第六天魔王が異世界で暴れるようですよ   作:たこ焼き屋さん

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あれれ?おかしいぞ。
久々の投稿になっちゃった。




問題児は止まらない

「あ──有り得ないのですよ!これが噂に聞いた学級崩壊に違いないデス」

 

「小一時間弄っただけではないか。逆にワシに触られて喜ぶべきところじゃろ」

 

「何を言ってるのですかぁ!私のデリケ──」

 

「うるせぇ早く続けろ」

 

 

 

 うさ耳を触り続けていた快感から戻ってきた十六夜は、焦れったい謎の少女─黒うさぎに向けいつまでも待てねぇぞと威嚇する。

 

 その送られた威嚇にうさ耳の産毛全てが立ち上がり、彼の強大な力をその身でしっかりと感じ慌てて話を進める。

 

 

 

「うぅぅ...それじゃあ話を進めます。ようこそ御四方──私の招待した箱庭へ」

 

(実は呼んだのが御三方だけだと知られるわけにはいきません。どうにか誤魔化さなければ)

 

 

 

 そう彼女が呼んだのは三人だけだ。

 

 招待状を受け取った逆廻十六夜・春日部耀・久遠飛鳥の三人だ。その証拠に池に落ちた後すぐに、手紙をもらったか?と確認を取り合い三人とも貰っていると言った。

 

 となると残った織田信長は誰に呼ばれたのか、なぜここに居るのかなど多くの疑問が浮かぶが、この箱庭に外から招待できるのは限られた人物だけであるので、今ゴタゴタ考えても仕方がない。

 

 それに、この織田信長では無いが三度この箱庭に訪れていて、総じて全員【魔王】になっている。

 

 嘘はどうにかバレずにすんだようなので一安心すると同時に、四人とも絶対に仲間に引き入れてやるとべき言葉を語る。

 

 

 

「ここは皆様お持ちの″恩恵″を元に″ギフトゲーム″で全てが決まる世界です。

 

 富も名声も力も勇気も──何もかもが″ギフトゲーム″によって定められるのデス」

 

「″ギフトゲーム″?」

 

「YES。既に気づいてるとは思いますが、皆さまただの人間ではございません。皆様がお持ちの特異な力は修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた″恩恵″でございます。

 

 その″恩恵″をかけて行われるのが″ギフトゲーム″なのです」

 

 

 

 両手を大きく広げ箱庭をアピールしながら語る黒うさぎの後ろで

 

 

 

「へぷち!」

 

「おいおい天下の信長様が何でそんなに薄着なんだよ」

 

「仕方なかろう。本能寺から命からがら逃げたのだ...薄着一枚も水に落ちて意味をなさんわ」

 

「せっかく偉人様に会えたのに、こんな所でコロッと死なれたらたまったもんじゃねぇな。ほれ、コレでも着とけよ。無いよりはマシだろ」

 

 

 

 投げ渡すのは軽く湿った黒の学ランだ。

 

 それはここに来た直後には何事もなく無事だったのだが、先程の墜落のおかげで水を吸い込みびしょびしょになってしまった。

 

 服を捻り多少はマシになったのだが、それでも着たいとは思わなく手に持っていたので丁度いいと渡した。

 

 

 

「傲慢じゃなその態度──がしかし!ワシはそう言う奴の方が好きぞ!のう十六夜!」

 

「あぁそれには賛成だぜ信長様」

 

「よいよい、信長と呼ぶのを許す。お主とは仲良くやれそうじゃからな」

 

「そうかならよろしく頼むぜ信長」

 

 

 

 二人は互いに笑顔で握手を交わす。一番結託してはいけない二人が結託したのだが、黒うさぎは箱庭の説明に集中していて気づいていない。

 

 

 

 そして、間道冷めやらぬ内に箱庭の解説は終了し、せっせと移動をさせられることになる。

 

 

 

▼▼▼▼▼

 

 

 

場所は箱庭二一〇五三八〇外門。ペリベッド通り・噴水広場。

 

 

 

箱庭の外壁と内側を繋ぐ階段の前で戯れる子供達の姿があった。

 

 

 

「ジン~ジン~ジン~~黒うさぎのお姉ちゃんはまだ帰ってこないの?」

 

「もう二時間たったよ、ちゅかれたぁー」

 

 

 

 ふつふつと不満が漏れ始め、つまらないとバタバタ騒ぎ始める子供達に、同年代ぐらいに見えるが見た目と裏腹に落ち着いている少年が諭す。

 

 

 

「そうだね、みんなは先に帰ってていいよ。僕は新しい仲間を迎えなくちゃいけないから」

 

 

 

 ダボダボの服に外に跳ねる緑髪が特徴的な少年─ジン・ラッセルは周りの子供達に指示を飛ばす。

 

 子供達のリーダーたるジンの帰宅許可が出たので、次々に別れの挨拶をして帰路へつく。

 

 みんなが和気あいあいと帰る中一人ジンは、神妙な顔をしながら石造りの階段に腰を下ろす。

 

 

 

(外から来た人は一体どんな人物なのだろうか。これでもし弱い人達だったら僕達のコミュニティは...終わりだ)

 

 

 

 コミュニティとは箱庭の世界に置ける国と言える物だ。

 

 この世界はそれこそ世界の果てが明確に存在してはいるが、それでも土地は大きく広大だ。その上もれなく殆どの土地が未開拓だ何だとあれば、有力者達が黙るわけもない。

 

 有力者達は自身を中心にコミュニティを作り、そこに加入や合併などを繰り返し大きくしていき、コミュニティの力などを高までいきそこで″ギフトゲーム″を開催する事ができる。

 

 現在ジンのコミュニティはとある諸事情により、黒うさぎを除きジンより幼い者しかいない。

 

 なのでコミュニティの力はほとんど無く″ギフトゲーム″を開催するどころか、今日明日も生きれるか分からないと必死にもがく事しか出来ない。

 

 だからこそ新たな風として外から人を招いたのだ。その代償は高く、もし弱い人達であれば確実にジンのコミュニティは続けていけなくなる。

 

 

 

「ジン坊ちゃんーーー!お連れしましたよ!」

 

 

 

 不安に押し潰されそうなジンに黒うさぎの元気な声が届く。

 

 

 

「お帰り、そちらの女性三人が?」

 

「そうなのデス。こちらの御四......え?」

 

 

 

 蛇に睨まれた蛙のように凍りつく黒うさぎ。

 

 

 

「あの、こう″the俺問題児″ってオーラをしていたお方は?」

 

「む、十六夜の事か?それならばあっちに言ったぞ」

 

 

 

 指を指すのは来た道を辿るようだった。

 

 あまりの自体にショックを隠しきれていない黒うさぎだが、すぐに心を立て直し三人に慌てて問いただす。

 

 

 

「な、なんで止めてくださらなかったのですか!」

 

「だって″止めてくれるなよ″って言わたから」

 

「ならどうして黒うさぎに教えてくれなかったのですか!」

 

「″黒うさぎに教えてくれるなよ″って」

 

「嘘です!実はめんどくさかっただけでしょう御三方は!!」

 

「「「うん」」」

 

 

 

 あまりにも清々しい即答だった。

 

 ガクッと膝が折れる。あまりにも自分が馬鹿だったと思い知った、四人が出会ってすぐ戦闘を仕掛けてきた事から考えるべきだった。

 

 彼ら四人は問題児でありその制御は不可能なのだと。

 

 その話を隣で聞いていたジンは顔を真っ青にして叫ぶ。

 

 

 

「まずいです!今″世界の果て″にはギフトゲームのために野放しにされてる幻獣が」

 

 

 

 幻獣はその言葉の通りギフトを持った獣であり、その種類は多彩である。竜から獅子に鳥。種類は違えど共通している事が一つだけある。

 

 それは、この世界箱庭に来たばかりの人間ではいくら強くとも命の危険があるという事である。

 

 

 

「それじゃあ彼はいきなりゲームオーバー?」

 

「来てすぐゲームオーバー...斬新」

 

「冗談を言ってる場合ではありません!」

 

 

 

 ジンも事の重大さを伝えようとするが、叱られ肩を竦めるだけで理解していない。

 

 

 

(あの小僧(十六夜)がそう簡単に死ぬとも思えんが、これで死ぬならあやつはその程度って事じゃな)

 

 

 

 十六夜の人間離れした運動能力を目にしている織田信長だからこそ、死ぬとは思っていなかった。逆にこれで死ぬのなら自身の人を見る目も使えなくなっと思う他ない。

 

 

 

「ジン坊ちゃまここはお任せしていいですか?」

 

「うん、任せてよ。黒うさぎは──」

 

「分かっています─何がなんでも引きずってきます!!」

 

 

 

 姿勢を屈め脚に力を溜めると、艶のある黒髪を緋色へと変色させて地面を蹴り砕く。一応辺りへの被害は考えてそこまで全力ではないが、その姿は一瞬で数十メートル先へと移動する。

 

 

「一刻程で戻ります!皆さまは楽しい箱庭ライフを」

 

 

 

 遠くに消えていく黒うさぎはその言葉を残し、さらに加速して移動していく。蹴った場所には全て亀裂が入り被害は拡大していく。

 

 加速の際に発生した風により砂が巻き上げられ、目に入らないように目元を抑え風が止むのを待つ。

 

 

 

「ケホッ...随分と早いのね、おかげで私は砂を吸ったわ」

 

「黒うさぎはこの箱庭の創始者の眷属なので、箱庭の貴族と呼ばれています。さらに、力や多種多様なギフトが与えられているので問題は無いと思いまが...」

 

「うむ、ならば行くぞ。お前達はワシを呼び出したのに、なんの歓迎の準備をしていない訳はないな?」

 

「は、はいその点に関しては大丈夫です。それと申し遅れました、僕はコミュニティのリーダーをしておりますジン・ラッセルです」

 

 

 

 簡潔で丁寧な自己紹介をする。動作一つ一つも丁寧で嫌悪感を抱く要因は無い。

 

 

 

「そうよろしくね私は久遠飛鳥よ。そこで猫を抱えているのが」

 

「春日部耀」

 

「ワシは第六天魔王こと織田信長じゃ」

 

「久遠飛鳥さんに春日部耀さんに織田信長さんですね......え、今なんて言いました?織田...信長?えええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

 

 今世紀最大の絶叫は大きく反響し気絶一歩手前までの衝撃が全身に走る。

 

 やれやれ情けないわねと飛鳥はジンの手を掴み、階段を上って門をくぐる。

 

 

 

 


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