友達が少ない俺、TSツインテールでこの素晴らしい男女逆転異世界の魔法少女戦隊になるそうですがこの中に一人、男の娘がいる!のと敵の女幹部が弟だけど中二病でも愛さえあれば青春ラブコメには関係ないのは 作:サッドライプ
最初は俺ツイであべこべものやろうと思ってたんだ…。
トゥアールさんの行動が年齢詐称して高校に潜入してまで女子学生に猥褻行為をひたすら働き続けるアラサーおっさんでしかなくなるから無理だった!
世界は一つではない。
存在の座標を定義する概念がいわゆる“次元”と呼ばれるものだが、物質生命が観測しうる三次元というものはあくまでその他の条件を全て固定した前提での座標に他ならない。
例えば時間という第四の次元。
それを軸線とするだけでも、無数に絡まった積層世界を新たに観ることができる。
一つ一つの世界はそれぞれの特色があり、しかし相関性を持つのかどことなく類似している点が多くなる。
だがただでさえそうした視点を持つスケール感の違いだけでも知性体同士のコミュニケーションには大きな障害となるのみならず、在り方そのものが異なる『第六層世界』の物質生命の価値観は、『第一層世界』の精神生命体たる“彼”にとって多分に理解に苦しむものだった。
分泌される化学物質に支配され抗えない衝動を発生させたかと思えば、それを発散すると同時に賢者の如き悠然さを纏うこともある知能は、中途半端に法則性がある分だけ余計に把握を困難にさせる。
感情と本能、理性と煩悩が複雑に絡み合い、同一個体が同一の状況に際して“気分”で行動を変える非合理は、接触と対話に大層難儀を強いられた。
とはいえ、必要に駆られ遥々この辺境世界で過ごさざるを得ない“彼”は、なんとか地球と呼ばれる天体を巣とする者(ニンゲン)達の思考パターンの分析にも慣れてきたところだ。
それによるならば、次に聞こえてくるのはか弱い男性の悲鳴である筈だったのだが。
「ええのんか……?ひひ、ここがええのんか……?」
「………ぇ、と?」
男が、尻を撫でられている。
二十台後半と見られる女が、どう見ても未成年の少年の尻を楽しそうに撫でまわしている。
中年向けのアダルトコンテンツですら今時ないようなヒヒババアの台詞を、興奮に塗れ震えた声で吐きながら、真正面から少年を抱き締めるようにして回した手で尻の感触を堪能している。
きちんとアイロンがけされた黒いタイトなスーツを着こなし、一つ一つが手入れされたドレスシャツや革靴、髪留めで各部を整えているし、眼尻をきりっと凛々しく上げていれば整った容姿をしているのだから異性からの羨望も少なくないだろう。
そして今の息荒く紅潮して鼻の下が伸びた表情で、百年の恋だろうが問答無用で液体窒素をぶちまけられた状態になるに違いない。
真昼のオフィス街、営業に精を出していたであろう敏腕サラリーウーマン―――だが残念ながら、どんなエリートでも魅力的なオスを見ると簡単に理性を蒸発させてしまうのがこの世界のメスである。
不思議と破綻しないが――政治経済文化スポーツにいたるまで、優れた身体能力と何より男1に女10と言われる圧倒的な人数比から、中枢となって社会を回している女性達がこの有様なのがこの世界である。
だからなぜか真昼間から薄い半袖Tシャツ一枚に膝丈のデニムというエロい格好でオフィス街をうろついていた可憐な少年に対し猥褻な行為に及んだ女がいても、何も不思議なことはない。
むしろ不可解なのは、筋力差から無駄だとしても必死に初対面の性犯罪者に抵抗するどころか、「この姉ちゃん何がしたいの?」と言わんばかりに首をかしげながらなすがままにされている少年の方だった。
女ならば目も当てられないような歪な造形の面や吹き出物などで荒れた肌、不摂生で弛んだり逆に骨と皮と揶揄できるような肉体でも、男であれば「それはそれでアリ」と一定の需要が見込まれるようなこのご時世。
やや背は低めで童顔だが、勝気で年下好きに好まれそうな少年がまるで「性欲に狂った女から偏執的な性的衝動を向けられた経験なんかない」と言わんばかりの初心な反応を示すのは不自然を通り越してありえないことだ。
それでも少年は困惑の表情で手持無沙汰に棒立ちになっている。
もしかしたらこの状況に性的な意味すら感じられていないのかもしれない。
明らかに異常―――だが、“彼”はそこまで当惑していなかった。
知性体であれば個体が多ければ人格に著しいイレギュラーがある者も中にいるのは物質生命に限った話ではないし、そもそも直前に少年に困惑させられた身だからだ。
『僕と契約して、異世界を救うヒーローになってよ!』
『よし、任せろ!!』
“戦士”の適性を持つ者があまりにも少ない為、“彼”が適当な近域座標の世界までサーチをかけて見つけ連れてきたのがこの少年。
そして世界転移の際にろくに―――というより全く説明を求めることなく、二つ返事で“いきなり現れた宙に浮かぶクリオネもどき”についてきたのがこの少年である。
ニンゲンのオスは暴力が付随する概念に理屈の通らない拒絶感を持つ傾向があると分析していたし、未知の存在に対する警戒心を考えれば説得は難航すると考えていただけに、ある意味で喜ばしい誤算だったが、それだけに今後彼とどのように接していくのがベストなのかいまいち測りかねているのが正直なところだった。
「くひっ!も、もうたまらん……っ」
「えっ、なに急に引っ張って―――チカラ強っ!?」
とはいえ、せっかく異世界から連れてきた少年を、この血走った目の女に路地裏に連れて行かれて強姦されては都合が悪い。
少年の初心な反応にもそそるものがあったのだろう、明らかに理性を蒸発させた女性をどう処理するか考えながら、“彼”は少年にのみ己を知覚させている状態をまず解除しようとする。
だが。そもそも街中白昼堂々の未成年への性犯罪、目撃者も通報者もいない筈がなく。
「ちょっと署まで来い」
性犯罪者の肩をみしみしと強く掴む警官の女の声。
犯罪発生から僅か十分足らず、日本の警察は優秀だった。
…………。
「違うんです。彼とは前の前の前世から繋がっていて……」
「ふーん。で、君の名は?」
なんだか危ないというか台無しというかな取調べが繰り広げられている最寄の警察署の別室。
乱雑に書類が積み上げられた机がいくつも並んだオフィスで少年は警官と話をしていた。
事情聴取、というには案件が案件だけに下手な聴き方はできないという配慮なのだろう、半分は雑談のようなやりとりだったが。
「君、大丈夫だったかな。名前、言える?」
「あ、どうも。沖田シンっす」
少年―――シンはペットボトルのお茶を注いだ紙コップを受け取りながら、警官に訊かれて答えるという主人公としては割と斬新な形で名前を明かした。
沖田シン君か、漢字はどう書くのと手元の書類から視線を移し、相手がもらった飲み物を一気飲みしている最中だと気づくと、警官はくりくりした瞳の可愛い系の――職業に不似合いと気にしている――面貌を苦笑に染める。
シンの挙動を警戒の顕れと考えたのか、次に出した言葉は別方向のアプローチだった。
「ごめんね。こういうときは夫警(ふけい)が対応するべきなんだけど、やっぱり数が少ないから。
私で大丈夫かな?」
「?………婦警(ふけい)が少ない??」
きょろきょろと日焼けした壁に年期の入ったオフィスを見回すシンだが、何か引っかかることでもあったのだろうか。
警察官という危険な職業になる以上、希少でか弱い男性のなり手など殆ど居らずちらちらと仕事ついでにシンの方を伺う警官たちは当然皆女性である。
その中でも一番男性を怖がらせないだろうということで選ばれたのが彼女なのだ、当人のコンプレックスはさておき。
「……どうしたの?やっぱりダメ?」
「いや、おねーさんでダメってことはないっすけど」
「っ、ふふ、そっか。ありがとう、沖田君。
私は湊悠花(みなと・ゆか)です。改めてよろしくね?」
職務上致し方なしと、極力その表情を更に和らげるように意識しながら、悠花はシンに微笑みかける。
ほんの僅かに頭を下げるだけの態度に、警官相手故の硬さ以外が見当たらないことを確認して安堵して、―――職務に全力で専念すべく、気合を改めて入れ直した。
そうでもしていないと、自分も取調室に連行される側に回りそうだったから。
(やばい………ムラムラする……)
だってエロいんだもの、この少年。
職場で最も背の低い悠花と同じくらいの低めの背丈に細身の、しかししなやかさが見て取れる腕や足が短い裾から覗き放題。
少し季節外れの薄着はちょっと汗に濡れるだけで体の線や胸のぽっちが見れると思うと涎が垂れそうになる。
ましてやこの小生意気が混じりつつ元気いっぱいといった感じの少年におねーさん、なんて呼ばれるものだから背筋にぞくぞくするような快感が走ってしまった。
じわりと青い制服の中で、各所に湿り気が発生するのをおくびにも出さないように心掛けながら、けれど至福とも言える気持ちで悠花は天然エロの男の子との会話という職務(やくとく)へと邁進する。
「それで、君はどうして―――、」
否、邁進しようとした。
『××県警より管区、××県警より管区!北区3丁目望月公園、アブダクター発生!応援求む!
繰り返す、北区3…きゃああっっ!!?』
「「ッッ!!?」」
署内の全館放送と、悠花の身長と裏腹に職場トップを誇るサイズの胸元に引っ掛けられたトランシーバーから切羽詰まった声が鳴り、そして短い悲鳴と共に途切れる。
唐突な音声だけの非常事態。
普通なら僅かなりとも何が起きたか分からずに茫然とするだろう。
だが、普段から真面目な警官たることを心掛けていた悠花と、先ほどまで痴女に触られるがままだったシンは、同時に反応した。
習慣からトランシーバーを確認し、一瞬他から目を離した悠花と。
「――――え?」
その一瞬だけで、何人もの警官が詰めるオフィスから忽然と姿を消したシンと―――。
「なあ、そのアブダクターってのが悪の組織なのか?」
『この世界の人類にとっての害悪、という意味ではまさにその通りだね』
「なら―――、」
なんのことは無い、今までずっとそこにいたにも関わらず気付かれなかった“彼”の能力を受けて、すれ違う署員の誰にも認識されない状態となったシンが薄暗い警察署の廊下を疾走する。
勘で非常階段に通じるドアを開き、オートロックの通用口を内側から開き、警察署の裏口に出ながら、その顔は真剣さと高揚が混じり合ったまさに戦士のそれ。
「――俺は、ヒーローになるんだ!」
芯の通った宣言と共に高い塀に切り取られた空にかざした右手に、光の結晶として具現化する紅の宝石。
煌々と輝く妖しい光は、それ自体がまるで炎を閉じ込めたような熱を感じさせた。
それを胸元に手繰り寄せ、一度左手と交差させた後全力で正面へと突き出す。
気迫のこもったそれは、“この世界の”人々が空想に夢見るヒーローそのものの、
「逆装ッッッ!!!」
『Tran-S-Exial』
変身ポーズと呼ぶにふさわしいものだった。
だから、“彼”からこの世界に連れてこられた際に渡された宝石――――TSEライザーは、チカラは、シンに応える。
淡い粒上に拡がった赤い炎のヴェールの中で、シンの衣服を霧散させながら新たな装束を象どる。
渦巻くようにまとわりつきながら量を増す粒子の光の中で、その装束に合わせるように少年は輪郭を変えていく。
背が縮んで、胸が少しだけ膨らんで、肩や腰回りのラインがなだらかになり、肌は光を弾くような白雪のそれへと染まっていく。
粒子を吸い込んで紅金に染まった髪はその長さを何十倍にも伸ばし、そのカーテンの下でシンプルな無地のシャツとスカートが宙に浮かぶ肢体を覆った。
顔もいつの間にか全体のパーツが小さく、しかし瞳はきらきらと碧光を湛える無垢で可憐な少女のものとなっている。
穢れを知らぬ―――そう形容するに不足は無い装いとなったシンを護るように、残る赤の粒子がそれぞれ髪飾り、セーラー服、グローブ、ブーツとして不思議な金属光沢を放つ布として固着する。
力強さと繊細さを併せ持った膝まで伸びた長髪を二条に分ける髪飾り、淡く輝く赤いセーラー服を飾るカラーと胸元の宝玉を留めるリボン、そして膝上のミニスカートと白地の部分にやはり赤い光のラインをアクセントとして走らせると、シンはそのブーツで虚空を蹴って一回転、グローブを嵌めた細い指でチェキを決めながらどこへともなくウィンクをして、地上にすたっと降り立つ。
完全に変身を終えたその紅の姿は、まさに“この世界の”魔法少女(ヒーロー)、新たなる戦士、逆装転女【トランスエクシアル】フレアカノン。
「…………、…………………、え゛??」
男の身で魔法少女(ヒーロー)をやってくれる人を見つける為に異世界まで捜索した“彼”に応えたシン。
その変身後の勇ましい雌姿で―――何故か彼は自分の今の姿に対して、困惑というか茫然というかむしろ混乱の極致といった感情がふんだんに凝縮された一文字だけを吐いて、警察署の裏口でしばらく硬直していたのであった。
後半へ続く!!