第六天魔王が異世界で暴れるようですよ   作:たこ焼き屋さん

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なんか思った以上に好評?みたいで嬉しです。

そこでなので色々設定を発表します。
見た目は皆さんご存知のノッブの短髪をイメージしてください。

性格はノッブ+ギルさんだと思ってください。

以上業務報告終わり。


問題児たちの集合

 

上空四〇〇〇mに四人は放り捨てられた。二〇一八年現在には身体に紐をつけ上空から落ちる遊びがあるがそれでも世界最高の二六〇m。それよりも十五倍ある地点から紐なしで飛んでいる。

 

 明らかに人間であれば死が確実だ。それこそ地球の重力を一蹴りで抜けられるような人外でなければ。

 

 無論織田信長本人にそのような身体能力は無いのでこのまま行けば逝く。

 

 

 

「はっ、このワシに不可能など無いわ!」

 

 

 

 天へ吠える。頭を下に向け加速する。信長は下手にするからいけないんだ、全力でやってしまえば何とかなると後先考えずに行動を起こした。

 

 それが吉に出るかはそれこそ神のみぞ知ると言ったところだろうか。

 

 速度は一向に衰えること無くどんどん上がっていき、周りの三人を置き去りにしていく。

 

 

 

「アレ?ワシ不味くね?」

 

「おいおい、随分とアクロバティックな事してんな!俺も混ぜろよ」

 

 

 

 後方から男の声が聞こえ振り向く─前に隣に並ぶ。日本人離れした黄金の髪を靡かせて獰猛に口を歪ませている。

 

 服装に至っては見たことすらない素材質感で、抱き抱えられた直後は「不敬だぞ!」と怒鳴り散らしてやろうと思ったが、この謎の衣類に感動しそんな事後回しにする。

 

 

 

(ほほう!滑らかでありながらずっしりとしている。絹ではないな何だこれは?超気になるんじゃが!!)

 

(こいつ...抱き抱えて分かったけど身体に無駄な筋肉がないな。幼女だから心配したが、これなら必要なかったか?まぁいいか髪の匂いをかげて役得だとでも思っとけば)

 

 

 

 男は男で内心かなり不敬な事を考えているが信長の知る所ではない。

 

 そして、二人を置き去りにして加速していた信長達は徐々に近づく水面へと叩きつけられ巨大な水柱を一柱作る。十秒ほどのインターバルの後に二本の水柱が出来上がる。

 

 

 

 

 

 

 

「し、信じられないわ!呼び出しておいて投げ捨てるなんて」

 

「全くだ、それには大いに同意するぜ」

 

「うむ。良くやったもう下ろして良いぞ童」

 

「助けてやったて...変な膜通ったし安全ではあったのか。そりゃ失礼したな淫ら幼女ってお──」

 

 

 

 キィィィィィィィ!!少し爪を立て男を切りつけ強引に飛び降りる。肩に担がれている状態から突然離されたので、当たり前だが地面と顔面がくっつく事になる。

 

 「やれやれ」と言わんばかりの表情で頭を横に振る。

 

 地面への激突で暴れ回る信長をよそに三人は三人で勝手に自己紹介を始め、ひとまず倒れている幼女しだいだなと待つことを決める。

 

 数分後やっとこさ痛みから回復した信長は鼻柱を抑えながら立ち上がり男に指を刺さす。

 

 

 

「よくもやってくれたな!」

 

「俺関係ないだろ。勝手に暴れた方が悪い...お嬢様と春日部はどう思うよ」

 

「男の貴方がそこは助けるべきでしょ」

 

「右に同じく」

 

「マジかよ俺の味方いないのか...あぁ染みるわマジ染みるわ」

 

 

 

 ぞんざいな扱いを受けわざとらしく上へ向き目頭を抑え辛い振りをしている。

 

 

 

(確かこの男が逆廻十六夜とか言ったな、それで奥の女子二人が...ってレベル高いんじゃがァァァ)

 

 

 

 自己紹介を勝手に盗み聞きしていた信長は確かめるように十六夜を一見して、奥にいる二人の女子へと向くとあまりの美形に心の中で叫ぶ。

 

 どこかの貴族を思わせるような気品さを漂わせる黒髪の美女が久遠飛鳥と名乗っていた。後頭部に見たことの無い赤く大きなリボンで髪を少し整えながらも腰にまで届く長い髪。服装は十六夜に続き見たことなくかなり材質が気になる。

 

 続いて隣で猫と遊んでいる少女が春日部耀。動きやすそうな軽装備でありながら佇まいは野獣のような凶暴さを感じている。

 

 二人ともが美女。十六夜も美形に分類される程度には整っているが、森蘭丸には及ばんなと頷く。

 

 常に近場に控えさせた信長一番のお気に入りの武士こそ森蘭丸だ。女子であれ男であれ綺麗であれば両刀だった信長だったため控えさせていた。そのお眼鏡に三人ともかかり他人からお気に入りまで一気に昇格する。

 

 

 

「でいつまで名乗らないんだ?こちとらもう自己紹介終わってるぜ。それとも改めているか?」

 

「いやいらん。逆廻十六夜、久遠飛鳥、春日部耀だろ?ワシが聞いとらんはずがないわ」

 

「そうかい。だったら名乗ってくれんだよな?勝手に名前だけ聞いてはいさらばなんて許されねえよ?」

 

「その欲深さよし。先程抱えた不敬を許すぞ、そしてワシの名を聞け!」

 

 

 

 水で濡れスケスケ状態でありながら近くにあった大きな岩の上に乗り両腕を組んで宣言する。

 

 

 

「ワシこそが、第六天魔王・織田信長じゃァァァァアア!!」

 

 

 

 その宣言に不敵に笑う三人。それもそうだろう何せ日本の偉人中の偉人の名前なのだから。

 

 史実では日本における戦国時代天下を収める寸前までいったが、仲間に裏切られ殺されたとされる男の武将である。目の前の幼女がいや女が織田信長だとはどんな教科書を開いても載っていない。

 

 だとしても偽物と言うにはあまりにも馬鹿すぎる。自分が織田信長と名乗るのは中二病だけだ。十六夜に関して言えば抱き抱えた時の異様な筋肉にも納得がいく。

 

 

 

「なるほどね...嘘ってわけじゃないんだな」

 

「戯け、そんなつまらん嘘をワシがつくわけがなかろう」

 

「けど女...私の知っている織田信長は男のはず」

 

「私も同じね。織田信長が女だったなんて記憶は一欠片もないわ」

 

「大体分かってきたが...せっかくならそこにいるやつに聞いた方が良いだろうな」

 

 

 

 その言葉を皮切りに四人は同時に同じ方へ向く。視線は一身に草むらへ向けられ、びくりと揺れ反応を示す。

 

 すぐに揺れを抑え知らんぷりをするが、ロックオンされた獲物はすでに手遅れだった。

 

 

 

「やっ──」

 

「よし出てこないなら考えがあるぜ、オラァ!」

 

「うぎゃぁっ!」

 

 

 

 出てくる前に足元に落ちていた小石を持ち上げ軽く投擲する。十六夜にとっては軽く投げた小石だが、その速度は人間のそれとは違う。

 

 小石が触れた木がなぎ倒され、地面にぶつかれば大きなクレーターを作っている。その速度脅威の第三宇宙速度。人間界にそんな速度を投げられる生命体物質は存在しない。

 

 草むらから強引に飛び出るしかない隠れ人は異様な速さで飛び出るも、春日部が驚異的な反応をみせ食らいつく。木の上へ逃げるががピタリと背後に回る。

 

 

 

「落ち着い」

 

「てい」

 

「うぎゃっん!」

 

 

 

 羽虫を叩き殺すみたいに下へ払われた人は地面へ横たわり目を回して「あわわわ」とうわ言を呟いている。

 

 逃げたやつを捕獲できたと四人は横たわる人を中心に集まっていく。

 

 

 

「ヤハハハ!こりゃすげ」

 

「へぇー」

 

「あらまぁ」

 

「ほう...ウサギ耳かなんと奇天烈な」

 

 

 

 目の前に横たわる女子の体の大部分に異常は何もない、しかし一点だけ異常があったそれは頭についた髪の色と同じ色をしたウサギ耳があるのだ。

 

 人間の耳とは頭の横についている二つの物であり、それは決して毛に覆われたウサギ耳ではあらず、ましてや頭の上になど付いていない。

 

 摩訶不思議な光景に四人の問題児が起こす行動は至ってシンプルで単純明快。

 

 

 

「「「「えい」」」」

 

 

 

 耳を直に触ることだった。

 

 


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