Afterglow 〜夕日に焦がれし恋心〜   作:山本イツキ

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第34曲 気持ち新たに 初めの第一歩

 12月31日、大晦日。世界中の人々は皆、年納めで忙しいことだろう。

 テレビにおいては、毎年見ている紅白歌合戦や、お尻を叩かれたり蹴られたりされる年末恒例の笑ってはダメな番組を放送している。

 勿論、この番組は予約録画済だ。

 

 そんな時でもAfterglow(ボク達)はいつも通りの、笑顔で満ち溢れる時間をボク達の家でみんなと過ごしている。

 その仲の良さには、両親のみならずボク達も脱帽である。

 

 みんなが集まるきっかけを作ったのは意外にも、モカちゃんだった。

 曰く、『大晦日の夜に集まったついでに初詣に行こ〜♪』ということらしい。

 

 

 「それじゃ、"みんなと思い出を語ろうの会" を開催しまーす!!」

 

 「いぇーい、ヒューヒュー」

 

 

 声高らかにひまりちゃんの開会宣言がなされ、モカちゃんがわざとらしくそのテンションに乗っかった。

 

 

 「蘭ちゃん、。急に押しかけてごめんね……」

 

 「気にしなくていいよ、つぐみ」

 

 

 申し訳なさそうにするつぐみちゃんに対し、蘭は目を瞑り、俯き気味に答えた。

 しかし、口角が上がったその顔は心なしか、今日みんなで集まれたことへの喜びを感じているように見えた。

 

 現在の時刻は21時。

 蘭の部屋にみんなが集い、各々が持ってきたお菓子の袋を開け、うちの冷蔵庫から取り出したジュースをコップに注ぐ。

 

 

 「今年も色々あったよね〜」

 

 

 モカちゃんがポテトチップスをモリモリ食べながら呟いた。

 初めてづくしの毎日。そして、流れて行く時間は、まるで流れ星のように煌びやかであっという間だったと言えるだろう。

 

 

 「はいはーい! じゃあっ、みんなの今年で一番印象に残ってる出来事って何?」

 

 

 ひまりちゃんが右手を挙げ、体を前のめりにしながら聞いてきた。

 

 「アタシはやっぱり、初めてライブした時のことかな! あのドキドキと高揚感は、今でも鮮明に覚えてるよ」

 

 「私はこの前のクリスマスに、みんなと一緒に働いたことかな。お父さんもすごく楽しそうだったよ!」

 

 「モカちゃんは、獣耳が生えた時のことかな〜。みんなモフモフで可愛かった〜♪」

 

 「あたしはAfterglow結成の時かな。このメンバーで新しい思い出を作れると思って……嬉しかった」

 

 「ひーちゃんとあーくんは体育祭のことだよねぇ〜?」

 

 「こら〜っ! モカ!! わたしが言いたかったことを先に言わないの!! 」

 

 

 ぷりぷりと怒るひまりちゃんに対して、からかうようににモカちゃんが笑っている。

 ……ていうか、言うつもりだったんだ。ちょっとびっくり。

 

 

 「違ったか〜。じゃあ……二人で水族館に行った時のことかなぁ〜?」

 

 「ちょっ!? なんでそのこと知ってるの!? それも言おうと思ってたのに!!」

 

 「モカちゃんにかかればこんなものよ〜。ねぇ、蘭?」

 

 「なんでそれを今言うの……」

 

 

 蘭は、はぁーっと長いため息をついた。

 と言うことは、二人はその日の出来事はあらかた知っているということになる。

 今更隠し立てする必要もないが……人に見られるというのは恥ずかしいものだ。

 ……ていうか、それも言うつもりだったの? さらにびっくり

 

 

 「ねえねえ、あーくんは何かないの〜? 印象に残った思い出」

 

 

 モカちゃんはボクの顔を覗き込むように聞いてきた。それに続くように、他の4人の視線もボクに集まった。

 

 

 思い出……思い出か───。

 

 

 みんなの言う通り、去年とは比べ物にならないぐらい毎日が新鮮で刺激的だった。

 みんなとライブしていた時のことはもちろん、登下校や昼休み、演奏の練習や学校行事など、頭の中のフィルムはどれも、夜空に散らばる一等星のようにキラキラと輝いている。

 

 しかし、その中でも違った輝きをみせるフィルムがボクの脳裏に刺激を与える。

 

 

 

 『それは自分のことだよ!』と、ボクに訴えかけるように。

 

 

 ボクにとって一番印象に残ってる出来事、それは───

 

 

 

 

 「ひまりちゃんが、ボクに告白してくれたことかな」

 

 

 

 

 …………数秒の沈黙が流れる。

 

 

 

 ───反応は各々違ったが、ひまりちゃんもろともみんなから冷やかしを受ける。

 

 

 「ヒューヒュー、お似合いだね〜♪」

 

 「な、なんで二人は付き合ってないんだよ!?」

 

 「えっ!? 付き合ってなかったの?」

 

 「葵、ひまりの顔見てみて。これでもかってくらい真っ赤だよ」

 

 

 蘭の言葉通り、ひまりちゃんに顔を向けると、両手で耳まで真っ赤になった顔を懸命に隠していた。

 

 

 「うぅ……言わないで……/////」

 

 「みんな〜、あんまり言っちゃうと、ひーちゃんが幸せで死んじゃうよ〜?」

 

 「お、お願いだからやめて〜!///」

 

 「葵も、よくそういう事さらりと言えるよね……。中学の時とは大違い」

 

 「まぁ、嬉しかったのは事実だからね。それに、ボクだって成長するんです〜」

 

 

 不満げに頬を膨らませてそう言うと、蘭は声を出しながら笑い出し、みんなもそれに便乗して笑い出した。

 

 

 「……あ、もうこんな時間」

 

 

 蘭がそう呟くと同時に、みんなが一斉に部屋の時計を見た。

 

 

 「あれから1時間半も経ってるんだね……なんだかあっという間だよね!」

 

 「そうだな〜……」

 

 「そうだ、みんなお風呂はいって行く? 家でまだ入ってないでしょ?」

 

 「さーんせーい♪ それじゃ、あーくんも含めてみんなで一緒に…………」

 

 「「「「「入るわけない!/////」」」」」

 

 「だよね〜、あはは〜」

 

 「「「「「笑い事じゃない!///」」」」」

 

 

 

 

 

 

 「───はぁ、ホント勘弁してほしいよ、モカちゃん……」

 

 

 結果から言うと、みんなでお風呂に入ることはなくボクが先に入ることになった。

 最初は誰から入るか決まらず膠着状態だったが、モカちゃんがやけにボクが最初に入るように催促してきたので、それに甘えることにした。

 

 しかし……ああもわざとらしい態度をされたら疑いたくもなる。

 ()()()()()()()()()()()をしようとしていると───

 

 湯船の中で、みんながそんなことするはずないと、何度も何度も繰り返し言い続けて15分が経った。

 体がちっとも休まる気がしない。

 はぁーっと、おもむろにため息をつきお風呂を上がる───と同時に、風呂場前の扉から立ち去ろうとする足音が聞こえた。

 

 

 (ホント、わかりやすいんだから……)

 

 

 ボクは大きく息を吸い、逃げる途中であろう誰かに笑顔でこう叫んだ。

 

 

 「逃げても無駄だよー?みんなの考えてることはわかってるんだからね。怒るつもりもないから、黙ってそこで座っててね」

 

 

 1分と経たずに髪を乾かし、服を着ていつもより強めに扉を開ける。

 目の前には、縮こまってビクビクと震えているつぐみちゃんの姿があった。

 

 

 「えっと……ごめんね、怯えさせちゃって。本当に怒ってないから大丈夫だよ」

 

 「…………ご、ごめんなさぁぁぁい!!」

 

 

 つぐみちゃんが長い渡り廊下を上手に利用して、スライディング土下座を披露した。

 姿勢、角度、声量……どれも百点満点だね。お見事です! 心から賞賛を送ろう。

 

 

 「いや、本当にいいんだよ? ボクの部屋にいるであろう人たちにちょっとだけ注意してくるね」

 

 「私も共犯者だから、同行します……」

 

 

  ボクの部屋に近づくと、ガサゴソと物を漁っている音が聞こえる。

 何のためらいもなく、部屋の扉を開けた。

 

 

 「みんなはボクの部屋で何をしてるのかな?」

 

 

 開いた扉の部屋の中にはやはり、みんながいた。

 部屋にいた4人のうち3人はビクッと体を震わせ、顔をこっちに向けようとしなかった。しかしただ一人、モカちゃんは胸を張り笑いながらこう言った。

 

 

 「そんなの決まってるじゃーん。思春期の男子高校生の部屋にあるであろう()()かの本だよ〜」

 

 「ま、まぁ悪いとは思ったんだけどな。やっぱり気になるだろ! うん!」

 

 

 焦りからか、声が裏返り必死に肯定を求めてくる巴ちゃん。

 

 

 「あたしは最近、葵の部屋に入ってなかったから姉の使命を果たしに来ただけ」

 

 

 先ほどの焦りとは裏腹に、堂々と自分の意を唱える蘭。

 

 

 「わ、わたしも葵くんの好みが気になるかなぁ……なんて/////」

 

 「全く……ちゃんと言ってくれれば、調べても良かったのに。ちなみにだけど、そんないかがわしいものは、この部屋にはないよ」

 

 「え〜っ……つまんないな〜。でも、あーくんの携帯の履歴を調べれば───」

 

 「そんなもの残ってない!」

 

 モカちゃんがぶーっと不満げに頬を膨らませ、みんなも観念したかのようにナニか探しをやめた。

 

 

 「ほら、みんなもお風呂入ってきなよ」

 

 「葵くんまさか……蘭の部屋でわたしたちと同じようなことをしようと───」

 

 「するわけないでしょ!?///」

 

 「葵、もし何かしたら……」

 

 「わかってるよ!! 蘭の部屋には、単独では一歩も入らないよ!!」

 

 

 結局、2人と3人で別れてお風呂に入ることになり、誰かしらがボクを監視することとなった。

 

 

 

 

 

 みんながお風呂から上がったあとも、今年の思い出話は続いた。

 

 

 「それで巴がさぁ……あれ? つぐー?」

 

 「……………すぅ」

 

 「ありゃ、寝落ちしちゃったか」

 

 

 時計の針はもうすぐしたら12時を指す段階まで来ていた。今年が終わり、来年を迎えるまで刻一刻と迫っていく。

 

 

 「つぐ〜? 起きないとみんなと年越しできないよ〜?」

 

 「………はっ! ごめんね、普段はこんな時間に起きてることってないから……」

 

 つぐみちゃんが眠たそうに目をこする。

 他のみんなも、あくびをしたり、両手を上に伸ばして屈伸をしている。

 

 

 「あとほんのちょっとだよ! みんな〜、踏ん張れ〜!」

 

 「えい、えい、お〜」

 

 「……うそっ!? モカが乗ってくれた!?」

 

 

 

 そして、数分の時が流れ───

 

 

 

 「3…2…1……みんな、あけましておめでとうとう〜!!」

 

 「「「「「おめでとー!」」」」」

 

 

 「いやー、やっと年が明けたなー! どうする? 初詣行くか?」

 

 「今は人が多いだろうからやめとこうよ」

 

 「それもそうだね……あ! それじゃあ、参拝しない代わりに、ここで今年の願いをみんなで言い合わない?」

 

 

 みんなが頷き、賛成の意を示す。

 

 

 「モカちゃんは、今年も美味しいものと出会えますよーに」

 

 「アタシは、今年も楽しい祭りが開催されますよーに!」

 

 「私は、健康祈願!」

 

 「あたしは……今年もいつも通りのライブをみんなとできますように」

 

 「わたしは、部活のことと、ライブのことと、みんなのことと───」

 

 「ひーちゃん欲張りすぎー」

 

 

 みんながひまりちゃんをからかうように笑った後、ボクの番が来た。

 

 

 「ボクは、いつも通りみんなが笑顔で満ち溢れる生活が送れますよーに!」

 

 

 Afterglowの新たな物語が幕を開けた。

 

 




いかがだったでしょうか?

次回は有咲が登場予定!

お楽しみに〜
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