だから石を投げないでくれ!!
あっ、聖晶石ならむしろウェルカム。
信長の宣戦布告から数時間経ち日は暮れ始めた。その時刻になってようやく黒うさぎ達と合流する事が出来たのだが──
「なっ、な、な何をしてるんですかぁ!」
「″ギフトゲーム″じゃよ。うむ、楽しみで楽しみでぱふぇがすすむな」
食欲は別の要因だろと心の中でツッコミを入れるだけにする。それに問題は他にあったのだから。
″ギフトゲーム″を仕掛けたはいいが信長は開催の仕方など一切知らない、知っているのは勝てば正義負ければ悪であると言うこと。その他についての詳しい説明を受けるまもなく仕掛けたため、全ての準備はガルド持ちとなってしまった。
ガルドが全ての準備を行う。戦場、ルール、勝利条件、開催日......それが意味するのは全てに置いて不利な状況下でゲームが行われるのだ。
どんな策を練ろうと、どんな力を優位を取っていようと、その全てを根本からひっくり返す″ギフトゲーム″を行う可能性すらある。
幸いだったのは開催日が明日との事で、何かしらの大掛かりな仕掛けは用意されないだろうという事である。が、それはこちらも同じであり金など三人を呼び出すのに殆ど使ってしまい、出せる金ははした金程度しかない。所詮は焼き石に水でありあっても無くても変わらない。
その事を事後報告で知らされた黒うさぎは内心どころか表面にすら焦りが見えている。
「過ぎたことはいいじゃない黒うさぎ」
「ん、これは私達が仕掛けた喧嘩。最後まで私達が持つから責任は」
「なんじゃぁ黒うさぎ、この美女三人がここまで言ってるのにまだ腹を括らんのか?」
自分で美女と言う残念美女は堂々と胸を張り、その選択に一切の後悔はない様子だ。
怒り心頭ではあるがここで数少ないどころかか細い勝率が、飛躍的に上がる方法を思いつく。
「分かりました、私も覚悟を決めましょう。まぁ十六夜さんがいれば″フォレス・ガロ″なんて余裕ですしネ」
そう、黒うさぎは逆廻十六夜の力をその目でしっかりと見た。
幻獣など最高峰の
世界の果てには強大な″ギフト″を授けられた水神がいた。身体は蛇だがとてつもなく長く大きな塒を巻く蛇の神。
凡そ人間では勝てない圧倒的スペック違いの相手なのだが、十六夜は一方的に圧倒的に粉砕してしまった。その力は人間とホントに呼べるのか怪しい所ではあったが強大な力には変わりなく、水神倒せたのだから″フォレス・ガロ″など簡単に倒す事ができる。
「何言ってんだ黒うさぎ?俺は参加しないぞ」
呆気からんと普通に返された返答は予想だにしない物だった。
「え?あの十六夜さん何をいっ──」
「当たり前よ。貴方の力なんて借りないわ」
さもそれが当たり前のように飛鳥は肯定する。
「あぁもう好きにしてください。私はもう疲れました...」
十六夜に振り回されたと思いきや水神を倒して、戻ったと思ったら勝手に″ギフトゲーム″を行う事になっている。一日に相当な疲労があったようでもうやけクセになりながら言い放った。
本当はこの後すぐにでも美味しいレストラン等に赴き、ゆっくりと話しながら関係を築いていこうと思っていたがそんな思惑は崩れ去った。なので、予定を色々変更し″ギフトゲーム″に向けて自身の力をしっかりと把握してもらった方がいいだろうと″ギフト″の鑑定に行きたいが、一人そんな事を行う前にしなければいけない人がいるから。
未だに十六夜の上着だけで堂々と腕を組んどスィーツを食べている、性格破綻幼女こと織田信長である。
このままでは″ギフトゲーム″前に風邪をひいて急欠となってしまう。それでは目も当てられないので二手に別れることにした。
これから向かう先にはまず黒うさぎがいなければろくに話が進まないので、黒うさぎが十六夜・飛鳥・春日部の三人を連れていき、ジンが信長を一足先に″ノーネーム″の居住区画へと向かう事になった。
「うむ、にしてもここは楽しい事ばかりじゃな。飯は美味いし、娯楽も溢れとる...ワシのいた時代とは大違いじゃ」
「は、はい。そそうですね」
「なんじゃお主緊張しとるのか?ガハハハハ!!よいよい緊張などしなくてもなぁ!」
ケタケタと大袈裟に笑いながらジンの背中を何度も叩く。それが善意から来ているのか弄りから来ているのかは不明である。
他の人が周りにいたため現代表自らガチガチに緊張した姿など見せてしまえば、威厳もへったくれもなくなってしまう。そのため、無理やり気合いでどうにかしていたがいざ二人きりになると途端に枷が外れ身体が硬直してしまう。
日本に置いて言えば知名度トップクラス。歴史の教科書には絶対に乗っている過去の大偉人であり、ここ″箱庭″でもその存在は轟亘っている。
三度もこの″箱庭″に呼び出されて三度も魔王になった者など織田信長以外に存在はしない。真横に魔王の因子とでも呼ぶべき存在がいるのだ。
「ふぅ......そうですね。」
だからと言えど緊張してばかりではいられない。
この先同じ仲間として生活していくのだ、もっとフランクに話せるようになればいいのだが残念ながらまだその域にジンは達せそうにない。
「お主も食べるか?先程感謝と言われてな、あの女子から貰ったものじゃ」
そう言って差し出したのは紙袋一杯に詰められたシュークリームである。
あの後猫耳の女店員が「あのいびり散らしてた奴を殴ってくれてスカッとしたにゃ」と感謝の言葉をかけながら、紙袋一杯にお礼として大量のシュークリームを貰った。
甘味が美味しいとは言え量が些か多すぎる。
この量を食べれば血液が全部くりーむになってしまうわと、健康に害が出ないように分けたに過ぎない、建前ではあるが。
「はい、ありがとうございます!」
(なんじゃ笑えるようじゃな。童そうやって笑ってるのが一番だからな)
信長も子供の頃は大うつけと呼ばれるほど好き勝手にした。他人には舐められまくっていたが、結局のところ信長が後悔をしていないのだから大きな問題は無い。
子供とは自由に好き勝手に生きる物だと常々思っている。ジンはコミュニティのリーダーとして、常にプレッシャーに押しつぶされそうになっている事だろう。初めて織田家を率いる事になった自分がそうなのだから、ジンにはとてつもない重荷であろう。
そんな事を思ってかジンを見る目はどこか慈愛に似た何かが宿っていたのかもしれない。
二人で無言でシュークリームを食べ続けながらも歩みは止めず進んでいくと、一つの門が目に飛び込む。
門は扉により閉鎖されていて、柱には門を掲げていた名残らしき物も見られる。
「ここが僕達の″コミュニティ″の居住区画です」
そっと扉に触れゆっくりと扉は開いていき、微かに空いた隙間からは乾いた風邪が髪を撫でる。
「なん...じゃと......」
″箱庭″に来て初めて動揺を見せた。
目の前に広がるのはひたすらな廃墟。美しく整備されていたであろう街路はホコリにまみれ見る影もない。街路樹は石碑のように灰色であり、ヒビ割れをおこしている。
人がここで住んでいたと知らされても信じる事が出来ないだろ、その上──
「ジン、お前は言ったな。魔王に攻められたのは三年前だと」
「はいその通りです」
「それは...真か?」
そこが整備された道なのか分からないが数歩進み瓦礫を一摘みする。力を入れるまでもなく塵となり手から崩れ去る。
過去に農民や民と遊んどいた経験などもあるから分かるが、この現状はとてもではないが三年前だとは信じられない。それこそ数百年の歳月が経っているとしか考えられなかった。
「なるほどな...これほどまでか、魔王とやらは」
「え、何かいいました?」
「いや何でもないぞ、大体分かった」
砂を手一杯に掴んで持ち上げるも軽い風に簡単に飛ばされて消えていく。手には一粒も砂は残っていない。残ったのはある意味虚しさだろうか。
魔王とやらがこの土地を取り上げなかった理由など考えるまでもない。力の誇示や見せしめなどだろう。自分が同じ立場なら同じ事をするだろうから。
だからこそ余計に思ってしまう──
『魔王とやらに会ってみたいな』と