友達が少ない俺、TSツインテールでこの素晴らしい男女逆転異世界の魔法少女戦隊になるそうですがこの中に一人、男の娘がいる!のと敵の女幹部が弟だけど中二病でも愛さえあれば青春ラブコメには関係ないのは   作:サッドライプ

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 やっぱ戦闘シーンと狂気系は書きやすいわー。



始動、魔法少女戦隊④

 

 

 誰か代われるものなら代わってくれと――――ここ最近はずっと思っていた。

 

 岬衣玖鎖が魔法少女をやっているのに、大した信念や正義感があった訳ではない。

 何が悲しくて花の男子校生の身空で性欲剥き出しの怪人たちと戦わなければいけないのか。

 ヒーロー物を好むような趣味も持っていなかったし、そもそも性別が女に変わることにだって慣れてしまっただけで生理的嫌悪を覚えている。

 何より敗北すれば最悪異世界に連れて行かれて、口に出すのも憚られるような凌辱を受けるかも知れない。

 

 損ばかりが大きくて、一方見知らぬ誰かが救われたところで衣玖鎖に得はない。

 なのになぜ逆装転女として戦っていたのかといえば、ある意味後ろ向きな理由だった。

 自分だけがなんとかできる力を持っているのに動かないで、みすみす拉致されて酷い目に合わされる男性達が出たら、そんなこと知るかと負い目を抱かずに開き直れるほどの“強さ”を持っていなかっただけ。

 

 そうだから―――ゲロッグに手も足も出なかった時、恐怖に負けて泣くことしかできなかった。

 自らを奮い立たせるものなど嫌々戦っている衣玖鎖の内には無かったのだから。

 

――――それでも行くの?

 

「ごめん、母さん」

 

 それを自覚して。

 

 それでも、変身アイテム【TSEライザー】は捨てられないどころか、その胸で輝いている。

 身一つで何も関係ない異世界に来てしまうほどのヒーロー志望で、初めて見る自分を庇う背中、その小さくとも熱い躰で戦う“彼”が言ったから。

 

 

――――この子の仲間だ!

 

 

 そんな短い言葉で心が震えた、その理由を衣玖鎖は知らない。

 同じヒーローとして認められたのが嬉しかったのか、一人戦うしかなかった自分を助けてくれたことに安堵したのか、………それとも。

 宝玉の下で鼓動を高鳴らせる高揚の理由は知らない、ただその向かう先だけははっきりしていた。

 

 “仲間”は裏切れない、信頼―――自らを奮い立たせるものを知った。

 代わりがいないからではなく、“自分が”戦う理由はある!

 

「へへ、やっぱ仲間と一緒に名乗りを上げるとヒーローって感じがするよな!」

 

「……はあ。怪我だらけの体で何を能天気な。

 言っとくけど、キミのそういうところ危なっかしいから、ほどほどにしか付き合わないからね」

 

「付き合ってくれるなら最高だ。俺、アクアが仲間で良かった」

 

「っ!?ばか……」

 

 屈託のないフレアカノンの嬉しそうな言葉にくすぐったさを覚えて、アクアクロスはなんだか頬が熱くなった。

 そしてそれを邪魔するように吠えた狼怪人の叫び声にすっと頭が冷え、鋭く敵を睨みつける。

 

『レズレズしいんだよ貴様らキショいわあぁぁぁっっ!!』

 

「存在が気色悪いお前達に言われる筋合いは無いよ」

 

『なんだと!……ヴフフ、泣き虫のアクアクロスが言うじゃないか。

 貴様のみっともない泣き顔、我がUKCの構成員全員の見るところとなっているわ』

 

「―――ふん」

 

 屈辱を煽るように言うヴーフに冷笑のみを返す。

 こんな相手に動じる必要は欠片もない。

 

「哀れだな、直接男を口説く度胸もなく、そんな玩具を動かすしか能のない腰抜け共は」

 

『何?』

 

「おまけに自分を良く見せる努力もせずに他人を貶めてその優越感に満足する。

――――モテない女の典型的な醜態だ」

 

 そう男の視点からの忌憚なき酷評を下し……ある筈のないバイオノイドの血管が切れる音が聴こえた。

 

『アクアクロスぅぅぅーーッッ!!!!』

 

 伊達に何度も変態の相手はしていない、この程度は安い挑発だ。

 それに安直に乗ってアクアクロスの姿しか目に移らない様子で殺到するヴーフだが忘れているのかどうか、失った左腕の影響で自慢の俊足に精彩を欠いている。

 

「サフィールケープっ!」

 

 宣誓の声に反応してTSEライザーが白波を思わせる青の衣装の只中で飛沫を散らし、それが霧となったかと思えば次の瞬間には淡く透き通る薄い羽衣がアクアクロスの手に握られる。

 それを纏いながら舞うように緩やかに、そしてさりげなく移動して位置を調整する。

 その際流れるように細い腕を振ってそこから生み出した砲丸大の水球を空中に数発生み出し、ヴーフ目掛けて放つことも忘れない。

 逸れた一つが標識のポールをへし折る程度の威力は込められているが、煩わしいとばかりに身体で受けて耐える怪人には牽制でしかない。

 

『うおおおおぉぉぉ!!!』

 

「ワカツナミ―――“破”!!」

 

 織り込み済みの青の少女は、弓を引き絞るように後ろ手に渦巻く水流を圧縮し、羽衣を巻き込んだ右の拳を叩きつける―――牽制と位置取りで調整した結果絶好のタイミングで飛び込んできたヴーフの牙目掛けて。

 

『がッ!!?ぺぁ………』

 

 堤防が決壊する時のような重々しい破裂音が、そこに渾身の威力が秘められていたことを物語る。

 炸裂した後ただの水となって乾いたアスファルト一面に降り注がれる中、自慢の牙というより前歯全てを折り砕かれたヴーフがたたらを踏んでよろけた。

 

 痛打を喰らい攻撃力も低下して、絶好の的になる前にすぐ飛び退いたのは、ダメージが意識の低下に結び付かない機械の体の怪人だからこそだろう。

 しかしその判断の速さはアクアクロスが何度も相手にしてきたものだ。

 

「カコツギリ―――“索”」

 

 霞の中に踊る羽衣と連動してしなる水の鞭が空中でヴーフの足を引っかけてすっ転ばす。

 いつもならここから体勢を立て直されて躱される小さなリスクを承知で大技に繋げて決着を図るところだが。

 

「六・連・爆・鎖―――――――」

「トドメは譲ってあげるよ、後輩」

 

 文字通りの爆発力が売りの仲間がいるから、そのフォローを考えるだけでいい。

 

 昇り始めた朝日を背負い、それに負けぬ熱を六筋手にした魔杖に輝きとして灯すフレアカノンが上空からヴーフを狙いすまして必殺を伺っている。

 アクアクロスが相手を挑発した時点から、アイコンタクトもなしに想定の中で最善の動きを選択してくれた仲間に信頼を芽生えさせながら、会心の笑みを浮かべて頷いた。

 

 多分に水分を含んだ空気が熱に炙られて光を折り曲げて、最中のフレアカノンの姿を揺らめかせる。

 それはヴーフとして怪人を通して見ていた光景の中で、最後を締めくくる告死のビジョン。

 

 次の瞬間には、もう爆発の反作用で仰向けに転んだままの怪人目掛けて叩きつける至近距離まで迫っている。

 

 

「ヒィートぉぉぉっっ、リヴォルバあああああぁぁぁぁーーーーーーーっっっっ!!!!」

 

『ぎ、ががががががあああああーーーーッッ!!???』

 

 

 炸裂する六の爆炎。

 地表に縫われたヴーフに熱も衝撃も爆圧も余すことなく浴びせ、下のアスファルトごと融解の域までエネルギーを暴れさせる。

 

 それが収まるのに大した時間は掛からなかっただろうが、幼い体躯でその反動を全て抑え込んでいたフレアカノンの長い双房の髪がいつまでも揺らめいている。

 爆発の閃光で少しちかちかした目を鎮めると、大きい人型にくり抜かれたアスファルトの底に、赤熱したバイオノイドの残骸だけが眠っていた。

 

「終わった……?」

「へへっ」

 

 慎重に確かめたがるアクアクロスに、フレアカノンはサムズアップで合図する。

 まああんな有様になっても動く怪人には今のところ行き当ってはいないが、“彼女”のああいうところはやはりどうにも危なっかしいと思う。

 

「見たか。ヒーローは居るんだ―――」

 

 にもかかわらず、魔杖を肩に回して決めた赤の魔法少女の台詞を受けて青の魔法少女は続けていた。

 正義のヒーロー……今までなあなあで戦っていた自分が、今日ここから仲間と共にその道を歩むことを受け入れて。

 

「――――今、ここに。ってね」

 

 

 

 

…………。

 

 闇の中―――ではなく、文明の光が眩い歓楽街。

 幽かなシルエットで照らされる三枚羽の奇形の鳥は、物質生命達の営みをただ見下ろしていた。

 

『チチチ……逆装転女は二人、バイオノイドは一体。それはちょっと、フェアじゃないと思わないかぃ?』

 

 誰にともなく問いかけたその鳥は急降下して、妖しいネオンの中を縫うように彷徨う。

 あちらこちらと戯れているような無軌道な羽ばたきだが、まるで何かを探しているような気配があった。

 

『まああの喪女たちには暫く“アレ”で繋いでもらうとして、チチ、やっぱりゲームは面白くないとなぁ?』

 

 クーと同族の筈なのだが、彼と違い感情豊かに喋るそれは飛行している内に何かを感じたのか目的地を定めた動きになる。

 雑居ビルの錆びたドアをすり抜け、ゴミの散乱した部屋を滞空したチック・バードは、暗がりの中壁際で座り込む一人の少年を見つける。

 

 少年、だ。その身に被されているのが、花柄が縫われたピンク色のワンピースでも。

 そのスカートの中から、明らかに少年のものではない乾きかけの生殖行為の痕跡が白い筋を残して垂れていても。

 

 まっとうな大人なら彼が受けた仕打ちに憤慨するか理解を拒むかといった有様ながら、アブダクターに拉致と凌辱を唆すような倫理観の精神生命体は何ら感慨を示さない。

 ただ楽しそうに彼に問いかけるだけだ。

 

『目には目を、歯には歯を、逆装転女には逆装転女を。

――――チチ、オマエ、チックと契約して魔法少女にならないかぃ?』

 

 不意に現れたどう考えても怪しい喋る鳥。

 しかし少年は思考すら鈍化しているのか、淀んだ目つきでただそれを見上げる。

 

 そのままわずかな間を置いて、喉の渇きを気にしてすらいないのか、擦れていながらつらつらと疑問を発する。

 

「少女。ねえそれ、なったらわたし、お兄ちゃんに逢える?愛してもらえる?」

 

『チ……チ?よく分からんけど、契約には当然の対価を。そのあたりはチック意外と律儀だぜぃ?』

 

「そう」

 

 考えているのか信じるのか。

 表情を欠片も動かすことなく、ただ頷いて少年はチック・バードの勧誘に承諾する。

 

 まるで誰かと同じようにあっさりと。

 その呆気なさと同じくらい簡単に、数秒とせずに少年と奇鳥は部屋から姿を消していた。

 

 それでも何かが動いたのか、積まれた雑誌が崩れてページが開く。

 煽情的なポーズを取る裸の女性が、その“男性向け成人誌”のカラーページを飾っていた。

 

 

 





いや、音楽聴きながら書いてたらちょうどデンカレが流れてたもんで………。


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