第六天魔王が異世界で暴れるようですよ   作:たこ焼き屋さん

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初めての投稿です。
至らぬ点はあると思いますが、よろしくお願いします。


新生本能寺の変

 

 

 理想が燃え尽きていく。

 

 

 

 野望が燃え尽きていく。

 

 

 

 思想が燃え尽きていく。

 

 

 

 

 

 

 

 自身の信じた全てが一夜にして崩れ去っていく。

 

 本能寺は早速火をくべる薪になり、灯りのない暗い闇を煌々と照らす。山より高く火柱を作り黒き狼煙をあげる。

 

 

 

「なぜじゃ!なぜ裏切る明智!!」

 

「貴方のそれは正義ではない。そんな貴方は私の信じる信長様ではない」

 

「ふざけるなぁァァァァァァァアアア!!」

 

 

 

 日本の国全てを支配するまで後一歩。だがそれは序の口にしか過ぎず、次は世界へと手を伸ばそうとしていた。

 

 

 

 その夢を打ち壊そうとする信じていた明智光秀()に、焼け爛れ掠れた喉で奇声を上げる。

 

 

 

 痛い。痛い。痛い。痛みは何も外側だけでなく、内側──心までもが痛い。

 

 内側から剣が生えるような痛みに苛まれながらも、意地とプライドだけで薄れゆく意識を止めている。ここで落ちればそれは真なる敗北だと。

 

 

 

「楽になってください信長様。私はあなたのそのような姿は見たくない」

 

「ああがぁ゛あさかなはなあぁ゛ぁあ゛」

 

 

 

 遂に喉は言葉を発する事をやめた。日本語ともそれ以外とも取れない、それこそ獣の雄叫びのような声を出す。

 

 

 

 黒く腰まで伸びていた髪は炎に巻かれ肩までしかない。寝間着や武器も例外なく火炎と融合している。

 

 終わりの時は近い─自身の死期を悟る。

 

 

 

 では諦めろと?大人しくその場で無残に惨たらしく死ねと?否、否、否──断じて否だ。第六天魔王たる織田信長がこのような場所で暗殺で大人しく死ねるわけがない。死ぬ時は日本の終わりだ。日本のためにこの命を魂を運命を捧げると誓ったのだから。

 

 

 

(死ねない。絶対にワシは死なん!)

 

 

 

 前に立つ明智の周りは炎に包まれていないがそこへ無策に突っ込めば、手に持つ愛刀で一刀される事は不可避である。

 

 そうなれば選択肢など一つしかない。悪運高き織田信長だからこそ許されるたった一つの手。それは───

 

 

 

「何を─」

 

「わじばじなん゛」

 

 

 

 肌を焦がす熱を放つ炎へとその身を投じた。

 

 

 

 常識で考えれば全身を炎に包まれ焼死してしまう悪手。誰しもがその選択を脳裏から外してしまう行為だが、織田信長は幾度となくその常識を打ち破ってきた。

 

 

 

 二万五千の今川軍相手に敗北濃厚と言われたが五千の兵力で勝利した。

 

 最強と名高い武田軍の騎馬隊に鉄砲を使い歴史的な勝利した。

 

 

 

 

 

 

 

 不条理・不利など恐れるに足らない。逆に嬉嬉として受け入れてきた。そんな男の異常性を傍らで最もよく知っていたはずの明智光秀は忘れていた。

 

 

 

 口角は上へ上がり不気味で不敵な笑みを浮かべながら織田信長は炎と交わっていく。その様を明智は見送ることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ゛......はぁ゛.........」

 

 

 

 辛くも燃え盛る本能寺から脱出は出来たが真っ裸の状態で冷える夜に投げ出されればいずれ凍死する。早急に何らかの手を考えねばならない。

 

 

 

 だが、頭が回らない。

 

 本能寺での事が原因なのか現状の打開策が一向にわかない。それでも足は止めてはならないと走り続けた。先の見えない闇を進むのは恐怖や不安を掻き立て、枯れ果てたと思っていた水が目元から流れ落ちる。

 

 

 

 偶然─いや天は見放さないと言った方がいいのか。視界の先に灯りが付いていない小屋らしき物を見つける。

 

 罠か?と考えるも背に腹は変えられないと大人しく戸を開けて中へと足を踏み入れる。

 

 

 

 

 

 中は蜘蛛の巣が張り巡らされていて、木の壁には幾つもの穴が空いている。安土城などに比べれば倉庫と呼ぶことすら烏滸がましい程質素でボロい小屋。

 

 いずれ天下人と呼ばれる事になる自分にはいささか無様過ぎると鼻で笑うが、すぐに今の現状が思い浮かび自分への哀れみへと変わる。

 

 

 

(無いよりはマシじゃが、酷いものじゃな。上がる時は長く落ちる時は一瞬か)

 

 

 

 床へと投げ捨てられている安く薄い木綿の何色かも分からない和服へ袖を通す。

 

 自身の気にしていた幼女体型にはピッタリで、動きが阻害されることはないだろう。あえて言うならば胸元が寂しいぐらいだ。

 

 

 

(一人とは虚しいな...なぜこんなことに......ワシはワシは)

 

 

 

 冷たい隙間風に吹かれながら自問自答を繰り返す。答えのない問いに答えることは出来ない。

 

 

 

 天下統一。泡へと消え去った淡い夢。昔の頃はそれだけで笑い楽しめていたはずの夢。

 

 いつからだろうか笑うことをやめたのは。

 

 

 

(次の生があるならば、もっと馬鹿をやりたいのう。ハチャメチャに暴れて暴れて...今度こそ守る仲間を)

 

『いいわねそれ。ならこちらへ招待するわ』

 

 

 

 幻聴まで聞こえ始め遂に終わりの時が来たかと覚悟を決めた刹那─全身を謎の浮遊感が襲う。

 

 

 

「なんじゃ、何が起きた!」

 

「おい待てよいきなり放り出すのかよ!」

 

「なっ─」

 

「え?」

 

 

 

 その日神や魔王が跋扈する″箱庭″に三人の問題児と一人の第六天魔王が現れた。その出会いは衝撃的で劇的な通常とはかけ離れた─運命とも言える邂逅であった。

 

 

 

 友に裏切られ世界に裏切られた魔王はその世界で、面白おかしく気の赴くままに生きていくことになる。

 

 

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