Afterglow 〜夕日に焦がれし恋心〜   作:山本イツキ

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どうもっ! 山本 イツキです!

本編としては、オーナーの審査とSPACEのライブです!

蘭に少し異変が……??

それでは本編スタートです!


第23曲 あのステージで演奏するのを夢見て Afterglowと5人の超新星

 4月から何度も訪れているライブハウス『SPACE』。

 しかし、今日は別の立場での入店となる。

 入り口で全員が意を決して、全面ガラス張りの扉を開くーー。

 

 カラン カラン

 

 「いらっしゃいませ〜!」

 

 扉を開け客が入店したことを告げる鐘が鳴ると同時に、店員さんの元気な挨拶が店に響き渡る。

 

 「あの……オーナーに演奏の審査をして頂くために来ました、Afterglowです」

 

 蘭が先陣を切って申し出たところ、その店員さんはニコやかに応対してくれた。

 

 「2日後のライブに参加希望の方々ですね!かしこまりました、そこのカフェテリアでしばらくお待ちください!」

 

 店員さんは笑顔を崩さず、そう告げたあと店の奥へと歩いて行った。

 

 「……はぁ、すっごい緊張した〜」

 

 「ひまり……それ、あたしのセリフなんだけど」

 

 「ま、まぁとりあえず座ろうぜ?」

 

 巴ちゃんの言葉通り、ボクたちはカフェテリアで飲み物を注文して店員さんが来るのを待ったーー。

 

 数分が経過し、全員が飲み終えたと同時入場店の奥の扉が開いた。……しかし、扉から出て来たのは、応対してくれた店員ではなくオーナーその人だった。

 

 「アンタたちかい? 審査を受けに来たのは」

 

 前髪に紫色のメッシュを入れた、白い髪の女性。見た目は、ボクたちからしたらおばあちゃんだが、佇まいといい口調といい……歳を全く感じさせない風格の持主だ。

 

 「は、はい!Afterglowといいます!今日はよろしくお願いします!」

 

 「「「「「お願いします!」」」」」

 

 Afterglowのリーダーであるひまりちゃんが初めに挨拶し、みんなが後に続く。

 

 「奥でうちのスタッフが待ってるから、早く入りな」

 

 「Afterglowのみなさんはこちらです!」

 

 ボクたちはさっきオーナーが出てきた部屋に入り、オーナーもボクたちに続く形で中に入った。

 

 「わぁ〜っ! 誰もいないスタジオだ〜!」

 

 「そりゃ当たり前だろ」

 

 ひまりちゃんが驚くのも無理はない。

 いつもなら、ボクたちは超満員の観客席で演奏者を見ている。

 しかし、今日は違う。ボクたちは演奏者として、オーナー……審査員が一人しかいないステージで演奏するのだ。

 

 「ドラムとキーボードはそこにあるやつを使いな。アンプとマイクも用意してる。音出し」

 

 「はい! ありがとうございます!」

 

 ボクたちはステージに上がり演奏の準備をする。

 そこでただ一人、ステージに立ったまま一人しかいない観客席を眺めてるメンバーの姿があった。

 

 「……蘭? どうしたの?」

 

 「いや、なんでもない……ごめん、すぐに準備始める」

 

 そうボクに振り向いて告げた。

 その時の顔はどこか嬉しそうで、目に涙を浮かべていたように見えた。初めてステージに立てたとーー。

 しかし、他のメンバーはどこか……緊張や不安で表情が硬い。

 

 「準備できました、審査お願いします」

 

 「「「「「お願いします!」」」」」

 

 「よし、準備ができたなら始めな」

 

 「それじゃあみんな……いつも通りいくよ。怖がることなんて何もない、あたしたちのありのままを全部出すよ」

 

 蘭のその一言でメンバー全員の顔に、いつも通りの笑顔が戻った。

 これで怖いものは何もない。全員で力を合わせて最高の音を奏でる。

 

 「聞いてください、『That is How I Roll!』」

 

 ボクたちにとって初めてのオリジナル曲、Afterglowの原点。

 

 ボクたちは審査のことを忘れ、無我夢中で演奏した。この歌詞に詰められたボクたちの思いを、審査員であるオーナーに届けるためにーー。

 

 「ご静聴、ありがとうございました」

 

 蘭の挨拶が終わり、今日のボクたちの演奏が幕を閉じた。

 演奏中、オーナーはボクたち1人1人をじっと見つめ演奏を終始無言で聴いていた。

 

 「……まずはキーボード、もっと個性を出しな。アンタはそつなくこなしてるようだが、それだけじゃダメだ。もっと工夫しな」

 

 「は、はいっ!」

 

 「ベースとドラムは勢いで誤魔化しすぎだ。銀髪のアンタはテンポが他より遅い」

 

 「「「はいっ!」」」

 

 「赤メッシュのアンタ、ギターはかなり上達してる。だが、演奏中に下を向きすぎだ」

 

 「はい、気をつけます」

 

 「ボーカルのアンタは、低音に少し不安があるように思える。ちゃんと発声練習しな」

 

 「はいっ!」

 

 ボクたちに挙げられた指摘。

 それは、ボクたちの練習中に出なかった改善点が殆どだった。音楽のプロだからこそできるアドバイス、この人の経験値は半端じゃない。

 

 オーナーは一呼吸おき、ボクたちに総合評価を伝える。

 

 「各々はまだ課題がたくさんある。だが……その中でも最も気になったことがある。この歌詞を書いたのは誰だ?」

 

 「はい、あたしが書きました。よければ、さっき歌った歌詞あるので読んでください」

 

 蘭が『That is How I Roll!』の歌詞をオーナーに渡す。

 オーナーは服のポケットから老眼鏡を取り出し、それを夢中で読み始めた。

 

 「……歌詞に込められた思い、しっかりと受け取った。そこで1つ聞きたい。アンタたちはやりきったかい?」

 

 オーナーからの突発的な質問。

 だが、ボクたち6人に迷いはなかった。

 

 「「「「「「はい! やりきりました!」」」」」」

 

 常に厳格だった表情を浮かべていたオーナーが少しだけ笑みを浮かべた。

 

 「合格。次のライブも期待している」

 

 瞬間、気が緩んだのか蘭が床にヘタリ込む。すぐにみんなが駆け寄るが、その顔は笑顔で満ち足りていて、嬉し涙をこぼしていた。それにつられ、みんなも抱き合って喜びを分かち合った。

 

 Afterglow ライブに出演決定ーー。

 

 

 

 そして2日後、ライブ本番の日を迎える。

 ライブは夕方の15時から17時だが、出演者は昼の13時には集合しないといけない。

 今回はラストライブということもあり、出演するバンドの数も非常に多い。リハーサールだけでも相当の時間を有するのだ。

 

 「蘭、葵? 忘れ物はない?」

 

 「大丈夫だよ、母さん……それじゃあ行ってくるね」

 

 「私も観に行かせてもらう。二人の練習の成果を私に見せてくれ」

 

 「ありがと、父さん、母さん! ボクたち頑張ってくるね!」

 

 両親に軽くお礼を言い、家を後にする。

 今日のライブには、Afterglowのメンバーの保護者が全員くるらしい。羽沢喫茶店も今日はライブのために一時閉店しているのだとか……。

 いつもの集合場所に6人集まりライブ会場であるSPACEを目指す。

 

 「……なに、あの人数……」

 

 SPACEに到着し店員に案内された楽屋に入ると、そこには何十組ものグループがいた……と、ひまりちゃんが言う。

 

 「おいおい、冗談はよせよ?ひまり」

 

 「ホントだって!! 巴ものぞいてみてよ!」

 

 「あぁ、こんなところで怖気付いていたらライブなんてできないからな!」

 

 そう言い、巴ちゃんは扉を開け楽屋に1人入って行った。

 ……しかし、数十秒もしないうちに巴ちゃんがどこか青ざめた顔をして部屋から出てきた。

 

 「……なぁ、100人ぐらいはいたぞ……」

 

 「ひ……100人……??」

 

 つぐみちゃんもその数字に驚愕してる様子。

 

 「観客はこれの2倍、3倍いるんだよ? こんなところで怯えてないで、早く入るよ」

 

 「モカちゃんもいくよ〜」

 

 どんな場面にいようと、2人はいつも通りの2人だった。ボクたちも2人に続き楽屋に入る。

 そこには、今までのライブで見たことないグループが2つあった。

 

 1つは4人組で、お揃いのTシャツには『CHISPA』と文字が刻まれていた。恐らくグループ名だろう。

 

 もう1つは5人組で、ボクたちと同じようにドアを開けたり閉めたりしていた。お揃いの衣装には『Poppin' Party』とこれもグループ名が刻まれていた。

 その中には、Glitter* GreenやRoseliaなどの有名グループの姿もあった。

 

 「全員、注目」

 

 ガヤガヤとしていた楽屋内が一気に静まり返る。その声の主は誰であろう、この店の、SPACEのオーナーだ。

 

 「今日がここでやる最後のライブだ。急に店を閉めると言ったがアタシは後悔はない。アンタたちも、他のお客の為にもしっかりやりきりな」

 

 オーナーのその言葉に、楽屋にいた全員が元気よく返事をした。

 そして、ボクはあることに気づく

 

 (あれ……?男の人ってボクだけなの……?)

 

 

 蘭side

 Afterglowの順番は前から4番目。

 今は、2番目であるCHISPAが演奏してる。あたしたちが楽屋からステージに行くための通路の近くに立っていると、次に演奏するグループのリーダーがあたしたちに話しかけてきた。

 

 「私は戸山 香澄!気軽に香澄でよろしく!お互い最高の演奏をしようね!」

 

 少し髪型に特徴のある女の子に手を差し出され、握手を求められた。

 

 「Afterglowの美竹 蘭です。その……よろしくっ」

 

 あたしはその握手に応対した。性格は、ひまり似かな……?

 

 「おっ! モカと巴じゃん、ヤッホ〜!」

 

 「さーや〜、ヤッホ〜」

 

 「久しぶりだな、沙綾!」

 

 モカちゃんと巴ちゃんには共通の知り合いがいるらしい。

 

 「ほら、香澄、沙綾。そろそろ向こうの演奏が終わるぞ」

 

 「あ! ホントだっ! それじゃあ行ってきま〜す」

 

 あたしたちにそう告げたあと、謎の掛け声とともに香澄たちはステージに上がった。

 演奏が始まり、しばらくするとひまりがある事を提案してきた。

 

 「ねぇねぇ! わたしたちも『ポピパ!ピポパ!』ってやつやってみない!?」

 

 「ひーちゃん、すぐに便乗しない〜」

 

 「うん、ボクたちには少し向かないかもね、あははっ」

 

 「そ、そんなぁ〜、葵くんまで〜!!

 

 苦笑いを浮かべる葵と、頬を膨らませて葵をポカポカと叩いているひまり。

 何度見てもこのやり取りは和むねーー。

 

 「ほら、向こうの演奏もうすぐ終わるよ。そろそろ準備して」

 

 あたしの声に合わせみんなもスタンバイする。

 香澄たちがステージから降りてきて、今度はハイタッチを交わす。

 

 「お疲れ様。最高の演奏だったよ」

 

 「ありがとっ! みんなも頑張ってね!」

 

 香澄たちが楽屋で祝福されている中、あたしたちはステージ横で円になった。

 

 「初めての観客ありのライブ。みんな、いつも通りいくよ」

 

 「「「「「おぉ〜!」」」」」

 

 それぞれが位置につき、ステージに光が灯る。

 

 「こんにちは、Afterglowです。いつも通りの、最高の演奏をします」

 

 観客からは、拍手と歓声が湧き上がった。

 その観客の中には、Afterglow全員の家族が固まって見にきていた。

 

 「聞いてください、『True color』」

 

 この曲は、林間学校の時にあたしが葵のために作った曲。

 あたしは絶対に、この曲を最初で最後のSPACEのステージで歌いたかった。

 今日、想いを伝える相手は葵じゃない。オーナーに、Afterglowに、そしてここまで育ててくれた両親に感謝の思いを込めて歌うーー。

 

 「ご静聴、ありがとうございました」

 

 「「「「「ありがとうございました!」」」」」

 

 つぐみのキーボード。

 ひまりのベース。

 巴のドラム。

 モカのギター。

 葵の歌声。全て、自分たちの満足のいく演奏ができた。悔いは1つもない。あたしたちはSPACEで最高の演奏ができたーー。

 

 

 葵side

 ライブ後、つぐみちゃんの家で祝杯をあげることになった。もちろんAfterglowの貸切で。

 父さんはと言うと、初めて見るボクたちの演奏に心を打たれたらしく、ライブ途中に泣いていたと母さんから聞いた。

 父さんは「泣いていない」の一点張りだったが、目が少し赤くなっていた。……こう言う素直じゃないところは蘭にそっくりだ。

 

 ご飯も食べ終え、みんなとワイワイ騒いでいふと1人店の外に出る影を見た。

 その影を追うと、そこには夜風に当たり黄昏ていた蘭の姿があった。

 

 「どうしたの? 蘭?」

 

 「……葵? ちょっと疲れてきたから外で休憩してた」

 

 「そっか、まぁ騒ぎたくなるのも分かる気がするよ。あ、オレンジジュース飲む?」

 

 ボクは、グラスに入ったオレンジジュースを蘭に差し出すとそれを受け取り、少しだけ口に含んだ。

 

 「ありがとっ」

 

 「大したことじゃないよ。それにしても、今日のライブのこと、今でも頭の中に残ってるよ」

 

 「そうだね、あたしも今までの演奏の中で一番印象に残ってるよ」

 

 しばらくの沈黙が続き、蘭が再び口を開く。

 

 「葵が背中を押してくれなかったら、きっとみんなとバンドを組みなかった。ホントにありがとっ。言葉では表せないぐらい感謝してるよ」

 

 「ボクも同じ気持ちだよ! みんなとバンドできてすごい高校生活が充実してるしね! これからもよろし……」

 

 ボクの言葉を言い終わる前に、蘭がボクの唇に人差し指を立てたあと、そっとボクの頬にキスをした。

 

 「…………!?!?

 

 「言葉では言い表せないから……行動で示してみた……/////」

 

 ボクが言葉にならないような声を発すると、店の扉からひまりちゃんが出てきてそろそろお開きにすると言うことを知らされた。

 

 「この事は母さんたちには内緒ね? 葵、大好きだよ」

 

 ボクはしばらく、硬直したまま動くことができなかった。

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?

蘭がついに行動開始です笑笑 自分自身ドキドキさながら書いていきます笑笑

次回もお楽しみに〜
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