俺が死んでオレが生まれた、などとメガテン3ナイズに言ってみるが、結局のところ事実を端的に言うならば転生した。ということに他ならない。
死因なんて覚えていないし、神様にあった記憶もない。それとも覚えていないだけであったことはあるのだろうか?
まあ、どっちだっていい。この世界がペルソナ5――というかペルソナの世界である以上の驚きなど存在しないのだから。
地名の一部に嘗て見覚えのある地名があれば誰だってそうなる。
四軒茶屋、蒼山、挙句の果てにはJLだ。あと調べたら八十稲羽と巌戸台もあった
当然本来ならば三軒茶屋に青山だし、JRでなければおかしいのだが。
そして今世における我が名は雨宮・涼。で弟の名は蓮という。
察しのよろしい方ならお気づきであろう。オレは主人公の兄に生まれ変わったのである。年齢差は6歳離れているとも近いともいえない年齢差だ。
当初オレはこの事実を知り歓喜した。いけるやん! 弟の伝で原作キャラと知り合いになれるやん! と。
不純な動機だがちょっと位は役得があっても、と思うのは人間として当然だと思う。
しかしそれは後に木っ端微塵に砕け散ることになる。
オレの弟がこんなに素晴らしいわけがない(迫真)
原作主人公という高スペック弟を当初ただのキャラクター扱いしていたが、それは家族としてのふれあいのなかですべて消失しただった。むしろ恥じ入るばかりだった。
『オレはいまだに人間をキャラクター扱いしていたのか……』
マジ凹みだった。
とはいえ弟の慰めによって立ち直ったオレは一つの事実に気づいた。
『あれ、もしかしてこのままだとマイブラザー冤罪でひどい目にあうんじゃね?』
シドーだかバラモスだから知らないがあのファッ××ハゲが弟を害する……?
こりゃメチャ許されんよなぁ? 湧き上がる怒り、噴出す憎しみ。まだ見ぬハゲ相手に劇場を燃やす小学生(オレ)
もしも原作に進むと仮定すれば冤罪でぼろくそにされる上に下手すると人生めちゃくちゃルート。ありえん、マジありえん。挙句の果てには命がけで世界と戦うという無茶苦茶を背負わされるとかどんな罰ゲームだ。
糞、オレの弟がこんな目にあうなんて許されねーわ、滅びろ世界。
しかしだからといってそれを回避する手立てなんて存在していない。
このままだと本当に弟受難コース確定の可能性を否定できない。誰か泥かぶってくれねーかな……オレだと年齢的に接点できそうにないし、事件当日がいつかも微妙にわからん。新学期の前ってのは覚えているのだが……。
「ん?」
そこまで考えて気づいた。
「オレが主人公を育て上げればいいんじゃね?」
つまり、そういうことになった。
考えてみればゲームステータス的には最低の状態のときにその身一つで強面ハゲから女性を守ろうと奮闘し、なおかつ気転も聞けば勉強すればぐんぐん伸びるパーフェクトな地頭を持っているのだ。転生して精神的、知能的にリードしている俺が成長できるように促せば――いけるんじゃない(錯乱)
『育てねば(迫真)』
つまり、そういうことになったのであった。
そして、時は飛ぶ。
〇
俺、雨宮・蓮は何故こうなっているのか、と自問自答していた。
新学期の前の話である。スケベ面したハゲ親父に女性が絡まれていたところを助けようとしたときについ力加減を誤ってしまい、男に多少の怪我を負わせてしまったのだった。と、言っても軽い擦り傷程度なのだが、どうにも酩酊していたらしくこちらの言い分を欠片も聞こうとしない、警察が来ればまるで己が被害者出るように振舞うときたものだから手が終えない。さらに追い討ちをかけるように助けた女性にも裏切られた俺は結局のところすべての罪を負わされてしまったのである。
うかつなことをしたものだった。いつもならばポケットに忍ばせているボイスレコーダーを、すぐそこに買い物に行くから、とおいてきたのがまず間違いだった。常々の警戒は大事であるということを思い知らされたわけである。
で、結局保護観察処分となりほとぼりを冷ますために態々東京まで一年間お引越しである。しかも親戚に預けられるわけではない。どことも知らない人間だ。親戚は当てにはならなかった。前科のつきそうな俺を預かろうなんて考える酔狂者は一人もいなかった――、否、親戚ではないが俺の兄がしばらく引き取るという話もしたが親が却下した。兄は起業家で、何か知らないが日々世界を飛び回りビジネスチャンスを探し回っている。事業自体もそれなりに成功を収め、年商も結構あるのだが、安定を望む両親が声をそろえて却下したのである。会社の社長をしているとはいえ、ちゃんと顔を合わせるか判らない、しかも若い人間に預けるのはもってのほか、と。
それに兄はあまりにも破天荒な人だったからそれもありえるかもしれない。
まあ、結局のところ俺は一人東京という新天地に降り立つことになったのだった。
「マッチ一本なんとやら、というが高くついたものだな」
電車に揺られながら俺はつぶやいた。
兄はいつも言っていた。警戒して、しすぎることはない。
「そういえば兄さんは今どこにいるんだろうか」
少し前にはエチオピアに行って、現地で革命を起こしてきたといっていたし、その前は中東でお菓子を売りさばいてギャングに殺されかけたと話していた。
「確かウクライナに行くとか言ってたかな」
もしかしたらモルドバだったかもしれない。東欧のワインを輸入するとか何とか言っていた気がする。
「良いなぁ」
俺にとってやや年齢の離れた兄は憧れだった。行動力と決断力に富み、必要があれば即座に実行に移す。失敗しても笑って上を向き、そして進み続ける。会社を興したときもそうだった。両親に無謀だからやめろ、と止められたときでも自分の意見を押し通して起業し、そして一応の成功を収めた。そして成功しても驕らず、さらに飛翔しようとしている。
面倒を見てくれたこともよく覚えている。今となっては恥ずかしくもあるが、それでも、良い思いでだった。
あのような高みに、俺も行きたいと、そう思った。
「ピンチはチャンス、だよな」
周囲の怪訝そうな目も気にせずに、俺は己の頬をひっぱたく。気合が入った。これからの未来にもどこか希望が持てそうな気がした。
「せっかくだから東京にいるうちに起業するのもありかな」
兄にはいろんな話やノウハウを聞かされている。無論、聞かされた程度で成功できるとは思っていないけれど、いい失敗は出来るような気がした。
などと考えているうちに気づけば大都会東京の巨大バイパス新宿に着いていた。
「さあ、新しい生活と洒落込もうか」
少しばかり明日が楽しく思えた。
これ以降オリ主が出ることはほとんどないです