護りたいもの   作:影風

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明日でようやくテストが終わる・・・
なかなか長いのが書けないですがどうぞ


【第6話】実力テスト

 放課後になり、俺は武道場に向かっていた。本来なら一刻も早くISの訓練を始めたいところではあるが、書類申請に予想以上に時間がかかってしまい今日は訓練機が借りられなかった。そこで俺の実力を測るという意味合いを込めて組み手をすることになったのだ。

 

 白い胴着に着替え武道場に到着した。辺りを見渡してみるが柔道部と思われる生徒が数人いるだけでまだ更識さんの姿はない。とりあえず俺は邪魔にならないように隅っこの方に移動する。

 

 しばらくして後ろから誰かが気配を消して近づいて来ているのに気が付いた。俺の数少ないIS学園の知り合いの中でそんなことをしてくる人間は一人しかいない。俺は振り返りながらその人物に声をかける。

 

「かくれんぼですか、更識さん?」

 

「ありゃ、ばれちゃったか。せっかく後ろから『だーれだ』ってやろうと思ってたのになんで気づいちゃうのよ」

 

 不服そうに言う更識さんに対し俺はため息を吐きながら答える。

 

普通(・・)の人はあんなに気配消して近づいてきませんからね。普通(・・)の人は」

 

「あら、お褒め頂き光栄ね♪」

 

「どうやったら今のが誉め言葉に聞こえるんですか・・・」

 

 もちろんさっきのは嫌味のつもりで言ったのだが。

 

「だって普通じゃないってことは英語で言うとextraordinary、つまり並外れて凄いってことでしょ?」

 

「はいはい、もうそれでいいです」

 

 彼女に嫌味を言ったところで馬の耳に念仏、一夏の耳にISの授業。つまり時間の無駄である。さっさと本題に入ろう。

 

「時間ももったいないんでそろそろ始めましょう」

 

「全く、最近の若い子はせっかちね。もっとおねーさんと甘い会話を楽しもうとかいう気持ちはないのかしら?」

 

 さっきまでの会話の一体どこに甘い要素があったのか、ぜひ教えてほしい。それにあなたとは年齢は一つしか変わらないから若いも何もないでしょ。

 

「で、ルールはどうします?」

 

 色々突っ込みどころはあったもののとりあえずスルーして俺は尋ねる。

 

「もうっ、つれないわね。じゃあとりあえずルールはどんな手を使ってでも私を一度でも床に倒せたら君の勝ちでいいわよ。逆に君が続行不可能になったら私の勝ちってことで」

 

「じゃあそれでいきましょう」

 

 俺はそう言って更識さんから距離を取る。

 

「フフッ、やっぱり君は面白いね♪こう言うと普通(・・)の人なら『それでいいんですか?』とか言ってくるのに」

 

 意趣返しのつもりか普通を強調しながら心底楽しそう彼女はそう言う。

 

「そこまで自惚れてはいませんよ。仕事柄、相手の雰囲気とか見たら大体の実力くらいは分かるんで」

 

「で、それくらいのハンデがあった方がいいと判断したわけね?」

 

「そういうことです。勝てない相手に正攻法で挑むのはただの無謀ですから」

 

 正直このハンデがあっても勝負になるかは怪しい。今まで戦ってきた中でもそれほど彼女の実力はずば抜けていた。これが仕事中なら戦うことを諦めて離脱に専念するレベルだ。

 

「じゃあ、始めましょうか。全力で来ていいわよ」

 

 そう言うと更識さんの雰囲気が変わった。全身から静かに殺気を放っている。

 

(分かってはいたが隙が何処にもないな・・・)

 

 互いににらみ合いが続く。が、先に動いたのは俺の方だった。

 

 静から動へ。一気に更識さんとの距離を詰め鳩尾を狙って拳を放つ。が、逆にその勢いを利用されて俺は投げられていた。強烈な圧がかかり肺の空気が全て吐き出される。

 

「がはっ!!」

 

「うーん、速さは合格点だけど動きがちょっと直線的すぎるかな。普通の相手だったら今のでも十分通用すると思うけど私相手じゃ実力不足ね。どうする?まだやる?」

 

「もう一回お願いします」

 

 俺はふらつきながら立ち上がり答える。このままじゃ引き下がれない。

 

「了解。諦めない男の子って素敵よ♪」

 

「何言ってるんですか、まだ一回しかやってないじゃないですか」

 

 元の立ち位置に戻り試合を再開する。

 

 今回は俺から攻めることはしない。恐らく俺の攻撃は彼女に一切通じないということがさっきので分かったからだ。俺はゆっくりと目を閉じる。

 

 心を落ち着かせ、周囲の気の流れと一体になることに意識を集中する。

 

「ふーん、なるほどね。じゃあ、こっちからいかせてもらおうかしら」

 

 雰囲気が変わったことを察知した更識さんが攻撃を仕掛けてくる。

 

 比喩ではなく一瞬にして俺との距離を詰め、正確に首筋を狙った手刀を放ってくる。俺はそれを何とかギリギリのところで躱した。当たっていたら確実に落ちていただろう。

 

「今の一撃が避けられちゃうのか、結構本気だったんだけどなー」

 

 そう言いながらも攻撃の手を休めることなく凄まじい連撃を放ってくる。

 

 俺はその攻撃を紙一重で躱していく。それと同時に攻撃後に出来るほんの僅かな隙をついて弱いながらも反撃を加えていく。

 

 互いに有効打がないまま三十分が経過する。疲労のためか先ほどからほんの少し更識さんの攻撃が鈍ってきているが、それはこちらにとっても同じ事。俺も集中力が切れ始め、体も思うように言うことを聞かなくなってきていた。

 

(次の一撃で決めなきゃな・・・)

 

 そう思った俺は一層集中力を高め隙を窺う。

 

 疲れているとは言え、やはり更識さんはそう簡単に隙は見せない。その一方で俺は徐々に焦り始めていた。このままだとジリ貧だ。

 

 俺の集中力が限界に達しようとしたその時、更識さんが鳩尾に突きを繰り出してきた。しかしその攻撃に序盤ほどの鋭さはない。俺は気力を振り絞り彼女の腕をつかみ、その勢いを利用して投げる。

 

 

 

 ダンッ、という音が武道場に響いた。

 

 

 

 一瞬の沈黙の後、いつの間にか集まっていたギャラリーが沸き立つ。無理もない、学園最強の生徒会長が・・・

 

「ってなんでだよ・・・」

 

 何故か床に伸びているのは更識さんではなく俺の方だった。

 

「流石風月さんの秘蔵っ子ね。ここまで追い詰められたのは久しぶりよー」

 

 更識さんが俺に笑いかける。手にしている扇子には『大健闘』と書いていた。いつも通りの余裕こそあるものの肩で息をしているのを見るあたり本心からの言葉なのだろう。

 

 ちなみに風月というのは俺の旦那様の名前だ。

 

「でも、防御に比べて攻撃がちょっとお粗末すぎないかしら?『明鏡止水』の力、そんなものじゃないでしょ?」

 

「どうしてそのことを!?」

 

 『明鏡止水』とは六角家発祥の体術で、基本的に六角家の後継者にしか教えられない秘伝の技だ。それをどうして彼女は知っているんだ?

 

「昔、雪菜ちゃんと遊んだ時ちょっとだけ教えてくれたわよ?」

 

 更識さんはしれっと答える。

 

「雪菜様・・・何やってるんですか」

 

 まあ俺も旦那様からじゃなくて雪菜様から教わったからあまり人のことは言えないのだが。

 

 旦那様は俺にも教えようとしてくれたのだが何故か雪菜様がそれを拒否し、その結果旦那様が雪菜様に教えたことを今度は雪菜様が俺に教えるという何だかよく分からないことになったのだ。

 

「まあそれはいいとしてどうしてそれを攻撃の時に使わなかったの?」

 

「いや、そもそもあれは攻撃の時に使えるようなものじゃないですし・・・」

 

 『明鏡止水』は周囲の気の流れと一体化してそれを乱す相手の動きを予測し攻撃を避ける体術であり、どちらかと言えば護身術的な色合いが強い。そもそも攻撃用ではないのだから利用するも何もない。

 

「うーんその様子だと風月さんは攻撃用の型を教えてないみたいね。どうしてかしら・・・」

 

 更識さんは一瞬思案顔になった。が、すぐに切り替えて言う。

 

「まあいっか、今重要なのはそこじゃないしね。じゃあさっそく課題も見つかったことだし早速トレーニングを始めていきましょうか」

 

「ちょっと待ってください、攻撃用の型ってどういうことですか!?」

 

 俺は彼女に尋ねる。そんなもの初耳だ。

 

「文字通りの意味じゃないの?」

 

 彼女は小首をかしげて答える。

 

「なんで疑問形なんですか?」

 

「だって私もそういうのがあるっていうのを聞いたことがあるだけで詳しいことは知らないのよ」

 

 どうやら更識さんは嘘を言っているわけではないらしい。こうなったら自分で聞いてみるほうがいいだろう。

 

「ひとまず疑問は解消したかしら?」

 

「ええまあ・・・今度旦那様にお会いした時に直接訊いてみることにします」

 

「うん、私もそれがいいと思うわ。じゃあ今度こそトレーニングを始めましょうか。ビシビシいかせてもらうわよ~」

 

「ハハハ、お手柔らかにお願いします・・・」

 

 満面の笑みを浮かべる更識さんとは対照的にひきつった笑みを浮かべてそう言った。

 

 多少の疑問は残るもののこうしてIS学園生活の二日目が過ぎていった。




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