

「そう、それなら安心したわ。これは私も使いたくないもの」

 

 そう言いつつオータムはいつの間にか取り出していた注射針をしまう。

 

「病院ごっこはオータム(こいびと)とでもやっといてください。私は疲れたので寝ます」

 

 そう言ってミストは自分の部屋に戻りベッドの上に横になる。

 

「IS、女尊男卑、男性操縦者…」

 

 ミストの頭の中でグルグルと考えが巡る。が、今日は上手くまとまりそうもない。

 

「また会いましょう。上代大地」

 

 そう言ってミストは眠りに落ちていった。




切りどころなくてちょっと長くてすみません!!!

専用機の元ネタとしてはファイアーエムブレム蒼炎の軌跡、暁の女神の漆黒の騎士のイメージです(延々と書けていないうちにVCで配信される時代になってしまった…)
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