Afterglow 〜夕日に焦がれし恋心〜   作:山本イツキ

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どうもっ! 山本イツキです!

本編としては、蘭とひまりのその後のストーリーとなっています!

それでは、本編スタートです!


第26曲 恋色に染まる思い出 涙色に染まる思い出

 長いようで短かった体育祭が無事に終了した。ボクたちのクラスは、B組にあと数点ほど差をつけられ学年の優勝はB組になった。

 A組は学年で2位、全体では8位となった。  

 敗因はおそらく、ひまりちゃんの借り物競走での加点があったからだろうーーー。

 

 そしてボクたちは今、学校近くのファミリーレストランで体育祭の打ち上げをしていた。本来なら羽沢喫茶店で行うはずだったが、今日はボクたちの親同士だけで飲み会を開くとのことだったので場所を譲ることにした。

 

 「それじゃあ、今日はみんなお疲れさまでした!かんぱ〜い!」

 

 「「「「「かんぱーい!」」」」」

 

 巴ちゃんの乾杯の挨拶が終わり、ボクたちAfterglowだけの打ち上げが始まったーーー。

 

 「まぁなんと言っても、今日の主役はひまりと葵だよなぁ」

 

 「私も生徒会の席で見てたけど、すごいビックリしたかな?」

 

 「クラスで散々弄られたのに〜!!もうやめてぇ〜!!」

 

 ひまりちゃんが耳まで真っ赤にした顔を両手で覆い隠す。クラスでひまりちゃんがどんな目にあったのかはだいたい想像がつく。

 それでも、あの場で誰よりも驚いたのはボクなんだけどね……。

 

 「蘭〜、実の弟を親友に取られちゃいましたなぁ〜」

 

 「え……!? あ、あぁ、そうだね」

 

 「今日の事どう思うの〜?」

 

 「まぁひまりなら大丈夫……だと思う」

 

 「姉はこう仰ってるよ〜、あーく〜ん」

 

 「ははっ……ボクにどう反応しろと?」

 

 その後もボクとひまりちゃんへの、からかい混じりの会話は止まる事はなかった。

 

 夜21時を過ぎ、親たちを迎えに羽沢喫茶店へ寄った。金曜日の夜ということもあり、まだまだ盛り上がっているようだったのでつぐみちゃんと別れ各自帰宅することとなった。

 

 そしてその帰り道ーーー。

 みんなと別れ、蘭と2人きりになりお互い会話をすることもなく気まづい時間が過ぎていった。家に着いてからも特に話を交えることをなく互いの部屋に入った。

 

 普段から表情を出すタイプじゃないけど、今日はなんだか無理をしている気がする。少ししたら蘭の部屋に行ってみるかな……。

 

 

 

 

 

 蘭side

 

 「はぁ……今日はなんて日だろ……」

 

 制服のままベッドで横になる。

 ファミレスにいた時はみんなのテンションについていけたけど、ため息が止まらない。

 葵に対して、最近別の感情が湧いてきたところだったのに……いや、むしろひまりに感謝すべきだ。

 あたしたちはあくまで姉弟、それ以上でもそれ以下でもない。あたし自身それを理解している。

 

 それでもなんだろう?胸を締め付けられるようなこの痛みは……。部屋についてから、ポロポロと流している涙はこの痛みによるものなのかな?

 

 更には、走馬灯のように葵との思い出が頭の中でフラッシュバックされている。

 些細な事で喧嘩した事、父さんに一緒に叱られた事。そして、いつもキラキラした満面の笑みであたしの隣にいた葵の事……あたしの瞳から流れる涙は、止まることを知らない。

 

 そうだ、今はただ泣こう。溜め込んでいた涙を今流そう。きっと、このモヤモヤした気持ちも吹っ切れるはずだからーーー

 

 

 

 

 

 葵side

 部屋に入って着替えを済ませてからすぐに、お風呂を沸かしに行った。あれから20分ほど経ったからお風呂で体を洗っている間に湯船が溜まっているだろう。

 

 一番風呂を譲りに、蘭の部屋をノックし呼びかける。

 

 コンコンッ

 

 「蘭、起きてる? お風呂先に入って」

 

 ……返事がない。ドアノブに手をかけると部屋は空いているようだったので、断りを入れて蘭の部屋に入る。

 

 「蘭? お風呂……」

 

 ーーー思わず声が出なくなった。

 そこには、僅かながら声を上げ泣いている蘭の姿があった。

 ボクが部屋に入ったことに今気づいたのか、ゆっくりと体を起こし真っ赤になった目から流れる涙を拭った。

 

 「……蘭? どうしたの?」

 

 「……今は言えない。そっちこそどうしたの?」

 

 「お風呂、先に入って欲しいから呼びに来ただけだよ。それじゃあ、早めに入って……」

 

 ボクの言葉を遮るように蘭が後ろから服をギュッと掴み、動きを止めた。

 すると、蘭の口から衝撃な一言が飛び込んできた。

 

 「……葵も一緒にお風呂入って。今は1人になりたくないから……」

 

 「……えっ? ……えぇっ!?」

 

 

 

 

 

 ひまりside

 

 みんなと別れて、家に帰ってからどっと疲れがのしかかってきた。

 2階にあるわたしの部屋に入り、すぐにベッドで横になった。

 

 「今日は色々あったなぁ……」

 

 色々、本当に今日は15年の人生の中でもとても濃かった1日とも言える。

 今日の体育祭での出来事を1つ1つ思い出してみる。すると真っ先に出て来たのは、葵くんへの………カァッと真っ赤に染まった顔を思わず枕に伏せる。

 

 「言っちゃったんだ……わたし」

 

 好きな人に自分の気持ちをようやく伝えられたのだから、叫びたいほど嬉しいのは確かだ。

 しかしその反面、ずっと一緒に過ごした幼馴染との関係が崩れそうと考え、不安に襲われる。

 

 「わたしが葵くんと……つ、付き合うってなったら蘭から葵くんを奪うってことになるんだよね……」

 

 葵くんに自分の気持ちを伝えたことには全く後悔していない。自分の意思で決めたのだから。

 しかし、肝心なところを考えていなかった。葵くんと付き合うってことは、蘭から大切なものを1つ奪うということ。

 葵くんという、血で繋がった大切な家族をわたしは……わたしはーーー。

 

 「あれ……? なんでだろ、涙がこんなに溢れて……」

 

 葵くんに気持ちを伝えられた嬉しさ。

 蘭への申し訳なさ。

 これからのみんなとの関係の不安。

 

 すべてがこの涙となって流れ落ちる。ダメだ、今1人でいたら気持ちがもたない。嬉しいのに、嬉しいはずなのに……。

 

 すると、わたしの携帯に1つのメールが届いた。差出人は、巴からだった。

 

 『ひまり、今暇してるか?もし良かったら外で話せないか?』

 

 『うん!大丈夫だよ!通学途中にある、あそこの小さな公園で待ち合わせでいい?』

 

 『あぁ! 今すぐ向かうよ!』

 

 巴とのやり取りを終え、制服から私服に着替えてから大急ぎで家を飛び出すーーー。

 

 

 公園にはすでに巴の姿があり、小学生がよく遊んでいるブランコに腰掛けていた。

 

 「ごめん、巴! 待った?」

 

 「アタシも今来たところだよ。悪いな、こんな時間に飛び出して」

 

 「いや、わたしも誰かと話したいなぁって思ってたからすごい助かるよ。ところで、巴が話したい事って何?」

 

 「あぁ、少し気になったことがあってな」

 

 「気になった事って?」

 

 わたしが気になったことを聞いてみたが、巴はしばらく考えるように下を向き口を開こうとしなかった。

 

 「何? 言ってくれないとわからないよ?」

 

 わたしがいつもの笑顔でそう告げると、巴も決心したかのように口を開いた。

 

 「……まずは、葵に告白したことを心から祝福するよ。ホント、よく頑張ったよな」

 

 「えっ!? 急に改まってどうしたの?」

 

 すると、巴がまた黙り込む。その事について話したいのが明らかだ。

 

 「もぉ〜っ! 黙ってたらわからないよ〜!」

 

 「あ、あぁ、そうだよな。ごめんごめん。ひまりに1つ聞きたかったことがあったんだ」

 

 「聞きたかった事って?」

 

 巴は一呼吸置き、わたしにとって思いもよらないことを口にした。

 

 「ひまり……お前、蘭に遠慮してるだろ?」

 

 「えっ? それってどういう……?」

 

 「わかりやすいんだよ、ひまり。何年アタシたちと一緒にいると思ってるんだ?」

 

 「ちょっ!? 何言ってるかわからんないよ、巴?」

 

 「アタシとつぐは気づいてたぜ? ひまりがずっと葵のことが好きだったってことを」

 

 「えっ!? 何でそのことを!?」

 

 「だからこそ、今日の体育祭でこんな形になったけど葵に告白してくれてアタシは嬉しかった。でもな、ファミレスでみんなとご飯食べてる時に明らかに様子がおかしかったんだよ。特に、蘭と話してある時にな」

 

 やっぱり、幼馴染には隠し通せないな。わたしは観念し、巴にわたしの思いを全てぶつける事にした。

 

 「……うん、巴の言う通りだよ。告白したことは全く後悔してないよ、付き合うと決まったわけじゃないけど自分の気持ちを伝えられてすっごい嬉しかった」

 

 「だよな、ずっと溜め込んでいた気持ちを伝えられたんだからな」

 

 「うん、でも気づいたことがあるの。わたしが葵くんに告白することで、みんなとの関係が壊れそうで不安なこと。それから、蘭から大切な人を奪う事になるから申し訳ないと言うか……いまいち喜べないの。わたしって最低だよね、自分勝手で……」

 

 すると、巴が勢いよく立ち上がりわたしの両肩を強く掴む。

 

 「自分勝手なわけないだろっ!!ひまりが葵に恋愛感情を持って、それを本人に打ち明けたんだ! それの何が悪い!? 蘭が何と言おうと、Afterglowのメンバー全員を敵に回したとしてもアタシはひまりの味方だ! 」

 

 巴の魂の言葉に、抑えていた涙が溢れ出てきた。

 

 「巴っ……わたし、葵くんを好きになってもいいんだよね? みんなとこれからも仲良くいられるんだよね?」

 

 「当たり前だ!アタシたちは『夕日に誓って ズッ友』なんだろ?ひまりは人が良すぎるんだよ、全く……」

 

 すると巴の瞳からも涙が出てくる。わたしたちは、しばらく抱き合ったまま涙が枯れるまで泣き続けた。

 

 葵side

 

 蘭からの唐突な提案。年頃の男女が一緒にお風呂に入るなんて……。いくら姉弟だからといって、いや、姉弟だからこそこういう事には気を使わなくてはいけないだろう。

 

 「蘭、いくらなんでもそれだけは……」

 

 「お願い……今頼れるのは葵しかいないの」

 

 蘭は、掴んでいた服をさらに強く握る。

 顔は伏せていてよく見えないけど、どれだけ本気なのかはすぐにわかった。

 

 「……蘭がそうしたいならボクは構わないよ。じゃあ、ボクが先に入るから蘭は少し待ってから入ってね」

 

 「……いやだ、一緒に入るの」

 

 「ちょっと……!? 流石にボク怒るよ!」

 

 「お願い……お願いだから……」

 

 服を掴んでいた右手が離れたと思いきや、後ろからボクを抱いて来た。力強く、さっきよりも何倍も。

 

 「もう! 分かったから、早く行くよ! 父さんと母さんに見られたら一大事じゃ済まないからね!!」

 

 そう言い、ボクと蘭は脱衣所へと向かう。

 

 抜くを脱いでいる時も、なるべく蘭には視線を向けないように細心の注意を払う。

 パサッ、パサッと脱いだ服が床に落ちる音だけが部屋に鳴る。

 

 「今更だけど、本当にいいの?ボクなんかと……」

 

 「……うん、葵じゃなきゃ嫌なの」

 

 ボクが先に、蘭がその後に続く形でお風呂場に入った。

 お風呂場が広いこともあり、ボクと蘭は互いに違う方向に歩き出し、自分の体を洗う。

 

 蘭から話を持ち出すことは全くなく、ただただ時間が過ぎていく。頭も体も洗い終え、ボクが先に湯船に浸かり数分すると、蘭も湯船に浸かりボクと背中を合わせてくる。

 布越しなら何度も経験があるのだが、素肌での背中合わせは当然ながら初めてだ。

 

 お風呂に入ってからの数十分の沈黙を破るかのように蘭は口を開く。

 

 「今日は……体育祭、楽しかったね」

 

 「そうだね、クラスで一致団結できた感じがしたよね」

 

 「……優勝したかったなぁ」

 

 「ボクもだよ……」

 

 数秒の沈黙後、ボクは疑問になっていたことを蘭に聞いてみる事にした。

 

 「さっきどうしたのか聞いた時、今は無理って言ってたけど……今は言えそう?」

 

 「……うん、大丈夫。全部話すよ」

 

 蘭は一呼吸置き、ことの全てを話してくれた。

 

 「ひまりが借り物競走の時に、葵に告白したよね?」

 

 「……うん、ボクはそう捉えているよ」

 

 「あの時、あたしは心からひまりに祝福する反面、怒りというか……憎しみみたいな感情が湧いて来たの」

 

 「それはどうして?」

 

 「ずっと一緒にいた葵が、ひまりに奪われてしまうんだなって気がしたの。あたしはそれが耐えられなかった。葵のおかげでバンドをすることを決意できたし、今の高校生活はすごい充実してる。だから、葵がいなくなったらあたし……どうなるのかなって不安になって押しつぶされてた」

 

 「そうだったんだ……」

 

 「うん……なんか変だよね、葵があたしのものみたいになってて。生まれて来てからずっと一緒だったから、いなくなるってどうしても考えられないんだよね……」

 

 「いなくなるっていうのは具体的にどういうこと?」

 

 「ひまりと付き合って、あたしのことを忘れちゃんじゃないかなって思って。やっぱり恋人って大事じゃない?もし、あたし以上の存在がいたならもう……あたしなんて、葵にとってはいらない存在じゃないかなって……」

 

 ボクは合わせていた背中を離れ、蘭のいる方を向き後ろからそっと抱いた。

 すると、体育座りをしていた蘭は少し背筋が伸び驚いている様子がうかがえた。

 

 「ボクは蘭のことを、いらない存在なんて思ったりしないよ。確かに、恋人ができたならその人も大事にするよ。でも、大事と思う事に大きいも小さいも無い。ボクは対等に接するよ、必ず。だから……ボクも普段しないような行動で蘭に示してみた」

 

 すると蘭は、悩んでいたことが全て吹っ飛んだかのように笑い出した。

 

 「ははは……葵、似合わなすぎだよ。それでも、すっごい安心した。葵のその言葉、信じてみるよ。その……ありがとっ」

 

 「あぁ! 約束するよ! これからも "いつも通り" よろしく!」

 

 ボクは立ち上がり、満面の笑みでそう答える。すると、蘭はボクから顔をそらし顔を赤らめている。

 

 「ねぇ、1つ言っていい?」

 

 「ん? どうしたの?」

 

 蘭は数秒黙り込み、顔がさらに赤みを増す。

 

 「立ち上がるのは構わないけど……前、隠しなよ」

 

 「えっ?……うわ〜っ!! ごめん!!」

 

 ボクと蘭は、恥ずかしさのあまり距離を取りしばらく湯船から上がることができなかった。

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?

今回は巴が大活躍でした!

ひまりはすごいいい子ですよね、普通ならこんなこと考えらないと思います。蘭も葵と無事、解決できてよかったです!

次回はモカちゃんが中心のお話になる予定です!

それではお楽しみに〜
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