友達が少ない俺、TSツインテールでこの素晴らしい男女逆転異世界の魔法少女戦隊になるそうですがこの中に一人、男の娘がいる!のと敵の女幹部が弟だけど中二病でも愛さえあれば青春ラブコメには関係ないのは   作:サッドライプ

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 AAスレよろしくこの作品の登場人物には版権キャラをモデルに設定しています。
 ただし、的中しても悲しいだけだと思うので予想はしない方がいいと思います。




始動、魔法少女戦隊③

 

 闇の中。

 

 さて、創作の物語の中では世界というものに特定の名前がついていることがあるが。

 そもそも一つしかないものに固有名詞を付けようという発想は普通ない。

 異なる複数の世界の存在という概念を認識できない人間ならば当然だろう。

 

 英語で考えれば分かりやすいか―――”the” world、世界という自らを取り巻く事象の拡がりはたった一つでしかありえないという認識なのだから。

 

 故に精神生命体という異邦の稀人がいなければ重なる筈もなかった“もう一つ”の世界を言い表す言葉は残念ながら見当たらない。

 だがそれでは不便なので仮に『ビヨンド(向こう側)』と呼称することにしよう。

 異邦人達が七層世界と呼ぶ平面のある領域に闇の世界はある。

 

 男が生まれず、男を知ることなく枯れるはずだった女達にぶら下げられた他世界からの略奪という甘い欲望。

 それを統制するべく組織されたのが、闇の中渦巻く熱狂に君臨するUKCだった。

 

「次の選抜者よ、登壇せよ」

 

 銀の仮面に顔を隠した委員長が凛とした声で号令を下すと、それに従い設けられた舞台に一人の女性が上った。

 ショートの黒髪を整髪料できちりとセットした、切れそうなほど鋭い目つきをした女性。

 均整の取れた細身の肢体を飾り気の少ないグレーの制服で包んだ彼女は、女傑で鳴らす委員長を逆に呑み返さんとばかりに所作に気迫を漂わせている。

 

 そんな相手の瞳を覗き込むと、満足したかのように上機嫌な声で頷く委員長。

 

 

「―――良し。実に童貞喰いたくてムラムラしている女の眼だ」

 

「光栄です!すごく童貞喰いたくてムラムラしております!!」

 

 

 異世界への尖兵に相応しいモチベーションを秘めているのを確認したリーダーは、それ以上の資格は存在しないとばかりに背を向ける。

 

「戦士に武運を」

 

 その言葉と共に、闇に蠢く影たちが一斉に腕を掲げて敬礼を取った。

 性欲の、エロ本を共有した絆は血より濃い。

 委員長とて敗北者に容赦は無いが、それだけ真剣に男を求める女が幸せを掴み取ることを願っている。

 

 それらに込められた想いを全て背中に受けて女性は巨大な金属窯を開き中へと踏み入る。

 その窯とは、彼女の意識を異世界に飛ばし、端末であるバイオノイドと同化させる悪魔の機械。

 遥か世界の壁、存在の積層を超え、コードネーム『ヴーフ』が怪人を起動する。

 

 そう。今日もアブダクターの侵略が始まった。

 

 

 

 ほどなくして、岬家の朝食の席に一斉にスマホの警告音が鳴り響いた。

 

「……地震速報?」

 

「いいえ、シン兄さん。アブダクターが出現したようです」

 

「あいつら、昨日の今日で……!!」

 

 怪人からの避難警報もアプリで市民に知らされるご時世である。

 齧っていたトーストを牛乳で一気に流し込み、シンは素早い反応で席を立った。

 

『移動は僕に任せて。逆装転女ならこの世界の中を瞬間転送するくらいはできる』

 

「よっしゃ。逆装っ!!」

 

『Tran-S-Exial』

 

 クーの発言に笑みを返し、紅の宝玉を交差した腕からかざすシンが姿を変える。

 瑞々しい少女の肉体にしなやかな双房の髪、それを金属光沢で輝く真紅の衣装で飾る魔法少女、フレアカノンへと。

 

「………僕も」

 

「待ちなさい、衣玖鎖」

 

「母さん……」

 

 続こうと青の宝玉を取り出した衣玖鎖を、母の牧江が眉尻を下げながらも引き留める。

 言わんとすることは昨夜のやり取りで分かっていて―――それを迷いなく振り切る程、考えを纏める時間は取れていなかった。

 

 その様子を横目で見て、気を回したのか先を急いだのかは不明だが、赤の魔法少女はクーに伝える。

 

「俺だけ先に行かせてくれ」

 

『いいのかい?』

 

「前はアクアが先に戦ってただろ?―――ま、あんまり参戦が遅いとケリ着けちまうかもな」

 

 衣玖鎖を待っていたら長くなるかもしれない、そんな危惧を持っていたクーはフレアカノンの申し出を承諾し、クーから放出された白く眩い光の帯が魔法少女を包み込んだかと思えばその姿が忽然と消失する。

 衣玖鎖にも覚えがある現象で、きっと今頃“彼女”はスマホで警告された怪人の出没地点に瞬間移動して交戦しているのだろう。

 

 その一仕事を終えたクーはその半透明の体を衣玖鎖に向け、憎らしいほど平淡ないつもの口調で問いかけてきた。

 

 

『それで、君はどうするのかな―――アクアクロス』

 

 

 

 

 通勤通学で賑わう時間帯のとあるターミナル駅の地上出口。

 

 バスの乗り入れでロータリーになっている広場で、手ごろな男子学生を捕まえ例の白濁した粘液たっぷりのカプセルに放り込んだ怪人と魔法少女が相対していた。

 今回の怪人は狼のバイオノイド。

 毛皮で覆われた表面の内側にところどころモーター駆動の関節が垣間見える灰色の怪物は、少なくとも都市伝説の口裂け男よりはでかいだろう牙をがちがちと鳴らしながら威嚇してくる。

 

「よお悪の組織。出て来たところ生憎だが、さくっと片付けさせてもらうぜ」

 

『ヴフフ……新顔のフレアカノンとやらか。その威勢がいつまで保つか、試してやるよ』

 

 怪人を操る女性は本来言わないような、チンピラの面子の切り合いのような買い言葉を吐くヴーフ。

 だが操作の為の意識の転送の際に最適化された思考はそれに違和感すら覚えないようになっているし、その残虐性が如何なく発揮できるよう増幅されている。

 

 開始の合図など当然なく――一般市民がとうに逃げ去って拉致対象の男子学生以外は両者しかいない空白の駅前ロータリーを、狼怪人が疾駆した。

 

「っ、ラビ・シューター!」

 

「おっせぇ!!」

 

「くぁぅ!?」

 

 迎え撃つように宝玉を錫杖として形を成し、そのまま振り下ろしたフレアカノンだが、狼の前足にはあり得ない力強い腕に阻まれ、逆から放たれた掌底を胴に喰らう。

 大人と子供以上の対格差故にもろに吹き飛ばされるフレアカノン、そこに追い討ちをかけんとするヴーフ。

 開いて迫る狼の顎門に横っ面の一撃を食らわせようとフレアカノンは爪先で地面を擦りながら独楽のように回転、吹き飛ばされた勢いも利用して横に錫杖をフルスイングするが……鋼と肉食獣のハイブリットの巨体は一瞬で身長以上の高さに跳躍し、錫杖が纏う火炎の帯は空振りの軌跡をなぞるだけに終わる。

 

 大振りの隙を見せるフレアカノンを肉片へと変えるべく、上方を取ったヴーフは鋼鉄製の爪を振り下ろす。

 咄嗟に前方に転がったフレアカノンの赤髪を掠め、さくりとアスファルトに深い溝を掘った鋭い爪。

 

「っ、そこッ!!」

 

『グォォォ―――!!!』

 

 転がっていたフレアカノンは着地と同時に駆け出したヴーフを一瞬見失い、しかし襲い来るその爪を錫杖で迎撃できたのは完全に勘によるものだった。

 右斜め後ろの死角から飛び掛かったヴーフが受け止められ、押し合いに入る両者。

 

 モーター駆動の獣と幼き躰の魔法少女、その膂力はなんと互角―――ながら、体格と体重による優勢は怪人側にあった。

 

『ヴフフフ……』

 

「気持ち悪い笑い、してんじゃねえ」

 

 肉弾戦では最初の数合で圧倒しているのがヴーフだというのは明らかだ。

 だがそもそもフレアカノン―――逆装転女は、“魔法少女”である。

 

「この距離なら……爆ぜろぉっ!!」

 

「ヴ!!?」

 

 魔導によって目と鼻の先で発生する豪熱球が、当然ながら避ける暇もなく炸裂する。

 毛皮を一瞬で炭化させながら火球は鋼を溶かさんばかりに狼怪人を炙り、たまらず飛び退った相手同様にフレアカノンも距離を取る。

 

 その頬を三本の赤黒い線が走っている―――交錯時に僅かに引っ掛かっただけの爪に対して、魔法の防護を容易く貫く鋭さの証左だ。

 一歩間違えれば肉体をずたずたにされる相手、それを認識し戦慄しながらも、フレアカノンは不敵に笑った。

 

「来いよ、まだ温まってもないだろ?」

 

 皮肉げな挑発、死線を紙一重で潜ることになる。

 だが臆さない。

 

 信念を胸に、魔法少女(ヒーロー)は前に踏み込んだ。

 

 

 

 

 “沖田シン”は、フレアカノンはおよそ戦いに関しては素人だ。

 昨日魔法少女になって命のやり取り自体二度目でしかないルーキーが手に取る武器として、長柄を鈍器として振り回すという選択は実のところそう奇抜なものではないだろう。

 

 叩き潰す、という単純な攻撃方法は武器の心得が無い者にとってこれほど分かりやすいものはないし、重力や遠心力によって最低限の威力を叩き出すことに大した技量は要らないからだ。

 無論それは当たれば、の前提であるが。

 

 付け加えるなら、遠心力を威力とする武器は、総じて相手が近すぎても弱体化するという欠点がある。

 魔法少女の強化された動体視力でも気を抜けば捕捉できなくなる敏捷性を持ち、爪と牙により肉薄戦は大歓迎のヴーフとは相性が非常に悪い。

 

 むしろ魔法もありとはいえそんな相手と目まぐるしく縦横無尽の正面戦闘を繰り広げ、数分以上決定打を受けずに凌いでいるだけ瞠目すべき才能の持ち主と言えた。

 とはいえ露出している肘や二の腕、膝上の生傷は言うに及ばず、白のインナーの数か所が血を吸って変色したり肩やスカートの布地が切り裂かれた衣装を見ればどうにも痛々しい。

 

『ヴフフフ、粘るじゃねーか。大した根性だ』

 

「……うるせえ。全身の毛が縮れたアフロ犬がかっこつけてんじゃねえ」

 

 反撃の痕跡もヴーフに刻まれてはいる。フレアカノンの炎と殴打により毛皮が剥がされその下の装甲も歪まされている部分が数か所認められる。

 だが―――生身のフレアカノンと端末機械でしかないバイオノイドのヴーフではダメージレースにするとやはり分が悪すぎる。

 

『いやいや、敵ながら本当に根性は認めてやるぜ?その傷の数で減らず口を叩けるんだから』

 

「っ、……確かに、痛いけど―――」

 

 敵に敬意を払っているようでその実見下して嘲るだけのヴーフ。

 それに対して、消えない闘志を纏う炎に乗せて、フレアカノンは敵を睨み続ける。

 

 

「アクアクロスは、俺が来るまで一人でこの痛みに耐えてたんだ。

 あっさり弱音吐いたりしてたまるかよ!!」

 

 

『そうか……ならもっと痛めつけて嬲ってやるよ。

 ヴフ、やり過ぎて死んだら嗤ってやる!!』

 

「―――!」

 

 獣の脚力で数メートルの間合いを一瞬で詰めるヴーフ、反撃の一発を狙い構えるフレアカノン。

 その両者の数十度目の激突に。

 

 水が“刺”された。

 

 

「ウガツザメ―――“捩”」

 

 

『ヅアァッッ!?』

 

 水鉄砲、というにはあまりに剣呑。

 ヴーフの左腕を関節からもぎ取った水の螺旋貫通弾は、こんな“魔法”を使う者は一人しかいない。

 

「人聞きが悪いなフレアカノン。

 ボクならこんな奴、もっとスマートに片づけてきた」

 

「アクアクロス!」

 

「待たせてごめん。一緒に戦おう、“フレア”」

 

 雲のように、波飛沫のように。

 輪郭の捕らえがたい何重の白い装飾布と羽衣によって、色の違いだけでない趣の差異を演出する衣装を纏った水を操る魔法少女。

 

 上品ながらもおっとりとした垂れ目がちの美貌には、しかし迷いも躊躇いも、そして恐れも全て吹き飛ばす決意が満ちている。

 そんな先輩の姿に奮起したのか、フレアカノンも気力を新たに漲らせ、仲間と並び立ちながら一度相方の肩に拳を軽くぶつけた。

 

「ああ、待ってたぜ“アクア”」

 

『ヴ……フっ、お前タちは―――』

 

 失くした左腕のせいでバランスがふらつくのか、立ち姿が安定しないヴーフの意味をなさない言葉。

 それに応えた―――というよりは、“彼女”達自身が己の誓いを確固たるものにする為の儀式なのか。

 魔法少女はそれぞれ燐光と霞を漂わせながら名乗りを上げた。

 

「紅蓮の銃士、フレアカノン!」

「紺碧の舞姫、アクアクロス!」

 

「逆巻く因果を貫いて」

「逆装転女【トランスエクシアル】」

 

「「―――参上!!!」」

 

 

 





 衣玖鎖の葛藤と参戦の決意については次回。
 しかしこの作品シリアスやってる時とかぶっ壊れてる時とか戦闘シーンとか理屈を意味もなくこね回してる時とか、作者がノってるかどうかや描写の得意不得意が結構分かりやすい文章になってるなあ。
 修行にはなるけど。
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