護りたいもの   作:影風

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遅くなってすみません。
クラス代表決定戦です。


【第8話】VS一夏

 二機のISが空中で睨み合っている。

 

 一機は眩しいほど純白の機体、織斑一夏が操縦する『白式』。

 

 そしてもう一機は鮮やかな青色の機体、セシリア・オルコットが操縦する『ブルー・ティアーズ』。

 

 既に試合は始まっているにも関わらずどちらも攻撃を仕掛けないという異様な状況。そんな中オルコットが口を開く。

 

「最後のチャンスをあげますわ」

 

「チャンスって?」

 

 一夏が聞き返す。

 

「わたくしが一方的な勝利を得るのは自明の理。ですから、ボロボロの惨めな姿を晒したくなければ、今ここで謝るというなら、許してあげないこともなくってよ」

 

「そういうのはチャンスとは言わないな」

 

「そう?残念ですわ。それなら__お別れですわね!」

 

 そう言い終わるや否やオルコットが射撃を開始、とうとう戦いの火蓋が切って落とされた。

 

_______

 

 俺たち生徒会組は控え室で試合を観戦していた。 

 

ちなみに試合順はくじで決まり

 

第1試合が 一夏対オルコット、

 

第2試合が 俺対一夏、

 

第3試合が 俺対オルコット、

 

といった風になっている。

 

 試合はこれまでのところ大方の予想通りオルコットの優勢で進んでいる。

 

「こりゃダメね。ISの反応に操縦者がついていけていないわ」

 

 モニターを見ながら更識さんが呟く。というかオルコットのデータの分析をしていたはずなのにいつの間に隣に来たんだろうか?

 

「まあ、これが3回目の起動らしいですしその割には動けてる方じゃないですか?」

 

 1回目、2回目が入学試験での起動だったことを考えると実戦では初めての起動ということになる。初めての起動の時は歩くことすらままならなかった自分のことを考えると驚異的ですらある。

 

「そうなの?それなら頑張ってる方ね。流石織斑先生の弟といったところかしら」

 

「それよりもうオルコットのデータの収集はいいんですか?」

 

「ええ、事前に解析したデータと特に大きな違いはなさそうだしそれに邪魔しちゃ悪いからこっちに来たの」

 

 そう言って更識さんは虚さんの方をちらりと見る。

 

 虚さんはモニターを見ながらもの凄いスピードでキーボードを叩きデータを入力していく。ディスプレイ上はびっしりとデータで埋め尽くされている。

 

 そんなやりとりの最中、モニター内では二機のミサイルが一夏に直撃していた。

 

「まあ、よく持った方ね」

 

 ふぅ、と息を吐き更識さんが立ち上がる。

 

「さて、そろそろ私たちも準備しなきゃ…」

 

 控え室を出ようとした更識さんを虚さんが呼び止める。

 

「お嬢様、まだです‼︎」

 

 彼女の言った通りモニターの中ではにわかに大きな変化が起こっていた。

______

 

 まだ微かに漂っていた煙が弾けるように吹き飛ばされ、そこから真の姿となった純白の機体が現れた。

 

「これは…?」

 

 何が起きたのかまだ理解出来ていない様子の一夏に対しオルコットは驚きの声を上げる。

 

「ま、まさか…一次移行(ファースト・シフト)⁉︎あ、あなた今まで初期設定だけの機体で戦っていたっていうの⁉︎」

 

 オルコットの言葉で自分の機体に何が起きたのか理解した一夏。

 

 そして機体と同様に彼の右手にあった近接ブレードも反りのある太刀のような姿に変化おり、鎬の溝からは光が溢れていた。

 

「俺も、俺の家族を守る」

 

「は?あなた何を言って」

 

 オルコットの疑問に答えることなく一夏は続ける。

 

「とりあえずは、千冬姉の名を守るさ!」

 

「だからさっきから何の話を…ああもう、面倒ですわ!」

 

 痺れを切らしたオルコットは再装填を済ませたピットを二機一夏に差し向ける。

 

 しかし本来の姿となった白式の前に一刀両断され、それと同時に一夏はオルコットの元に突撃する。

 

 彼の持つ武器、雪片弐型の刀身が光を帯び、今にもその一撃がオルコットの元に届こうとする。

 

 誰もが一夏の勝利を確信したその瞬間、決着を告げるブザーが鳴り響いた。

 

___勝者、セシリア・オルコット

______

 

 アリーナに出ると大きな歓声に迎えられた。こういった場に慣れていないせいで緊張してきたしそれ以上に目立つ場所にいるため酷く居心地が悪い。俺は軽くアップをしながら一夏が早く来てくれることを祈った。

 

 五分後、ようやく一夏が登場した。 

 

「悪い、待ったか?」

 

「まあ、それなりに」

 

「悪い、整備が長引いてさ」

 

「そこまで気にしてないからいいさ。ところでお前、連戦だけど大丈夫なのか?」

 

「ああ、問題ない。心配してくれてありがとな」

 

 一夏は笑って答えるが俺は心の中で舌打ちをする。こちらも2連戦の初戦なので出来れば一夏戦は力を温存したかったのだがどうやらそうもいかないようだ。

 

「それを聞いて安心した」

 

 そう言いながら俺はショートブレード《ブレッド・スライサー》を呼び出す。

 

「お前は銃器を使わないのか?」

 

 それを見て一夏が意外そうな表情を浮かべている。てっきり俺が銃器を使ってくるものだと思っていたようだ。

 

「ああ、初心者に射撃は難しいからな」

 

「そうか、まあ俺からするとありがたいぜ。いい試合にしような」

 

「ああ、だが勝つのは俺だ」

 

 一夏にそう宣戦布告をすると同時に試合開始のブザーが鳴った。

 

_____

 

 真耶と千冬は管制室で試合を見守っていた。モニターには攻める手を緩めない一夏とそれを何とか凌いでいるダイチといった対照的な両者の姿が映し出されていた。

 

 序盤は両者様子見といったような形で膠着状態だったがダイチが攻めてこないと見るや一気に一夏は攻勢に回った。

 

「織斑君が押してますね。これなら勝てるかもしれませんね‼︎」

 

 試合を見ながら真耶が明るい表情で千冬に話しかける。だがモニターを見つめる千冬の表情は真耶とは対照的に厳しいものだった。

 

「上代の奴、手を抜いているな。時々わざと攻撃に掠っている」

 

「はい?」

 

「上代の動きをよく見てみろ。攻撃を全て最小限の動きで躱している。あれは相当な実力がないと出来ん動きだ。そんなことが出来る相手が本気を出せばあいつの攻撃が当たるわけないだろう」

 

「ですがそれならどうしてわざわざそんなことを?」

 

「全て躱すのではなく致命傷にならない程度に攻撃を受けあと一押しで勝てるといった印象を一夏に与える事で『零落白夜』を発動させ続けることが目的だろう、ほら見てみろ」

 

 モニターの中ではにわかに試合が動き始めていた。

______

 

 時間は約30分前、織斑の試合の終了直後に遡る。試合の結果受けて俺たちは作戦を練っていた。

 

「虚ちゃん、織斑君の機体の分析はどう?」

 

「少々お待ちを。もう間も無く終わりますので……」

 

 虚さんは顔を上げずに答え、その間もひたすらキーボードを叩いている。

 

「終わりました。映像から分かる範囲ですので幾らかの誤差はあるかもしれませんが大体このようなものかと思われます」

 

 そう言って虚さんは俺たちにディスプレイを差し出す。

 

「凄い機体ね…」

 

 隣でディスプレイを見ている更識さんが感嘆の声を上げる。

 

「全体的に高い水準にありますがその中でも特に速さと攻撃力が桁違いですね」

 

 ディスプレイ上には大量の数字が映し出されているが俺には何がなんだかさっぱりわからない。

 

「すいません、出来れば説明して頂けるとありがたいんですが…」

 

「ああ、ごめん」

 

 そう言って更識さんはディスプレイを指差しながら説明してくれた。

 

 更識さんの説明をざっくりまとめると全体的に高スペックで速度は全ISトップクラス。武装は近接戦闘用の武装《雪片弍型》だけであるが、ワンオフ・アビリティーである『零落白夜』を使用出来るため攻撃力も非常に高い。欠点としては燃費が悪いところや、射撃装備を持たないといったところである。

 

 特に『零落白夜』はバリアを無効化して強制的に絶対防御を発動させる攻撃なのでまともに喰らえば即落ちとのこと。何だよそのチート…

 

 相手の機体の特徴が揃ったのでそこから対策を考えていく。

 

「私は射撃戦がいいと思うな」

 

 まず本音が意見を出した。

 

「私もそれがいいと思います」

 

 本音の意見に虚さんも賛成する。普通に考えればその戦法がベストであることは間違いない。だがしかし…

 

「今回はあえて近接戦で勝負しようと思います」

 

 俺がそう言うと本音も虚さんも驚いた表情を浮かべた。しかし更識さんは意味ありげな笑みを浮かべてこちらを見る。

 

「何か考えがあるのね?」

 

「はい。俺も一夏との試合に勝つだけでいいなら射撃戦を選びます。しかし今回はオルコットとの試合も控えています。決して一夏を侮っている訳じゃありませんが一夏とオルコット、どちらが手強い相手か考えるとやはりオルコットだと思います。だからオルコット戦の勝率を少しでも上げるためにも出来るだけ一夏戦ではこちら手の内を見せたくないんです」

 

「ですがその場合織斑君との試合に勝てるのですか?」

 

 虚さんから質問が飛ぶ。

 

「絶対勝てる、とは言いませんが勝つための策はあります」

 

「策とは?」

 

「白式のもう一つの弱点、燃費の悪さを突きます。序盤は回避に専念し相手のエネルギーが尽きてきた終盤に勝負を仕掛けます」

 

「ですが、回避に専念するといっても…」

 

 言外に無理だということを漂わせる虚さんの発言を更識さんが遮る。

 

「そこで『明鏡止水』の出番って訳ね?」

 

「はい」

 

 俺は更識さんの方を向き大きく頷く。

 

「虚ちゃん安心して。私の攻撃をかわせるくらいなんだから一夏君くらい余裕よ」

 

「ですが…」

 

 虚さんは何か言いたげだったが言葉を飲み込んでじっと俺を見る。

 

「いえ、私も上代さんを信じます。必ず勝って下さい」

 

「お任せ下さい!」

 

 ここまで期待されてはそれに応えない訳にはいかない。厳しい戦いになることは間違いないが絶対に勝ってみせる。

______

 

 一夏は焦り始めていた。直撃こそさせられていないが時々攻撃が掠っているのでダイチのシールドエネルギーは既に100を切っていた。

 

 しかしそれと同時に『零落白夜』を発動させ続けているせいで一夏のシールドエネルギーも100を切っていたのだ。

 

(くそっ、あと一撃当てれば俺の勝ちなのに…)

 

 焦りはミスを生む。つい大振りとなった一撃をかわされ致命的な隙が生まれてしまう。慌てて態勢を立て直すがダイチの姿は見当たらない。

 

(消えた⁉︎)

 

 そう思った刹那、背後から鋭い斬撃が襲ってくる。とっさに雪片弐型でそれを受け止めるがその攻撃は先ほどまでとは明らかに異なっており押し負けてしまう。

 

 ひとまず態勢を立て直すべく後方に急加速しようとする。が、試合開始直後から全力で動いていた白式にもはやエネルギーは残されていなかった。

 

「すまんな。俺の勝ちだ」

 

 最早満足に回避も出来ない一夏に対しダイチは攻める手を休めない。序盤とは完全に形勢が逆転し、やがて試合終了のブザーが鳴る。

 

 

__勝者、上代大地




次でクラス代表決定戦は終わります
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