友達が少ない俺、TSツインテールでこの素晴らしい男女逆転異世界の魔法少女戦隊になるそうですがこの中に一人、男の娘がいる!のと敵の女幹部が弟だけど中二病でも愛さえあれば青春ラブコメには関係ないのは   作:サッドライプ

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 お前がパパになるんだよ!と返されて(童貞が)終わりじゃないかな。



逆転世界の中心で愛を叫ぶとどうなるか①

 

「―――ネコ耳。今必要とされているのはネコ耳。陳腐安直在り来たり、なんとでも言うがいいの。今ここにわたしのりぴどーがネコ耳を追加することで完璧なる萌えが生まれると囁いているの」

 

「―――浅はか、ですよ星奈。シンプルイズベスト、ネコ耳なんて今日日一周回って新鮮なくらいですが、それでも蛇足は蛇足です。特撮でもロボアニメでも初代が至高と呼ばれるのは何故なのか、それは結局後発シリーズは最高の初代に余計なものをくっつけて劣るものしか作れないからだと」

 

「それこそ浅はか、いやいっそ哀れなの。そんなものは初見のインパクトをクオリティと履き違えた悲しい勘違い馬鹿の戯言でしかない。進化を拒絶した懐古厨は未知への探求を捨てた愚か者でしかないの」

 

「その結論がネコ耳、ですか。安い進化もあったものですね」

 

 定時にはまだ早い夕方の喫茶店のバックヤードで、店のロゴがプリントされた少女が二人、そっくりの顔同士で睨み合っていた。

 アルバイトにしても明らかに幼い少女だが、オーナーの娘が家の手伝いをしているだけであればグレーの範疇か。

 それよりはもう少し年上の、こちらはアルバイトにしては落ち着いた手つきでホットケーキを焼いている少年が横目で二人を睨んでいる。

 

「なんの話をしているんだ、二人とも」

 

「「もちろん、シン(お兄ちゃん/兄さん)の衣装について」

 

 声を揃える双子の発言を受けて、焼きあがったホットケーキを皿に乗せて盛り付けを済ませると少年――衣玖鎖は店内を覗き込んだ。

 普段より埋まっている席の中を、執事服を着た彼と同年代の男子がぱたぱたと動き回っている。

 

「お兄さんー、コーヒーお代わり!」

「あいよーコーヒーお代わり一丁!!」

 

「兄ちゃんこの後暇?アドレス交換とかしない?」

「暇じゃないしケータイ持ってないんで!」

 

「お兄さんコーヒーに『おいしくなーれ』しながら出してもらえる?」

「お・い・し・く・なれええええぇぇぇっっ~~~~~!!!……これでいい?」

「…………これはこれであり」

 

「オムライス。ケチャップで『かなこ♡』って描いて!」

「ちょっと待って―――衣玖鎖ぁー、それってアリ?」

「当店ではそのようなサービスはいたしておりませんッ!」

 

「ふ、ふふ。うふふふ……っ、やはり私の見立てに間違いはなかった!」

「いいから仕事しろオーナー」

 

 

「………うちってこんな店だっけ?」

 

 童顔なのもあるが、シンのラーメン屋だかなんだかよく分からない振る舞いが黒の映えるきっちりした執事服と実にミスマッチになっている。

 だがそれでも客受けはいいのか、普段はコーヒー一杯で粘りながら課題や自習をしている大学生たちも色々なものを頼んでは彼と接触を持とうと頑張っていた。

 まあただでさえ希少な男が接客してくれる店なんてほぼ無い―――衣玖鎖も手伝いはキッチンスタッフしかやっていないが、それでさえ男の手料理というだけで根強い人気があるのだ。

 女性相手に愛想を振りまいてくれる男の子が料理を運んでくれるなら接客態度など、いやこれはこれでむしろ愛嬌だと認識され、店中の客が鼻の下を伸ばし切っていた。

 

(それで、あれにネコ耳……?)

 

 とりあえずで店の手伝いをしてもらっているがかなりの売上増に貢献しているなんちゃって執事の姿を観察しながら、先ほどの妹の戯言を思い出す。

 脳内でその頭上にもふもふの飾りが付いているのを想像ずる、なんならしっぽも合わせて。

 その姿で『お帰りなさいませにゃん、ご主人様』と出迎えてくれるシン(※変身前、男)の姿を想像すると……。

 

「悪くない、かな………?」

 

 満足げに衣玖鎖は頷いた。

 

 岬衣玖鎖、やや潔癖症のきらいはあるが基本的に良識と常識を重んじる男。

 けれど、彼が持ち合わせているのはあくまで“この世界での”良識と常識に過ぎないのであった。

 

 

 

………。

 

「そう、正式に住み込みのバイトになる話、受けてくれるのね?」

 

 シンがこの世界に来て一週間ほどが経過した。

 

 幸いというべきかアブダクターの襲撃はヴーフを撃破して以降途絶えているが、その分身の振り方を考えるだけの時間を与えられたということでもあった。

 とはいえ身一つで異世界に転がり込んだシンに選択肢は実質なく、岬牧江の経営する喫茶店『リーズリット』の店員として厄介になることを決めたのだった。

 

「―――厄介になるっす」

 

「いいえ、ここ最近あなたが戦力になってくれたから、可愛い男の子が接客してくれる喫茶って評判ですごく繁盛してるからね。

 むしろこちらから是非お願いしたいくらいではあるんだけど……」

 

 息子達がまだ学校で勉強しているであろう時刻、景気のいい話をしてシンを迎える話をしているはずの牧江だが、どこか浮かない様子だった。

 

「オーナー?」

 

「でも本当にいいの?シンくんの“本業”というか使命もあるし、それで衣玖鎖を救ってもらった恩もある。

 過酷な状況に置かれてる男の子相手に、店で働かないなら出て行けなんてとても言えないのだから、無理してるようなら―――」

 

「そんなん衣玖鎖だって学校行ってるし、帰ったら店の手伝いもしてるじゃないっすか。

 ヒーローやりたいのはただの俺のわがままで、仕事でも使命でもないから、出番がない時はただ遊んでるだけなんてしないっす」

 

「そう………じゃあこれからもよろしくお願いするわね」

 

 平日の昼食時を終わらせて客が殆どいない店内とはいえ、一応ぼかして牧江が逆装転女との二束の草鞋になることを遠回しに指摘するが、シンはその気遣いは不要と躱すだけだった。

 その言い分に理がないわけではないが納得するには至らないのだろう、複雑な心境を顔に出しながらも呑み込む。

 

 そんな時だった、殆どいないというか唯一店内にいた中年の母親と息子らしき青年の激した声が聞こえてきたのは。

 

「達樹!どうしてお前は聞き分けないことを言うんだ!?

 お前の花嫁候補は信頼できる伝手から手配した、それをなんとなくというだけで拒絶するなど!」

 

「聞き分けがないのはお母様です!僕の気持ちも考えずにいきなりこの中から生涯を共にする伴侶を選べだなんて、あなたはいつもそうだっ!!」

 

「ま、待ちなさい!!」

 

 なんでそんな話を喫茶店でしていたんだ、と思わざるを得ない内容で口論になった母子は、店を飛び出した息子を慌てて母が追いかける形となる。

 律儀なのか母親は去り際レジに一万円札を叩きつけて行ったのだが―――、

 

「お客さん、財布まで置いてかなくても!?……ちょっと追いかけて来るっす!」

 

「シンくん、お願いね。流石に一万円の半分もしない会計だし、財布とかはあまり預かっていたくもないし………」

 

 仕舞う時間も惜しくなったのか、一万円札を取り出したまま財布もレジカウンターに置いて行ってしまったのを見て、シンはそれを届けるべく親子を追いかけることにした。

 母親の方は見ると分かるレベルで高級なスーツを纏っていたし、微妙な肌触りで黒い財布はおそらく本革のブランド物だろう。

 

 追いつけるならさっさと返してしまうのが厄介がなくて、そして店を出てどちらの方向で二人が追いかけっこをしているのかは、既に後ろ姿が見えなくても便利なナビゲーターがいた。

 

「なあクー、どっち!?」

 

『さっきの二人なら、向こうの道を信号3つめで右に折れたところから南へ』

 

「さんきゅ!」

 

『ただ――――』

 

 

 いやああああぁぁぁぁっっっ!!?

 

 

………全力で走って追いついたと思う頃に、その男性の悲鳴は耳に入ってきた。

 

 自らも狙われる性別であるシンが咄嗟に路地の影に隠れてから様子を伺うと、先ほど達樹と呼ばれた男性が衣服を引っかけるようにして人の背丈の3倍程高い位置にある街灯に吊るされている。

 餌を保存する鳥―――というのが何故か真っ先に頭に浮かんで、そしてその直感は正しかった。

 

 こげ茶色の羽根を散らしながら、“空中”をその鳥型バイオノイドは羽ばたいている。

 どう戦うかに早くも思いを巡らせながら、シンの手には紅の宝玉【TSEライザー】が握られていた。

 

「アブダクター……!今変身して大丈夫か?」

 

『誰からも見えないように認識をずらしてる。正体がばれることはないよ』

 

「なら―――俺が戦ってる間、できればアクアを呼んどいてくれ」

 

『お安い御用さ』

 

 素早く方針を定めたシンは、クーが位置転移の為に虚空に融けるように消えるのを見送ることもなく宝玉を胸元に引き寄せ、そして一度交差させて正面に突き出した。

 

 

「逆装ッッ!!!」

 

『Tran-S-Exial』

 

 

 シン以外には不可視の燐光が燃え上がり、彼の全身を包むヴェールとなる。

 その内側で変異を遂げる肉体はより瑞々しく、より滑らかに、そして美しくありながらも力強さを秘めたものへとなる。

 外装としては穢れを知らぬ純白の上下を纏った後、鮮やかな紅のラインが走り金属光沢を持つ布地のセーラー服がその実堅牢な防護となって熱に煽られながらはためいた。

 

 いつしか腰より長く伸びた炎の色に染まる双房の髪を振り乱しながら、ブーツを履いた脚でスピンを決め、グローブを嵌めた指でどこにともなくチェキを飛ばしたのは、魔法少女でヒーローたる性を転換した存在。

 

 フレアカノンが、変身により戦闘態勢に入った。

 

 

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