Afterglow 〜夕日に焦がれし恋心〜   作:山本イツキ

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お久しぶりです! 山本イツキです!

実に2ヶ月ぶり……その間、ご愛読いただいた皆様には感謝しかないです!
これからもよろしくお願いします!

今回はクリスマス回です、それでは本編スタートです!


第33曲 羽沢珈琲店に 聖夜の彩りを

 ひまりちゃんと水族館に行った次の日の朝。世間はクリスマスだ何だと、大盛り上がりだ。

 そんな中ボクは、一睡もできなかったこの寝不足の両目をこすり、むくりとベッドから起き上がる。

 

 カーテンを全開にし、朝日を体全体で浴び、両腕を上げかるく背伸びをする。

 

 

 「寝られるわけないよね……」

 

 

 そう独り言を嘆き、ハァーッと長いため息をつく。

 心の中で "今日も頑張るぞ! えい、えい、おー!" と自分にエールを送り、部屋の扉を開ける───。

 

 

 「「……あっ」」

 

 

 と、同時に隣の部屋の扉も開いた。

 

 

 「おはよ、蘭。その様子だと、昨日はなかなか寝付けなかったようだね」

 

 

 蘭は片手で自分の顔に触れた後、少しムッとしながら答える。

 

 

 「うっさい……そっちこそ、目の下にクマができてるよ?」

 

 「こ、これは……そう! 今日みんなとクリスマスパーティーをするのが楽しみで眠れなかったんだよ!」

 

 「葵って嘘つくの下手だよね……昨日の夜からずーっと、喜んでるような、うなされてるような変な声出してたよ。おかげで全然眠れなかったんだからね」

 

 「なっ!? この部屋の壁ってそんなに薄かったっけ……?」

 

 

 「冗談だから気にしないで。まぁ、あたしも似たような感じだったから」

 

 

 蘭は、クスリと笑みだけを残し、階段を降りていった。

 

 

 「……ん!? それってどういう意味!? ねぇ、蘭〜!!」

 

 

 その後、ボクの問いに、蘭が返事をすることは決してなかった。

 

 

 

 

 

 現在の時刻は、午前の9時。クリスマスパーティーは夜から羽沢珈琲店で行う予定……だったが、すでにボクたちは羽沢珈琲店に集合済みである。

 

 簡単にまとめると、つぐみちゃんのお母さんが急病で出られなくなってしまい、人手が足りなくなったらしい。

 そこでつぐみちゃんのお父さんが、つぐみちゃんの携帯を通じて1日だけボクたちにバイトを頼んで、今に至る。

 

 

 「みんな、今日はよろしくね!来てくれて本当に助かるよ……って! 目の下にクマが出来てるけど大丈夫!?」

 

 「「「まぁ……色々とありまして……」」」

 

 

 心配と驚きで慌てふためくつぐみちゃんに対し、ボク、ひまりちゃん、蘭の3人はどんよりとした口調で答える。

 

 

 「ひょっとして〜、ひーちゃんとあーくん昨日ナニかあったんじゃないの〜?」

 

 「もぉ〜! モカ、からかわないでー!!」

 

 

 ネタにするように笑うモカちゃんに対して、ひまりちゃんはいつも以上に顔を赤くして怒っている。

 ……正直、ボクも言い返しようがなくて、苦笑を浮かべているだけだった。

 今も思い出すだけで、心臓がうるさいくらいに脈打っている。

 

 

 「それはそうと、蘭はどうしたんだ?」

 

 「別に……何も……」

 

 「蘭は昨日、モカちゃんと一緒にいたもんね〜。きっと、今日が楽しみで寝られなかったんだよ〜」

 

 「モカ……! 葵と同じこと言わないで!」

 

 「おぉ〜、意思疎通〜」

 

 

 しばらくみんなで話していると、店の奥の扉からつぐみちゃんのお父さんが出てきた。

 いつも通りのダンディな服装と口調で、ボクたちに挨拶した後、キッチンで仕込みを始めた。それと同時に、つぐみちゃんも仕事の内容を説明し始めた。

 

 

 「えっと、内容は大きく分けて2つ。お父さんと一緒にキッチンに立つ "料理人" と、私と一緒に注文をとったり料理を出す "ホール" だよ!今日はクリスマス限定のパンケーキを出す予定だから、かなりのお客様が来店する予定だよ! 」

 

 

 羽沢珈琲店のTwitter、店頭でのチラシ配りでの宣伝のおかげで、今日の限定パンケーキの事はかなり話題になっている。

 一昨年はガトーショコラ、去年はフルーツタルトを出して、いずれも大好評で雑誌にも掲載されたことがある。

 

 

 「じゃあ、ひまりと葵は料理人で決まりだね」

 

 「「えっ!? なんでなの、蘭!?」」

 

 蘭は、やれやれという感じで続けた。

 

 「2人は料理得意だし、なにせ……あれだからさ」

 

 「ちょっ!? 蘭、何を言って……///」

 

 「よしっ! 2人は料理人で決定だな!」

 

 「巴まで!?///」

 

 「はいは〜い、モカちゃんも料理したいなぁ〜」

 

 「モカはつまみ食いばかりするだろうから、キッチンには絶対出入り禁止」

 

 「そ、そんな〜」

 

 

 そっぽを向く蘭に対し、モカちゃんはヨヨヨーと嘆いて、蘭の腕を離そうとしない。

 結局は、休憩時に最高の賄いを出してくれるという、つぐみちゃんのお父さんからのお告げで事なきを得た。

 

 開店30分前。羽沢珈琲店の制服に身を通し、新鮮さと少しばかりの違和感を感じる。

 

 普段はつぐみちゃんのお父さんが着用しているのを見ているだけで、それと同じものを着るとなると、話は別だ。

 みんなから散々『男の娘』とからかわれるボクに、この服装はどうだろうか?

 

 更衣室にあった大きな鏡で自分の用紙をチェックしていると、部屋の扉が勢いよく開かれた。

 

 

 「葵、入るぞ〜!」

 

 「ちょっと巴ちゃん!? ノックしないと葵くんに失礼だよ!!」

 

 

 巴ちゃんはボクの容姿を凝視したあと、ドッと笑い声をあげた。

 

 

 「あっはは、いつもより葵が大人っぽく見えるぞ!」

 

 「そう思ってるように聞こえないのはボクだけかな……つぐみちゃん?」

 

 「えっ!? えぇっと、意外性があるって巴ちゃんは言いたいんだと思うよ!うん!」

 

 

 言い切ったような顔をしているが、ボクにとっては全くフォローになっていない。そして、それを察したかのように、巴ちゃんは再び笑い声をあげた。

 巴ちゃんの笑い声が聞こえたのか、他のメンバーも男子更衣室に入ってきて、ボクの容姿を同じように凝視する。

 

 

 「おぉ〜、エモ〜い」

 

 

 モカちゃんの謎の一言。

 

 

 「葵……似合ってなさすぎ」

 

 

 蘭のストレートな一言。

 

 

 「わ、わたしはクールな感じが滲み出てて全然ありだと思うよ!カッコいい!!」

 

 

 ひまりちゃんの励ましの一言。

 

 

 「ボクのことはどうでもいいよ……それより、みんなエプロン似合ってるね!」

 

 「そ、そうかなぁ〜/// 」

 

 

 ボクの問いを遮るように、蘭はボクの手を引き男子更衣室を出た。

 それに続いて、他のメンバーも部屋を後にする。

 

 

 「よぉっし! 今日も1日頑張っちゃうぞ! えい、えい、お……」

 

 「おっしゃ、気合い入れていくか!」

 

 「つぐっていくよ〜」

 

 「う、うん!」

 

 「……って、ちょっと〜!!クリスマスぐらいみんなやってよ〜! 」

 

 

 ひまりちゃんの心からの叫びはみんなに届くことは決してなかった。

 

 

 

 

 キッチンに戻ってからは、つぐみちゃんのお父さんに簡単なメニュー作りを教わった。隠し味だとか、ルセットだとか……。一つ一つの料理に様々な工夫や思考が施されており、お父さんの羽沢珈琲店に対する思いや誇りといった感情を肌で感じられた。

 

 

 「二人とも、理解が早くて助かるよ」

 

 「わたしは普段からお菓子作りとかよくするんで、結構自信あります! ここの喫茶店の常連でもありますし!」

 

 

 自信満々に言うひまりちゃんに対し、つぐみちゃんのお父さんは静かに笑いながら話す。

 

 

 「ひまりくんの味覚には、いつもお世話になっているね。葵くんも普段はこういうことするのかい?」

 

 「和菓子ならまだしも洋菓子はあまり作る機会がないですね……。今日はたくさん学ばせて頂きます」

 

 「あぁ、君のご両親にも振舞ってみるといい。勿論、君のお姉さんにもね」

 

 

 ボクはニコッとした顔で返事をした後、決められた配置についた。お菓子の類はひまりちゃん、その他の料理をボク、盛り付けやコーヒーを淹れるのはつぐみちゃんのお父さんが担当することになった。

 

 開店まで残り0分。

 店の前はすでに行列ができていた。

 

 「羽沢珈琲店、開店です!」

 

 つぐみちゃんの一言で、大勢のお客様が来店し、店内はあっという間に人で埋め尽くされた。

 

 「ご注文受け付けます!」

 「いらっしゃいませ〜、コーヒーはいかがですか〜?」

 「えっと……い、いらっしゃいませ……お席にご案内します」

 「限定パンケーキが4つ! ナポリタン1つ! キリマンジャロ2つ、オーダー入りました!葵、ひまり、頼んだぞ!」

 

 瞬く間に、大量のオーダーが厨房内に飛び交う。

 ナポリタンに使う調理器具良し、材料良し、レシピも頭に入っている。

 大丈夫、大丈夫と自分に言い聞かせ心を落ち着かせる。

 

 「よぉ〜っし!ひまりちゃんパワー全開でいくよ!! 巴、待っててね!!」

 

 「こっちもナポリタンの調理入ります! 時間ができたら、ひまりちゃんの方も手伝います!」

 

 Afterglowの、聖夜の戦いが幕を開けた───。

 

 

 

 

 

 開店から2時間程が経過した。

 ピークは完全に過ぎ、今はキッチンとホールを一人ずつで対応できる状態だ。

 つぐみちゃんとお父さんが店に残り、ボク達は喫茶店奥にある部屋で休憩を取っている。

 

 

 「なんか……ドッと疲れた……」

 

 

 蘭が開口一番、机にひれ伏した状態で話し出した。

 

 

 「まぁ、つぐはあの仕事量を一人でこなしてるからホント凄いよな」

 

 「つぐのつぐってる根源が、身にしみてわかった気がする〜」

 

 「生徒会にバンド、それからお店の手伝い……わたしには到底こなせないかも」

 

 「つぐみちゃんには本当、頭が下がるね」

 

 

 そうみんなと話していると、つぐみちゃん(当の本人)が部屋に入ってきた。

 

 

 「みんな、お疲れさ……」

 

 「つぐ〜〜!! いつもありがと〜〜!!」

 

 「ちょっ!? ひまりちゃん!?」

 

 

 ひまりちゃんは即座に立ち上がり、つぐみちゃんに泣きながら抱きついた。

 つぐみちゃんは、苦笑いしながらひまりちゃんの頭を撫でている。

 

 

 「15時まではわたしとお父さんで何とかなるから、みんなはしばらくここで待っててね! 今から賄いで、好きなものご馳走します!」

 

 

 全員で喜びの声をあげ、つぐみちゃんからもらったメニュー表をマジマジとみた。

 

 

 「あたしパンケーキとホットミルク〜♪」

 

 「わたしもパンケーキ! あと、紅茶!」

 

 「アタシは海鮮パスタ!」

 

 「ボクは、パンケーキとカフェオレにしようかな……蘭はどうする?」

 

 「ブラックコーヒーと抹茶のロールケーキでお願い」

 

 「ご注文承りました! 少々お待ちください♪」

 

 

 つぐみちゃんは笑顔で応対したあと、店内へと戻っていった。

 十数分もすると、ボク達が注文した全てのメニューが机に並んだ。言わずもがな、今年の限定メニューも最高に美味だった。

 

 

 

 

 

 「え〜っと、それじゃあみんな、お疲れ様!そして、メリークリスマ〜ス!!」

 

 

 ひまりちゃんの一言により、待ちに待ったクリスマスパーティが始まった。

 テーブルにズラリと並べられたご馳走に舌を唸らせながら、みんなで今日起きた出来事を談笑している。

 

 

 「そしたら巴が急に、"ラッシャイ!" なんて言い出すからビックリしたよ〜」

 

 「ついつい張り切りすぎてな」

 

 「ともちん目立ってたねぇ〜」

 

 「でも、お客様も褒めてたよ? 元気がいい子がいるって」

 

 「いやー! それほどでもないけどな!」

 

 「ともちん声大きいよ〜?」

 

 

 ドッと笑いが起きてる輪の中から一人外れ、窓からボーッと星空を眺める蘭に声をかけてみた。

 

 

 「蘭、今日も一日お疲れ様」

 

 「あ、うん。おつかれ」

 

 

 互いに労いの言葉をかけ、ジュースの入ったグラスをカチンと当てた。

 

 

 「夜空を見上げながら何を考えてたの?」

 

 

 蘭はグラスにそっと唇を添え、少量のジュースを飲んだあと再び視線を夜空に戻した。

 

 

 「なんか……今ならいい歌詞ができそうな気がする」

 

 

 それは何故か蘭に問うと、嬉しそうな顔で答えた。

 

 

 「普段体験できないことをしたり、普段見えない景色の中にいて……すごく新鮮だった」

 

 「もう10年以上も羽沢喫茶店でクリスマスパーティしてるけど、働くことなんてなかったからね」

 

 「声も仕草も口癖も、変わらないままのあたしたちだけど……どんな毎日も笑って過ごせてたよね」

 

 「うん! 今も昔もこれからも、みんな一緒に笑顔で彩られた毎日を送ろうね!」

 

 「もちろん。……みんな呼んでるみたいだし、あっちに混ざろっか」

 

 

 夜空に輝く星々に見劣りしない笑顔を見せてくれたあと、蘭はみんなの輪の中に入っていった。

 のちに、モカちゃんと巴ちゃんからの質問の嵐が吹き、つぐみちゃんとひまりちゃんは笑いながら見守っている。

 しかし、蘭が思わぬ一言を口にする。

 

 

 「これからの……あたしたちの将来の話」

 

 「……えっ? 蘭とあおいくん?(わたしたち)?」

 

 「うん、Afterglow(あたしたち)

 

 「あ、なるほど。二人が……あははは」

 

 「ねぇ、ひまり? 何か勘違いしてる……?」

 

 

 ひまりちゃんは少し青ざめた顔で蘭に聞いているが、蘭はいつも通り何食わぬ顔で答えている。

 明らかにひまりちゃんは、ボクと蘭が良からぬことを考えていると考えている。

 

 しかし、他の3人は蘭の言葉を理解したようだった。

 

 

 「噛み合ってるようで噛み合ってないな」

 

 「面白いからこのままにしとこ〜」

 

 「ちょっ!? モカちゃん!?」

 

 「蘭ちゃんも蘭ちゃんだけど、ひまりちゃんもひまりちゃんだよね」

 

 

 この後すぐにひまりちゃんの誤解を解き、クリスマスパーティを再開した……が、ご馳走は全てモカちゃんのお腹の中。

 食後にと出されたケーキも5人で1ホールなのに対し、モカちゃん用に用意された1ホールのケーキもモカちゃん1人で綺麗に平らげた。

 

 それはまさにブラックホール。

 辛味さえなければなんでも吸い込むその胃袋(ブラックホール)に、5人は改めて恐怖を覚えた。

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?

とりあえず、次話は年末年始の話を執筆しようかと思っています。

お楽しみに〜
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