Afterglow 〜夕日に焦がれし恋心〜   作:山本イツキ

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どうも、山本イツキです。

今回で最終回、4年間の集大成となります。

ぜひ最後までご覧ください。


第60曲 夕日に焦がれし恋心

 あれは、もう5年も前の出来事だったかな。

 病院のベッドの上で何ヶ月も終わらぬ夢を見続けていたのは。

 時が経つのは本当に早い。

 歳をとるごとにその事を実感するばかりだ。

 

 今のボクたちはというと、羽丘高校を卒業して大学生になった。

 ただ半年も休校していたからひまりちゃんと一緒に留年し、病院でのリハビリや治療を経て一年遅れで蘭たちと同じ大学に進んだ。

 高校を卒業したからと言って僕たちの関係が切れるなんてことは決してない。

 どこへ行くにもずっと一緒で充実した毎日を過ごし4年間なんてあっという間に過ぎていった。

 

 

 そして、迎えた卒業式。

 ボクとひまりちゃんは無事に卒業し社会人への一歩を踏み出した。

 

 

 「葵、ひまり。卒業おめでとう」

 

 「蘭〜!ありがどぉぉぉ!!」

 

 

 卒業式に来てくれた蘭に号泣しながら飛びつくひまりちゃん。

 そんな彼女に蘭はよしよしと頭を撫でる。

 

 

 「忙しいだろうに、わざわざ来なくてもよかったんだよ?」

 

 「別に忙しくないし」

 

 

 蘭は大学を卒業してからはプロのロック歌手として活動している。

 "Afterglow" は蘭たちの大学の卒業と共に解散することになってしまったけど、その思いは今蘭に引き継がれている。

 

 

 「そんなことより、ひまり…………太った?」

 

 「うっ…………!」

 

 

 頭を撫でていた手がひまりちゃんのお腹へと移り軽くつまむ。

 お腹の肉は服越しでもわかるほどあることがわかった。

 

 

 「ひまりちゃん、最近はつぐみちゃんのお店に入り浸っていたからじゃない?」

 

 「だ、だって!お店の手伝いをしたらケーキをタダで食べさせてくれるって言われて………」

 

 「それで食べ過ぎたんだ」

 

 「美味しいから仕方ないの!」

 

 

 プリプリと怒るひまりちゃん。

 蘭も面白がってかニヤっと笑いながら揶揄っている。

 

 

 「二人の元気な姿を見れたから、あたしはそろそろ帰るね」

 

 「えぇ〜!?ちょっと早くない!?」

 

 「今作ってる曲を早めに仕上げたくて」

 

 「ほら〜、やっぱり忙しかったんじゃーん♪」

 

 「うるさい」

 

 「この後どうする?暇ならお昼ご飯でもどう?」

 

 「悪いけど、これからひまりと巴の店でラーメン食べる予定だから」 

 

 「葵くんごめんね〜」

 

 「そっか。それじゃあボクは羽沢珈琲店にでも行こうかな」

 

 「それじゃあ葵くん、()()()()()!」

 

 「うん。巴ちゃんにもよろしく言っといてね」

 

 

 ボクは二人に別れを告げ、羽沢珈琲店に向かう。

 

 

……………………

 

 

…………

 

 

 お昼を少し過ぎ、人がいない時間帯。

 ボクが普段羽沢珈琲店に行くのはその時だ。

 

 

 「つぐみちゃん。ひさしぶり」

 

 

 からんからん、とベルが鳴りその音に気づいたつぐみちゃんがキッチンから顔を出す。

 

 

 「あっ、葵くん!いらっしゃい」

 

 

 満面の笑みで迎えてくれる彼女は、いつも座っているカウンターへと案内する。

 

 

 「今日はマスターはいないんだね」

 

 「それが、お父さんとお母さんは旅行に出かけちゃって…………」

 

 「なるほど。でも、一人でお店回すの大変じゃない?」

 

 「そんなことないよ!バイトの子も来てくれるからね。まあ、今日はいないんだけど」

 

 

 つぐみちゃんは羽沢珈琲店の後取りとして、今も元気に働いている。

 短かった髪も今は腰に届くほどまで伸ばしていて、高校の時とは違う可愛らしさがあった。

 

 

 「ご注文はお決まりですか?」

 

 「そうだなぁ…………じゃあ、"いつも通り" でお願いしようかな」

 

 「わかりました。少々お待ちください♪あっ言い忘れてたけど、卒業おめでとう」

 

 「うん、ありがとう」

 

 

 つぐみちゃんはそう言い残しキッチンへと戻る。

 小さな手でコーヒーミルで豆を挽き、じっくり蒸らしたあとお湯を注ぐ。

 その間に、冷蔵庫からケーキを取り出しコーヒー共にそれを出す。

 

 

 「お待たせしました!"いつも通り" です」

 

 

 ビター風味のチョコケーキと羽沢珈琲店オリジナルのブレンドコーヒー。

 これがボクがこの店で注文する "いつも通り" だ。

 

 

 「…………っ!美味しい!」

 

 「そっか!よかったぁ」

 

 「もしかして、このケーキってつぐみちゃんが作ったの?」

 

 「あたりっ!お父さんのとは味が違うかもしれないけど…………」

 

 「ボクはこれぐらい苦い方が好きだよ。これからはつぐみちゃんに作ってもらおうかなぁ」

 

 「えへへ、ありがと♪」

 

 

 本当に美味しくて驚いた。

 確かにこれだと安心して店を任せられるだろう。

 しばらく二人で話していると、カランカランっ、と店のベルが鳴る。

 

 

 「やっほ〜。きたよ〜」

 

 「モカちゃん、いらっしゃい!」 

 

 

 ベルのなる方を見ると見慣れたパーカーでヒラヒラと軽く手を振るモカちゃんが姿があった。

 

 

 「あーくんも久しぶり〜」

 

 「うん。モカちゃんも元気そうで何よりだよ」

 

 

 モカちゃんはグルメブロガーをやっている。

 全国各地で食べ歩き、独特の採点方法や言葉で魅了し、今となってはかなり人気のあるブロガーになっていた。

 『色んなところを巡り続けていたらお金とか大変じゃない?』と聞いたら本人曰く『モカちゃんは天才だからブログ以外でも収入源があるんだよ〜』らしい。

 モカちゃんはボクの隣に座る。

 

 

 「つぐのお店も書かせてもらったよ〜。『美味しいコーヒーとお菓子があって、若くて可愛い店員がいる店だよー』って」

 

 「ちょっ、最後のは余計だよ!」

 

 「あはは。でも、本当のことだからいいんじゃないかな?」

 

 「…………………!」

 

 「おっとー。あーくん、そんなこと言ったらひーちゃんがヤキモチやいちゃうぞ〜?」

 

 

 モカちゃんはボクの頬にグリグリと人差し指を突き悪戯に笑う。

 

 

 「…………んーー?つぐー?」

 

 「……………えっ!?」

 

 

 モカちゃんは指を離しつぐみちゃんをみる。

 ボクも珈琲を口に含みながら同じ方を見ると、まるで茹で上がったかのように顔が真っ赤だった。

 

 

 「あれあれ〜?つぐ、照れてるー?」

 

 「ち、違うよ!!」

 

 「つぐ〜ダメだよー。あーくんにはひーちゃんっていう最愛の彼女がいるんだから〜」

 

 「モカちゃん!!」

 

 

 温厚なつぐみちゃんが珍しく声を荒げた。

 と言っても彼女らしい可愛らしい怒り方た。

 

 

 「揶揄いすぎはよくないよ」

 

 「は〜い」

 

 「二人には悪いけど、ボクの中ではひまりちゃんが一番だ。万が一の気も起こさないよ」

 

 「ヒューヒュー。ラブラブだね〜♪」

 

 「うふふ。ひまりちゃんもきっと喜ぶよ」

 

 「は、恥ずかしいなぁ…………」

 

 

 それからも3人の和やかな会話は続く。

 

 

 「それでそれで〜、あーくんはひーちゃんとどこまで進展したのかなぁ?」

 

 

 モカちゃんはボクの目をジッと見ながら悪戯に笑う。

 ボクはそんな彼女に余裕の笑みを浮かべて返す。

 

 

 「順調だよ。ボクは父さんの跡を継ぐことになって、ひまりちゃんも就職が決まったからね」

 

 「それはさておき、ラブラブ()()()()はどうなのかなぁ?」

 

 「……………えっ!?ど、同棲!?」

 

 「何でそのことを知ってるの!?」

 

 「ふっふっふー。モカちゃんを舐めてもらっちゃあ困るなあ」

 

 

 モカちゃんの言った通りボクとひまりちゃんは今同棲をしている。

 ひまりちゃんが別れ際に『また後で』と言ったのはそういうことだ。

 しかし、この事はみんなが集まったタイミングで言おうと思っていたけどどこから漏れたのか、いや、モカちゃんの情報網なら朝飯前ってことか。

 全く、昔からモカちゃんには敵わないな。

 

 

 「同棲を始めたのも2ヶ月ぐらい前かな?父さんの紹介で入居したところだけど、結構安くて広い部屋なんだ」

 

 「へぇ、羨ましいなぁ……………」

 

 「モカちゃんはママの作ったご飯が一番だから、親元をなかなか離れられないよぉ」

 

 「これからは仕事でお互い忙しくなると思うけど、今は問題なく過ごせてるよ」

 

 

 やはり彼女といえど、家族と違う人と24時間共に過ごすとなると緊張した。

 今まで任せきりだった家事も全て自分たちでやらなくてはならないし、家計のやりくりもある。

 両親はこれをやっていたのかと思うと本当に頭が上がらない。

 それに "異性" と住むんだから当然色々と気をつけないといけない事だってある。

 

 けれど、それを差し引いてもひまりちゃんとの生活はとても楽しく感じているのが現状だ。

 

 

 「そっか、葵くんとひまりちゃんはいつ結婚してもおかしくないんだね」

 

 「うん。ゆくゆくはそうなりたいね」

 

 「ヒューヒュー、カッコいいねぇ♪」

 

 「なんだか、こっちが照れちゃうよ…………」

 

 「あはははっ!」

 

 

 幼馴染と話すのはやはり楽しいものだ。

 これからも、こんな時間が続けばいいな。

 

 

 

***

 

 

 

 「いらっしゃい!!」

 

 

 商店街にある馴染みのラーメン屋さん。

 店外にまで響きそうな巴の大きな声で鼓膜が震える。

 

 

 「巴〜、久しぶり〜!」

 

 「おおっ!ひまりか!それに蘭も!」

 

 「巴、声大きすぎ」

 

 「いやぁ、つい癖でなぁ」

 

 

 巴はラーメン屋さんで修行をしている。

 長かった髪もバッサリと切り、中学の時を彷彿とさせるほど短くなった。

 ラーメン好きなのは周知のことだったけど、まさか仕事にするとは考えもしなかった。

 お師匠さんもいい人そうだし、上手くやってるというのは今の巴の表情を見てわかる。

 

 

 「立ち話もなんだし、適当に座ってくれよ」

 

 

 巴にそう言われわたしたちはカウンターに座る。

 

 

 「注文はどうする?おすすめは豚骨醤油だぞ!」

 

 「あたし醤油ラーメンで」

 

 「ええっ!?おすすめは豚骨醤油って言ったじゃん!?」

 

 「いや、この前モカと食べたし」

 

 「ったくよー……………ひまりはどうする?」

 

 「わたしはもちろん─────」

 

 

 ここでわたしの頭にある言葉がよぎる。

 

 『ひまり、太った?』

 

 蘭と再開した直後に言われたセリフだ。

 確かにここ最近はつぐのお店に通いっぱなしだったし、ご飯だって何杯もおかわりしている。

 体重計にだって何週間も乗っていない。

 ここで高カロリーメニューを頼めばダイエットがさらに厳しくなる…………。

 

 

 「えっと、豚骨醤油の少なめで」

 

 「あいよっ!」

 

 

 結局、人間の三大欲求には勝てなかった。

 鼻歌を歌いながらラーメンを作る巴を側に、わたしと蘭の間に沈黙の空間ができる。

 

 

 「蘭、あのね……………」

 

 

 切り出したものの、言葉に詰まる。

 

 

 「なに?」

 

 

 不思議そうに首を傾ける蘭。

 

 

 「その……………葵くんの、ことなんだけどね」

 

 「うん」

 

 「同棲できたのはすごく嬉しかったんだけど、なんだか、蘭に申し訳なくて……………」 

 

 「なんで?」

 

 「だ、だって!葵くんを奪い取るみたいな感じだから…………」

 

 

 わたしは心に引っかかっていたことを告げた。

 蘭と葵くんは幼馴染とは一線を画す間柄。

 姉弟なのだ。

 彼の知らないところをたくさん知っているだろうし、信頼関係だってわたしたち以上にあるのは間違いない。

 そんな彼を、わたしは "同棲" という形で蘭から奪い取ってしまったんだ。

 

 わたしはそのことでずっと悩んできた。

 

 

 「…………ふふ、あはははっ!」

 

 

 蘭は突如大声で笑い出した。

 

 

 「ははは。ひまり、考えすぎだって」

 

 「どうして!?」

 

 「別にあたしは葵とずっと暮らしていくわけじゃないんだし。寧ろ、せいせいするって感じだよ」

 

 「そ、そうなの?」

 

 「生真面目だし、神経質だし、優柔不断なところもあるけど、あたしの弟をよろしく頼むね」

 

 「う、うん!」

 

 

 ようやく話せてスッキリした。

 蘭は本当に優しい幼馴染だ。

 

 

 「へいっお待ち!醤油と豚骨醤油のミニね!」

 

 

 カウンターからラーメンが運ばれてきた。

 食欲をそそる濃厚なスープの香りが漂い、お腹を鳴らす。

 中太麺と大きなチャーシュー、トロトロに煮込まれた卵と彩り豊かなネギと紅生姜が入った非常に食べ応えのあるラーメンだ。

 

 

 「実はアタシが師匠に頼んで作らせてもらったからな!」

 

 「これ、巴が作ったの!?」

 

 「すごい。美味しそう」

 

 「まだまだ半人前って言われるけど、よかったら食べてくれよ」

 

 「もちろん!それじゃあ──────」

 

 「「いただきます!」」

 

 

 まずは蓮華でスープを掬い堪能した後、麺を啜る。

 

 

 「…………うん!美味しい!!」

 

 「悪くないね」

 

 「そうか?サンキューな」

 

 「これで500円なんだからホントお得だよね〜♪」

 

 「喜んでくれて何よりだ」

 

 

 ラーメンを食べ終わった後、巴も混じり3人で話をする。

 

 

 「しっかし、葵とひまりが同棲か〜…………。大人になったんだなぁ」

 

 

 巴はビールジョッキ片手に懐かしむように話す。

 

 

 「巴仕事は?」

 

 「ああ、今日は客が全然来ないから上がっていいってさ!いやぁ、ビールとチャーシューの組み合わせは格別だよなぁ」

 

 「巴ってわたしたちと同い年だよね?」

 

 「一人だけもう立派なおじさんだよ」

 

 「なんだと〜?」

 

 

 巴だけだけど、こうやってお酒が入って話をするのもまた大人って感じがして新鮮だ。

 わたしも少しだけ飲んだことあるけど、アルコール3%のお酒でも酔うほど弱い。

 まだまだ子供である。

 

 

 「蘭の仕事はどうなんだよ〜」

 

 「今は順調だよ。作曲もいい感じで進んでるし、ライブまでには仕上がりそう」

 

 「二人とも大人だなぁ」

 

 「ひまりは看護師だっけか?」

 

 「うん。そうなの」

 

 

 そう。かく言うわたしの就職先は病院、看護師だ。

 きっかけはあの時─────わたしが入院していた時にずっとお世話になっていたから、今度はわたしが誰かを助けたいって思ったのがきっかけ。

 子供の時はもっと違う夢を抱いていたけど、誰かの役に立ちたいと言う夢は昔からずっと変わらない。

 今からもう、ワクワクとドキドキが止まらないのだ。

 

 

 「看護師って休みとかあるの?」

 

 「不定期ではね。深夜勤務とかもあるみたいだから大変かも」

 

 「ほー。それはキツイな」

 

 「お世話になった分頑張る!」

 

 「おお!そのいきだぞひまり!!」

 

 

 酔った巴がわたしの背中をバンバンと強く叩く。

 あまりの強さに、ラーメンが出てきそうになる。

 

 

 「間違っても変な号令をしないようにね」

 

 「どんなアドバイス!?」

 

 「あっははは!アタシもひまりを見習って、早く一人前になって自分の店をもつぞ!」

 

 「巴も間違ってもスープにビールを入れないようにね」

 

 「するかバカッ!」

 

 

 わたしたちは笑いに包まれる。

 いつかは必ず抱く夢。

 それをこうやって最高の仲間たちと話せると言うのは幸せなことだろう。

 

 今度はまた、みんなでしたいな。

 

 

 ううん。今度とは言わず10年後も、20年後も─────

 

 

 

***

 

 

 

 羽沢珈琲店を出たあと、ボクは足速に家へと戻り再び外に出る。

 目的地に向かいながら携帯を開きひまりちゃんに電話をする。

 

 

 『もしもし葵くん?』

 

 『ひまりちゃん、今どこにいるの?』

 

 『巴のラーメン屋さんを出たところだよ。美味しかったぁ♪』

 

 『ボクも今度行こっかな』

 

 『絶対豚骨醤油食べさせられるからね!』

 

 『あっはは、巴ちゃんなら推してきそうだね。そんなことより、家に帰らないであるところに来て欲しいんだ』

 

 『うんいいよ。場所はどこ?』

 

 『羽丘神社の頂上。待ってるよ』

 

 

 そう言い残し電話を切る。

 久々にあの階段を登るとなると億劫になるけど仕方ない。

 だって、そこがいいんだから。

 

 

 なんとか階段を登り切り、ベンチで座って待っていると、はあはあと息を切らしながらひまりちゃんも到着した。

 

 

 「ごめんね。急にこんなところに呼び出したりして」

 

 「はぁ…………はぁ…………大丈夫、だよ」

 

 「ほらっ、ここにおいで」

 

 

 ポンポンとベンチを軽く叩くと、ひまりちゃんはふぅーっと息を吐き腰掛けると肩を寄せてきた。

 

 

 「えっへへ〜♡」

 

 

 嬉しそうに笑う彼女の頭を撫でる。

 

 

 「覚えてる?高校入学前にみんなでここを登ったこと」

 

 「うん!あの時はみんな登るのだけで苦労してたもんね」

 

 「この夕日を見て蘭は "Afterglow" と言う名前をつけた。言わば、ここがAfterglow(ボクたち)の結成の地でもあるわけだね」

 

 「今でも鮮明に覚えてるよ」

 

 

 彼女の頭を撫でていた手を肩に回し抱き寄せる。

 

 

 「覚えてる?ここで告白したこと」

 

 「もちろんだよ!ここでバレンタインのチョコも渡したんだよね」

 

 「うん。なんだか知らないけど、舞い上がっちゃったのかな?あの時はすごく変な気分になったんだ」

 

 「ギュッて抱きしめられたと思ったら、()()()()()をしそうになるんだもん!そりゃびっくりするよ!」

 

 「あ、あそこで押し倒したのはひまりちゃんじゃないか!」

 

 「その原因を作ったのは葵くんです!」

 

 

 お互いに顔を見合いぷっと小さく笑う。

 

 

 「今となっては全て過去の話なんだよね」

 

 「でも、確かに覚えてるよ」

 

 

 ひまりちゃんはボクの手をギュッと握ってこっちを見る。

 

 

 「葵くんと過ごした時間は絶対に忘れない。わたしは、これからも葵くんと一緒にいるよ」

 

 

 満面の笑みで言われたその言葉が胸に突き刺さる。

 本当にボクはいい彼女と出会えた。

 運命には、感謝しかない。

 ひまりちゃんの言葉を聞いてボクもどうやら安心したようだ。

 

 ずっと立ち上がり、ひまりちゃんの前に立つとその場に片膝をつき同じ目線で話しかける。

 

 

 「ひまりちゃん」

 

 「な、なに?」

 

 「ボクは──────頼りない人間だ」

 

 「え?」

 

 「これからもひまりちゃんには迷惑ばかりかけると思うし、つまらないことで喧嘩することもあるかもしれない。だけど…………ボクがひまりちゃんに抱いてるこの気持ちは決して変わらない。必ずキミが幸せだと思えるように尽力する。だからどうか─────」

 

 

 ポケットから小さな箱を取り出し、開ける。

 

 

 「ボクと結婚してください」

 

 

 誠心誠意込めたその言葉。

 箱に入った指輪は夕日に照らされギラギラと輝く。

 彼女の目をまっすぐと見て伝えると、突如ひまりちゃんは啜り泣き涙をこぼし始めた。

 

 

 「ひまりちゃん……………?」

 

 

 彼女はポケットからハンカチをとり涙を拭うと涙声になりながら口を開いた。

 

 

 「ずるい……………ずるいよ……………」

 

 「これが、ボクの気持ちだよ」

 

 「わたしの方こそ、よろしくお願いします」

 

 

 ひまりちゃんはそう言い深々と頭を下げる。

 ボクは喜びのあまりその場でガッツポーズをする。

 出した婚約指輪を彼女の薬指にはめる。

 彼女の髪と同じピンクが主体のその指輪は、彼女をより一層輝かせる。

 

 

 「いつの間に、用意してたの…………?」

 

 「ほんの少し前だよ。バレないように必死になって隠してんだからね?」

 

 

 ボクは彼女にニカっと笑って見せた。

 

 

 「もうっ………!好き!」

 

 「ボクもだよ!」

 

 

 ひまりちゃんはベンチから立ち上がりボクも膝についた土埃を払い立つ。

 しばらく二人で見つめあった後、深い口づけを交わした。

 

 

 「これからもよろしくね。ひまりちゃん」

 

 「こちらこそ。不束者ですがよろしくお願いします」

 

 

 夕日に焦がれたこの恋心は、大人になった今でも決して色褪せることはない。

 

 もちろん、これからもだ。




いかがだったでしょうか?

ガルパ5周年と同時に今回は終わらせていただきました。
長らく読んでいただき本当にありがとうございました。
昔よりガルパは人気が無くなった、なんて話を耳にしますが、ボクはそんなこと一切気にしません。
これからも変わらずガルパの執筆に尽力したいと思います。

予定ではありますが、短編としてこの話の続き、そして要望にあった「よし蘭と葵が付き合っていたら」と言う妄想話も執筆予定です。


最後になりますが、更新頻度が遅くなることが多く、読んでいただいてる皆様には本当にご迷惑おかけしました。
誤字脱字や間違った表現などもたくさんありました。
これからも、もっとみなさんに楽しんでいただけるように頑張るので、ぜひ評価、お気に入り登録をよろしくお願いします。

では、みなさま。お世話になりました
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