Afterglow 〜夕日に焦がれし恋心〜   作:山本イツキ

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2日連続の投稿となります!

このペースで投稿できたらなぁ………


ここからラストにかけて、ホラー要素を強めていきます。


第43曲 真・羽丘の七不思議 〜中編〜

 真っ暗な道を駆け抜け、たどり着いた学校は、異様な静けさをか持ち出していた。

 ビューっと吹く風が、木々をゆらゆらと揺らし、開けっ放しの校門には人の影が見えない。

 恐らく、ここにいるのは警備員さんを含め、ごく僅かだろう。

 

 学校に入る前から、みんなの顔も暗く沈む。

 

 

 「うわ………真っ暗………」

 

 「いかにも、何か出てきそうだよな………」

 

 「ちょっ、巴!? 変なこと言わないでよ!」

 

 「長居する訳にもいかないし、早くとりに行こう!」

 

 

 ボクたちは決心し、校舎に入る。

 案の定、校舎の中は在校生は愚か、警備員さんの姿も見えない。

 まるで、神隠しにでもあったように………。

 

 普段は生徒たちで賑わう廊下も、教室も、今は誰もいない。

 しんと静まり返ったその雰囲気に、ボクたちは思わず身震いする。

 あっという間に着くはずの教室も、今はなんだか遠くに感じる。

 それは、他のみんなも感じているようだ。

 

 やっとの思いでついた教室には、幸運なことに鍵がかけられておらず、そのまま入室する。

 

 

 「ボクの机には………なさそうだね………」

 

 「交番にも届けられてなかったし、間違いなく学校にあるんだよね?」

 

 「それじゃあ、わたしが携帯鳴らしてみるね!」

 

 

 ひまりちゃんはそういうと、ボクの携帯に電話をかける。

 一瞬の間の後、ボクの携帯の着信音が教室内に鳴り響き、みんなはその音にビクッと肩を震わた。

 

 そして、その音の鳴る方へ歩み寄る。

 

 

 「まさか、教壇の上に置いてるなんて…」

 

 「誰かが置いてくれたのかな?」

 

 「それにしては不自然じゃないか?」

 

 「ともかく、見つかってよかったね〜、あーくん」

 

 「うんっ!それじゃあ、羽沢珈琲店に…………って、あれ?」

 

 

 開いたボクの携帯に違和感を覚える。

 ボクの携帯のロック画面は普段、Afterglowの初ライブ後の集合写真にしてるはずなんだけど、おかしなものに変わっていた。

 

 

 「葵?どうしたの?」

 

 

 心配そうに見つめる蘭に、携帯の画面を見せる。

 

 

 「なにこれ…………。赤い文字で何か書いてある………」

 

 「どれどれ〜?」

 

 「『図書室ニ向カエ』?図書室に向かえってどういうことだ?」

 

 「誰がこんな悪戯をしたんだろ………」

 

 「それに、葵のパスワードを解除してこれに設定したってことだよね?趣味悪っ………」

 

 

 蘭の言ってること以外に、不思議な点は他にもある。

 まずは、漢字混じりのカタカナ表記だということ。

 これは、ホラー映画やサスペンス劇場でよく見られる文章体だ。

 赤色で表記したってことは、血を連想させ怖がらせたいのだろう。

 

 次に、撮影した日時だ。

 写真ホルダーには、ロック画面に使用された写真がきちんと保存されていた。

 今の時刻が19時なのに対し、この写真が保存された日時は18時59分。つまり、ほんの数分前に撮影したことになる。

 ボクたちが教室に入る時には、人の影も見えなかったし、気配も感じなかった。

 

 これはもう、不可思議では考えられない道の領域の話だ。

 信じ難いが、もうこれは確信したと言ってもいい。

 

 

 

 この学校には間違いなく、人ならざる者が存在していると─────。

 

 

 「それで、どうする?本当に図書室に行くのか?」

 

 「でも、向かえってことは何かしらあるってことだから、行ったほうがいいんじゃないかな……?」

 

 「モカちゃんもつぐにさんせーい」

 

 「えっ………!?ほ、ほんとに行くの………!?」

 

 「わ、わたしは反対!こんな不気味な文章、どう考えても怪しいよ!!」

 

 「アタシも反対だ!!これ以上、危険なことに首を突っ込まないほうがいいに決まってる!!」

 

 

 どうやら、賛成と反対で分かれたらしい。

 

 

 「ならボクは…………つぐみちゃんとモカちゃんと一緒に図書室に向かおうかな」

 

 「あ、葵……!?本気なの!?」

 

 「そうだよ!!危ないよ!!」

 

 「でも、悪戯にこんなことをするはずがないし、ボクは確かめたいと思う」

 

 「仕方ないな…………。蘭、ひまり、覚悟を決めよう」

 

 「ごめんね、ボクのわがままに付き合わせちゃって…………」

 

 「私は平気だよ!このまま帰っても、きっと眠れないだろうしね!」

 

 「モカちゃんはワクワクが止まらない〜♪」

 

 「ちっともワクワクしないし…………」

 

 

 多少強引ではあったが、全員で図書室に行くことになった。

 しかし、本当の恐怖が待っているのはこの後からである。

 

 

 

***

 

 

 

 明かりの付いていない廊下を懐中電灯で照らし、ボクたちは歩き続ける。

 聞こえるのはボク達の足音だけ。普段の学校生活からは考えられない現象だ。

 6人で一列に並び、前方にはボクが、後方にはつぐみちゃんが立ち、少しでも恐怖を紛らわす。

 

 顔を向けるとと、ボクの後ろにいるひまりちゃんは、ボクの両肩に捕まり、顔を埋める。

 蘭と巴ちゃんも同様に、周りを一切見ようとしない。

 モカちゃんはニコニコと笑みを浮かべ、この状況を楽しんでいる。

 つぐみちゃんは、ボクと目が合うとぎごちない笑みを浮かべ、大丈夫だと主張している。

 

 長い長い道のりを辿り、ようやく着いた図書室には何故か、明かりがついていた。

 そっと耳を当てると、何やら話し声が聞こえる。

 聞こえた声は、どこかで聞いたことのあるような…………そんなことが頭をよぎる。

 

 そして、ゆっくりとその扉を開ける。

 

 

 「わあああああああ!!!!」

 

 「うわああーーーーーーーっ!!!!」

 

 

 中にいた人と、ボク達の悲鳴が合わさる。

 

 

 「ま、まさか………!?漆黒の闇のの軍勢がこの………えーっと………」

 

 「あこ、リサ、少し落ち着け。よく見てみろ」

 

 「あなたたちは…………!」

 

 

 聞き覚えのあった声の主、それはRoseliaのみなさんによるものだった。

 真っ先に悲鳴を上げたリサさんは、雄樹夜さんの後ろに隠れ、顔だけを覗かせている。

 

 

 「な、なーんだ………ビックリした〜……」

 

 「いやいやー、ビックリしたのはこっちですよ〜。急に大きな声を出されたら、こっちもつられちゃいますよ〜」

 

 「あはは、ホントごめんね」

 

 

 モカちゃんがゆったりとした声で、リサさんに注意する。

 

 

 「それにしても、なんでRoseliaの皆さんがこんなところに?」

 

 「それがだな、あこが学校に弁当箱を忘れたと言い出して、取りに来ていたんだが……」

 

 「あこの机にね、変な紙が置いてあったんだ。ほらっ、これだよ」

 

 

 そう言ってあこちゃんが見せてくれたものは、ボクのロック画面に設定されていたものと全く同じだった。

 

 ────嫌な予感が、ますます確信に変わる。

 

 

 「そしてここにきたら、また新しい紙が置いてあった」

 

 「その紙に記されていたのが、『指定スル本ヲ、待チ人ト探セ』だったわ。全く、気味が悪いわ………」

 

 「それで、とりあえず4人で本を探して、人を待つことにしたの!」

 

 「結果的に、"待ち人" というのは恐らく、Afterglow(おまえたち)のことなんだろう。ちなみにだが、本は既に見つけてある。全部で6つだ。中はまだ見てない」

 

 その本のタイトルは以下のものである。

 

 ・地獄に通づる放送室の声

 ・さらなる奥地へ、無限廊下の道のり。

 ・使われなくなった音楽室のピアノ。

 ・処分予定の校長室の鏡。

 ・動き出す理科室の人体模型。

 ・女子トイレの花子さん。

 

 どれも、怪談にまつわるものであり、著者のも全て同じだった。

 

 

 「これを探して、ボクたちに何をして欲しいと思いますか?」

 

 「…………わからん。とりあえず、全て読んでみるか」

 

 「そうですね。それじゃあ、ひまりちゃんたちは何か手がかりがあるか探してもらってもいいかな?」

 

 「うんっ、わかった!」

 

 「葵くん!私もその本読ませて!」

 

 「つぐみちゃん………うん、いいよ」

 

 「心して読むことだな」

 

 「は、はいっ!!」

 

 

 タイトルから察するに、怖い話だという物だと想像がつく。

 だからこそ、誰もこの本を開こうとしなかったのだろう。

 それでも、読もうとするつぐみちゃんの勇気は本当に凄い。

 雄樹夜さんも素直に感心しているようだ。

 

 

 「それじゃあ、開くぞ」

 

 

 3人で別々の本を取り、決心してページを開くと、そこには悲劇に見舞われた主人公、もとい物たちのエピソードが描かれていた。

 幸い、ページ数は多くなく、数十分もあれば6つの本を全て読破する事ができた。

 

 ─────案の定、読み終わった後は決して心地よい感情にはなれず、嫌悪感に満たされる。

 死や恐怖に駆られた表現の数々は、まるでこの世の物とは思えない程の内容ばかりだ。

 余程の物好きでない限り、自分から読もうと思う人なんていないだろう。

 ひまりちゃんたちにこの本を見せないでよかったと、心底思う。

 

 そして、普段表情をあまり変えない雄樹夜さんも、何やら思うところがありそうな素振りを見せる。

 

 

 「…………雄樹夜さん?どうかしたんですか?

 

 「いや…………なんでもない。ただ、この境遇に見舞われた人や物たちは皆、どれほどの苦痛を味わったかと思うと、心が痛む」

 

 「私も………今まで読んできた本の中で一番悲しい物語だったと思います………」

 

 

 「確かに、普通じゃ考えられないよね………」

 

 「あぁ、()()ならな………」

 

 「えっ、それはどういう………?」

 

 意味深な言葉を残す雄樹夜さんに、問いただそうとしたその時、あこちゃんが溌剌とした声をあげる。

 

 

 「あのっ、みなさん!新しい紙、見つけちゃいました!」

 

 

 図書室内は、ホッとした空気になり、側にいた巴ちゃんは、あこちゃんの髪をわしゃわしゃと撫でる。

 

 

 「本当か!?でかしたぞ、あこ!流石アタシの妹だ!」

 

 「お手柄だね、あこ。よかったら見せてもらってもいいかしら?」

 

 「はい、どうぞ!ちなみにですけど、受付の椅子の下に落ちてました!」

 

 

 あこちゃんが持っていた紙を友希那さんが預かり、6つの本と同じ場所に置く。

 その紙には、また新たな指示が記されていた。

 

 

 『オ前タチノ目的ハ、タッタ一ツ。コノ学校ノ七不思議ノ解明ダ。コレヲ達成デキナイ限リ、オ前タチハ、学校カラ出ルコトガデキナイ』 

 

 『ソシテ、ココカラハ三ツノ班ニ別レテ動イテモラウ。

 美竹葵、上原ヒマリ、青葉モカ。

 美竹蘭、羽沢ツグミ、宇多川巴、宇多川アコ。

 湊友希那、湊雄樹夜、今井リサ。

 ノ、三組ダ』

 

 『ナヲ、回ル順番ハ問ワナイ。シカシ、途中デ投ゲ出シタリ、班ヲ守ラナケレバ、オ前タチの内ノ誰カガ不幸ナメニ会ウ。ソレジャア、健闘ヲ祈ル』

 

 

 これら全てが、最初と同じ赤い何かで綴られていた。

 思わず、ゾッとするような文章を見て、みんなの顔色が真っ青になる。

 

 

 「とにかく、これの差出人の言う通りにするのが妥当だな」

 

 「そうですね………」

 

 

 ここで、モカちゃんがある違和感に気づく。

 

 

 「七不思議っていう割には〜、本が六つしかないですよね〜?」

 

 「あっ………ホントだっ。モカ、良く気づいたね」

 

 「へへへ〜、そうでしょ〜っ?」

 

 

 モカちゃんの言う通り、解明するには後ひとつ分からないものがある。

 六つの本に準えた謎を解きつつ、最後の七不思議に辿り着け…………という差出人からのメッセージなのだろうか?

 

 謎は深まるばかり。頭がパンクしそうだ。

 

 

 「とにかく、早く事を済ませましょう。紗夜と燐子も心配してるだろうから、遅くなりそうだと連絡を入れるわ」

 

 「わ、私も、お父さんに電話します!少しだけ待っててください!」

 

 

 2人はそう言うと、ポケットから携帯を取り出し耳に当てる。

 ─────しかし、無情にも双方、電話に出ることがなかった。

 その原因はすぐに解明する。

 

 

 「ねぇ、ちょっと待って。携帯、圏外になってない?」

 

 

 蘭のその一言に、全員が携帯を開く。

 さっきまで繋がっていたはずの電波が遮断され、圏外と表示されていた。

 みんなの様子を察するに、同じ状況だといつことだろう。

 

 

 「なんで………なんでなの…………」

 

 「嘘でしょ………」

 

 「うぅ………わたしたちが何したっていうの………」

 

 

 怖いものが苦手な面々が涙目を浮かべる。

 正直、男であるボクも怖くて仕方がない。

 去年よりも更に、恐ろしさのレベルが増しているようにも感じる。

 

 

 「これじゃあ、互いに連絡を取り合うこともできないか………。なら、拠点をこの図書室にするぞ。何かあったら、ここに集合するようにしよう」

 

 「賛成です!」

 

 「異議なーし」

 

 

 雄樹夜さんの提案に全員が賛同する。

 

 

 「それで、雄樹夜さんはどこから行きますか?」

 

 「オレたちは理科室に行こう。葵は?」

 

 「ボクたちは…………無限廊下に行ってみます」

 

 「じゃ、じゃあ私たちは、音楽室のピアノを見に行ってみます!」

 

 

 六つの本を読んだ、ボク、雄樹夜さん、つぐみちゃんがそれぞれの班のリーダー担う。

 ビクビクと震えるメンバーたちを宥め、それぞれが懐中電灯を持ち、図書室を後にした。

 

 

 

***

 

 

 

 紗夜side

 

 

 湊さんたちが家を出て数時間が経過しました。しかし彼女たちは未だ、帰ってくる気配がない。

 今井さんも付いていながらこの有様とは………これは、帰ってきたら問いただしてみるしかなさそうね。

 

 

 「氷川さん…………そろそろ、休憩………しますか?」

 

 「そうですね。流石に、指が疲れてきました」

 

 

 私たちはソファに腰掛ける。

 あれから、各々で演奏をしてきましたが、イマイチ気持ちが乗りきれない。

 やはり、録画した音声や楽器の音色では、物足りない………そんな気がする。

 

 

 「それにしても、湊さんたちは遅いですね」

 

 「そうですね……….心配………です………」

 

 「今井さんに電話をかけてみますね。少し待っててください」

 

 「はい……。お願い……します…………」

 

 

 そう言い、今井さんに電話をかけたけど電話は全く繋がらない。

 普段なら3コール以内には必ず電話に出る彼女にしては、おかしな現象のように思える。

 どうやら白金さんも、察しがついたよう。

 

 

 「ダメ………でしたか…………?」

 

 「はい、何か変ですね………」

 

 

 すると、私の携帯に着信が入る。

 呼び出し人は湊くん。

 なぜ彼が電話を?だけど、タイミングがタイミングだけに考える間もなくその着信に応答する。

 

 

 「はい、氷川です。一体どうしたんーーーー」

 

 『何度ヤッテモ無駄ダ。私ハ簡単ニ消エヤシナイ。私ハ何度デモ蘇ル』

 

 「っ!?こ、これは…………!?」

 

 その声に驚愕する。

 人が発せられないような音域。

 

 なにより、彼がこんな手の込んだ悪戯をするわけがない。

 そこで私の考えが一つにまとまった。

 

 「氷川…………さん…………?」

 

 「白金さん!今すぐ羽丘高校に向かいましょう!!」

 

 「えっ…………それはどういう……………?」

 

 「さぁ、はやく!!」

 

 「は、はい…………!」

 

 

 困惑する白金さんには申し訳ないのだけれど、今は説明してる時間はない。

 彼らに何かあったのは間違いないのだから─────。




いかがだったでしょうか?

あんまり怖くなかったかな…………笑


次から更にグレードアップの予定です!!

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