何ヶ月の間が開き、やっとの投稿です
図書室でみんなと別れた後、ボクたちは無限廊下を目指した。
しかし他の七不思議とは違い、本に明確な場所の記載がなく、正直、当てもなく彷徨い続けているのが現状だ。
「ねーねー、あーくん。無限廊下ってなんなの〜?」
「簡単に説明すると、永遠に続く道のことだね。決して振り向いてはいけないんだ。振り向いたら最後、二度と元の道には戻れないらしいよ」
「に………二度と…………」
ボクの説明に、ひまりちゃんは息を飲む。
「そう言えば、去年の七不思議にはなかったよね〜?」
「あぁ、井戸の噂は瀬田先輩が犯人だったらしいから、変わったのかもしれないね。あと、十三階段と体育館のドリブル音もなくなってたよ。あと、幽霊も」
「十三階段って、巴ちんが言ってたやつだ〜」
「生徒の幽霊は…………また遊ぼうねってわたしの参考書に書いてた人…………だよね?」
「とにかく今回は、体育館が一番安全だと思うよ。7つ目がわからないけど、残り六つは全く関係ないからね」
そんな話を続けると、後ろにいるひまりちゃんがボクの肩をとんとんと軽く叩く。
「あのさ、葵くん。ちょっと行きたいところがあるんだけど…………いいかな?」
「えっ?ボクは別にいいけど………どうしたの?」
「それが…………ずっとさっきから我慢してたんだけど………もう限界なの………」
スカートを押さえ、もじもじとした仕草から察すると、おそらくアレだろうか。
モカちゃんもわかりきったように、ニヤニヤと笑みを浮かべている。
「ひーちゃん、恥ずかしがらずに言っちゃいなよ〜。トイレに行きたいんでしょ?」
「そ、そうだけど、恥ずかしいじゃん!」
「え〜っ、恥ずかしがることないじゃんー。だって2人は、モカちゃんたちの知らないところでアツイアツイ抱擁を─────」
「「それは関係ない!!」」
2人して怒ると、モカちゃんはケラケラと笑いボクたちを宥める。
どうやら、本当に限界らしくひまり ちゃんは近くにあったトイレに駆け込んだ。モカちゃんもひまりちゃんの後を追い、ボクは2人が出るまで待つことにした─────。
***
「ねぇ、モカ〜?聞こえてる〜?」
「もち〜っ!ひーちゃんの隣にいるよ〜!」
個室トイレには誰も入ることができないから、とてつもない孤独感に見舞わられる。
いくらスイッチを入れても明かりがつかないから、持ってる携帯電話のライトで灯りを灯す。
ありがとう携帯、愛してるよ。葵くんよりは下だけど。
「なんでトイレの電気つかないのかな………なんかすごく不便だよ………」
「そだね〜。もしかしたら、不審者が入ってて、モカちゃんたちのあんな姿やこんな姿を影でみてるのかもよ〜?」
「変なこと言わないで!!!」
「えへへ〜、ほんのモカちゃんジョークだよ〜」
最近の、モカのからかい方は度がすぎてる気がする。今度からきちんと注意しなくちゃ!
「ねーねー、ひーちゃん。ここって何階か覚えてる?」
「えっ?三階でしょ?」
「そうだね〜。それじゃあ、入ってる個室は奥から何番目?」
「えっと………奥から2番目だよ?」
モカが唐突に聞いてきた質問の意味がわからないけど、とりあえず答えてみる。
その含みのある言葉に、嫌な予感が漂う。
「ひーちゃん、聞いたことない?学校の怪談の定番…………トイレの花子さんのことを」
「トイレの…………花子さん……………」
モカのその一言に、身の毛がよだつような感覚に襲われる。
トイレの花子さん…………確か、後者の三階にある女子トイレの中で扉を三回ノックしてから花子さんに話しかけると、返事が返ってくるっていう七不思議だったはず。
わたしが入ってるのが奥から2番目の個室。モカが入ったのはわたしの隣だったはずだから─────まさか!?
「モカ…………つかぬことを聞くけど、今モカが入ってる個室って…………」
「えっとね〜、確か、奥から3番目だよ〜」
「─────い、今すぐそこから出て!!!七不思議だと、そこに花子さんがいるの!!!」
隣の壁を何度も思いっきり叩き、大声で叫びながらモカに危険を知らせる。
とにかく必死で、涙目を浮かべながら、幼馴染みの安否を確認する。
体中から冷や汗が滴り、心臓が緊張でバクバクと響く。
─────しかし、わたしの起こした行動にモカから一切の返答がない。
まるで、なにも聞こえないかのように。
「な、なに!?どうしたの、ひまりちゃん!!」
わたしの声を聞きつけてか、葵くんも女子トイレの中に入ってきたようだ。
わたしは大急ぎで事を済ませ、トイレからでる。
「葵くん!!モカが!!3番目の個室にいるの!!」
「3番目の女子トイレ…………花子さんか!!くそっ、何でボクは気づかなかったんだ……………!!」
どうやら、葵くんも理解したらしい。きっと、無限廊下のことでいっぱいになり、頭が回らなかったんだろう。
しかし、今は悔やんでる場合ではない。モカの安否が最優先だ。
「モカちゃん!?聞こえる!?!?返事をして!!」
「モカ!!!お願い!!!」
葵くんも、わたしと同様に扉をドンドンと強く叩く。
─────しかし、無情にもそこから返事は返ってこない。
これはもう……………モカの身に何か起きた事が確定的となった。
「モカちゃん…………なんで…………」
「モカ………モカ………うぅ……………」
落胆し、涙を流す葵くん。
わたしもそれにつられ、悲しみの雨が目から降り注いだ───────────
だけど、その空気感とは程遠い音が、トイレ内に鳴り響く。
聴きなれた、水の流れる音だ。
そして、その音が鳴り終わると同時に奥から4つ目の個室から、わたしたちの幼馴染みが姿を現した。
「もお〜、うるさいなぁ。トイレぐらい静かにさせてよ〜」
そのまったりとした声に、また別の涙を流す。安堵するわたしとは違い、彼は全くそう言う様子を見せない。
どこか、怒りに満ちた顔をしている
「うるさいなぁじゃない!!ふざけるのも大概にしてよ!!本当に心配したんだからね!!」
「ごめんなさぁい…………悪ふざけが過ぎました〜…………」
いつもとは違う葵くんに、流石のモカも固まる。
正直、隣にいるわたしも怒りに満ちた彼を見ると怖くて仕方ない。
それほど心配していたんだと、身に染みて感じる。
「ひまりちゃんも、勘違いしたらダメだよ?」
「で、でも!確かにモカが3番目の個室に入ったのは見たんだよ!?」
「あー………それなら途中で変えたんだ〜。トイレの花子さんのことは、頭に入ってたからさ〜」
「それなら先に言ってよ!!」
「ごめんて〜。今度何か奢るからさー、これで手打ちにしよ〜?」
「今度同じことしたら、本気で怒るよ」
「ヤバイ、葵くん、マジだよ!モカ!」
「はーい、気をつけまーす」
モカの気抜けた返事に、葵くんは頭を抱えた。モカの図太さには、心底感心する。
「それで〜、結局花子さんはいなかったの〜?」
「「…………あっ」」
確かに、ドアを壊すような強さで何度も叩いたけど、花子さんと話す手順を踏んでいない。
3人で深呼吸して息を整えると、代表して葵くんが扉を三回ノックする。
「花子さん、いらっしゃいますか?」
「…………………」
しかし、返事は返ってこない。
わたしたちが間違えて何度も叩いたから、怒ってどこかにいっちゃったのかな?
いや、幽霊なら怒るより、わたしたちを呪うこともできるよね……………と、頭の中で最悪の妄想をする。
「出てこないね〜」
「場所は合ってるはずだけど………」
「や、やっぱり七不思議は迷信だったんだよ!うんっ、信じない信じない!」
何も起きず安心に満ちていたその時───────。
「………………フフ」
「「……………!?」」
「へへへ返事返ってきた!?」
誰かの笑う声が聞こえる。2人もそれを察したような顔つきだ。
葵くんは、当初の通り手順を踏む。
「………えっと、確か願いを聞いてもらうんだったよね!?」
「欲しいもの〜?」
「も、もう何も考えられないよ〜!」
頭の中が真っ白だ。
さっきまで誰もいなかったはずの場所に誰かいると思うと、怖くて仕方ない。
立っているのが精一杯。
願いが本当に叶うと言うなら、この恐怖から早く解放されたい。
でもそんなことを願ってもこの謎は解明されないままで、花子さんがいるということだけが真実となる。
わたしたちに残されてる選択肢は、二つに一つだ。
「なら、モカちゃんは絶品のパンが食べた〜い♪」
モカがそう願うと、一つの紙袋がガサッと落ちてきた。
唐突の出来事に、肩をビクッとさせる。
「えぇっ!?ほ、ホントに何か出てきたよよ!?」
「おぉ〜。パンかなー♪」
「見てみるね」
葵くんが袋を手に取り、中を漁ると一本の長いフランスパンが出てきた。
どうやら、本当に願いは叶ったらしい。
「やった〜。パンだ〜〜♪」
モカは葵くんからパン受け取り、嬉しそうに掲げ小躍りをする。
「とりあえず、花子さんは実在した………ということでいいのかな?」
「う、うん。そういうことになるね………」
「いや〜、いい妖怪もいるものですな〜」
「感慨深くならないで!!」
「とりあえず、七不思議の一つは解明したし、早くここを出ようか。今更だけど、ボクが女子トイレにいるのって変だし………」
「あーくんなら問題なし〜」
「じょ、女子の制服着たら大丈夫だよ!」
「もうそれ犯罪だからね!?」
わたしたちにからかわれ、葵くんの顔が真っ赤になる。
「あっ、ちょっと待って!まだ何か入ってるよ!」
突如葵くんが声を上げる。
わたしたち……というかモカのお願いは叶ったはずだけど…………。
「あーくん、何が入ってたの〜?」
モカが興味津々で近づく。
わたしも恐る恐る近寄ると、袋の中には手鏡が入っていた。
「て、手鏡………?」
「誰もお願いなんてしてないよね?」
「………………!?」
「でも、手鏡か…………。そうだ、確かひまりちゃん、この前落としてヒビが入ったって言ってたよね?」
「そ、そうだけど。花子さんに貰うっていうのはなぁ…………」
葵くんのいってた通り、わたしはお気に入りだった手鏡を落として酷く落胆した。
新しいものを買うつもりだったから貰えるなら有り難いけど、花子さんからの贈り物だから感謝よりも恐怖の方が大きい。
「モカちゃん的にはいらないならここで捨てたらいいと思う〜」
「で、でもなぁ…………」
「せっかくだし、もらっておいてもいいと思うよ!」
「そ、そうだよね!うんっ、決めた!花子さん、ありがたくいただきます!」
「ちぇ〜」
葵くんから手渡された手鏡をブレザーのポケットにしまう。
「それじゃあそろそろ出よっか!早く蘭たちと合流しよう!」
「レッツゴ〜♪」
「お〜〜っ!」
3人揃って声高々に女子トイレから出る。
二つのうちの半分が解決したが、もう半分残っている。
一刻も早くここを出て、落ち着きを取り戻したい。心底そう思う。
そして、高まった気分も束の間。
わたしたちはとんでもない光景を目にする───────。
「な……………なんで…………!?」
「どうして……………道が…………!?」
「これはこれは、面白くなってきましたなぁ♪」
トイレから出ると、そこには、ただ長い一本道が続いてた。
いかがだったでしょうか?
次回は蘭たちの視点に移り変わります。