やはり俺が315プロにいるのはまちがっている。   作:Hoffnung

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八幡達のライブ回、中編です。

本作品初の1万字越えの回になりました、この回のプロットは練っていたのですがいざ書き始めると中々思うようにいかず…大変お待たせしました、どうぞお楽しみくださいませ


第十三話

俺が少し前から絡んでいる若手ダンスグループの奴らはそれはもうデカい態度を取ってくれた、そのデカさたるや自分たちが複数人とゆうことも相成って更に増長しあまつさえ俺にリンチまがいの事しでかそうとしたぐらいだ。

だがそんなこいつらは現在......

 

「んで?なーんでうちのメンバーにこんな事しでかしてる訳?」

 

「い、いやこれは、その...」

 

「は?聞こえねぇよ、お前さぁ、もっとハキハキとしゃべれや...で?こいつだけじゃなくてお前らにも聞きたいんですけど?」

 

ジロリ

 

「ひぃ!!」

 

「こ、これは...ええっと...」

 

「その、何と言いますか...」

 

「あ?あったま悪いんかお前ら?俺はぁ、理由を知りてぇだけなんだわ、お前らのウダウダしてる仕草なんざ欠片も興味ないわけよ、だからさぁ...は・や・く・こ・た・え・ろ」

 

「ひっ」

 

...そこに乱入してきた神波さんに震えていた。

 

庇われている俺が言うのもおかしいかもしれないが今の神波さんはガチで怖い、なんていうかもう神波さんの怒りでここらへんだけ空間歪んでるみたいだもん。

矛先を向けられてない俺ですらブルってるんだからあんなのを直接向けられたら俺は腰を抜かす自信すらあるぞ、正に今その矛先が向いているこいつらはたまったもんじゃないだろう。

 

さっきまで散々俺を野次ってくれた奴らだが正直ここまでの圧に当てられて震えているこいつらに少しばかり同情する...ま、助けようだなんて考えはこれっぽっちも思ってないけどな。

 

そんな事を考えていると小声で話していた奴らの言葉を聞いてより一層と神波さんは声を荒げた。

 

「はぁぁぁぁあ!??肩がぁ?ぶつかったからぁ?おい、馬鹿も休み休み言えや、そんだけの事で八幡にリンチ紛いの事してたって訳かぁ?」

 

「ひっ、は、はい…」

 

神波さんが言葉を区切り区切りに強調して話すもんだからより一層とこいつらが縮こまる、俺に絡んでいた時の態度が欠片も見えない。

まるで借りてきた子犬のようと表現した方がいいんじゃないかってぐらい縮こまっているようも見える。

 

「はーくっだらねぇ、もしかしたら八幡も何かやらかしたのかと思ったけどたったそれだけかよ…八幡、一応聞いとくけどそれってワザとか?」

 

「んな訳ないだろ…ぶつかって来たのは明らかにそっちですよ」

 

呆れた様子の神波さんにいきなり振られて少し困惑しかけたが直ぐに自分の言い分を伝える…一瞬ビクッとしそうになったのは内緒だ。

 

「ほーう?んじゃ、勝手にぶつかって来ておいてこんな事してたって訳?あーこれは駄目なやつですわー」

 

そんな言葉をいつもの軽い感じで言いながら神波さんが首をゴキリと言う音を鳴らして全体を見渡す。

 

「うっ…い、言いがかりだ!」

 

「そ、そうだそうだ!証拠もねぇじゃねぇかよ!」

 

「こっちは6人もいるんだ!そいつの捏造かも知れねぇだろ!?」

 

「勝手な決めつけでこっちが悪いなんて良く断言出来んなお前!」

 

「これこっちが正しかった場合ちゃんと謝罪してくれんのか!?」

 

とんでもねぇ事を言いだしやがった、嘘なんてこれっぽっちもついてねぇよ純然たる事実だろうが。

 

一人がなぁ!?なんて言いながら仲間に視線を向けて同調してこっちが正しいんだという空気を作り始める、次第にヒートアップしいつもの調子を取り戻し始めたのかまたもやさっきまでの大きい態度になっていく。

俺が苦手な"皆んなの意見"って奴だ、基本的に多数派の意見と少数派の意見がぶつかった時多くの場合勝つのは圧倒的に前者、学校の様な閉鎖的な空間では特にそうだろう。

こいつらも普段からこんな感じで乗り切ってきたのかこの流れが凄く自然だ、このノリの被害にあってきた人達が不憫でならない。

 

多数派の意見には少数派は黙って従うしかない、集団心理が多く作用される日本人ではそう珍しくない光景だ、俺だってそうだ、俺1人で出来ることなんてたかが知れてる。

 

「うるせぇよ、黙れカス共」

 

「ひっ!?」

 

だが、この男、神波狩人にはそんなものは関係ないようだった。

 

たったの一声で盛り上がって来ていたこいつらの増長を一発で黙らせ場を静寂が支配する、圧倒的な”個”が群れた者を叩き潰す、それぐらいの凄みと威圧感がある声だった。

少し見渡してから頭をボリボリとかきだすと、あのさぁという前置きと共に神波さんが喋りだす。

 

「八幡はさぁ、こんなしょうもねぇ嘘つくような奴じゃねぇんだわ、確かに八幡は目が腐ってたりして胡散臭ぇかもしんねぇけどこれは確実に言えるわ」

 

後半に関しては少しおいと突っ込みたくなったがまぁ全体的にフォローしてくれたので良しとしよう。

神波さんのその発言から数の暴力が通じないとわかるとこいつらは目に見えて焦り始めたがそんな時とうとう自分たちの本音を叫び始めた。

 

「う、うるせぇ!!大体てめぇら生意気なんだよ!!」

 

「そ、そうだ!何、ぽっと出の弱小プロダクションのグループのくせに新人枠なんて出れるんだよ!」

 

「俺らがあん時にどんだけ頭下げても出させて貰えなかったのに!!」

 

「不公平だ!なんでお前らなんかが出れるんだよ!!」

 

もはや支離滅裂、この四字熟語がこれ程までに適切な場面に遭遇するなんて人生わかんないものだ…まぁ俺、大した年齢生きてないけどさ。

俺を野次る時にも発していた俺達を気に食わない理由を次々に発し始め、ぎゃあぎゃあと騒ぎ始める。

 

神波さんが第三者から見ても良く判るぐらいに面倒くさいという雰囲気を醸し出しながらハァとため息をつく。

 

「知らねぇよ、つかマジでそんなのこっちが知ったこっちゃねぇわ…何と無くわかったけど俺らが気に食わなかったから痛い目に合わせてやりたかった、んで、3人の中で狙い易いであろう八幡をターゲットにした訳ね…」

 

チラっとこちらに神波さんが視線を向けると俺に指をさしてまた喋り出す。

 

「おい、こいつまだ高校生だぞ?お前ら見たところ俺とタメ(同年齢)ぐらいだろ?高校生相手にイキるとか恥ずかしくねーのか」

 

神波さんの言葉にこいつらは驚く事にその自覚があったのか途端に気まずそうになった、中には目を伏せる奴までいる始末である。

だが、そんな奴らの様子を気にする事なく神波さんは話を再開する。

 

「大体さぁ…こんな人目のつかねぇ端っこで多人数で1人をボコろうとするとかどう考えても正しい訳ねーべ、お前らこれを武勇伝にでもして語るつもりだったのか?」

 

「「「「「「……………」」」」」」

 

ぐうの音も出ない、近年では死語とすら言われている表現だったが正にこの表現が相応しいと思わせる程の正論であった。

 

当然だろう、世間からしたら多人数で1人に乱暴な行為を働く事を良しとするなどよっぽど特殊な事情でも無い限り良しとはしない行為だ。

 

謎理論を展開してきた流石のこいつらも何も言い返せないようでだんまりとした空気になる、あの、俺までこの空気の巻き添えになるの勘弁して貰えませんかね。

 

すると、このだんまりとした空気の中で神波さんが俯いているこいつらの顔をぐるりと見渡した。

 

「後さぁ…俺、実は少し前から見てたんだけどよ…誰か"泣かす"とか言ってなかったっけ?…あぁそうだよお前だな、俺がちゃんとお前を泣かしてやろうか?お?」

 

ガシッ!

 

「…え?うぉ!?ぐぅ…」

 

「あぁ!?」

 

「う、浮いてる…!?」

 

突然、俺を野次る時に使われていたフレーズが気に食わなかったらしい神波さんがそれを言ったであろう奴の首根っこを掴んで持ち上げた。

 

おお…すげぇ、人が首根っこ掴まれて持ち上がる所なんて初めて見た…

 

成人男性を1人首根っこを掴んで持ち上げるのはそう容易な事ではない、バトル漫画なんかじゃ良く出てくる表現だが体重が平均60〜70台の成人男性を片手で持ち上げるというのは相当の筋力と体力を持った者にしか出来ない芸当だ、まさか現実でこれを拝める日がくるとは…神波さんの180を超える長身も相まって10センチ以上は浮いてるんじゃ無いだろうか。

持ち上げられている奴は苦しそうに逃れようと必死にもがいている。

 

 

てかおい、でもこの状況ってヤバいぞ、ここだけ見たら問題起こしてんの明らかに俺らだろ。

俺は流石にやり過ぎだと慌てて神波さんを止めようとするがそれはもう遅かったようだった。

 

パシャリ!っとこの緊迫した状況にシャッター音が響いたのだ。

 

「と、撮った!撮ったぞ!!」

 

「で、でかした!!どうだザマー見ろ!これでお前らは終わりだ!」

 

「わかったらとっとと降ろせ!こいつをばら撒かれたくなかったらなぁ!!」

 

っ!だから不味いと思ったんだ!こんな絵面、どう見てもこっちが恫喝紛いの事をしてる様にしか見えない!

 

こいつらの内1人が懐からスマホを取り出しカメラ機能でこの様子を撮影したのだ、水を得た魚のごとく弱みを握った事でさっきまでの沈黙が嘘の様に騒ぎだす、自慢気に液晶画面にその写真を表示させてこちらに突き出して見せ付けてくる様は腹が立つとしか言いようがなかった。

そいつらの液晶画面に写ってる写真はやはりというかアウトな絵面だ、こんな物ネットなんかに流されたらスキャンダル不可避だろう。

 

神波さんは首根っこを掴んで持ち上げていた奴を乱雑に地面に降ろすとさっきまで威勢良く上げていた声を上げずに黙り込んだ。

それをチャンスと思ったのか更に増長し次々と囃し立てる、くそッ、サインを貰いに行っただけなのにこんな事態になるなんて予想すらしてなかった…!

 

完全に上下関係が反転した、アイドルとして弱みになる材料を握られて正に絶体絶命、あれをばらまかれるのは相当やばい、もうこうなったら土下座でもなんでも良い、こいつらの暴走を止めなければ…!

 

腹を瞬時にくくり、俺がいざとなったら舌で靴でも舐めようだなんて覚悟を決めて膝をついていざ土下座の形に入ろうとする、だがそれは待て、と神波さんが手で静止して止まった。

 

いや、あんた今どういう状況かわかってますか!?俺達現在絶賛絶体絶命中なんですけど!?と目で訴える。(目が腐ってるからアイコンタクトなんて出来ねーだろとか思った奴、絶許)

 

そうすると神波さんはこっちの目を見て、"まぁ見てろ"そう言われた気がした。(だから腐ってるからアイ_以下略)

 

「ほらほらどうしたぁ!?さっきまで散々俺らが悪もんみたいに扱ってくれちゃってさー!」

 

「しかも見ろよ!衣装が見事に伸びちまってる!これは慰謝料もんですわー!」

 

「おら、黙ってないでさっさとする事があんだろ?あやまr「私達が謝る必要なんて何処にもないよ、あ、でも服の事に関してはごめんね?」る……え?」

 

ピロリ、といった電子音と共にまた新たに乱入者が現れる、スマホを横に向けて顔付近に持ち、それを持ち直してその人物はスマホをまた操作する。

 

「全く、今は便利な時代になったよね、私が学生の頃なんてガラケーが全然主流だったのにさ、いやはや技術の進歩ってのはほんと凄いよ」

 

うんうんとうなずきながら心の底から関心してるような声色でその乱入者は語り出す、ポチポチと操作し終わったらしいスマホをまた同様に横持ちにすると俺達全体に見えるようにこちらに向けると____

 

 

『う、うるせぇ!!大体てめぇら生意気なんだよ!!』

 

『そうだ!何、ぽっと出の弱小プロダクションのグループのくせに新人枠なんて出れるんだよ!』

 

『俺らがあん時にどんだけ頭下げても出させて貰えなかったのに!!』

 

『不公平だ!なんでお前らなんかが出れるんだよ!!』

 

「……は!?」

 

「こーんな動画も簡単に撮れちゃうんだから」

 

写っていたのはさっきまでのこいつらの映像、それをスマホを持っている片手の指で器用にスライドさせながら動画を飛ばし飛ばしでダイジェストの様に見せつける、その動画に目に見えて焦り始めるこいつらを横に沈黙を貫いていた神波さんが声を上げた。

 

「遅いっすわ、拓哉さん!ったく、俺軽くびびったじゃないですか」

 

「ははは、ごめんよ、でもベストタイミングだっただろう?」

 

まぁな、と軽く返事を神波さんが返した、この快活そうに笑う男は元マジシャンであり、俺達のユニットリーダーでもある男、真丈拓哉だった。

 

「あ、あんたは...確か元マジシャンの...」

 

「ああ、覚えていてくれて嬉しいね、それぐらいの知性はあって安心したよ、どうもFantastic Dreamersのリーダーを務めています真丈拓哉です、どうかお見知りおきを」

 

真丈さんがさらっと毒を吐きながら飄々とした態度で呑気に自己紹介をするが、その眼は全く笑ってなどいない。

例えるなら氷...そう氷だ、まるで雪ノ下みたいな、いやひょっとするとそれ以上かもしれない、それぐらいの冷たさが感じられる眼だ。

俺は雪ノ下で慣れているので冷たいっと言った感想が頭の中にでてくるが慣れていない神波さんは横で怖ぇ...なんてつぶやいている、正直いつも穏やかなイメージがある真丈さんがこんな雪ノ下みたいな冷たい眼をするとは予想外だった。(今、雪ノ下の怒りの波動みたいなのが感じられたがきっと気のせいだろう)

 

真丈さんは懐にスマホを直しながらこいつらに向けて話を再開する。

 

「早速だけど単刀直入に言おう、この件は手打ちにしないかい?私たちも君たちも今日は争いにきたんじゃない、音楽番組に出演する為に来たんだろう?違うかい?」

 

「て、手打ちぃ?」

 

冷たい眼をするものだから何をする気だと思ったが、真丈さんが提案したの意外にも平和的解決法だった。

身構えてしまっていたこいつらもえ?って感じの反応だ、しかしその態度が下手にでてると勘違いしたのか1人が声を荒げた。

 

「ふざけんな!こっt「1から10までキチンと教えなきゃいけないのかな?時間が無いんだよ」うっ!」

 

言わせないとばかりに真丈さんがすぐさま言葉を遮ると懐からスマホを取り出すとまたもや動画を再生し始める、再生した場所はこいつらが神波さんを撮ってはしゃいでる場面だ。

 

真丈さんは暗にこう言っているのだ、『お前たちに拒否権はないぞ』と。

 

こいつらがさっきまで自慢げにしていた証拠写真は物事の背景が捏造しやすい”写真”だからこそ弱みになるレベルの代物になるのだ、だが動画は違う。

物事の背景がしっかりと分かってしまいその上今回はこいつらが写真を撮って何をしようとしてたかまではっきりと写っている、どっちが信憑性があるかなんて最早説明しなくてもわかるだろう。

 

このままやり合うのとここでおとなしく引いておくか、どちらが賢い選択かなんてことも言っているのだろう。

流石のこいつらもこのままやり合うのはまずいと判断したのか、少しのためらいの後。

 

「...くそっ、おい行くぞ!」

 

引く事を選んだようだ、リーダー格の号令に従うようにして他の奴らも次々と去ろうとするがそれを呼び止める者がいる。

 

「あぁ少し待ちたまえ、君たち」

 

「なんだよ...もう終わりじゃなかったのか?」

 

呼び止めたのは解散を提案した張本人である真丈さんだった、さっさとこの場を離れようとしていた奴らは非はそっちにあるにも関わらず相変わらず態度は尊大だ。

真丈さんはそんな態度も気にせずにまた話始める。

 

「いやぁ、君たちの所属する事務所…○○とかいったっけ?私の記憶が正しければだけど」

 

「は?…そうだけど…?」

 

「そこのお偉いさんと個人的に交流があってねぇ…もしかしたら君たちの処分が…いや、なんでもないよ、じゃあお互い良いパフォーマンスをしようじゃないか」

 

「いやいや、待てよ!?」

 

真丈さんがとんでもない事を言い出した、まさかのこいつらの上の人と繋がりがある発言をしたのだ。

しかも"処分"だなんてキーワード、そんな物をちらつかされてはいそうですかとすぐ様に解散しようとする程こいつらも馬鹿ではないのか、すぐに真丈さんに食ってかかる。

 

「おい、それってどうゆう事だよ!?」

 

「い、いくらなんでも新人アイドルのあんt「私がその程度の事が出来ないとでも?」…え?」

 

またもやこいつらの言葉に重なる様に発言した言葉にこの場の雰囲気がガラリと変わる、まるでそう、重力がここだけ強くなった様な...どんよりとしつつ緊迫した雰囲気へと変貌する。

 

神波さんの独壇場だった時とは全然違う、神波さんは怒り等からくる威圧感からの雰囲気だったが、真丈さんは…そう支配。

 

「へぇ...出来ないと思われてるんだぁ...この私が、ねぇ」

 

含みのある言い方をしてぐるりと見渡す。

 

 

 

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い、いやガチで怖いぞ!?

 

 

 

この場が真丈さん中心になっているような…俺から言わせて貰えば葉山がもっているスキル、ザ・ゾーン(詳しくは原作を読もう)を更に強化した様な、今の真丈さんからは最早一種の王の様な風格さえ感じる。

 

有無を言わさないような雰囲気に真丈さんの言葉がどんどん真実味を帯びてゆく、更に追い討ちとばかりにまた動画を再生し始めた、その行動にこいつらはまたもや狼狽している。

 

いくらこいつらでも上にこの動画がバラされたらマズイのか分かってるのか目に見えて青ざめる。

 

「まぁ、私は出来るだけ波風立てたくない性分でね、君たちがどうしたら良いかは…わかるよね?」

 

「は、はいぃ!!ぜ、絶対ばらしませんから!」

 

「お願いです!ど、どうか社長だけには!」

 

「やっと最近軌道に乗ってきたとこなんです!」

 

「お願いします!お願いします!か、勘弁して下さいぃ!!」

 

「ふむ、よろしい、物分かりの良い子は好きだよ、さ、行きたまえ」

 

その言葉に懇願していた奴らが次々とこの場を素早く去って行き、ここには俺達三人だけが取り残された。

姿が見えなくなると直ぐに真丈さんと神波さんが俺の側へ寄って来た。

 

「はぁ、全く...あんなに慌てるぐらいなら最初からしなければ良いのに...大丈夫かい?」

 

「大丈夫っすよ、手ぇだされる前に乱入しましたし」

 

「念のためだよ、もしかしたら私たちが見つける前に何かされていたかも知れないだろう?」

 

「あ、はい、それに関しては大丈夫です…見てたんですか?」

 

「あぁ、わりぃ、見つけて直ぐに凸ってやろうと思ったんだが拓哉さんに止められてさ」

 

「あの状況で突撃してたら丸く収めるのは難しいと思ったんだ…ごめんね」

 

2人から気遣いの言葉がかけられるがその言葉達の中に合った情報から実は少し待機していた事がわかった、そういえば神波さんも"少し前から見ていた"って言ってたしな。

会話の内容を聞くに、どうやら真丈さんの指示っぽい、まぁ神波さんなら今本人が言ってた通りに直ぐ様突撃しそうだ。

 

介入に遅れた事を2人して謝罪してくるが気にしてないですよ、と一言入れる、実際真丈さんの判断は間違って無かったしな。

 

「色々と話したいところだけれど残念ながら余り時間がない、急いで控え室に戻ろう」

 

真丈さんの言葉に側にたてかけてあった時計で時間を確認するともう指定されていた時間まで5分ちょっとあるかどうかだった。

 

余計に時間かけてくれやがって!!今更あいつらに対して怒りの感情がでてきたがここで憤っていても仕方ないと早々に心を切り替えて頭を冷やし、神波さんの掛け声で急ぎ足で俺達は控え室へと向かった。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

あの後急いで控え室に戻ってきた俺達はプロデューサーから軽くお叱りを受けてしまった、特に俺は早々に出て行った癖して中々戻って来なかった張本人であるからか、他の2人よりも少し厳しめに注意を受けた。

 

まさか同じ番組の出演者とトラブルになってましたなんて言える筈も無く、3人で事前に口裏を合わせて単純に俺が道に迷ってしまいそれを見つけるのに時間がかかってしまったとゆう趣旨をプロデューサーに伝えた。

 

プロデューサーからは余り自分勝手に行動し過ぎないようにとまるで小さな子供に聞かせるようなお叱りをこの年齢になって受けてしまった、でもその後”無事で本当に良かったです”と心から安心した笑顔で言われて少し嬉しかった事は秘密だ。

 

 

 

時間も押しているとゆう事で俺達はすぐさま衣装室へと向かいライブに向けての準備を進めている、既にトークパートを収録するときにメイクはあらかた済んでいたので少しの手直しぐらいで早々に終わり今は俺達Fantastic Dreamersの専用衣装に袖を通している真っ最中だ。

前にDRAMATIC STARSのデビューする時に言っていた通り、ユニットごとに合った衣装制作してくれていて俺達は各々の衣装を着て調整しているところだ。

 

最初にお披露目した時と先日行われたリハーサル、そして今、この衣装に袖を通すのはこれで3回目だ。

未だに慣れない衣装姿をした鏡に写る自分を見るがまるで俺が俺じゃないみたいだ、腕を広げたりして後ろを見たりと全身を回るように確認する、神波さんから似合ってるぜ、と声をかけられるがそれでも違和感が拭えないのはしょうがない。

 

「支度はすんだかい?...比企谷君、安心したまえ、ちゃんと似合っているよ」

 

「え?あ、あぁ、ありがとうございます、でもやっぱなんか慣れなくて」

 

そんなことをしているとどうやらチェックが終わったらしい真丈さんが声を掛けてきた、俺はそれに返事を返すが真丈さんはそっか、と柔らかく微笑んでいる、本当にさっきと同じ人物かと疑いたくなってしまう程の柔らかな笑顔だ、少なくとも怒らせてはいけない人物リストに加えておこう。

 

「やっぱそうだよなぁ、少なくとも俺はこんなデザインの服着ねーし」

 

「でも悪くないデザインだろう?私たちのユニットのコンセプトに合った衣装だからね」

 

「ま、そうっすねぇ、八幡もそう思うだろ?」

 

「はい、まぁ確かに奇抜なデザインしてるけど」

 

「ケハハハッ、言えてるな」

 

3人で自分たちの衣装の事に関して言い合うが確かに神波さんの言う通り、俺が普段では絶対に着ないであろうデザインをしていると思う。

赤、青、黄色、緑...様々な色がところどころにあしらわれており、メルヘンとまでは行かないものの結構ファンシーなデザインの衣装だ。

ユニット名をモチーフにしたらしいが少なくとも俺は服屋で買い物をする時にこんなデザインの服が置いてあったら手に取りもしないだろうなと思う衣装...まぁ普段着とステージの上で歌って踊るアイドルの衣装を比べるのは野暮だと思うが。

 

話していると神波さんがそうだ!と声を上げる、俺と真丈さんはなんだなんだと視線を向けると神波さんはいつも道理の快活な笑顔でこう言った。

 

「せっかくだし円陣組もうぜ!ライブ前にいっちょ団結といこうや!」

 

「良い案じゃないか、士気を高めるには悪くない提案だね、比企谷君はどうだい?」

 

「円陣っすか...俺はパスで」

 

「えぇーー!?嘘だろ、この状況でやらねぇ選択肢とか無いっしょ!なぁー八幡折角だしさぁ、やろうぜー?」

 

神波さんの提案に拒否の意を示したところ、相変わらず馴れ馴れしく絡んでくる。

 

「ちょ、むさ苦しい、野郎の抱擁とか普通にノーセンキューなんですがそれは」

 

「んな悲しい事言うなよー、なぁあー?なぁあー?」

 

「いや、しつこい、いい加減に離れろ...」

 

「ふふふ...仲が良いなぁ、では失礼して...」

 

神波さんの暑苦しい抱擁と格闘していると、真丈さんが俺と神波さんとの間に乱入し腕をほどきつつ自ら己の腕に絡めて神波さんの言っていた円陣の形になる。

真丈さんはともかく片方の神波さんは180前半はある長身であるために俺の肩が意図せずして持ち上がるような体制になって少し痛い。

その不満を目線で伝えるがそれはどこ吹く風と言わんばかりに流されてしまった、俺ははぁ、と観念したようにため息を吐き腕をなるべく楽になるように組みなおす。

もうここまでやったらおとなしくやってやろうじゃないか、顔を少し上げると2人の顔が凄く近い。

 

「ごめんね、いきなり割って入って」

 

「いやいやいや、俺からしたら全然オッケーっすよ!ほら、八幡も素直になったみてぇだし」

 

「ここまでやられたらもうやるしかないかなって...さっさと済ましますわ」

 

冷たいこと言うなよー!と真横から聞こえてくるが無視だ無視。

聞こえてくる言葉を右から左へ聞き流すモードになろうとしていると真丈さんがなにやら神妙な顔になった。

 

「...この体制でなんなんだけど...少し良いかな?」

 

真丈さんのいつになくしんみりした声のトーンに神波さんはさっきまで俺に騒ぎ立てていた声を潜める、俺と神波さんは真丈さんの問に言葉ではなく首を縦に振る事で肯定の意をしめした。

それを見た真丈さんはありがとう、と綻んで話し始めた。

 

「私はね...実は不安だったんだ」

 

ポツリと呟く。

 

「いつも、余裕ぶったりしてるけど、実は私って臆病な性格でねぇ、アイドルになるって決めた時も、本当にこの選択が正しいのか...とか思っちゃったりね、君たちと初めて会った時も、内心びくびくしてたものさ」

 

ははは、とここで少しだけ笑うと話を再開する。

 

「神波君は自由奔放だし、比企谷君は普通の高校生かと思えば捻くれてたりね、ユニットのリーダーを決めようって話になった時に私が最年長なんだから私が行かないとって思って立候補したけれども、この癖の強いメンバーをどうやって纏めれば良いんだろうって内心頭を抱えたものさ」

 

「でもね、リーダーとしてメンバーの事を理解しなくちゃって、思って観察とかしたりしたんだけど、神波君は身勝手な人かとも思ったけれども実は他人を気遣えて、周りを明るく出来るムードメイカーだったり、比企谷君は捻くれててるけども意外と細かい所も気付けて...そして根はとっても優しい子なんだってわかったりさ、君たちの何気ない良い所を見つけるたびに嬉しかったんだ、あぁ、私はこんなにも素晴らしい人達と同じユニットになったんだなぁってさ」

 

だからね、と一泊、真丈さんは間を置いた。

 

「私はね、とっても幸せ、こんなに良いユニットメンバーと同じトップアイドルという大きな目標に向かってこの3人でステージの上に立てる事が凄く幸せなんだ、今日のライブ、私たちならきっと...いや絶対、絶対成功できるって確信してるんだ、だから今言うけど...これからもよろしくね.........な、なーんて、ごめんちょっと重かったかな?」

 

 

真丈さんの激白は、そんな気の抜けた言葉で締めくくられた。

 

黙り込んでしまっている2人の様子に不安を覚えたのか少し苦笑いしながらこちらの様子を伺っている、いや、俺達はなにも真丈さんの言葉に重さを感じて黙りこくってしまっているわけではない。

 

「......拓哉さん」

 

「な、なんだい神波君、や、やっぱり重かったかな?」

 

もう一度言うが俺達は真丈さんの言葉に重さを感じている訳でも、ましてや引いている訳でもない。

 

心配そうに伺っている真丈さんの腕を解き、言いだしっぺの神波さんが組んだ円陣をといてしまった。

ますます困惑する真丈さんに神波さんは両肩にガッと言わんばかりに肩を掴むと...

 

「......どうしてこんなタイミングでそんな話するんですか?」

 

「...え?」

 

一筋の涙を流しながらそう言った。

 

「んな事言われたら泣いちゃうでしょうがーー!!」

 

そう、俺達は真丈さんの言葉に…あり大抵に言ってしまえば感動していたのだ、神波さんなんて号泣とまではいかないけど感極まったのか泣いてすらいる。

 

正直言って俺も少し涙が出てきそうだった。

 

…まぁ、出なかったけどさ

あの、神波さん?肩を掴んでぶんぶん揺さぶってらっしゃいますけどそろそろ話した方が良くないですか?

目回してるように見えるんですけど

 

「ちょ、神波君、ストップ、ストップ!!」

 

「おろ?あ、すいません…」

 

「う、うん大丈夫だよ…せ、世界が歪んでいる…」

 

揺らし過ぎだ、なんて心の中でツッコミながら真丈さんの元に駆け寄り、大丈夫ですか?と声をかける、一応多少視界が揺らいでいるだけで後は問題無いらしい。

 

コンコン!

 

『Fantastic Dreamersさん!本番10分前です!準備が終わり次第バックステージへと直ちに向かって下さい!』

 

俺達がそんな馬鹿みたいなやり取りをしていると、番組スタッフさんからの声がドア越しから聞こえて来た。

ちゃんとノックをしてくれる辺り、しっかりとマナーを守ってくれていて助かった…今、結構カオスな状況だからな…

 

俺がわかりました、と返事をするとスタッフさんの立ち去る足音が聞こえた、それが終わったと同時に咳払いしながら真丈さんが再び立ち上がる。

 

「んんっ!さて、仕切り直しといこうじゃないか、あんまり時間は無いから手短かにね」

 

「あーすいません、俺のせいで」

 

「全くですわ、三半規管に異常をきたすレベルで揺らすとか頭おかしいんじゃ無いんすか?」

 

「そこは『大丈夫ですよ』とか言う所じゃねぇの!?」

 

「…神波さんだから?」

 

「こ、これが思春期、いや反抗期ってやつなのか…?」

 

なーんか神波さんはそういう雰囲気になる人じゃ無いんだよなぁなんて思っているとまた真丈さんが穏やかに笑った。

 

「ふふふ…君達はやっぱり仲が良いね、やっぱり私は素晴らしいユニットメンバーを持ったと確信出来るよ…では、今回のライブ、絶対に成功させよう」

 

スッと手を前に出してかざした。

 

「そうだな、こんなとこでつまづいたらトップとか夢のまた夢、だもんな」

 

その行為を察してその上に手をかざす。

 

俺は…

 

「…勿論です、絶対に成功しましょう」

 

そう、胸に、心に、誓いながら自分の手を2人の手の上に重ねた。

 

俺達3人の視線が交差する、少し静寂になるが直ぐに破ったのは他でもないリーダーの真丈さんだ。

 

「Next Artist!Fantastic Dreamers!!

…Are you Ready?」

 

まるでネイティブが話すような流暢な発音の英語で真丈さんが音頭を取る、簡単な英語だ、俺どころか神波さんですら解る。

俺と神波さんは一瞬視線を合わせ____

 

「「おう!!」」

 

力強く返事を返した

 

「We areー?」

 

続けて真丈さんが言ったのは俺達が所属する事務所、315プロダクションの掛け声のお約束、そう尋ねられた時はこう答えると決まっている。

 

俺達は足を上げ、床を思い切り踏み切って…!!

 

「「「315ーーーーー!!!!」」」

 

思い切り叫んだ

 

 

緊張や不安なんて物はもう存在しない、やる事は全てやった

 

 

後は…

 

 

ライブをするだけだ!!

 

 

 




次回!!やっと!!ライブします!!!

いつか言っていたオリジナル楽曲も披露予定ですので乞うご期待くださいませ!!感想、評価絶賛募集中です!!感想多いとモチベ上がるのでなにとぞ…!!

後、活動報告の方でちょっとしたアンケートも行なっておりますのでよろしかったらご一読くださいませ

では次回もお楽しみに

オリキャラどっちが好き?

  • 真丈拓哉(元マジシャン)
  • 神波狩人(元ストリートダンサー)
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