今回はひまり中心のお話となっております!
ここで長くは語りません!笑
それでは、本編スタートです!
林間学校が終わってからの学校生活は本当に早かった。恐れていた期末テストは終わり、ボクたちは追試を回避できた。ただ一人を除いて……。
「みんなぁ〜! 助けて〜〜!」
誰であろう……ひまりちゃんだ。
本人曰く、「国語の解答欄が一個ずつズレてた〜!!」らしい。ズレてさえいなければあっていたのに……。
「ひまりちゃん?見直しはちゃんとしたの?」
「うう〜っ……それは……」
「あっはは、どうせあれだろ?徹夜してテスト中に眠くなって寝てしまった……とかだろ?」
「な、なんでそのこと知ってるの〜!?」
「全く、ひまりはひまりだよね」
「蘭までわたしを虐めないで〜!」
「ねぇあーくん、ちょっといい〜?」
二人がひまりちゃんと話してるとき、モカちゃんがのんびりとボクに近づいてきた。
「どうしたの? モカちゃん?」
「ひーちゃん、今月の終わりに硬式テニスの大会があるんだよね〜?」
ひまりちゃんが入部しているテニス部の大会は7月の終わり頃。更には、その大会のメンバーにも選ばれている。
羽丘学園は、テストの追試が終わるまで大会や練習には参加できない規則となっている。追試を1度目でクリアしないと、大会の出場も危うくなる。
「確かそうだったね。こんな時に補修なんてついてない……」
「もしよかったらさぁ〜、ひーちゃんの勉強を見てあげてほしいなぁ」
「え? ボクなんかでいいの?」
モカちゃんは当然のような口ぶりで答える。
「あーくんに教えてもらった方が、ひーちゃん喜ぶよ〜。多分、中間テストの時もあーくんに見てもらってたから遠慮してるだけだよ〜」
「そ、そうなのかな? 分かった、少しひまりちゃんと話してみるよ!」
「あーくんガンバ〜♪」
笑顔のモカちゃんを後にし、他の4人との会話に混ざる。
「テストの内容も頭から全部抜けてるし、このままじゃわたし大会に出られないよぉ〜っ!!」
「アタシはバイトと部活があるしなぁ……」
「あたしは、ひまりに勉強教えれる自信ない」
「私は喫茶店と生徒会活動が……」
みんなが困惑した顔をしてる中、ひまりちゃんは涙目になって必死にお願いしている。
普段からよく見慣れた光景だが……今回は訳が違う。今のひまりちゃんをボクは見てられない。ひまりちゃんに涙は似合わないからーー。
「ボクでよかったら勉強見てあげれるよ。中間テストの時でひまりちゃんの苦手分野とか大体わかってるつもりだから!」
ボクがそう言い終えると、涙目になって必死に助けを求めていたひまりちゃんの表情が一変する。
「ほ、ホントに!? でも、葵くんはお家の事が……」
「ボクの事は気にしなくてもいいよ。放課後、ひまりちゃんが真面目に取り組みさえすればすぐに終わる量だしね!」
「そっか、うん! あたし頑張る!!本っっっ当にありがとう! 葵くん!!」
正直、モカちゃんの後押しがなければ自分からひまりちゃんに、勉強を教えようと申し出ようとはしなかっただろう。
ボクは自分から率先して何かをしようとする勇気がない。弱気な性格が足かせになって、どうしても……。
だから心の中で感謝するよ、ありがとうモカちゃん。引き受けた以上、精一杯やり遂げるよ。
次の日の放課後から、本格的な追試対策が開始された。羽丘学園は、テストが終わっても午後まで普通に授業がある。
追試といっても、期末テストに受けた問題とは少し異なる問題が出題される。丸覚えして満点を出さないようにするためだ。
追試から逃れるためには、70点以上の点数を叩き出さなくてはならない。前回のひまりちゃんのテストは35点で羽丘学園の赤点ラインは40点。それさえ下回らな無ければ追試は無いのだが……解答欄さえズレていなければ、間違いなく60点は余裕で超えていただろう。
だが、前日の詰め込みの影響によるテスト中の睡眠により、全てが抜け落ちてしまったから全く参考にならない……。
「それじゃあ、早速始めようか」
「はい! よろしくお願いします! 葵先生!!」
「まずは漢字だけど……これは書いて覚えるしかないね。教科書に出てくるのと先生から配られた漢字のプリントから必ず出されるから覚える事!」
「あたし漢字は得意! この学校って漢字の問題で20点は貰えるからラッキーだよね♪」
確かにテストを見る限り漢字は満点。一つもミスがないのだ。
「今回は部首名やその漢字で例文を作る問題もあるから、応用問題にも対応できるようにね?」
「はい! 他にはどんな事覚えたらいいかな?」
「国語は覚えるというより、出題者の意図を汲み取るのが重要だから……教科書の文をひたすら読んで自分の考えを持って、問題者の考えを読み取るのが大切だよ!」
「なるほど……すごく奥が深い……」
感心しているひまりちゃん、にボクは続けて話す。
「だから国語の勉強で教える事は正直あまりないんだ。解き方と考え方を伝授したら、あとは自分の思考を凝らして出題者の考えを見抜くのが、国語の点を取れるようになるコツだよ!」
「え!? そうなの!?」
凄い勢いで立ち上がり、両手を机につき顔を近づけ驚きを隠せない表情を浮かべるひまりちゃんに、ボクは少し補足をする。
「あ、別にひまりちゃんの勉強を見ることを放棄してる訳じゃないよ!人によって考えは全く異なるものだし……簡単に言えば、国語は正解が無数にあるんだよ!」
「正解が……無数に……?」
「はははっ、少し難しかったかな? そうだなぁ〜……数学って公式を使ったりして答えが一つしかないでしょ?」
「うん! 少しでも値が違ったら不正解になるもんね」
「その通り! でも国語は、出題者の意図と少しズレていても不正解にはならないんだ」
「と言うと……?」
「自分の考えをちゃんとまとめて、自分なりに出題者の意図を汲み取った解答をしたら正解になる可能性があるんだよ!」
「改めて考えると、文章題ってすごく奥が深いんだね」
「そうだね! 相手の気持ちを大切にしつつ、自分の主張を持つ。国語の醍醐味はこれに限るね!」
「葵くんってやっぱりすごい! 普通の高校生じゃこんな考えにならないよ!きっと!!」
目を輝かせてひまりちゃんはボクを褒めてくれている。
ひまりちゃんの良いところは、何事にも真っ直ぐなところ。人を褒めたい慰めたり……嘘偽りのない言葉と太陽のように輝くその笑顔は、自然と人に安らぎをもたらす。
ボクはそんなひまりちゃんの性格が好きであると同時に、羨ましくもある。
ここまで、人柄の良さを持った人をボクは見たことがない。ひまりちゃんは将来、人々に希望と勇気を与える仕事が向いているんだろうな……。
「ボクの説明はこんな感じ。何か聞きたいこととかある?」
「それじゃあ一つだけ聞くね。もしわたしの考えも出題者の意図もわからなくなったら……葵くんを頼ってもいい?」
「うん! それはいつでも相談に乗るよ! 父さんの稽古がある時は返信が遅くなるけど、それでもいいなら!」
「ありがと! でも、なるべく1人で頑張ってみるよ!」
ひまりちゃんがやる気を見せたところで、時計に目をやると時刻は16時30分。ボクは30分後には父さんの稽古がある。ひまりちゃんは学校の規則により練習に参加できないため、
「今日は1時間も勉強に付き合ってくれてありがとう! お稽古頑張ってね♪」
ひまりちゃんは笑顔でボクにそう告げる。
「ありがと、ひまりちゃん! お互い頑張ろうね!」
勉強に部活動にバンド。これだけの青春を味わえるのはこの高校生活しかない。だから頑張れ、ひまりちゃん。ボクはずっと側で応援してるよーー。
2人だけの勉強会から3日後、運命の追試が始まったーー。
この追試を回避できなければ、来週の大会には間に合わない。あの日以降、分からない時はちゃんとボクに質問をし、自分の考えを持って今日の追試に臨んでいる。
Afterglowのメンバーもテニス部のメンバーもドキドキで追試結果を待っている中、とうとうひまりちゃんから連絡が来た。
『点数は97点!! 大会出られる!!』
その連絡が入った時、Afterglowのメンバーは羽沢喫茶店で歓声を上げた。
のちに、テニス部のメンバーからも祝福を受けたようで大会への出場資格を本当の意味で得た。
ひまりside
追試が終わってからのわたしは、更なるテニスの練習に励んだ。
私が出る代わりに、試合に出られない同級生や先輩がいる。そのためをと思うと……妥協は許されない。
ある日の練習終わり、顧問の先生がわたしに話しかけて来た。
「上原? 最近飛ばし過ぎてるな、大丈夫か?」
「あ、先生。お疲れ様です! わたしはみんなの期待を背負って戦います。なので、これからもご指導よろしくお願いします!」
「……俺の質問の答えにはなっていないが、上原の熱意は伝わった。ただ、無理だけはするなよ?」
「わかりました! それでは失礼します!」
わたしは先生に頭を下げ、部室に着替えに向かう。自分自身、最近練習にのめり込みすぎではないかと感じてる部分はある。
だけど……やっぱり怖い。それでも、選ばれた以上、みんなの期待に答えるしかない。あたしはそんな恐怖に屈したりしない。
ここまで支えてくれた両親に、部員に、Afterglowのみんなにーー。
迎えた大会当日。
相手は、3年前から共学になった花咲川学園の3年生。わたしはシングルスで出場する。
応援には、両親、テニス部の部員、そしてAfterglowのみんなが来てくれた。
両親からはお守り、テニス部の部員からは千羽鶴、Afterglowのメンバーからは携帯のメッセージでエールをくれた。
みんなの期待を背負い、わたしはコートに立つーー。
序盤は経験の差から苦戦を強いられるも、得意のサーブで相手を打ち崩し初戦をストレートで勝利する。
試合後、みんなから盛大な祝福を受けた。
「……あぁ、あたし、練習を頑張ってよかったな」って実感できて嬉し涙が止まらなかった。
次の日以降の2、3回戦も順調に勝ち上がり迎えた準々決勝。
相手はまたしても花咲川女子学園の生徒。しかし、相手はわたしと同じ一年生。
どこか目に覇気がない……そんな印象を感じた。
……この子がとんでもない相手だった。
瞬発力、スタミナ、ストローク、殆どのスキルがわたしより上。なんとか粘りを見せるも、1セット取るのがやっとだった。
結果はベスト8。一年生としてはよくできた成績だと先生は褒めてくれたけど、わたしはこれだけでは満足しない。もっともっと上を目指すよ、次は絶対負けないーー。
大会の翌日、Afterglowのみんなが羽沢喫茶店でお疲れ様会を開いてくれた。
テーブルにはわたしの好物ばかり。つぐみのお父さんとお母さんがこしらえてくれた。
「えぇ〜っと、それじゃあひまり!大会と追試お疲れ様!! カンパ〜イ!!」
「「「「「カンパ〜イ!!」」」」」
巴の挨拶を皮切りに、わたしのお疲れ様会が始まった。
「それにしても、ひまりはよく頑張ったよな!」
「そうだね! 3年生に勝つなんてすごいよ!」
「みんなの応援があったからだよ!ありがと!2人共!!」
まずは、巴とつぐみがわたしを褒めてくれた。普段はあまりこういうことがないから不思議な気分でもある。
「モカちゃんは感動したよ〜。ひーちゃんなでなで〜」
「ちょっ、モカ〜! くすぐったいよ〜///」
モカは相変わらずのペースでわたしの頭を撫でてくれた。
「ひまり、お疲れ様。とりあえず今はしっかりと休んで次からも頑張れ」
「うん! ありがと! 蘭!!」
蘭からはいつも通りのクールなエールを受け取る。
「ひまりちゃん、大会と追試お疲れ様! ボクからは、そんなひまりちゃんにご褒美があります!」
葵くんはそういうと、喫茶店の奥の部屋へと入っていく。ご褒美って一体……?
数分もすると、葵くんが何やら小包を持って部屋から出て来た。
「こういう時、どうしたらいいか分からなかったから……その、喜んでくれたら嬉しいな」
小包を受け取り中身を見てみると、18Kのハートネックレスが綺麗に入っていた。
キラキラと輝く、そのネックレスはあたしをすぐ虜にしてくれた。
「ねぇねぇ! これ今つけてみてもいい?」
「うん! 是非そうして欲しい!」
みんなが注目する中、元々つけていたネックレスを外し葵くんからもらったものをつけてみる。
「おぉ! ひまり、よく似合ってるじゃんか!」
「大人の女性って感じがするよね! モカちゃん!」
「あーくん、センスいい〜!ひーちゃんもベリーグ〜!」
「ひまり、悪くないね」
「ひまりちゃん? 気に入ってくれたかな?」
わたしは、わたしにできる最高の笑顔で葵くんにこう返事をした。
「うん!スッッッゴク嬉しいよ!ありがと!!葵くん!!」
思わず、衝動的に葵くんに抱きついた。
顔を真っ赤にする葵くん。みんなはどんな反応してるかはよくは分からなかったけど、きっと明日からまた弄られるんだろうな。
でも、一つだけわかったことがある。
あぁ……わたしってやっぱり、葵くんのことが大好きなんだなーー。
いかがだったでしょうか?
2日間、物語を構成していたらかなり長いお話となりました笑
やっぱりひまりはいい子だなぁと自分で書いててそう感じました笑
次回はRoselia登場予定です!
それでは次回もお楽しみに〜!