護りたいもの   作:影風

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【第19話】準備は大切

 セシリア、鈴コンビとの対決から1週間、ようやく生徒会の仕事も落ち着き一息ついていたところで思わぬ人物が俺の元に訪れていた。

 

「こんにちは、ダイチ君。いきなりで悪いんだけどちょっと荷物運びのお手伝いお願い出来ないかしら?」

 

「えっ、ナタリアさん⁉︎どうしてここに⁉︎」

 

 振り返るとそこにはキャリーケースやその他諸々の荷物を持ったナタリアさんがいた。

 

「どうしてってスイスの代表候補生に専属の整備チームが付くってプレゼンの時にも言ったじゃない。それで私が来たの」

 

「なるほど…ってナタリアさんお一人ですか?」

 

 俺はてっきりヨハンやキーファさんも来るものだと思っていたのだが…その問いにナタリアさんはバツが悪そうに答える。

 

「あー、うん…他の国家に最低限の条件で負けないように専属の整備チームを付けると言ったけどいざとなるとその、うちも大きな会社じゃないからね…」

 

「あっ、だいたいの事情お察ししました。とりあえず荷物もらいますね」

 

 見るからに重そうなジュラルミンケースを持つ。

 

 政府とギザン社の板挟みになっているナタリアさん。現場と営業のズレ、国家プロジェクトでも起こるものなんだな。スイスではそう言ったものはないものかと思っていたがどうやら万国共通の問題らしい。

 

「でも、安心して。1人だからと言って不便をかけるようなことはしないから」

 

「実力に関しては全く心配していませんがナタリアさんへの負担が大きくなりすぎるんじゃ…」

 

「その点に関しては安心して。ねっ、たっちゃん?」

 

「ナタリアさん人遣い荒いんですから…」

 

 その問いかけにひょっこりナタリアさんの残りの荷物を持って後ろから現れる楯無さん。

 

「またまた〜、そんなこと言いながら手伝ってくれるのがたっちゃんの良いところじゃない」

 

 そう言って肘でツンツンするナタリアさん。

 

「まあダイチ君のコーチしてますしナタリアさんの頼みとあれば断れないですけど…」

 

「そう言えばお二人面識あったんですね」

 

「そりゃ先代の生徒会長だからね。慣れない生徒会運営するたっちゃんのお仕事色々手伝ったわよ〜」

 

「ナタリアさんその話は‼︎」

 

 珍しく慌てる楯無さん。それにしてもあの楯無さんをこうも手玉に取るとはナタリアさん只者ではないな。

 

「っていうわけでダイチ君のサポートは私が全面を持ってバックアップさせてもらうから安心してね」

 

「分かりました。よろしくお願いします」

 

「あ、あれは薫子かな?おーい薫子ちゃーん」

 

 荷物を放っぽいてちょうど通りかかった黛先輩に手を振るナタリアさん。黛先輩は驚いた様子でこちらに駆け寄ってくる。

 

「ナタリア先輩⁉︎どうしてここに⁉︎」

 

「今日からダイチ君の専用整備チームとしてこっちに赴任することになったの。でもちょっとだけ人手不足だから手が空いてる時だけでいいからもしよかったら手伝ってくれない?」

 

 手を合わせて上目遣いでお願いと言ったポーズをするナタリアさん。あざといがそれすら魅力的に映るのはナタリアさんの持つ裏表のない人柄ゆえだろう。

 

「ナタリア先輩のお願いとあればもちろん!」

 

「やったー!ありがとう薫子ちゃん!!!」

 

 そう言って黛先輩に抱きつくナタリアさん。黛先輩は驚きつつもまんざらでもなさそうに笑顔を浮かべる。

 

 これがこの世の楽園か。そう思いながら眺めていると足を踏まれる。

 

「痛っ!」

 

「ああいうのがいいんだ?」

 

 そう言って楯無さんにジト目で睨まれる。

 

「誤解です!誤解!」

 

「どうだか。ナタリアさんそろそろ行きますよ。薫子ちゃんも手伝って」

 

「りょーかい」

 

 不機嫌な様子の楯無さんを先頭に寮に向かって歩き始める。ナタリアさんはさっきの百合百合モードはどこへやらケロッと荷物を運び始める。

 

 色々あったが思いもよらぬ心強い増援を得て心が躍る俺であった。

 

_____

 

 着任から3日、ひとまず荷解きが終わりナタリアさんが落ち着いたということで白銀や鈴と戦った時に感じた根本的な問題に関して相談する。

 

「ナタリアさん、この機体なんですけどもうちょっと武装を追加できたりしませんか?今の武器構成だとどうしても攻撃力で息切れするところが多くて…」

 

「あー、やっぱりそこ気になるわよね。その問題なんだけどバススロットほとんど埋まってて後付けできるとしたらナイフ2本くらいなのよね…」

 

「ナイフ2本つけたところで焼け石に水って感じはしますね…そういやコンソールも色々いじってたんですけどスラスターにエネルギー割きすぎじゃないですか?特に攻撃に重きを置くわけじゃないのでスピードももうちょっと落としてパラライザー辺りエネルギーを割けたらいいんですけど…」

 

「あー、それね…企画当初のコンセプトとしてはテレポート移動を前提とした重装甲、重武装のISとして開発していたんだけど、8割方組み上がったところでテレポートの例の欠点が明らかになって実戦では使えず通常のスラスターでは重くてまともに動かないことも明らかになったの」

 

「でも今動いてますよね?それも装甲の割には結構速度もありますし」

 

 最初動かしてもっと重い機体なのかと思ったのだがラファールと同程度には軽快に動けて驚いた覚えがある。

 

「そこは急遽武装を削って既存の高速機動用のパッケージを組み込んで何とか今の形になってるの。だから1番エネルギー効率を良くしても今より出力は削れないしパッケージの容量も大きくて武装が簡単なものしか載せられないって状況ね」

 

「なるほど、そういう事だったんですね」

 

 通常のエンジンで動かないのならエンジンをデカくすればいい。ガーディアンに求められているのは何より防御力なのだから攻撃力は削ってもいい。非常に合理的な判断だ。

 

「今出力を抑えた専用のパッケージを作ってるし、そっちの開発が終わったら武器に容量も割けて専用の武装も装備出来るようになるからちょっと時間を頂戴ね…不便をかけてごめんなさい」

 

「いえいえ、気にしないでください‼︎」

 

 俺が突然所属国家として選んだのだから急遽開発スケジュールが大きく前倒しせざるを得なかったのだろう。それでも最低限戦える機体に仕上げてくれた感謝こそあれ責めることなどできるはずはない。

 

「ほんとごめんなさいね…あっそういえば武装といえばヨハンから伝言預かってきてるわ」

 

「伝言?」

 

「ええ、パラライザーのマガジンをファントムの柄に差し込むとパラライザーのエネルギーを使って擬似的なビームサーベルに出来るらしいわ。試してもらってもいいかしら?」

 

「おお、そんな機能があるとは‼︎」

 

 そう言って俺はパラライザーとファントムをコールする。ファントムの柄をよく見ると確かにマガジンが刺さりそうな穴が空いていた。

 

 俺は早速そこにマガジンを差し込む。するとブーンという音がしてエネルギーが刀身を包み込み一回り大きくなった。

 

「おぉ!!!」

 

 これはエネルギーと物理両面の特性を持つ心強い武装になるのではなかろうか?

 

 試しに標的に向かってファントムを振ると真っ二つに分断された。

 

「おぉ!凄い!!!」

 

 思った以上の火力に思わずテンションが上がる。

 

 だがそこはヨハン開発の武装。案の定というか期待を裏切らない。30秒ほどたったタイミングでシュゥ…という音がして元の物理ブレードに戻った。

 

「…多分以上よ」

 

 気まずそうなナタリアさんとは対照的に俺は感動していた。

 

「いえいえ、全然大丈夫です!ヨハンに喜んでたって伝えておいて下さい!」

 

 考えてみれば一夏の零落白夜だってエネルギーを使用する制限時間付きの武装だし少し時間は短いが使うべきタイミングさえ間違えなければ強力な武器になるだろう。

 

 少し使い勝手に癖があるものの頭痛の種となっていた攻撃力に関しては少し光明が見え俺は晴れ晴れした気持ちであった。

 

 改めて自分は多くの人に支えられていることを実感し、より頑張らないとなと気合いを入れ直した。

 

______

 

 翌週に臨海学校を控えた日曜日の朝。俺はしおりを元に荷造りをしていたのだが…

 

「えっと…だいたいこんなものかな」

 

「ダイチ君、そういや水着入れた?」

 

 ベッドに寝転びながら荷造りを眺めていた楯無さんが尋ねてくる。

 

「いえ…持ってきていませんしそもそも希望者のみって書いてありますから必要ないかと」

 

「はぁ⁉︎」

 

 勢いよくベッドから起き上がり信じられないものを見るような目で楯無は言う。

 

「そんなの建前に決まってるじゃない‼︎第一自由時間どうするつもりなのよ?」

 

「ガーディアンの調整でもしていようかと…」

 

 何か言いたげな様子だったが諦めたのか大きなため息を吐く。

 

「今から買いに行くわよ」

 

「はい?」

 

「さっさと準備しなさい」

 

 楯無さんはベッドから起き上がってよそ行きの準備をし始める。

 

「あの…訓練は?」

 

 俺の一言に楯無さんはこめかみに青筋を立てながら答えた。

 

「今日の私は手加減できそうにないんだけどそれでもいいならやるわよ?」

 

「すみません。買い物に行かせて頂きます」

 

「最初から素直にそうしなさい」

 

 そう言って俺は楯無さんに連れられて駅前のショッピングモールに行くことになった。

 

____

 

「おぉ、結構何でもあるんですね!」

 

「あれ?ここ来るの初めて?」

 

「はい。あんまり外出しないものなので」

 

 休日は大体自主練をしているか旦那様へのお見舞いに行っているので乗り換えの拠点として使うことはあったものの直接目的地としてきたことはなかったのだ。

 

「じゃあ今日はダイチ君の水着買いがてら案内してあげるわ」

 

「ありがとうございます」

 

「じゃあ、はい」

 

 そう言って楯無さんは手を差し出す。

 

「案内費…ですか?」

 

「違うわよ!人が多くてはぐれないように手!」

 

「あっ、なるほど。では失礼します」

 

 そう言って楯無さんの手を握る。その手は思っていたより柔らかく、そして心なしか熱かった。

 

「じゃあまずはとっとと水着見ちゃいましょう!」

 

 そう言って楯無さんに連れられて男性水着売り場にやってきた。

 

 女性用の水着は沢山あるものの男性水着に正直違いが分からない。俺は適当に何点か見繕いつつ一番無難な紺色の水着を選んでいた。

 

 そういや楯無さんの姿が見当たらない。どこに行ったのか探していると女性水着売り場から声をかけてきた。

 

「ねえ、ダイチ君はどっちがいいと思う?」

 

 楯無さんは白の清楚なワンピース型の水着と黒の大人の水着の二種類を提示してくる。

 

 それぞれの水着を纏った楯無さんを脳内でイメージする。

 

(正直どっちもめちゃくちゃ似合うと思うな。楯無さんの快活さを活かしたワンピース、その大人の魅力を活かした黒の水着。どちらも捨て難い」

 

「へっ?あっ、ありがとう…」

 

 楯無さんは真っ赤になってバツが悪そうである。そこで俺は自分の妄想が漏れていたことの気づき釈明する。

 

「あっ、すいません‼︎忘れて下さい‼︎」

 

「その…ダイチ君は改めてどっちが好き?」

 

 非常に難しい問題だが悩み抜いた末答える。

 

「大人な楯無さんに似合う黒の水着が個人的には見たいです…」

 

 俺はバツが悪くなり少し小声になりつつも答える。

 

「ヨシ!ダイチ君がそう言うなら仕方ないわね〜じゃあ買ってくるから」

 

 そう言ってご機嫌な様子でレジで会計をする楯無さん。どうやら俺の回答がお気に召したらしい。

 

「海、行こうね?」

 

「えっ?」

 

「約束だからね?」

 

 楯無さんは俺をまっすぐ見つめる。そう言えば2年生は臨海学校がない。つまり楯無さんは水着を買う必要がなかったのだ。つまりその水着を使う機会は自分から作るしかないのだ。

 

「夏休み、予定空けておきます」

 

「うん!約束!楽しみにしてる!」

 

 こうして主目的は達成した俺たちは目的もなくショッピングモール中を探索することになった。

 

「ちょっと喉乾いたわね。どこかで休憩しようかしら」

 

「ええ、そうですね。って言っても今お昼時で結構どこも混雑してますね…」

 

「じゃあわざわざお店入らなくてもそこのベンチでお茶しましょ。私場所を取っておくからダイチ君買ってきてもらってもいい?」

 

「了解です」

 

 そうして俺は近くの自販機を探して彷徨く。

 

「えっと…楯無さんは紅茶だったよな」

 

 自販機で自分と楯無さんの分の飲み物を買い終え戻ろうとすると、何処からか騒がしい声が聞こえてくる。

 

「ねぇ、君可愛いね。俺らと一緒に遊ばない?」

 

「一緒に楽しいことしようぜ」

 

「はっ、離して…」

 

 マンガなんかでよく使われそうなテンプレ通りの絡み文句に思わずそちらの方に顔を向けると、案の定頭の悪そうな二人組が気の弱そうな少女に絡んでいた。

 

 このまま立ち去ろうか、そう考えた時に不意に少女と目が合う。その目は酷く怯えていて助けを求めているようだった。

 

 ヨハンを助けておいてこの子を助けない理由はないか…仕方ない

 

「そこまでにしといたらどうだ?」

 

 俺は少女と二人組みとの間に割って入る。

 

「なんだ、テメーは?」

 

「俺はこの子に用があんだよ」

 

 男達は俺に突っかかってくる。が、普段ISで訓練している身からすれば遅すぎる。

 

 一瞬で1人を組み伏せる。

 

「イタタタタタ!!!」

 

「まだやるか?」

 

 俺はもう1人の男に対して視線を向けて問いかける。どうやら戦闘の意志はないようだ

 

「おっ、覚えてやがれ…‼︎」

 

 そう言って本当にどこかで聞いたことのあるような捨て台詞を吐きながら逃げていき、組み伏せていた男も俺が拘束を止めると慌ててその後に続いて逃げていった。

 

「一件落着か」

 

「あの…ありがとう」

 

 服の汚れを払っていると先程絡まれていた少女がオドオドと話しかけてくる。

 

「いや、お礼を言われるようなことじゃないさ。それより怪我はないか?」

 

「うん、少しビックリしただけで大丈夫…」

 

 そう言うが少女の顔は曇ったままだった。本当なら落ち着くまで一緒にいてあげたいがあいにく楯無さんを待たせている状況。あまり長居も出来ないな。

 

「そこにベンチがある。良かったらこれ飲んで休んでくれ」

 

 俺はさっき買った紅茶を少女に差し出す。

 

「えっ…でももらうわけには…」

 

「いいから。疲れてる時は甘いものが効くらしいし!」

 

 半ば強引に少女に紅茶の缶を握らせて駆け出す。

 

「あっ、あの…ありがとう‼︎」

 

 背後から聞こえてくる精一杯の大声に俺は振り返ることなく右手を上げて答える。何か忘れてる気がするが気のせいか。まあ取り敢えず楯無さんの所に戻ろう。

 

_______

 

「で、その美少女に私の分の飲み物をあげちゃったって訳ね?」

 

「おっしゃる通りでございます」

 

 俺を待っていたのはご機嫌斜めな楯無さんだった。そういや楯無さんの飲み物買いに行ってたんじゃないか。

 

「あの、良かったら俺のどうぞ…」

 

 そう言って俺は自分で買っていた緑茶を恐る恐る差し出す。だが楯無さんは受け取らない。

 

「フフッ、冗談よ。むしろそんな状況で女の子見捨てたのならそれこそ怒るけどよくやったじゃない」

 

「そう言っていただけるとありがたいです」

 

 俺は恐縮して頭を下げる。

 

「あっ、でもやっぱり一口だけちょうだい」

 

「全然いいですよ」

 

 俺から受け取った缶のお茶を少し飲んでこちらに返してくる。そして俺もそれを飲んだのを確認してイタズラっぽく言う。

 

「おねーさんとの間接キスはどう?」

 

「っ‼︎ゲホゲホ‼︎」

 

 俺はお茶が気道に入り咽せる。してやったりと言った様子で楯無さんが俺にハンカチを渡してくる。

 

「あらあら大丈夫?」

 

「楯無さんが変なこと言うからですよ!」

 

「あれ?そういうのは気にするのは中学生までってこの前言ってなかったっけ?」

 

「あれは状況が状況だったからですよ‼︎」

 

 IS委員会の直前ならそんなこと気にしていられないが今は違う。

 

「へー、状況が違ったらドキドキするんだ?」

 

「それは…」

 

 俺が言い淀むと楯無さんは満足したようにニコニコする。そして俺の手からお茶の缶を奪い取ると一気に飲み干してしまった。

 

「休憩終わり!そろそろ行きましょ」

 

 そう言って楯無さんは立ち上がる。その頬は少し赤くなっていたような気がするが気のせいか。

 

 そう言って俺たちは買い物を再開した。

 

_____

 

 服屋や雑貨屋、カフェなど一通り案内してもらった後どうしても楯無さんが寄りたいと言うお店があるそうでそこに向かう。

 

「ここですか?楯無さんが来たかったお店って」

 

 楯無さんに連れてこられたのは意外なことに和食器の売り場だった。

 

「そうそう、えーっと…あったわ‼︎」

 

 そう言って売り場の中程まで行ったところにお目当てのものはあった。

 

「湯呑みですか?」

 

「そうよ、いつまでも私だけマグカップっていうのもね。ダイチくんはどれがいい?」

 

「俺もですか?」

 

「せっかくだしお揃いのやつを買いたいじゃない」

 

「まあせっかくですしね…」

 

 そう言って俺は並んでいる湯呑みを眺める。シンプルで和風なものや、断熱構造により温度を保てる機能的なもの、モダンで華やかなデザインのものなど様々なものがあった。

 

 その中で俺は一組の湯呑みに目を止める。

 

「楯無さん、これなんかどうですか?」

 

 俺は九谷焼の湯呑みを勧める。和風ではあるものの可愛らしい猫があしらわれた地味すぎないものであった。

 

 楯無さんは俺が勧めた湯飲みを手に取って手触りや重さ、飲み口の厚みなどを確認する。

 

「うん!いいセンスね。これにしましょう」

 

 そう言って楯無さんは会計カウンターに持って行く。

 

「俺も出しますよ」

 

 さっき何気なく進めたが結構いいお値段が値段がするものだった。

 

「いいのいいの。私が欲しかったものだしそれにこう見えて国家代表なんだから任せなさい」

 

「そういうわけには…」

 

 財布を出そうとした俺の手をピシッと扇子が止める。

 

「じゃあ美味しいお茶を淹れて頂戴。それでおあいこってことで」

 

 どうやらここは出させてもらえないようだ。それなら

 

「任せて下さい。とっておきのお茶をご馳走します」

 

「フフッ、楽しみにしてるわ」

 

_____

 

 そうして買い物を終えた時点で夕方になっていたのでちょっと早めに外で夕食を済ませ、俺たちが帰宅したのはすっかり夜になっていた。

 

 このまま寝てしまってもいい。が、楯無さんがシャワーを浴びている間に俺にはやることが残っていた。

 

「ダイチ君シャワーお先…っていい匂い」

 

「ええ、新しいお茶の缶を開けました。丁度がお湯が沸いたので髪乾かしてきて一休みにしましょう」

 

「分かった!急いで準備してくる」

 

 そう言ってドタバタとシャワー室に戻っていく楯無さん。待つこと少し、いつものパーフェクト楯無さんが現れた。容姿にも気を使っていてやっぱりこの人は凄いなと改めて実感させられる。

 

 そして今日2人で買ってきた湯呑みにお茶を注いでいく。部屋に緑茶特有の青く爽やかな香りが立ち込める。

 

「では頂きます」

 

「頂きます」

 

 そう言って楯無さんが一口含み、目を見開く。

 

「美味しい!!!」

 

 そう言って楯無さんは満面の笑みを浮かべる。

 

「それならよかったです」

 

 俺はその反応を確認し自分でも一口飲む。

 

「美味い…!」

 

 自画自賛になってしまうが思わず漏らしてしまう。

 

「何て言うかマグカップのお茶も美味しかったんだけど口当たりとかも格段に良くなってる!」

 

「それに香りの広がり方が格段に良くなってますね。器でこんなに変わるものだとは思っていませんでした!」

 

 2人でお茶に関して盛り上がる。確かに器の良し悪しが味に影響を与えることは間違いないだろう。

 

 それよりも何よりも気の置けない人と同じものに対して感動を共有出来る。そのことに勝る喜びはなかった。

 

 こうしてこの後楯無さんと俺のお茶会が増えたのは言うまでもなかった。

 

 




次からは臨海学校編スタート予定です!
頑張っていきます!
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