Afterglow 〜夕日に焦がれし恋心〜   作:山本イツキ

45 / 62
お久しぶりです、山本イツキです!

この数ヶ月間、色々ありましたが、本当に久しぶりの投稿です!

期間が空いて、作者自身内容をあまり覚えてないので感想等で教えていただけるとありがたいです


第45曲 つぐみたちの場合

 つぐみside

 

 葵くんたちと別れてから私たちは音楽室へと向かい歩き始めた。

 メンバーは蘭ちゃん、巴ちゃん、あこちゃんと私を含めた4人。

 …………正直、メンバー編成に偏りが生じてる気がする。

 蘭ちゃんと巴ちゃんは、去年の学園の出来事で怖がりというのが確認済み。

 更にはひまりちゃん共々一目散に逃げ出した前科も持っている。

 

 私自身、怖いものは苦手だ。急にびっくり系とかは特にダメ。雷がいい例だと思う。

 パニックに陥ってまた恥ずかしい姿を晒すのは絶対に避けたい。

 

 残るはあこちゃんだけど………年下の女の子を頼るのは気がひけるかな。

 でも今は率先して先頭を歩いてくれている。

 あこちゃん曰く『ワクワクするっ!』らしい。

 蘭ちゃんと巴ちゃんはまるで理解できないと言わんばかりに体を震わす。

 

 

 「つぐちん、音楽室ってどこにあるんだっけ?」

 

 

 懐中電灯で道を照らすあこちゃんが後ろに振り向き聞いてきた。

 

 

 「ここから一つ上の階に行って、右に曲がったところだよっ!」

 

 「その道のりも…………とてつもなく長いように感じるよ…………」

 

 

 いつもは元気いっぱいの巴ちゃんも、今は覇気が全く感じない。

 妹のあこちゃんの前で弱気な姿を見せないように頑張ってるみたいだけど、学校の怖さの方が優ってるようだ。

 

 

 「音楽室って去年、"That Is How I Roll!" が突然流れた…………あの…………」

 

 「おいっ、蘭!不吉な記憶を蘇らせるなよ!」

 

 「ご、ごめん………」

 

 

 去年廊下で耳にしたピアノの音。

 無人だったはずの音楽室から私たちが歌っていた曲が突如演奏され、みんなパニックに陥った。

 

 今でもそれはよく覚えている。

 私には思いつかない、即興を交えたその音はなんだか美しく思えた。

 誰が弾いたかわからないけど、是非とも習いたい。

 

 

 「あっ、あこちゃん!その階段を上がるよ!」

 

 「おっけー!…………あれ?お姉ちゃんと蘭ちゃんは来ないの?」

 

 

 視線を2人に向けると、両手を肘に当て少し青ざめた顔をしていた。

 

 

 「あの、さ…………アタシたちはここで待つから二人で見てきてくれないか…………?」

 

 「そんなこと言っちゃダメ!早く行くよ!」

 

 

 嫌がる二人をあこちゃんと一緒に手を引き、強引に連れ出す。

 心配だった階段も問題なく上り切り、音楽室へと辿り着く。

 普段は授業や吹奏楽の部活動で使われる教室で、何かしらの音は聞こえるこの部屋は、今は私たち以外誰もいない。

 

 シンと静まりかえったこの部屋の空気はなんだか重く感じる。

 その異様な空気感に臆病2人組は肩を寄り添い怯えた様子を見せた。

 

 

 「音楽室のピアノ、これが本当に人を食べちゃうのかな?」

 

 「人を……………」

 

 「食べる…………!?」

 

 

 あこちゃんの呟きに2人が敏感に反応する。

 

 

 「ゲームだとそんなキャラクターもいるんだよ!歯がすごいギザギザで、舌を出して追いかけてくるんだ〜!」

 

 「おいっあこ、これ以上その話を続けるなら、いくらアタシでも怒るぞ」

 

 「うぅ、ごめんなさい…………」

 

 

 あこちゃんの言葉に巴ちゃんが怒りの表情を浮かべた。

 人にはあまり強く言わない巴ちゃんだけど、この怖さも相まってか余裕がないようにも感じる。

 

 こんな時に一番頼りになるのはやっぱり──────ううん、この考え方はダメ。

 誰かに頼るんじゃなくて、私自身でなんとかしなくちゃ!

 

 

 「あこちゃんの言ってた通り、本にも同じことが書いてあったよ。確か、綺麗な音色が大好きで、下手な演奏をしちゃうとその演奏者を食べちゃうらしいらしいの」

 

 「つぐ、あこの言ったことを繰り返す意味あったの?」

 

 「ご、ごめんっ!私、どうかしてた………」

 

 「とにかく、もうこれはつぐに任せるしかないよな。アタシたち、誰もピアノを弾けないわけだし!」

 

 「お姉ちゃんに賛成!」

 

 「つぐみなら絶対大丈夫だと思うけど………もしもの時はあたしも…………」

 

 「大丈夫っ!ピアノも喜ぶ演奏をしてみるよ!」

 

 

 椅子の高さを調節して、鍵盤に手をかける。

 今から弾く曲は私たちのデビュー曲。

 去年は誰かが弾いた、アドリブ混じりのその音に驚かされた私だけど今は違う。

 1年間の努力を今、ここで──────。

 

 

 「…………どうだった、かな?」

 

 

 ジャスト4分の演奏を終え、息を少し切らしながらみんなの方を向く。

 

 

 「すごく良かったぞ!」

 

 「うん、悪くないね」

 

 「ピアノさんもすごく喜んでたよ!」

 

 

 みんなから称賛の声を浴びる。

 演奏した私が食べられることはなかったし、この都市伝説は "嘘" だという見解でいいのかな。

 

 それでも、内心少しホッとした。

 もしこの都市伝説が "真実" で、本物の幽霊が出てきたとしたら、太刀打ちすることは不可能だ。

 今の私たちには、妖怪退治をする幽霊族の少年もいなければ、幽霊を吸い取る掃除機も持っていない。

 

 今の私達にできることは、例え幽霊に出会したとしても気絶しないように心掛けることと、出会わないように祈ることだけだ。

 

 

 「みんなありがとう!とりあえず、一つ目は解決したから、次は校長室に行こっか」

 

 

 私たちは音楽室を後にする。

 そして、この時の私は知る由もなかった。

 

 

 この後に待ち受ける本当の恐怖を──────。

 

 

 

***

 

 

 

 音楽室を出た私たちは次の目的地である校長室へと足を踏み入れていた。

 生徒会の副会長を務めている私だからと言ったら何だけど、校長先生とはそれなりの面識がある。

 日奈先輩が生徒会長になってからだけど、学校側に迷惑がかかることが多くなったからそうならざるを得ない………と言ったらわかりやすいかな?

 だから、校長室にある大きな鏡のことも知っている。

 

 等身大近くある大きなその写し鏡は傷一つないぐらい綺麗な物で、本に書いてあった “処分予定" ではないとは思う。

 あくまで本のは空想上の話。

 校長室にある鏡はそれしか該当しないはずだ。

 

 

 「つぐちーん、校長室で何をするの〜?」

 

 

 あこちゃんが首を傾げながら聞いてくる。

 

 

 「この部屋にある大きな鏡を調べるんだよ。確か、校長先生の机の隣にあったはずだけど…………」

 

 「見当たらないねー」

 

 「おいおい、まさか勝手に移動したって言うんじゃないよな……………!?」

 

 「巴、いい加減落ち着いて」

 

 「こんな状況で落ち着いていられるかっ!」

 

 

 何時間もこの状況にさらされているせいか、蘭ちゃんはなんだか慣れてきているように見えるけど、巴ちゃんは相変わらずだ。

 顔も青ざめ、いつもの勢いはどこへ行ったのやら…………。

 

 

 「とりあえず、つぐみの言う通り大きな物なら簡単に見つかるでしょ?」

 

 「うん、この部屋にあるのは間違い無いんだけど、一つだけ注意点があるんだ」

 

 「注意点?」

 

 「その鏡をじっと見つめると鏡の中の自分と入れ替わってしまうらしいから、見つけても鏡を見つめないこと。できれば二人一組で行動するのがベストかも」

 

 「鏡の自分と入れ替わるって………おいおい、勘弁してくれよぉ…………」

 

 「それじゃあ、あたしとつぐみ、巴はあこと行動しようよ」

 

 「うんっ!あこ、さんせー!」

 

 「なんで蘭はそんな冷静になったんだよ…………」

 

 「えっ?なんでって言われても、こんな状態が何時間も続いたら感覚が麻痺するものじゃないの?」

 

 「こ、怖がらなくなった理由って、そう言うことだったんだ………」

 

 「まあ、あこみたいにはしゃいだりする余裕はないけど」

 

 「ええー?なんで寧ろみんなは、そんなにビクビクしてるの?」

 

 「あこがこんなにたくましく成長するなんて………アタシは嬉しいよ…………」

 

 

 巴ちゃんは感無量と言わんばかりに涙を流し、あこちゃんはえっへんと胸を張る。

 普段はあこちゃんを宥める機会が多い巴ちゃんだけど、今日はそうもいかないらしい。

 

 

 「蘭ちゃん、鏡は見つかった?」

 

 「ううん、どこにもない。そんなに大きい鏡ならすぐ見つかりそうなのに、変だよね」 

 

 「おかしいなぁ、たしかに机の後ろにあったはずなのに……………」

 

 「もうここは調べるところはなさそうだし、あたしも巴たちの方探してみるね」

 

 「うんっ、わかった!……………あれ?」

 

 

 私はあることに気がついた。

 普段ならこの学校は、下校時間までには全ての窓をカーテンで覆うはずなのに、校長室ではそれをしていない。

 たしか、防犯対策とかでやってるって先生から聞いたから、校長室も例外じゃないはず………。

 

 ましてや学校のトップがそのルールを破るとも考えにくい。

 

 私はカーテンの束を勢いよく解く。

 

 

 (やっぱりあった!)

 

 

 予想通り、それはあった。

 私より頭一つ分以上大きいその鏡は、まるでかくれんぼでもしているかのように身を潜めていた。

 

 

 (なんでこんな所に置いてあったのかな?それにしても、本当に大きい鏡だなぁ………)

 

 

 なんの変哲もない鏡だけど、ただそのサイズに魅入られる。

 私も家に鏡はあれど、この大きさのものは持っていない。

 高級な家にでも置いてそうな、そんな貫禄がある。

 

 

 (鏡も見つけたことだし、早く3人に伝えてこの部屋を出なくちゃっ。おーい!3人ともー、鏡見つかったよー!)

 

 

 大きな声を出してみたが3人は返事を返さない。

 おかしいな…………たしかにみんなこの部屋にいるはずなのに…………。

 

 もう一度、今度は大きく息を吸い言葉を発した。

 

 

 (みんなーー!!鏡あったよー!!)

 

 

 

 ─────またしてもみんなから返事がない。

 まさか、私を置いて部屋を出た………?

 

 いや、蘭ちゃんたちがそんな事をする人じゃないのは分かってる。

 でも、この状況は明らかに不自然だ。

 

 3人がいるであろう方向に顔を向けようとする─────。

 

 

 (あれ…………?なんで首が動かないの………?それに…………声も!?)

 

 

 気づいた時には()()()()()()

 私はこの大きな鏡の前にただ呆然と立ち、身動きひとつ取れない状態にまで陥ってしまっていた。

 

 すると、鏡の中の私が突如として不敵な笑みを浮かべとてつもなく低い声で話し始めた。

 

 

 「クスクスクス。コノ体ヲ乗っ取ルマデアト少シダ。ソレマデ余計ナコトハサセナイヨ。ダカラ─────トットト体ヲアケワタセ!羽沢ツグミ!!

 

 

 威圧感で押し潰されそうだ。

 だけど、私は挙動を一切許されない。

 

 

 

 怖い………………本当に怖い……………。

 

 

 

 今までなんとか堪えてきたけど、もう精神的に限界が来たようだ。

 目からはポロポロと涙が流れ、脳が恐怖で支配される。

 

 

 「アト30秒デコノ体ハオレノモノ。今カラ10秒経過シタラ、思考ガ停止スル。更ニ10秒経過スルト、五感ガ失ワレル。ソシテ10秒経過シタラ…………言ワナクテモ分カルヨナ?」

 

 

 鏡の中の私はまるで私の体を乗っ取るのが決まっているかのようにケラケラと楽しそうに話す。

 

 

 (そんな…………嘘だよね……………?)

 

 

 もうみんなと話すことができなくなるの?

 

 もうみんなとバンドできなくなるの?

 

 もうみんなと一緒に過ごせなくなるの?

 

 

 

 

 そんな言葉が脳裏をよぎる。

  

 

 

 

 嫌だ─────そんなの、絶対に嫌だよ!!

 

 

 

 決死の思いで体を動かそうとするも、やはり動かない。

 残り26秒。考えれるだけ考えて、最後の一滴まで知恵を絞る。

 

 

 (何か、何か方法は…………!?)

 

 

 いくら考えても何も思いつかない。

 手足も、指先も、表情ひとつ変えられぬまま、残り20秒を切った。

 

 

 「コレデオマエハ、タダノデクノボウダ。ドウダ?何モ考エララナクナッタ感想ハ………?オット、何ヲ言ッテモ分カラナインダッタナ!ハッハッハ!」

 

 

 もう、全てを諦めた。

 

 

 私は死を受け入れる────────

 

 

 

 

 「…………み!……………ぐみ!!」

 

 

 

 途切れ途切れに聞こえてくるその言葉は私の右耳から左耳へと通り過ぎる。

 

 私はもう、死んだんだ。

 何も考えられない。

 

 

 全てを投げ出したその時、突如私の体が床に倒れ込む。

 

 

 (なに…………?何が起きたの…………?)

 

 

 今起きてる状況が分からないでいると、私の視界に蘭ちゃんの姿が映り込む。

 

 

 「つぐみ!!」

 

 「ら、蘭ちゃん…………?」

 

 

 私が数分ぶりに発したその声は、涙ながらに、そして震えていた。

 考えられなくなったはずの脳が蘭ちゃんにこの事を伝えようと必死になって働いている。

 

 

 「その、鏡…………体を…………乗っ取る…………」

 

 「鏡?こ、これのこと!?」

 

 

 蘭ちゃんの指差す方に視線を向けると、鏡の中の私は驚きを隠せないと言った顔で私たちを見ていた。

 

 

 「つぐ!!生きてるか!?」

 

 「つぐちん!!大丈夫!?」

 

 

 蘭ちゃんに続いて巴ちゃんとあこちゃんも慌てて駆けつけてきた。

 

 

 「巴、あこ!この鏡が七不思議の一つらしい!」

 

 「あ、あれ!?つぐちんが二人いる!」

 

 「このクソ鏡っ!!よくもつぐに酷いことしてくれたな!!」

 

 

 蘭ちゃんが事細かく説明すると、あこちゃんは焦り、巴ちゃんは怒りをあらわにした。

 

 

 「アタシたちをこんな目に合わせやがって!二度とアタシたちの前に現れるなー!!」

 

 

 巴ちゃんは大声でそう叫び、素手で鏡を破壊した。

 鏡は半分以上が砕け落ち、もはや修繕不可能なほどにバラバラになってしまった。

 

 

 「ふぅ…………。コレでもう安心だな」

 

 「巴、いくらなんでもやりすぎ」

 

 「だって仕方ないだろ?アタシの幼馴染がこんな目に遭ってるのに黙ってるわけにはいかないだろ?」

 

 「お姉ちゃんかっこいい!」

 

 「はははっ、このぐらいお安い御用だ」

 

 

 そう追って巴ちゃんは胸を張った。

 さっきまでビクビクしてたのが嘘のような堂々っぷりだ。

 巴ちゃんは本当に強い。

 

 

 「みんな……………ありがとう……………」

 

 

 私は色々な感情が込み上げてきて、涙ながら感謝の言葉を発した。

 

 

 「怖かったよね。つぐみを一人にして本当にごめん………」

 

 「怖かった…………怖かったよぉ…………」

 

 

 涙が止まらない。

 

 

 「つぐちん、やっぱり無理してたんだね………。あこもごめん!全然気づかなかった………」

 

 「アタシも、一人でビビりまくってた………ホントごめん」

 

 「ううん、みんなが謝る必要はないよ。もう鏡の謎も解けたし、他の人たちと合流しよう」

 

 「うん、そうだね」

 

 「ああ、こっから先はもうアタシは大丈夫だ」

 

 「あこも頑張る!」

 

 

 私たちは立ち上がり、校長室を後にする。

 割ってしまった鏡は夏休みが終わったら校長先生に謝ろう。

 

 

 ────────そういえば、私ってもう思考が停止してるんじゃなかったっけ?

 

 鏡の中の私が言っていたのは嘘だったのかな。今は前と変わらず考えれるようになったけど…………とても不安だ。

 

 今も私の頭の中で、あの鏡の中の私が語りかけてくる声が聞こえる。

 

 

 (トットト体ヲアケワタセ!羽沢ツグミ!!)

 

 「────────ッ!!」

 

 

 その声と同時にひどい頭痛が走る。

 私の異変を察知して蘭ちゃんが声をかける。

 

 

 「つぐみ?やっぱり大丈夫じゃないんじゃあ………」

 

 「大丈夫。ちょっと疲れただけだから………はやく、謎を解明しておうちに帰ろう」

 

 「ああ、そうだな!」

 

 「何かあったらあこに言ってね!」

 

 

 みんなの励ましの言葉を胸に、次の場所へと歩み始めた。




いかがだったでしょうか?

心霊現象の番組とかみてると、本当に怖くて仕方ないです………。
僕の体験談も踏まえて次回の後書きで書かせていただきます!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。